2005年11月04日

今夜ひとりのベッドで 第3話

『裏切りの誕生日』

友永明之(本木雅弘)立会いの下、十文字梓(奥菜恵)の作品の撮影が
進められる。
明之は、梓を抱きしめたところを、異母兄弟の市ノ瀬了(要潤)に写真を
撮られたことが不安でたまらない。

「了からは、何の連絡もなかった。
 彼女も、まるで何もなかったようにそこにいる。」


明之に作品を抑えてもらい、梓が曇りをふき取る。
梓の顔が隣に接近することに動揺する明之。
そんな二人を、明之の親友であり、出版編集者の久住俊介(佐々木蔵之介)が
見つめていた。「おい。彼女とお前、また何かあっただろう?」
「え!?いやないよ。」
「本当に?」
「ありません!」

「弟の元・婚約者を思わず抱きしめてたなんて、
 その上弟にそれを写真に撮られただなんて、
 誰にも言えなかった。
 親友にも、もちろん、妻にも。」


旅行会社のカウンター業務に異動させられた明之の妻・友(瀬戸朝香)は
窓口で客に笑顔で対応していた。

次の客を呼ぶと、そこに了が現れた。
携帯で友を撮影したあと、
「なかなかいいね。制服姿も。」と笑う。
「何しにきたの。」
「客にそんな怖い顔はないんじゃない?
 うちの社員旅行の相談に来たんだけど?」
「いらっしゃいませ。」友は改めて笑顔で挨拶する。
「好きだなー。そういうプロっぽいけど可愛いとこ。」
「ムダ口叩いてないで。
 どのようなご旅行がご希望でしょうか?」
「大人6名1泊2日温泉旅行。
 予算は高からず安からず。
 飯の美味さと露天風呂は必須。
 ダンナ元気?」
「それでしたらこちらがご希望に沿うかと思いますので
 ご覧下さい。元気よ。」営業スマイルでパンフレットを渡す友。
「あんたの前では元気なんだー。結構役者なんだねー。」
パンフレットをめくりながら了が言う。
「え?」
「アズのことで大変なんじゃないかなーと思って。」
「梓さん?」
「よし。じゃーこれ貰ってくねー。みんなと相談するから。」
「あっ!ちょっとぉ。」
「あ・・・もうすぐ誕生日だねー。」
了はそう言い、帰っていった。

工房での撮影を終え、スタッフたちが帰っていく。
部屋を出たあと、ガラス戸越しに睨む俊介に、明之は戸をトンと叩く。
俊介、怖い。(笑)何かやってくれそう。ワクワク。(笑)

明之は梓が並べたガラスの猫の置物に気付く。
「新作?この前来たときなかったけど。」
「うん。喜怒哀楽の猫。」
「へー。可愛いね。
 これが喜で、こっちが怒?
 これが哀で、楽?違う?」
「見た人がそう思ったのが正解。」
「ああ。人の数だけ正解があるんだ。」
「そう。恋とおんなじ。
 別名、恋する猫。
 これね、4匹そろって一人なの。」
「一人?」
「私の分身。
 持って帰る?」
梓の言葉に焦る明之。
「冗談です!
 そういえばさ、了から何か言ってきた?あの写真のこと。」
「いや。君のところには?」
「ううん。
 やっぱりちょっとした悪戯だったんだ。
 了は揺すりとかする人じゃないから。」
「へー。そういうところは信じてるんだ。」
「・・・ね、お昼食べにいこ。」
梓はそう言い、明之と腕を組み、明之の顔を見上げる。

「彼女は、猫が気まぐれに膝の上に乗ってくるように
 僕の腕をとった。
 そしてちょっと動揺する男を見透かすように言う。」


「普通に仲良ければ腕ぐらい組まない?」

そこへ、了がやって来た。
「マジでそういうことだったわけ?」
「そういうこと!」梓が言う。
「話がしたいんだけど。二人で。」
「ごめん。大丈夫だから。」梓が明之に言う。
「そう?じゃあ。」明之は二人を工房に残し出ていった。

「話ってなに?」
「どういうつもりなんだよ。
 何であいつがしょっちゅうここに来てるわけ!?」
「何であなたにそんなこと言われなきゃならないの?
 私はもうあなたの恋人じゃないんですけど。
 話ってそれ?
 じゃあ終わったから帰って。」
梓が工房のドアを開ける。
「式場の金。」
「明之さんが振り込んでくれたから、彼に返してくれる?」
「明之さん、ねえ・・・。」
「あ、でも私どうせ又会うから預かっておこうか?」
「いいです!」
了はそう言うと怒って帰っていった。
一人になったときの梓の表情。
笑っているような、泣いているような・・・。
二人とも、梓の手の上で転がされているような感じですね。


「あんたどういうつもり!?
 なんであんたがアズの所に来るわけ?」
車の前にいた明之に了がつっかかる。
「何でお前にそんなこと言われなきゃならないの?」
「二人してセリフまで同じかよ!
 これ。一回目の返済。次からは銀行振り込みにします。」
「是非そう願いたいね。」
「写真、てっきり慌てて連絡してくると思ってた。
 楽しみにしてるんだけどなー。
 あんたにいくらで買ってもらえるか。」
「ほーら。どこが揺すりなんかしない人だよ。」
「女房持ちとしてはヤバイよねー。」
「・・・ガキ。
 ハグぐらいでいちいち騒ぐなよ。
 男に騙されて捨てられて落ち込んで。
 それでも必死に前向いて行こうとしている健気な子をさ、
 がんばれよって抱きしめるぐらいするだろう。
 それをその原因作った最低の男にグダグダ言われたくないもんだね。」
明之はそう言うとフォルクスワーゲンのオープンカーに乗り込み車を走らせた。
「言ってくれるじゃなーい。」了が微笑む。

「で・・・どんな写真だった?どんな・・・。」
バックミラーにバイクに乗った了の姿を見つけ明之の表情が変わる。
了はあっという間に明之の車に並ぶ。
明之は負けじとアクセルを踏み込み引き離し、ヘヘっと笑う。
了もアクセル前回。了とぴったり並んで走る。
明之が了を見ると、了はマスクを開けサインを送ったあと、あっという間に
追い越していった。
「悪魔・・・
 悪魔が笑いながら、僕の横を走りすぎていった。」


朝方。
友はうなされている明之を心配して起こす。
「違うって!」明之が飛び起きる。
「アキちゃん!」
「どうした!?」
「どうしたじゃないわよ。大丈夫?すごく唸ってたよ。」
「・・・怖い夢見ちゃった。水飲んでくる。」明之はそう言い寝室から出ていく。
「何が"違う"の・・・。」友が呟いた。

「おかしいって・・・。
 どこでどう何が狂っちゃったんだ。
 俺なんかヤバイ?ヤバくないよね?」


冷蔵庫に貼られたカレンダーが落ち、拾い上げた時、
明之は11月3日に『友's BIRTHDAY』と印が付いていることに気付いた。

寝室に戻った明之。
大丈夫?と気遣う友に、
「あーーあ。そういえば・・・
 誕生日のメニュー何がいい?」
友が嬉しそうに微笑む。
「去年和食だったよね。
 今年はねー・・・イタリアンがいい。」
「了解!お休み。」明之が優しく友の頬に触れる。
「お休み。」
いつものように友を背中から優しく包み込むように抱く明之。
でも、二人の表情には戸惑いや不安の影が現れていました。


朝。
パジャマ姿にジャケットを羽織り、郵便物を取りに出る明之。
その中に、住所のかかれてない明之宛の手紙。梓からだ。
「ほらー。こんなこともあるから。」
その手紙を胸ポケットにしまおうとする。
その時「Good morning!」と突然声をかけられ、明之は慌てて郵便物を持つ手を
背中に隠す。
俊介と姉の玲子(羽田美智子)だ。
「何、どうしたの?」ジョギング中の二人に驚く明之。
「実家に帰るための、体力づくり。」玲子が言う。
「まだ帰ってないの?」
「まだホテル。でもね、だんだん近くのホテルに移ってきてるんだ。」
「めんどくさいやつだろー。」と俊介。
「で優しい弟として付き合ってやってんだ。」
明之はそう言った時、郵便物を持ってた手を振り上げてしまう。
俊介の前に郵便物が落ちる。それを拾い上げる俊介。
「じゃあね。健康姉弟!」
明之は慌ててそれを奪い取り、家の中へと入っていった。

「浮気の兆候その1。
 妻よりも早く郵便物を取ろうとする夫。」
弁護士の玲子が言う。
「そうなの?」
「行こう!」
そう言い走り出す玲子。俊介は友永家を暫く見つめていた。

家に入ると、友がコーヒーを入れていてくれた。
郵便物を隠しながら平静を装う明之。
友は今日は代休を取り病院に行くと言う。
「アキちゃんもたまにはスパっと休めばいいのにー。」
「それがなかなかねー。」
手紙をポケットに隠し、新聞を広げる明之。
「疲れが溜まってるからうなされたりするんじゃない?」
「あ、そうかも。」
明之はコーヒーを飲みながら妻の顔色を伺う。
「そういえば昨日ね、会社に了君がきた。」
「何しに?」動揺を隠して明之が聞く。
「社員旅行の相談。」
「へー。」
「アキちゃん元気かって何か気にしてたなー。」
「そう。いきなり何だろうね。
 ん?でも何で友の会社知ってるの?」
「あぁ・・・偶然みたい。
 飛び込みで入ってきたら私がいてびっくりしてた。」
「へー。そう。」
「アイツ調べたんだ。絶対調べたんだ!
 悪魔は友の会社ぐらい簡単に調べちゃうんだ!」

「・・・で、他に何か言ってた?」
「ううん。元気かって聞かれただけ。どうして?」
「いや・・・
 いやあいつさ、何か十文字さんとよりを戻したいみたいで。
 だから何とか言ってたかなーって。」
「十文字さんって、梓さんと?」
「ほんとに何考えてんだかねー。
 友は今日も固ゆで?」ゆで卵の固さを確認する明之。
「・・・」

友は、了を略奪していった寺尾舞子(サエコ)と偶然病院で会った時の
ことを思い出していた。
「もしかして・・・赤ちゃん?了君の。」
「・・・ええ。」
「だから了君あなたのことを・・・。」
「・・・了ちゃんまだ知らないんです。
 何かそれが元で戻ってこられるのも嫌だし。
 だからもうちょっと落ち着いてから話そうかなーって思って。
 だから了ちゃんに言ったりしないで下さいね。誰にも・・・。」

「友、固ゆで?」
明之にもう一度聞かれ、友は「うん」と返事した。

梓の工房を訪ねていく了。
「今日はアニキ来てないんだー。」
了を無視する梓。
「何でアイツなわけ?アイツに何望んでるわけ?」
「だからあなたには関係ないでしょ!」
「そうだねー。もう恋人じゃないもんねー。
 でもアイツの弟だから。」
「今度はお兄さんの心配?」
「その逆。あいつに何望んでもムダだよ。
 だからもう会うな!」
梓は了を無視して工房に入ってしまう。
「アズ!アズ! 
 あいつにお前は守れない。
 アズ、聞いてんのか?」
了が工房の戸を叩くと、中からアシスタントの中園友乃(滑川純子)が
戸を開け、バケツの水を了に向かってまいた。
「あんたねー!梓があんたのせいでどんだけ傷ついたと思ってんのよ!
 この女ったらし!!
 これ以上そこに突っ立って騒いでたら、真っ赤に溶けた1200度のガラス
 その顔に押し付けるよーっ!!」
友乃はそう言いバケツを了に投げつけた。
「あいっかわらず凶暴だな・・・。」
了は足元に転がったバケツをそっと壁際に置き立ち去った。

「今度来たらマジで1200!」と呟きながら仕事に戻る友乃。
梓は悲しそうな顔で作業を続けた。

友は元・同僚の飯田真澄(猫背椿)を呼び出した。
真澄に病院の結果を聞かれ、
「それがさ、大丈夫だった。
 前の病院ではね、あなたは妊娠は無理ですって言われたんだけど、
 まぁこれで1勝1敗?
 だからもう1軒別のところに行ってみようと思ってる。」
「じゃあ希望持てるんだ!良かったじゃん。」
「うん・・・でもさぁ、あんまり子供子供って言うのって、
 男の人にとってはプレッシャーだったりするのかな。」
「ダンナに何か言われたの?
 僕は要らない、とか?」
「ううん。でもアキちゃんの家庭複雑だし、
 もしかしたら、子供に対する思いとかって何かあるのかな。」
「またそうやってあんたは!
 相手の気持ちを第一に考えるのもいいけど、
 あんたダンナの母親じゃなくて妻なんだよ。
 一度思いっきりダンナに甘えてみな。
 あんまり可愛げないと、甘え上手な女にダンナかっさわれるよ。」
「やだー。変なこと言わないでよ。」
「え?心当たりあるの?甘え上手女!?」
「・・・ないわよ、そんなの。」
知り合いの韓国人男性に声をかけられ、韓国語で返事をする真澄。
「ごめん。仕事だから先行くね。」
韓国語で会話を続ける真澄の姿を笑顔で見つめる友は、どこか寂しそうだった。
本当は友だって、真澄と同じポジションだったのに。
主婦、という立場が異動につながったこともあり、
子供も授からないこともあり。
いつも明るい友にも抱えているものは大きいようですね。


「書店の評判も良く、出だし好調でございます。」
明之が装丁した本『恋ひらり』が仕上がり、担当の俊介が持ってきた。
「それは何よりでございます。
 イラストレーターのミカちゃんにも送ってくれた?」
「抜かりございません。
 そしてこれが、次のお仕事です。」
『ゆすらうめ』と書かれた原稿を渡す俊介。
「今度のはドロッドロの不倫物。
 これを切なさというオブラードに包む感じで。
 尚且つドロドロを垣間見せつつ。よろしくね。」
「言うのは簡単ですよねー。」
「言うのが仕事ですから。
 でもまぁ友永明之は言わなくてもちゃんとやってくれる人ですけどね。
 でも私生活までやんなよ。」
「あぁ?」
「十文字梓。」
「今朝の手紙はさ、」
「わざわざ家まで来てこっそり入れたわけだよね。彼女。」
「単に、ガラスのことでのお礼の手紙!」
「女はそうやってじわじわと距離を縮めてくる。
 そうやってさりげなく男の日常に自分の匂いを残していくんだよ。」
「お前何かあった?」
「これに書いてある。」原稿を指差す俊介。二人が笑う。
「いやもしかしたら彼女、まだ了君に未練あるんじゃないか?
 自分を捨てた男をもう一度振り向かせる為にわざと、男の兄に近づいた。」
「ああ。」
「さあ、嫉妬しなさい!
 逃がした熱帯魚は美しかったと後悔しなさい!
 そして戻って、いらっしゃーい。(桂三枝風)
 その為になら、私はこの美しさをどうとでも使うわ。
 魔性の女・・・梓。」
明之の背後から首を抱え込む俊介。
「お前ねー。」
明之の携帯が鳴り、俊介は明之を解放する。

電話は、梓からだった。
「十文字です。手紙、読んでもらえました?」
「はい。」
「あ・・仕事中ですか?」
「ええええ。そう・・ですね。」
「あーもう!だから嫌いなの!」
「え?」
「ああ、そうじゃなくって、私電話苦手で上手くしゃべれないっていうか、
 だから、本当は、切りたいの。」
「じゃあ・・・切りましょうか?」

その頃、友は天神様にお参りをしていた。
お参りを済ませ、境内の階段に差し掛かると、梓が電話で話す姿に気づく。
「ええ、もう切ります。
 でもね2つだけ。
 ・・・いいえ。
 一つは、手紙に書いておいたアドレスにメールを貰えると嬉しいです。」
「検討してみます。」電話の向こうで明之が言う。
「もう一つは・・・声が聞けてよかったです。」
梓がそう言い振り返った時、そこに友がいることに驚く。
友は会釈をし、通り過ぎていく。
「じゃあ、もう切りますね。」

電話を切ったあと、梓は友に声をかけた。
「友永さん!」
「ごめんなさい。電話の邪魔しちゃった?」
「いえ全然。もう仕事に戻るところでしたから。」
「工房?」
「ええ。」
「あ、ねえ。見させてもらってもいいかな?」

切れた電話を見つめる明之。俊介の声に我に返る。
「明之、聞いた?拓巳君の左腕のアザの原因。」
明之のアシスタント・藤沢拓巳(北条隆博)が止めるのを聞かずに
俊介が続ける。
「彼女に浮気バレたんだって。」
「浮気じゃないんですよ。ただ内緒で合コンに行っただけなのに!」
「なかなかアクティブな彼女だねー。」
「お陰さまで・・・。」
「お大事にー。」
「友ちゃんもやるときはやると思うよ。」俊介は明之の耳元にささやいた。

ガラス工房。
友は燃えるガラスの赤い色、だんだん変化していくガラスの美しさ、そして
作業する梓の美しさに見とれていた。

「すごい!なんか、感動しちゃった。」
「やってみます?」
「私?やりたいけど、出来る?」
「大丈夫。ちゃんと教えますから。」

炉の中にガラスをいれ、パイプをクルクルと回す。
友は楽しそうにガラス作りに没頭した。

明之は梓の作品の写真を見つめたあと、梓からの手紙を
カバンから取り出す。

『私のガラスを使ってくれてありがとう。
 本当に心から嬉しかったです。
 Azusa』

携帯を取ろうと顔を上げた時、妻の写真と目が合った。
少しためらったあと、明之はメールを打ち始める。

「たとえ魔性だろうが何だろうが、彼女の作品を気に入っていることに
 変わりはないわけで・・・。」


『写真、いい感じに仕上がりました。
 素敵なガラスに感謝です。』

メール送信。
手紙を引き出しにしまうと、受信を知らせる着信音。梓からだ。
「早っ!」

『わ〜い!(^O^)これで明之くんとメル友だあ黒ハート

それを見つめ、明之は微笑んだ。

事務所のインターフォンが鳴る。ドアを開けると、
「届いた?メール。」なんと、梓だった!
「びっくりした・・・」

「へー。こんなにたくさん撮ってたんだ。
 どれ使うかはまだ決まってないの?」
「うん。パソコンに取り込んでいろいろ試してからね。」
「ふーん。本の表紙かぁ。どんなのになるんだろう。
 すごい楽しみ!」
「じゃあ、そろそろ、いいかな?
 仕事残ってるから。」
「・・・何なのかな。私、友永さんに何望んでるんだろう。
 了に言われたの。もうお兄さんに会うなって。
 だけど私は会いたいから会いに来た。
 そしたらちゃんといてくれた。」
「満足?」
「うん。そっか。それでいいのか!」
「そんなに嫉妬させたいの?」
「え?」
「あいつを嫉妬させて苦しめたい?
 それとも、もう一度振り向かせたいの?」
「・・・バレてた?」
「ビンゴかよ。」
「半分は当たり。でも、半分は、」
「ちょっと待った!
 もう半分は本気だっただなんて言わないでね。」
「・・・」
「一番悪いのは、俺の弟です。 
 生憎俺はあいつのことを弟だなんて思ってない。
 だから、あいつのことで俺が責任を感じたり、
 ましてや被害をこうむったり、もうこれ以上はごめん、」
そう言いかけて、梓の悲しげな表情に気付く。
「・・・ごめんなさい。
 半分は、本当にごめんなさい。
 だけどあとの半分は、あなたがいてくれたから・・・
 だから私、大丈夫だった。
 ・・・ありがとうございました。」
梓はそう言い微笑みを見せ、帰っていった。

了の勤める美容室。
控え室で具合悪そうなしている舞子を気遣う了。
舞子が大丈夫というので、仕事に戻ろうとする。
「了ちゃん。
 もう梓さんとは会ってないよね。」
「ああ。会うわけないじゃん。」
「会わないでね。あとお姉さんにも。」
「え?」
「お兄さんの奥さん。
 あのきれいな人とももう会わないで。」
「どうしたんだよ。何かあった?」
「何か嫌なの!」
舞子はそう言うと仕事に戻っていった。

明之は寝室に置かれたガラスの猫の置物に驚く。
「何でいるの?」
「ね、かわいいでしょう?梓さんのところで買ったんだー。」
「え?行ったの?」
「聞いてない。」
「ガラス作るところ見せてもらっちゃった。」
「へー。」
「さっき会った時何で言わない。」
「ねー、梓さんてさー、華奢なのにパワフルよねー。
 先に寝るね。お休み!」
「おやすみ。」

「そう。パワフルで怖くて、寂しいネコなんだ・・・。」

「そして、友の誕生日がやってきた。」

友永家に集まる俊介と玲子。
「そっか。ついに玲子は家に帰ったか。」
「そ。夕べの我が家は大騒ぎだよ。 
 おふくろは泣くし、親父は別の部屋に入って出てこないし。」
「でもどうせ法廷でしゃべるみたいに淡々と離婚への経緯を語ったりしたんだろ?」
「だけどさ、あの母親が!
 あんたは何で平気な顔して、人事みたいに話せるの!
 あんたには母親の心がないのか!って、
 うるっさいうるさい!」と玲子。
「そしたらもうこいつもダメ。
 ないわけないじゃない!辛すぎるから心に蓋してんのにって、
 エディーエディーって、大泣き!」と俊介。
「エディーって息子ね。」と玲子。

インターフォンが鳴り、明之がインターフォンを取る。
「はい。・・・え!?」
「もしかして梓さん?」と友。
「お前、彼女呼んだの?」俊介が聞く。
「ううん。」激しく首を横に振る明之。
「私が呼んだの。」友が答えた。

テーブルに喜怒哀楽のネコを並べながら感激する友。
「4匹そろって嬉しい!ねぇ!?」
妻に言われ、明之は梓の言葉を思い出す。
「これね、4匹揃って一人なの。
 私の分身。持ってかえる?」
「別に、怖い会話じゃないよな。
 考えすぎだよな!?」

「そろそろ次のワインに行こっか。」
明之が言うと、梓はとっておきのワインを持ってくると笑顔で言う。
その時、またインターフォンが鳴った。
「はい。どちら様ですか?・・・え!?」梓が驚く。

「おめでとうございます。お姉さん!」
了が友に花束を差し出す。
「ありがとう。」
二人に鋭い視線を送る明之。
「え!?もしかしてもう帰れってこと?」
「わかってるんだったらそうしてくれる?」
そこへ、梓もやって来た。
「・・・来てたんだ。」
「うん。」
「じゃ、俺もお邪魔しまーす。」了が靴を脱ぎあがりこむ。

「アニキとお姉さんには、いろいろご迷惑をかけて、すいませんでした!」
了が土下座して謝る。
「そんな。頭上げてよー。」と友。
「あの・・・僕ここにいてもいいですか?」
了が俊行と玲子に聞く。
「まぁ・・・俺たちはね。」
「うん。なんか、面白そうだし。」
「良かったー!ほら、きっと俺ってすっごい悪者じゃないですかー。
 だからダメって言われたらどうしようかってドキドキしちゃった。
 ・・・あれ?電話番号の交換かなんか?」
了は携帯をいじっていた玲子に聞く。
「うん。アドレスとね。今度私、梓ちゃんにガラス習おうかと思って。
 友ちゃん、一緒にいかない?」
「わぁ、習いたい!じゃあ私も。」友も携帯を取り出す。
「じゃあ俺も!アニキに教えてもーらおうっと。」
「え!?」
「いいじゃん。お金の返済のこととかあるし。
 あ、これでしょ?借りまーす。」
「おいおい。人の電話勝手に、」
「いいでしょ。借りまーす。」
了は明之の携帯と自分の携帯のアドレスを交換させる。
「じゃあ、試験送信ー。」了が携帯を操作する。
「なんか嫌な予感がする・・・。」
梓の表情もこわばっている。
明之の携帯にメールが届く。画像が添付されている。
「何の写真?」友が携帯を覗き込む。
恐る恐るファイルを開いてみると・・・
カウンターに座った友が驚いた表情で映る写真だった。
「可愛いじゃん!」と俊介。
「アニキ見たことないと思ってプレゼント。
 お姉さんにも送ってあげるから、アドレス教えてー。」
「いいわよ。いらないわよー。」
「いいじゃん。」
了は友の携帯を操作し、アドレス交換する。
「突然撮られたから変な顔してる。」とスネる友。
「送れたかどうかちょっと確認してみて。」了が友に携帯を返す。
友が文句を言いながら届いたメールの添付ファイルを開けると・・・
「何これ。誰か抱き合って・・る!?」
「なに!?」妻の携帯を覗き込む明之。
それは、明之と梓が抱き合っている時の写真だった。
距離が離れていたため、はっきり誰だとは確認出来ない。
「これなら大丈夫だ。」明之はほっとする。
「心霊写真!?」と玲子。「何だこれ?」と俊介。
「え?俺なんか今変なの送った?」了がとぼける。
「こいつ・・・。」
「あ、ごめんごめん、間違っちゃった。
 あ、ほら。
 アズがガラスのデザインの参考にするんで参考にする写真撮ったじゃーん。
 手伝いに来ていた男の子と、アズの抱擁。」
「あ、あの時の。」梓があわせる。友が携帯を奪い返し、その写真を見つめる。
「ねぇ。もしかしてそこのお二人さん、ヨリを戻したの?」と玲子。
「よしなさいって。」と俊之。
「はい。」了が返事する。
「俺はそうしたいんですけどね、アズはどう?
 考えてくれた?」

「バカヤロー!!
 お前、どこまで無神経なんだよ。
 お前、自分がやってること、わかってんのかよ!!」
「なんでそんな興奮すんだよ。
 俺とアズが元に戻るのが、気に入らないわけ?」
「おう、気に入らないねー。 
 お前のその、いい加減にあき持ちが気に入らないんだよ。 」
「いい加減!?俺の気持ちははっきりしてるよ!」
「自分がつけた傷口に、またナイフ突きつけるの!?
 それがお前の気持ちか!?」
にらみ合う了と明之。
「あの・・・今日、友さんの誕生日。」と梓。
「だよね。今日友ちゃんの誕生日なんだよ。
 お前が変なこと言うからだよ。」俊介が玲子に言う。
「いやいやいや、俺がいけなかったんで・・・消えまーす。」
了はそう言い、友永家を出ていく。。

「仕切りなおしということで、な。」と俊介。
「・・・そうねー。忘れよう!」
明之と俊介が料理を並べ始める。
その時、友が玄関を飛び出していった。

「了君!梓さんとはもう会わないで。」
「俺はまだ諦めてないけど。」
「ダメよ。舞子さん妊娠しているの。」
「冗談だろ。」
「本当。」
「どういうこと、それ。」了が友の腕を掴み問い詰める。
その姿を明之が見つめる。
「彼女に黙っていてくれって言われたけど、
 けどこんなことになったら・・・。
 ねぇ、彼女とちゃんと話して。」
友が了の腕を掴みながら訴える。明之の顔色が変わる。
「相変わらずだね。いつも正しいお姉さん。」
「これって俺、出ていく場面?
 だよね。」


「お前達、何やってんだよ!」
「アキちゃん!」
「この写真あなたとアズだってバラしますよ。」
「そうだったのぉ!?酷い!」

そういう展開を想像してみる明之。
「足が・・・動かない・・・。」
了と友の会話が聞こえない明之には、髪や体にふれあいながら
話す二人が怪しく見えて仕方がなかったが、声をかけることが
出来なかった。

「心に石ころを残したまま、宴は終わった・・・。」

「了のせいで、なんかゴタゴタしちゃってごめんね。」
洗い物をしながら明之が梓に言う。
「ううん。」
「了と会うの、今日で、3回目?だよね、確か。」
「うん。」
「・・・やっぱりダメだ、気になっちゃって。」
「ん?」
「了のこと追いかけていったでしょ?夕方。
 あれってどう考えても3回目の会話じゃないよね。」
「・・・お皿を放してくれる?」
「今までも会ってたんだ、了と。俺の知らないところで。
 俺があいつと付き合いたくないことわかってて、何で?」
「だって家族じゃない。」
「家族なんかじゃない!」
「家族よ。」
「だったら、何で会ってること言ってくれないの?
 なんで嘘つくの?何で、」
その時、玄関のインターフォンが鳴る。
ご近所さんが持ってきてくれたおすそ分けに、夫婦はケンカを中断して
笑顔で応対。

「・・・すっごい裏切られた気分。」
「何それ!
 私はアキちゃんに、家族と仲良くしてもらいたい、と思って。」
「だから、自分がみんなと同じだと思わないで。
 家族家族って、友は家族を早くに家族を亡くして寂しいのはわかるけど、
 それを俺に押し付けるのは止めてくれないかなー。」
「じゃあ何で私と結婚したの!?
 私も家族よね。
 あーそうですか。そんなに家族が嫌ですか!
 だからだ。だからなんだ!
 だから不妊検査の結果だって聞こうとしないんでしょう!?
 ほんとはアキちゃん、子供なんか欲しくないのよね。 
 だったら何でそう言ってくれないのよ。
 私一人バカみたい!!」

「友・・・。何度でも謝るから、ほんっとにごめんー!
 だからトイレは止めようよー。もう1時間も経ってるんだけどー。」
友がトイレから出てきた。
「良かったー。」慌ててトイレに入ろうとする明之。
だが友が携帯の写真を明之に向けて言う。
「これアキちゃんでしょう?」
「1時間ずっとこれ見てたの?」
「最初に見たときからわかってたわよ。
 私が誕生日にプレゼントした服だもん、これ。」
「・・・」
「トイレどうぞ。」
「出てきたら話すから。」
慌ててトイレに入る明之。
だが、玄関の戸の音に慌ててトイレから飛び出し、友を追う。
「友!友!」
名前を呼びながら追いかけるが、服が引っかかり戸惑う間に、友は暗闇の中に
消えていった。

「友永さん!」
振り返ると、そこに梓がいた。
「どうしても言いたくって。」
「え!?」

友はコンビニから出てきた人とぶつかる。
「ごめんなさい。」
友がぶつかった相手は、俊介だった。
「あ、友ちゃん。どうした?」
友の瞳から涙がこぼれた。

梓が明之に言う。
「わかっちゃったの。
 あなたのこと、本当に・・・どうしようもなく好きなんだって・・・。
 好きです・・・。」

「追いかけなきゃ。
 友のこと、追い掛けなきゃ。早く行くんだ。明之!」



入り組んできましたねー!!

美しい男たちの戦いに、見ていてワクワク!
明之も了もどちらも魅力ありますね〜。
二人のファッションもそれぞれの個性が現れていて素敵です。

二人を手玉に取る梓の悪女っぷりがエスカレートすると嬉しいな。(笑)

友と了って、本当に姉弟なのでは!?義理の・・・。
了は友のことを最初からお姉さん、って呼んでいたのと、
友の、家族だもん、という言葉からそんな風に思いました。

ガラス工房のシーンが好きです。
子供の夏休みの宿題で、ガラス体験をしたことがあるんですが、
工房の中はすごく暑くて、大きな扇風機がいくつも回っていました。
色やデザインを決め、ほとんど作っていただくような体験ですが、
とても良い経験となりました。
今でもその作品、大切に使っています。

関係ないけど、友の名前って、上から読んでも下から読んでも友永友なんですね。(笑)


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Posted by tajima at 2005年11月04日 20:29
明之独演が、面白いですね。
男の本音が聞けるのは、楽しいです。
佐々木蔵さんは、これからどうかかわるのでしょう?友がぶつかり、玲子が戻って
さて、俊介にロマンスを期待!
Posted by mari at 2005年11月05日 03:23
mariさん、こんにちは。
明之の独演、面白い!
俊介はずっと友を好きだったような雰囲気ですよね。
そういう展開になるのか!?
俊介にロマンスを!(笑)
Posted by ちーず at 2005年11月06日 16:19
ガラス工房のシーン、私も好きです。
そしてそこで魅力的に見える梓の魔力の凄さを感じる私でもあります(笑)
もっと玲子に絡んできて欲しいなぁと思っているのですが、明之の離婚の相談をうけたりなんかするのでしょうか??
次回の展開も楽しみです。
Posted by lavish at 2005年11月08日 11:53
lavishさん、こんにちは!
コメントありがとうございます。
梓の職業がガラス職人とは、うまく考えたものですね。
本当に彼女の魅力、魔力を感じさせてくれます。
玲子に俊介、もっともっとストーリーに絡んできてほしいですね。

でもコメディータッチな分軽い気分で見ています。
Posted by ちーず at 2005年11月08日 12:02
>関係ないけど、友の名前って、上から読んでも下から読んでも友永友なんですね。(笑)

そうそう、これって俊介が明之と友の結婚式の司会で言ってましたよね(^_^)
Posted by あみ at 2005年11月08日 23:40
あみさん、こんばんは。
そういえば、言ってましたね!!
すっかり忘れていました。忘れっぽいなぁ。(笑)
Posted by ちーず at 2005年11月09日 21:12
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