2004年10月01日

あなたの隣に誰かいる 番外編

『蟲姫物語〜永遠の愛』





むかしむかし。

ある村に、貧しいけれど心の優しい、「馬吉」という男が

おりました。

馬吉には美しい恋人がいました。

二人は心から愛し合い、それは「永遠の愛」だと信じていました。



ところがある日。

その村の殿が娘を見初め城に上げてしまいます。

二人は引き裂かれてしまったのです。

城に上げられた娘は、毎日泣いて暮らしていました。




馬吉は娘を奪い返そうと何度も城に足を運びますが、

中に入ることすら出来ません。

城の外にまで届く姫の悲しい歌。

そこで彼は、木曾野神社に祀られる蟲に望みをかけました。

たとえ人としての姿を失ってもいい。

馬吉は蟲に、娘への「永遠の愛」を誓い、

「娘を奪い返したい」と願います。



蟲は男の心に入り込みます。

男は蟲に姿を変え、城に忍び込みました。

やっとたどり着いた姫の部屋。

だが、殿にみつかり踏み潰されてしまいます。



そんな事を知らず、娘は殿の優しさ、愛情に幸せを感じ

少しずつ馬吉を忘れていきました。

姫と殿はたくさんの子供に恵まれ、幸せに暮らしていました。



男が人の姿に戻った時には、すでに長い年月が過ぎ、

殿は亡くなっていました。



やっと会えたね。



ところが・・・

老いた彼女は、彼のことをすっかり忘れていたのです。

男は彼女になんとか思い出させようと想いを語りましたが、

それでも彼女は思い出しません。

そしてある日、彼女は静かに息をひきとります。



悲しみに暮れる男を心配そうに覗き込む幼子がいました。

それは殿と娘の間に生まれた最後の子供であり、

たった一人の女児、「雪姫」でした。

幼い雪姫は母君の死をまだ理解出来ず、無邪気に

振り舞います。

その愛らしい笑顔。

それは昔、自分の隣でいつも優しく微笑んだ、

あの笑顔によく似ていました。

男は「雪姫」を自分の愛した女性の生まれ変わりと思い込み、

城から連れ出してしまいます。

そして姫を自分の生まれ故郷に隠し、彼女が成人するまで

眠りにつきます。



長い眠りから目覚めた馬吉は、大人になった雪姫を

迎えにいきました。

ですが彼女は、あの「殿」の生まれ変わりと一緒になり

城に入っていたのです。



彼のたった一つの願い。「殿から姫を奪い返す」。

雪姫の前に姿を現す馬吉。

大人になった姫は昔男が愛した女性にそっくりでした。

雪姫は彼のことを覚えているはずもありません。

ですがなぜか男に惹かれてしまいます。

彼女に流れる母の血、母の遠い記憶が

そうさせたのでしょうか。

姫は夫と城を捨て、二人は幸せな時間を過ごします。

雪姫は子供を宿しました。

ところが姫はある日突然「あなたとの事は気の迷いだった」

と言い、殿の元へ帰ってしまいました。



「なぜ?」

あの日永遠の愛を誓ったのに。

自分の想いはあの時と少しも変わらないのに。

彼女はあの幸せだった日々を、私のことを、

忘れてしまったのか?



「あの男のせいで・・・」。

自分から2度も愛する女性を奪った殿への憎しみを、

止めることは出来ませんでした。



男の心に住む蟲は、こう告げます。

「お前の愛する娘は雪姫ではない。

 雪姫はお前でなく殿を選んだ。お前を裏切ったのだ。

 もうすぐ雪姫に娘が生まれる。

 その日が来たら雪姫を生贄にし、

 幼子をあの神社に連れてくるのだ。

 その娘が成人した時に

 お前の愛した女に逢えるであろう」



男はその時が来るまで

自分の悲しみを癒すように眠りました。



男が目覚めると、既に5年の月日が流れていました。

愛しい雪姫との再会。

ですが姫は男の姿を見ると恐怖に怯え、

殿の後ろに隠れてしまいます。

やはりこの姫は私の愛した女ではなかった・・・。

何もかも全て殿のせい・・・。

男は殿に怪我を負わせ、雪姫に手かせをはめ、

城の地下に隠した棺に閉じ込めてしまいます。



「いつかもう一度出会える時まで、僕は君を待ち続けている。

それまでは少しだけサヨナラだ」



男は雪姫の中に一度は見た、最愛の女性につぶやきました。

そして男は、城に火をつけ、幼い娘と姿を消します。



雪姫はなぜ自分がこのような苦しみを受けるのか

わからないまま、棺の中で息を引き取ります。

その苦しみは、のろいとなり、男に永遠の命を授けます。

男は、歳をとらず、死ぬこともなく、呪われた命を手にしました。



男は幼い娘を神社に連れていき、永遠の愛を誓います。

娘は、蟲の儀式を受け、その日が来るまで記憶を封印されます。

その娘を故郷に隠した男は彼女が成人するまで眠りにつきます。

今度こそ、最愛の女性に再会することを夢みながら・・・。





つづく・・・。

written by ちーず




【「血筋」と「生まれ変わり」】

姫たちが産んだ女児たちは、どちらの子だったのか。

馬吉の子だったかもしれない。

殿の生まれ変わりとの間に授かった子かもしれない。

姫は、家系で繋がっていると考え、

殿は家系の繋がりでなく生まれ変わり、と考えました。



【蟲の力】

蟲に変化すること。驚異的な回復力。

蟲は人の心に寄生し、負の心を食べて育つ。



【馬吉の願い】

最初は、殿から姫を奪い返し、二人の「永遠の愛」を

取り戻す事が彼のただ一つの願いでした。

ところが長い時間を彷徨ううち、「姫への想い」に

「殿への復讐」が加わりました。

彼は自分の目的の為に人間を利用し、

人を殺すようになります。

それこそが蟲の望んだことだったのかもしれません。



【姫の呪い】

生きたまま棺に閉じ込められた「雪姫」がかけたのろい。



「雪姫」ののろいは、歳をとらず、

死ぬことも出来ない身体を彼に与えました。

愛する人の老いた姿を見る寂しさ。

自分は一緒に歳を重ねることが出来ない辛さ。

雪姫ののろいは、彼が求めた「永遠の愛」を

奪うことだったのかもしれません。



男は姫に女児を産ませ、次の伴侶を育てます。

姫が自分でなく殿を選んでしまうと、

その美しい姿を棺に封印してしまう。

たとえ姫が殿でなく自分を選んでくれたとしても、

姫と一緒に歳を重ねることは出来ない。

彼に与えられてしまった「永遠の命」。

その為に、こんな方法でしか「永遠の愛」を

手にすることが出来なかったのかもしれません。





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この記事へのコメント
はじめまして。蟲さんの話がこんなんだったとは・・・。というのが、率直な感想です。何というか、悲しいですね。
Posted by kazu at 2005年10月20日 21:35
kazuさん、こんにちは。
これは私の空想物語です。(笑)
公式HPのBBSでみなさんとお話しているうちに
こういお話を想像してみました。

『あなたの隣に誰かいる』、今でも大好きなドラマです。
Posted by ちーず at 2005年10月24日 12:10
小説読みました。もっともここではなくネット上にアップされている蟲姫物語ですが。
なぜ?と言う蟲男が悲しいですね・・・ これが私自身だと思うと心痛いです。蟲という言葉は1話、蟲姫物語は7話から登場。
原作7話によれば飛脚?をしていた貧しい男が姫に一方的に恋していますが、それではなぜ姫の
子孫たる涼子、梓は蟲男に惹かれたのか。元恋人だったという事ならありえますね。惹かれるのは
姫、雪姫という前世の記憶があるから。なるほど・・・一方的なストーカー蟲男の行動にしては納得しかねるところがありますからね。私だったら殿への憎しみと嫉妬を押さえきれませんね。
蟲男は鈴といたい梓の事を単なるエゴ、欧太郎の事は鈴とは関わりのない他者と言っていまし
たそれは蟲男自身の事だったからだと思います。自分自身の事、言われる事だからこそ人間に
言う事で自分自身の事じゃないことだと言い聞かせ、現実逃避していたのではないでしょうか。
そして蟲男はこう思う事が怖かったんじゃないでしょうか? 自分は何を必死にやっているんだろう?
これが本当の永遠の愛なのだろうか? そして、自分は誰なのだろう? と。
記憶の中の海、思い出の中の海。その中に本当の愛はあったのでしょうか。
それは不明です。私は鈴、梓、涼子、そして雪姫の子孫はみな蟲男の子供ではないと思っています。
あの蟲は人に寄生し負の心を食べる事に喜び感じる外道と解釈するとはうまいです。
木曽野神社の黒鳥居になぜ祀られていたのか。邪心を持った邪神蟲ツチハンミョウと言った
ところですかね。ちょっと特撮っぽいwwwww
Posted by 蟹 at 2015年10月31日 15:01
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