2005年12月26日

恋の時間 第10話

『いちばん大切なもの』

雪枝(黒木瞳)への手紙を残し、姿を消した香里(大塚寧々)。
雪枝は届いた手紙の消印を頼りに、山田(宮迫博之)と共に香里を
探しに、祖母の故郷、鎌倉へ向かう。

鳥しんの車で鎌倉を目指す山田と雪枝。
「香里はずっと専業主婦だったの。
 芯は強いけど、子供の頃から、目立たない大人しい子で、
 真面目に家事だってちゃんとやっていたのよ。
 いいお母さんだったし。
 まさかね、こんなことするなんて・・・。」

観光協会で地図を貰い、ホテルに電話をかけ、そして訪ね歩く。「運命の人だと思ったんですかね。その彼のこと。
 うちの嫁もそうだったですもん。
 中学の同窓会で会って、そのあとすぐに、
 またどこかでばったり会ったらしいんです。
 僕、まさか嫁が恋するなんて、考えてもみなかったんですよね。
 いつからだろう。嫁を、女として見なくなったのは。
 けど、そうさせた僕にも、原因はあるんです。
 ほら、夫婦って、お互いの心を映す、鏡みたいなものでしょう?
 こっちが愛さなきゃ、向こうだって。」

「人の心って、難しいですよね。」山田が続ける。
「そうね。何でみんな人を好きになるんだろう。」
香里たちを探しながら、二人はそう考える。

砂浜に車を止め海を見つめながら、雪枝は山田に子供の頃ここで香里と
よく泳いだ、と懐かしそうに語る。
「大丈夫なんですか?仕事のほう。」
「もうダメかも。
 うちと長いこと仕事していた、アメリカの船会社との契約、
 全部持っていかれちゃった。大手の旅行代理店に。
 まさかね、そんなことがって思ったけど、
 最初からうちを潰す気でいたみたい。
 それに気付かなかった私もいけなかったんだけど、
 資金繰りだって、この先どうなるかわかんないし。
 はーあ。もう仕事なんて辞めちゃおうかな。
 仕事なんて放り出して、ぱーっと旅にでも出ちゃおうかな。」
「何言ってるんですか。そんなのダメです!
 冗談でも、そんなこと言っちゃダメです!
 雪枝さんが一番魅力的なのは、仕事しているときじゃないですか。」
「もうなんでみんなそう言うの?
 私だって、逃げ出したいって思うときはあるわ。
 自信がなくなるときだって。
 本当は今も泣きそうなの。
 一番逃げ出したいって思っているのは、私のほうかも。」
「泣き言は、雪枝さんらしくないです。
 神様は、その人が超えられる試練しか与えないって、
 言ったじゃないですか。」
「だけど、結婚もしないで、子供も作らないで、
 今まで築き上げてきた仕事が、一瞬のうちに消えてしまって。
 私、一体今まで、何の為に一生懸命生きて・・・」
こらえきれず泣き出す雪枝。
「雪枝さんなら、きっと、乗り越えられますよ。
 大丈夫です!」
「自信ない。自信ないわよ。」
「だったら僕が!
 僕が一緒に乗り越えちゃ、ダメですか?
 こんな僕じゃ、迷惑かもしれないけど、
 一緒に乗り越えます!
 だから、」
「何言ってんの?冗談言わないでよ。」
「本気です、俺!
 俺もう、何も失うもんないですもん。
 俺も一から、いや、ゼロからやり直したいんです。
 多分、そのために、俺、雪枝さんと出会ったんだと思う。
 いや、多分じゃなく、絶対に。」

同じ頃、香里は耕平(大森南朋)と海辺のペンションにいた。
部屋の窓から夕日を見つめる二人。
「一緒に暮らすこと、出来ないいかな。
 もちろん、これから大変なことも沢山あると思うけど。」
「どうして、どうして私なの?
 だって、私には。」
「どうしてなのか、自分にも、わからないんだ。
 だけど、初めて会った時から、一緒にいるだけで、穏やかな気持ちになれた。
 何も話さなくても、分かり合える気がした。」
二人は見つめあい、そしてそっと手をつないだ。
「私も、同じことを思ってた。
 この何日か、生まれてから、こんなに幸せだって思ったこと、なかった。」

会社に出勤した雪枝は、社員達に説明する。
「アズサ銀行から最終通達があり、融資が降りないことが決まりました。
 残念ですが、今後、業務を縮小せざるをえなくなります。」
動揺するも、何があっても社長についていく、という社員達。
「私も、まだはっきりと何かを決めたわけじゃないの。
 ただ、お給料だって今までのように、払っていけなくなると思うし
 そのことでみんなに負担をかけるのは私も辛い。
 共倒れになったら、元も子もないし。
 年が明けたら、私の知り合いの代理店に、なるべくいい条件で働けるよう
 みんなのこと頼んでみるつもりよ。
 なので、就職活動はしても構いません。
 新しい勤務先のことで私にお役に立てることがあれば、何でも言ってね。
 もちろん、就活の間ここに籍を置いても構いません。
 とにかくみんなが、ちゃんと、自立できるように、
 私も、責任を持って、頑張るつもりです。
 ほんとに、力及ばず、申し訳ありません。」
雪枝はそう言い、社員達に頭を下げた。

雪枝は実家のモモ相手に、ここへ帰ってこようかな、と独り言。
雪枝に気付き房子(八千草薫)が庭の戸を開けた。

「あの人なんでしょう?香里の、その人。
 公園で、あの朝、私を助けてくれた。
 私が、変なきっかけを作ってしまったのかもしれない。」

房子の言葉を気にする雪枝。
仕事で落ち込んでいたこともあり、久しぶりに実家に泊まることにする。

「雪枝の生まれた日もちょうどこんな寒い夜だったわ。
 生まれた翌朝、大雪でね。
 病院の窓から見た、木の枝に積もった雪が、
 まるでお花みたいにきれいに見えて、
 それで、雪枝。」
二人が笑う。
「子供の頃から何度聞かされたと思ってんのー?
 香里は、春の日に、匂い立つように咲いていた花を見て
 つけたんでしょ?」
「そう。
 なのに、雪枝はいつでも華やかで、
 香里は大人しくて、人の影に隠れているような子で。
 何だか、逆みたいな名前付けちゃったってずっと思ってたんだけど、
 もしかしたら、咲かずに待っていたのが、香里だったのかもしれないわね。
 よっぽどの想いがあったんでしょうね。
 そうでなければ、家を出るなんてこと、あの子がするはずないもの。
 ・・・雪枝、実はね、お母さん、考えていることがあるの。
 いずれこの家を出て、ここに移りたいの。
 ここなら、あなた達に世話をかける必要も無いしね。」
そう言い、介護ケアホームのパンフレットを見せる房子。
「やめてよ、そんな寂しいこと!
 香里はきっと戻ってくるって。 
 少し考える時間が欲しいって言ってたんだもの。
 絶対帰ってくる!
 そしたら昔みたいに、みんなでここに、住んだらいいじゃない。
 香里とお母さんと。私だって戻ってきたっていいんだから。ね?」
「雪枝。私にも、私の人生があるのよ。
 とてもいい所なのよ。鎌倉の家のすぐ近くで、私が生まれ育った所。
 そこへ、帰りたいの、母さん・・・。」

そこへ、勇一(山口馬木也)が訪ねてきた。
「香里がいない?
 どこへ行ったんですか。あの男と一緒ですか。」
「それはわからないわ。本当にごめんなさい。
 でもね勇一さん。
 私は、香里ともう一度だけ、話し合ってほしいと思ってる。
 あの子が帰ってきたら。」
「これ以上何を話すんですか?
 僕がどれだけ香里に迷惑を掛けられたか。嫌な思いをしたか!
 お姉さんにわかりますか?
 あいつは、母として、妻としての役割を放棄したんです。
 そして僕を裏切った。
 そんな人間をどうして許すことが出来るんですか!」
「10年以上連れ添った夫婦でも?子供たちがいても?
 もちろん香里が悪いのは私だってわかってる。
 でも、あの子はあの子なりに、最後まであなたを裏切っちゃいけないって、
 あの人に会うのをやめようとしていたの。
 ねえ、夫婦って、たった一回の過ちで、
 そんな簡単に壊れるようなものなの? 
 それに、香里とちゃんと向き合って話し合いしたこと、ある?」
離婚届を広げる勇一。
「香里に渡して下さい。」
「出来ません!
 たとえ、別れることになったとしても、これだけはあなたが渡して。
 これは夫婦の問題なんだから。」

その日の夜、香里から電話がかかってきた。
「お姉ちゃん。心配かけて、ごめんね。」
「今どこなの?どこにいるの!?」
「言えない。」
「何で!
 ・・・探してたのよ。
 鎌倉にも行ったわ。お母さんだって心配している。
 ね、会って話そうよ。」
「ごめんなさい。」
「今、一人なの?それとも、」
「一緒よ。彼と。」
「そう・・・。」

『人を好きになるということが、どういうことなのか。
 今でも、私にはよく判りません。
 でも、誰もが、きっと感じていることは、
 誰かを好きになろうとして、
 する恋なんてないということ。
 恋は気付いたら、落ちているもの。
 そして、それが本物の愛に変わるものかどうかは
 誰にもわからない。
 誰にもわからないのです。
 香里』


鎌倉の海で香里からの手紙を読む雪枝。
そこへ、香里がやって来た。
二人は喫茶店で話をする。

「お姉ちゃん、私、彼と暮らしたいの。」
「うん。
 家のことは?子供たちは?どうすんの?」
「離婚のことは、これから考える。
 子供たちのことも含めて、考える。
 彼もそうしていいって言ってくれているの。」
「私にはわからない。」
「私にも、わからない。
 でも、彼といると、私が自然に、ありのまんまの自分でいられる
 気がするの。
 勇一さんが私に求めていたのは、いい奥さんで、いいお母さんの私。
 私のこと、知ろうともしてくれなかった。
 本当に、心も身体も通じ合って、満たされた気持ちになったことが、
 なかった。
 そのことに気が付かなかったのは、そういう相手に、
 出会わなかったからだと思う。」
「お母さん言ってたよ。香里は遅咲きの花だって。
 よっぽどの想いがないと、家を飛び出したりしないって。
 わかった。香里の気持ちは、よくわかった。
 もう止めない。もう好きになさい。」
「お姉ちゃん・・・。」
「その代わり、どんなことがあっても、後悔しちゃダメよ。」
「後悔なら、もう散々した。
 嫌っていうほど、した。
 お姉ちゃん、これから先のこと考えると、
 本当は、すごく怖いの。
 子供たちのこと考えたら、苦しくてたまらない。
 だけど・・・だけど・・・」
「私が付いていてあげるから!
 私を誰だと思ってるの!」
「お姉ちゃん・・・。」
「良かったね!こんなに頼りになる姉がいて。」
「うん。」
「まさか、既婚者のあなたが恋をするなんて、あー驚いた!
 ほんとに驚いた。
 私なんかもうボロボロで、この先、どうしていいかわからないのに。
 もう恋なんてする、気力も無いのに。」
「お姉ちゃんはまだまだ素敵だし、きれいだし、
 きっと素敵な人が現れるよ。」
「そうかなー。」
「お姉ちゃんが一番、お姉ちゃんらしくいられる人。」
「私らしく。」
「そう。お姉ちゃんらしく。
 仕事もバリバリしながら、幸せでいられる相手。」
「香里にそんなこと言われるようじゃ、私もヤキが回ったわ。」
雪枝が笑った。
海岸を歩いてくる耕平の姿に、雪枝は気を利かせ、仕事があると席を立つ。

雪枝に会釈をする耕平。
雪枝は笑顔でそっと手を挙げ挨拶をし、帰っていった。

鳥しんに行き香里が見つかったことを山田に伝える雪枝。
「嫌なもの無理に一緒にいたって仕方がないでしょうし。
 子供たちは可哀想ですけど、でも、仲の悪い夫婦の板ばさみっていうのも
 もっと辛いでしょうし。
 僕も、母親が突然出ていっちゃって、それで、祖母に育てられたんですけど、
 それでもまぁこう普通に、
 普通じゃないか。僕変かな。
 やっぱ僕みたいに育っちゃうとマズいっすよね。」山田が笑う。
「そんなことないわ。
 だってこんないい人見たことないもの。
 きっと素敵なおばあちゃまだったんでしょうね。 
 山田さんをこんな風に育ててくれて。」
「雪枝さん。」
「で・・あの・・・この間の話なんだけども・・・
 乗り越えられる、というお話、一緒に。」
「ああ・・・。」
「山田さん本気だって。
 ・・・あ、あれはやっぱり、」
「いえ違うんです!違うんです!」
「違うの?」
「あ、今の違うっていうのはそういう違うではなくて・・・
 えーと、ようするに・・・
 本気です!」
「だったら・・・お食事しません?
 クリスマス、私と一緒に、お食事していただけますか?」
「・・・はい。・・・はい!喜んで!!」

サッカーの練習をする子供たち。
練習を終えたあと、駿と圭が香里の姿に気が付く。
圭、そして駿が香里に駆け寄る。
「ごめんね。ごめん。」
香里は泣きながら子供たちを抱きしめた。

雪枝の携帯に悟志からの着信。
「もう!さよならって言ったのに・・・。」
そう呟きながら電話に出る雪枝。

「あ、ごめん。俺だけど・・・
 実は、美保と結婚することにした。」
「よかったね!」雪枝はそう言い微笑む。
「あいつ、子供がいるんだ。」
「え!」
「俺、思ったよ。
 あいつを一生、大切にしなきゃいけないって。」
「うん。」
「ごめん。こんなこと君に話すようなことじゃないかもしれないけど、
 でも、どうしても君には。」
「うん。おめでと!パパ。」
「ああ。」
「さあもう行かなきゃ。切るね。」
「さーどうだろ。」
「君が一番君らしいのは、仕事しているときだからな!」
「なーんでみんなそう言うかなー。」
「違う?」
「当たり!
 ねー悟志。私あなたの前では、いい女ぶってたかもしれない。」
「だって雪枝は、いい女だよ。」
「悟志だけよ。そんなこと言ってくれるの。
 さ、がんばろ!じゃあね。」
悟志は電話を切り、晴れやかな笑顔で空を見上げた。

そして雪枝はおめかしして、待ち合わせ場所でメールを打つ。
『山田さん。今、ツリーの下に着きました。
 お待ちしています。
 今夜は豪華ディナー。お楽しみに。雪枝』

ライトアップされたツリーの下、山田を待つ雪枝。
だが山田はなかなか来なかった。

そこへ山田から電話が入る。
「もしもし、山田さん?どうしたの?
 もう事故にでもあったんじゃないかって心配しちゃったわ。」
「雪枝さん、すいません。
 今日、そちらへ行けなくなりました。
 娘から急に連絡があって、
 今年はサンタさん来ないの・・・って。
 ごめんなさい。一緒にクリスマス、過ごせなくなりました。 
 本当にごめんなさい。」
「・・・一番、勝てない相手とダブルブッキングしちゃったね。
 いいわ。私のところには先週来てくれたから、サンタさん。
 それに、クリスマスは子供たちの為にあるものだから。
 じゃ、メリークリスマス。」
寂しそうな雪枝・・・。

雪枝は家に帰らず、職場に立ち寄り、社員の広田に電話をする。
「会社ね、続けていけるかどうかわからないから、
 あなたに付いてきてだなんて言えないんだけど、
 私は一人になっても仕事をしていくつもりなの。
 強がりでもなんでもなく。
 だって私この仕事好きだし、
 この仕事をしている時が一番自分らしいと思えるから。
 うん。今オフィス。
 ごめんね、クリスマスだっていうのに、こんなことになっちゃって。
 あ、デート中?違うの?ダメじゃん。
 そんなことしているとすぐ40!
 でもこれはこれで悪くないかもね。
 一人でいるとさ、時々すごく、頑張って生きてんなって思うときがある。
 私って一生懸命やってるじゃないって、自分を誉めてあげたくなる。
 一人でいて良かったなって思うのって、そういう時ぐらいかな。」

女同士電話で語ったあと、外に出て見ると雪が降っていた。

母が名づけの由来を語るのを思い出しながら歩く雪枝。
木の枝に積もった雪を見つめて呟く。
「やっぱり私、雪の花だったのかな。」

その足で鳥しんに寄る雪枝。
店内から聞こえてくる、客を追い出すマスターの声に少し迷ったあと
店の中へ。
店の中に客は誰もいなかった。
マスター(泉谷しげる)の冗談に付き合い、
「すみませんね。口が悪くって。」と空席に声をかけ席に付く雪枝。
「社長、俺を知ってるね。」マスターが笑う。

去年もその前のクリスマスも、雪枝はここで過ごしていたとマスター。
「ほんっとに好きなのは俺だろ?」
マスターのしつこい冗談に席を立つ雪枝。
「ちょちょちょちょ!ちょっと待って!
 何でも作るからさ。
 俺も寂しいんだよ。一緒にいて!」
「じゃ、つくねもね!」
雪枝が楽しそうに笑う。

=それから一年=
子供たちと海岸で過ごす香里。
そろそろ試合があるので帰る、という子供たちに、香里はお弁当や
セーター、マフラーの入った大きな袋を渡す。
「これから寒くなるでしょう。」
「うん、ありがとう。」
「お母さん、元気でいろよ。」
「何言ってんの。」
そう言い子供たちを抱きしめる香里。
「帰りの車の中で食べなさい。風邪引かないでね。」
「さよなら」「またね!」

車へと走っていく子供たちの背中に涙をこぼす香里。
そして、彼らに背を向け歩き出した。

寂しそうに家に戻る香里は、部屋の前で聞こえてくるピアノの音色に
幸せを感じる。
家に入ろうとすると、携帯がなる。房子からだ。
「今日何時ごろこっちに来られる?
 その時間に合わせて来るって。」
「誰が?」
「やーね。からかわないで。」
「からかってなんかないわよ。」
「健次郎さん、あなた達に会いたいんですって。
 一緒に食事に行きましょうって。」
「うん。わかった。1時ごろにはいけると思うけど。 
 うん、そう。聞こえる?
 最近、午前中に仕事するようになって。
 その方が、気持ちがいいんだって。
 そんな風に、変わったんだって。一緒に暮らすようになって。」

善福寺の実家に住む雪枝は慌しく出張の準備。
「ガスOK!電気OK!戸締りOK! 
 あーもう何でこんなとこに住むって言い出したんだ!
 パスポート!」

満員電車の中、雪枝はまた、山田の膝の上に座ってしまう。

二人が会うのは久しぶり。
山田は無事再就職をしていた。
「今日は出張で。
 俺、田舎帰って、地元の会社に。一人で頑張ってます。
 雪枝さんは?」
「私ツアコンやってんの。これからイタリア!
 ローマ、フィレンツェ、ベニス、8日間周遊の旅。
 さ、行かなきゃ。遅れちゃう。じゃあね!」
「はい。」
「あ、あの!
 あのってほどでもないけど、フケた?私。
 やだなー、こんな時に会っちゃって。」
「全然!前より、若返りました。相変わらずカッコいいです!」
「ありがと!
 お元気で。」

「はい。」
別々の方向に歩いていく二人。
雪枝も、そして山田も振り返る。
「あの!」山田が言う。
「俺、あの・・・待ってます!8日後の、クリスマスイブに、
 あのツリーの下で。
 去年はいけなかったけど、今年は絶対!」
「今度はすっぽかさないでよ。
 嫌よ私、そんなの。」
「すっぽかしません!絶対に!」
「本当に?」
「本当です!」
「わかった。じゃああね!」
はじけるような笑顔を見せ、雪枝は歩き出した。

=終り=


雪枝の恋、香里の恋。
どちらも、意外な展開で終わりました。

香里は、恋を選んだのですね。
もうあそこまでいってしまっては、引き返すのは無理。
子供たちを手放し、恋を選んだ。

一年後、車で子供たちをつれてきたのは夫の勇一でしょう。
あの勇一が、よく、香里と子供たちを会わせることを了解したな。
子供のため、というのが理由の全てなんでしょうが・・・。
ああやって、定期的に香里と子供たちは会っているのでしょうか。
子供たちの背中に涙する香里。
失ったものは大きいけれど、それでも、家の近所まで落ちこんだ様子で
歩き、耳に届くピアノの音色に感情が変わっていく様子が伝わってきました。
子供のことを思うと彼女の恋を応援できませんでしたが、
これも一つの恋なのかな。

そして雪枝さん!
クリスマスの約束をすっぽかされたあと、ずっと、進展なしですか!
こちらも意外でした。
雪枝の仕事のほうも色々あったようなので、バタバタしていて
会えないままだったのかな。
それでも最後の雪枝の元気な笑顔に、二人のハッピーエンドも見えたような
気がします。

名前に込められた親の願い。
親というのは子供を授かったその日から、その子の幸せを願い続けるもの。
香里は遅咲きの花、と例える房子さんに、親の愛の深さを感じました。

この公式HPでは、ロケ見学者を募ったり、プロデューサーとの座談会を
企画したり、画期的でしたね!
『どらまにあ』さんや『伊達でございます!』さんのレポに楽しませて
いただきました!
今回は時期的に忙しくて応募出来なかったので、またこのような機会を
作っていただけると嬉しいです。



=香里が雪枝に出した手紙=

「北見雪枝様へ 
 
 お姉ちゃんにこの手紙を書くかどうか、長い間悩んでいました。
 この手紙を読んだら、またすぐに電話がかかってきて、
 きっと怒られるのでしょうね。いつものように。
 私は子供の頃からずっと、お姉ちゃんのことがうらやましかった。
 お姉ちゃんのように、はっきり物が言えたら、
 自分の力で、自由に生きていけたら。
 私はいつも自分に言い聞かせていました。
 幸せの形は、人それぞれ。
 私の守るべきものは家庭で、それが私の幸せだと。
 今でも私は、夫や子供達を愛しています。多分。
 だけど今、自分の中の思いを、どうすることも出来ないのです。
 私には、好きな人がいます。夫以外に。
 覚えていますか?
 お母さんの古希のお祝いをしようと、お姉ちゃんが言い出したことを。
 あの頃から、私の"恋の時計"は、少しずつ動き始めていたのかもしれません。

 大切なものを失おうとしていることは、
 わかっていました。
 このまま先に進んでしまったら、
 今まで積み上げてきた私の平凡だけど、
 幸せな人生が、崩れ去ってしまうこと。
 幸せを感じるのがどんな時か、お姉ちゃんと話したことが
 ありましたよね。
 その時、咄嗟に答えが出なかったけれど、
 たとえば、夜中に子供達の寝顔を見ている時。
 私が作った食事を美味しいと、みんなが食べてくれた時。
 買ったばかりの家、その部屋中をピカピカに磨き上げた時。
 お休みの日、夕暮れ時に家族みんなで自転車を走らせている時。
 お日様に干した布団のにおいを、子供達とふざけながら嗅いでいる時。
 でも、あの頃一番幸せを感じた時間は、
 彼と散歩をしている時、
 朝の公園でした。

 罪悪感は、いつもありました。
 夫に・・・子供達に・・・何より自分に・・・。
 だけど一方で、日々の生活に、
 息が詰まるような閉塞感を感じていたのも確かでした。
 子供の頃、私がいつもピアノを弾いていたこと、
 お姉ちゃんは覚えていますか?
 あの頃私は、ピアニストになるのが夢でした。
 もちろんそれは、子供心に描いた、幼い夢だったけれど、
 そんな夢を見ていたことさえ、私は忘れていたのです。
 彼と、出会うまでは・・・。

 あの頃、お姉ちゃんも恋をしていたことを
 私は知りませんでした。
 悟志さんは、お姉ちゃんにとって、かけがえのない大切な人で
 お姉ちゃんは、強い人だから
 過去は振り返らないし
 干渉に流されることはないと思っていたのです。
 だからこそ、お姉ちゃんは、
 いつも颯爽と生きているのだと。

 人を好きになるということが、どういうことなのか。
 今でも、私にはよく判りません。
 でも、誰もが、きっと感じていることは、
 誰かを好きになろうとして、
 する恋なんてないということ。
 恋は気付いたら、落ちているもの。
 そして、それが本物の愛に変わるものかどうかは
 誰にもわからない。
 誰にもわからないのです。
 香里」


=雪枝が香里に書いた手紙=

「香里様。
 あなたから、突然手紙を貰い、本当に驚いています。
 あなたが生まれたのは、私が小学校に上がった年のこと。
 それまで一人っ子だった私は、あなたの誕生が嬉しかったけれど、
 その時、ほんの少しあなたに嫉妬しました。
 それからずっと、小さな香里は、お父さんやお母さんみんなに守られ、
 生きてきました。
 結婚して、子供達が生まれて。
 あなたの周りは、いつもにぎやかで、愛する人がたくさんいた。
 いつかあなたに、結婚だけが女の幸せじゃないって
 言ったことがあったけど、
 あれは、半分ホントで、半分は嘘。
 私は、みんなに愛され暮らしているあなたが
 羨ましかったのかもしれません。
 誰かを好きになる気持ちは、誰にも止められるものでは
 ありません。
 だけど、私はあなたのお姉さんだから。
 そして、ずっと一人で生きてきた女だから、あなたに言いたいのです。
 今ならまだ、戻れるのよと。

 香里。
 もしかしたら私は、あなたのことを長い間、
 誤解していたのかもしれません。
 あなたは私よりずっと大人で、現実を見つめられる人で・・・。
 だからこそ、平穏な幸せを手に入れることが出来る女性なのだと
 思っていました。
 あなたが、母であり、妻であることは、ごく自然なことだと
 思っていたけど、
 それはただ、周りの私たちがそう思い込んでいただけ。
 あなたが人知れず悩んでいたことに気付こうともしなかった。
 何が正しくて、何が正しくないかなんて、誰にもわからない。
 だけど、一つだけ言えることは、
 あなたは今、たった一つの恋の為に、全てを失おうとしているということ。
 そのことを、わかってるんですか?
 本当に、わかっているんですか?

 お姉ちゃんは本当の恋をしたことがないと言ったあなたの言葉は、
 あれからずっと、小さな棘のように
 私の心に刺さっていました。
 あなたが言うように、私は本気で誰かを好きになったことが、
 ないのでしょうか。
 そんなことはない。
 心の中で打ち消し続けていたけれど、
 あなたのようには、純粋に人を愛せなかったのかもしれません。
 だけど、本当の恋って、何?
 私にはまだわからないのです。
 もしかしたら、一生わからないまま、
 時間だけが過ぎてしまうのかもしれません。
 このままずっと、わからないまま・・・。

 香里、あなたはあの時、彼と別れようとしていた。
 そして、家族を守ろうとしていた。
 
 なのに私は、まるで二十歳の女の子のように、
 ただ自分の衝動で、彼の元に走りました。
 なぜあんなことをしたのか、今でも良くわからない。
 いえ、本当はわかっていたのかもしれません。
 20年も付き合っていた人が、
 知り合ってたった1年の若い女の子と結婚してしまう。
 嫉妬、焦燥、そして、孤独。
 私は一人ぼっちになってしまう。
 今まで離れてはいたけれど、どこかで心の支えだった人。
 悟志がどこか遠くへ・・・。
 今度こそ、手の届かないところへ行ってしまうような気がして。

 あなたはあの時、確かに恋をしていた。
 だけど私はどうだったのか。
 それは、恋だったのか。
 私は一人になるのが怖かった。
 ただ、それだけだったのかもしれません。」


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この記事へのコメント
はじめまして。
昨日、「恋の時間」最終回をうっかり見逃してしまい、
どうなったのか気になって調べていたところ、こちらでチェック出来ました。
内容がとても詳しく載っていて、すごく嬉しかったです♪
また、おじゃまします!
Posted by ぷうた at 2005年12月26日 22:28
ちーずさん、こんばんは。お疲れ様でした!
納得のいく道を歩む二人が見れて、素敵な最終回でした。
巧く言えないけれど、最後の最後に“子供を大事に想う気持ち”が芯に描かれていた気がして、印象的でした。新しく授かった子供、好きな人の子供、手放さなくてはならなかった子供・・・。色々な思いがありましたね。
いい大人の雪枝と香里も、房子にとったらいつまでも子供・・・という描かれ方も、『いくつになっても、やさしく明るい未来に漕ぎ出せる』というメッセージのように感じました。
私事ですが、同じ二人姉妹って事や、ドラマ中に香里(主婦)から雪枝(仕事を持つ女性)の立場に変わったことから、思い出深い作品になりました。。。
Posted by あさつゆのしずく at 2005年12月26日 23:57
ちーずさん、はじめまして。
何度か見逃してしまうたびにこちらにお世話になりました。ありがとうございました!
正直、ちょっと尻すぼみの感がぬぐえない終わり方でしたね…。
既婚の仕事持ちとして、雪枝と香里の両方に感情移入しながら最初の数回は見ていましたが、最後まで谷本さんという人物像が見えず、香里がまったく勇一さんと向き合おうとしないのに、腹が立ってしまいました…。勇一さんも一方的で嫌な夫ですが、香里もいつも言葉を飲み込んでしまっては何も伝わらないじゃないか、そんなことでは谷本さんとも同じことを繰り返すよ、と、二人の将来に勝手ながら心配をしています。
ドラマのプロデューサーの描く主婦像がちょっと古臭すぎましたね。潜在的にもっと沢山の人が共感し得るドラマになりえたのに、と残念でなりません。でも、雪枝さんは綺麗でした…。
Posted by ぽっぷ at 2005年12月27日 01:01
ラストは意外な展開でしたね。
できれば、雪枝の幸せそうなウエディングシーンで終わって欲しかったのですが、願い叶わず…。
最初は香里に共感して観ていたのですが、最後は雪枝の方に感情が傾きました。
香里の生き方はどうしても共感できなかったです。。。何故、子供を捨ててまで一緒になりたいのか、彼にどんな魅力があるのか、そこを描ききれていない気がしました。。。
来春のドラマも楽しみですね。
ちーずさんのレビューを期待しています。。。
Posted by 京女。 at 2005年12月27日 02:36
こんにちは。なんだか落ち着いた終わり方でホッとしましたね。香里の穏やかな暮らしぶりや雪枝の生き生きした姿が彼女たちの選んだ人生が間違っていなかったような気がしてなんだかゆったりした気分にさせてくれました。
Posted by いわぴい at 2005年12月27日 07:05
ちーずさんこんにちは
私も意外なラストでした。
香里は、子供は捨てないと思ったんですけどね・・
結果的に恋を選びました。
子供と別れる時に流した涙が切なかったです。
でも、こういう選択もありなのかも
しれないですね。
雪枝は、時間がかかりましたが、山田と
うまくいきそうでよかったです^^
Posted by まりこ at 2005年12月27日 13:10
こんにちは。コメントありがとうございます!

ぷうたさん。
お役に立てて何よりです!
また遊びにいらして下さい。

あさつゆのしずくさん。
香里は子供たちを手放してしまったけれど、
それでもああやって会うことが出来るようになり
良かった。勇一さんもずいぶん譲ってくれたのだと思います。
働く女性、そして主婦業、お互いにがんばりましょう!

ぽっぷさん。
私も同じように感じました。
香里は勇一がわかってくれない、と言ったけれど、
はたして、わかってもらおうとする努力を香里はしたのか。
ドラマ内では描かれてなかったですよね。
勇一には言えない事を耕平には言えるのか。
結婚する相手を間違えた、という捕らえ方も出来、
なんとも勇一さんが気の毒です。

京女。さん。
香里が勇一でなく、耕平に運命を感じる、という部分が
残念ですが描かれてなかったですよね。
子供を手放してまで、耕平と一緒になりたかったのか。
「遅咲きの花」という表現がありましたが、
だったらなぜ、香里は勇一と結婚したのだろう。
雪枝さんの結婚式、私も見たかったです。

いわぴいさん。
最後は意外な展開で終わりましたね。
二人とも、それぞれの幸せを見つけた、というエンディング。
それでもやっぱり、本当にそれでよかったのか・・・という想いが
残りました。

まりこさん。
香里が流した涙は、後悔・・・というわけではないのかな。
子供たちとわかれて、家の近くで耕平のピアノが聞こえた時の
彼女の心の動きが手に取るように伝わってきました。
Posted by ちーず at 2005年12月28日 15:19
ちーずさん、こんにちは。
キャストも気に入って期待していただけに、、
私の中では残念な作品になりました。
マメな山田が1年も音信不通はありえないし、、
子供が出来たから、、、ってベタな話で悟志も結婚、、
何より意外だったのが香里。
子供が最高に気懸かりだった筈なのに、耕平の元へ、、
覚悟を決めたんだと思っていたら一年後子供達と会って涙、、
後悔!?懺悔!?今更!?じゃぁ何で男に走ったんだ?
香里の心の動きはもっと丁寧に描くべきだったと思います。
だって、違う選択もあったのだから、、
口が悪いですけど、男に走って後悔する位なら、誰とも一緒にならない選択だってあった筈、、
もし今が幸せであれば、あの時の涙は無用です。
子供には子供の人生もあるんだし、いつか理解出来る日も来る、
もっと堂々としてないと何だか男の為に捨てられたみたいで子供達の方が可哀想。
泣く位子供が気になるなら、子供を取っても良かったし、、
かなり、厳しくてすいません。
いつに無く、このドラマには辛口意見続出でした、、
ちーずさん、長文になってすみませんでした(^^;)
Posted by めいまま at 2005年12月28日 16:23
めいままさん、こんにちは。
お気持ち、わかりますよ。
好きな人が出来たから、今度こそ運命の人だからって、
そんな理由で離婚されたら、子供はたまりません!
香里は勇一と話し合おうと決断したのだから、
たとえ拒絶されても、もう一度話し合うべきでしたね。
それを、逃げるように耕平の元へ。
そういうところが共感出来ないんだと思うんです。
めいままさんのおっしゃるように、勇一と別れて、耕平とも一度距離を置く、
という選択もあったはずですね。
結局香里は、子供をとったとしても、耕平を選んだとしても、
どっちにしろ、心から幸せとは思えなかったのかもしれない。
でも同情はしません。選んだのは彼女なのだから。
Posted by ちーず at 2005年12月28日 16:46
2006年1月期のドラマチェックため、このサイドを辿り着いた。さすが、詳しい〜〜小説家になれるよ。
「恋の時間」は毎回欠かせず見てました。
最終回は本当に意外でしたね。
続編も期待しています。
Posted by ジュリア at 2006年01月06日 17:57
ジュリアさん、こんにちは。
コメントありがとうございます!

ドラマのあらすじをそのまま書いているだけなので
私は小説家なんてとても無理です。(笑)
「恋の時間」には、それぞれの幸せについて
考えさせられました。
果たして香里は今、幸せなんでしょうか・・・。
Posted by ちーず at 2006年01月07日 11:50
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