2006年02月16日

神はサイコロを振らない the 5th day

『十年前の情熱を、今も持ち続けていますか?』

「何か・・・
 何か間違えてしまったような気がする。」


ヤス子(小林聡美)はテツ(山本太郎)のプロポーズを断ったものの複雑な心境。

「402便が時空を超えてやってきたのは、
 奇跡のような出来事ではあるが、
 この先私をお嫁さんにしようと言ってくれる人が現れることも、
 奇跡のような出来事ではないだろうか。
 確立で言うと、どっちの奇跡が凄い?」

左側に402便、右側に花嫁衣裳の自分を思い浮かべるヤス子。
テツの元に戻ろうとしたり、引き返したりと行ったり来たり。
そこへ偶然通りがかった加藤教授(大杉漣)、ヤス子の動きに釘付けに。「そうよっ! 
 やっぱり彼の気持ちを受け止めるべきだったんだわ! 
 今からでも遅くはないわっ!(テツの元へと走り出す!)
 ・・・なんてな。(急に立ち止まり、壁に手を付き考える。)
 そもそもあと数日後にいなくなってしまうかもしれない人の嫁さんに
 どうしてなれる!?
 向こうだってどういうつもりで。
 嫁さんにするなんて言ったって一度死んだことになっているから
 戸籍は抹消されているわけ。
 そうだよ!戸籍がなきゃ結婚なんて出きっこないよっ!
 ・・・籍を入れるだけが結婚か?そういうことじゃないだろう!!
 ・・・いかんいかん!
 38にもなって何やってるんだ。
 あの人が好きなのは、1996年のワタクシであり、 
 尚且つ抹消された戸籍を持った男子との結婚は日本の制度上不可能であり、
 だからこんなこと考えているからダメなんじゃーい!(おでこピシャ!)
 ・・・(テツの元に行こうとしたり引き換えしたり)」


「行くのか行かないのかどっち?
 はっきりしてくれないと、困る!!
 来たまえ!!」
加藤教授はヤス子をイスに座らせる。
「ここにまとめて、提出しろ!
 行ったり来たりしていた理由だよ。」
「・・・結婚ていうのは、何なのかなーって。
 どうもご迷惑をおかけしました。」そう言い立ち去ろうとするヤス子。
「アインシュタインの言葉にこういう言葉がある。
 ある偶然の出来事を、維持しようとする不幸な試みを、
 結婚と言う!」
「アインシュタインはもういいです。」
「あの副操縦士は君の恋人だったんだね。
 そんな素振りみじんも見せなかったじゃないか。
 大体君は、402便の乗員乗客が消えてしまうことについて
 どう思ってる?
 悲しみに打ちしがれているようには見えないが。
 案外平気だったりしてな。
 客室乗務員の彼女だって、副操縦士の彼だってそうだよ。
 もっと泣いたり、わめいたり、わぁーっと、
 やけになったりすることはないのか?
 そして君も、彼らと共に、自暴自棄になることはないのか!?」
黙って立ち去ろうとするヤス子。
「おい、待てよ。もっと私を構ってくれよ。
 君はこの状況をどう思ってる!?」
「・・・黛ヤス子の言葉にこういう言葉があります。
 泣いたりわめいたり出来たらどんなに楽だろう。」
「・・・」
「お疲れ様でした。」
ヤス子が立ち去った後、心臓に手を置く加藤教授。

その時、加藤教授の携帯に甲斐航星(中村友也)から電話が入る。
「お話したいことがあるんです。聞いていただけますか?
 あなたの理論を、覆したいんです。」

ホテルの駐車場でヤス子は霧島藍(矢沢心)と日向啓太(丸山智己)のカップルが
もめているのを見かける。
啓太の持つバッグを藍は自分が預かると言い奪い合い、バッグの中から
お金が舞い落ちる。
慌てて拾い集める二人。
「ご家族の元に戻られたんじゃないんですか?」ヤス子が聞く。
「帰ったよ。帰ったけど、もうちょっと東京見物していこうかなと思って。」
「俺たち・・・消えるって本当ですか?」
「でたらめに決まってる!」藍が啓太に掴みかかる。
「私たちは適当に二人で仲良く。」
そう言い二人は立ち去った。

二人を見送っていると、今度は黒木亮(小清水一揮)から電話が入る。
「お世話係のおばさんですか?」
「おば・・・!
 あ、はい。おばさんです。亮君?」
「お願いがあるんです。」

ヤス子が亮の部屋を訪ねていくと、亮は廊下で待っていた。
明日、亮の母親は亮と共に日本を出るらしい。
「お父さんどうして僕に会いにきてくれないの?
 僕お父さんに会いたい!会いたい!
 お父さんを連れてきて下さい。お願いします!お願いします!」
そこへ母・弥生(杏子)が戻ってきた。
「お母さん言ったよね・・・。
 お父さんは、仕事が忙しくて来られないの。」
母に手を引かれ部屋に戻っていきながら、亮はヤス子を見つめ・・・。

『十年前の情熱を、今も持ち続けていますか?』

ヤス子が亮の父親のことを調べようとファイルを広げていると、
弟の菊介(武田真治)から電話が入る。
テツが家を出て行こうとしているらしいのだ。
「10年ぶりに再会出来たこと、姉ちゃんどう思ってるの?」
「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らん」
亜紀(ともさかりえ)が電話に出る。
「何があったのか、テツ口割らないんだよ。
 だから私も追及するの止めたけどさ、
 何となく、想像付くけどね。
 どうせまた、つまんないことでケンカでもしたんでしょう?
 何があった?」
「あの、ご心配かけてるとこ申し訳ないんですけど、
 私、亮君のお父さん探さないといけないの。 
 明日までに何とかしてあげたいんで、ごめんね、切るね。」

浜砂柚子(市川実和子)から『だっちゅーの』はもう他の芸人がやって
しまったと聞いた中武昇子(明星真由美)。
柚子に長崎の家族の元へ帰るよう言う。

柚子は夫・藤吉(片桐仁)、娘・桃子(佐々木麻緒)に電話する。
夫は喜ぶが、娘は柚子に言う。
「エンタツあちゃこはもういいの!?
 浅草の劇場、お笑いでいっぱいにするんじゃなかったの!?」
「ごめんね。勝手なことして本当にごめんね。
 風邪引いてない?ご飯ちゃんと食べてる?」
「お母ちゃん・・・」そう呟き桃子は電話を父に返す。
「バカなことしちゃった。10年前にはもどれっこないのにね。
 明日には帰るから。ホントごめんね。」柚子は夫にそう言い電話を切った。

「これを使って。
 全部使っていいから。
 それで、東京行きのキップを、至急手配して下さい。
 人生は、一度っきりだよ!
 お母ちゃんの夢を、応援しよう!」
桃子はそう言い藤吉にブタの貯金箱を差し出した。
中身は50円ぐらいしかなかったが、父は娘の言葉に感動する。

ヤス子が亮の父親を探していると聞き、亜紀とテツは夜にも関わらず
会社へ出向き、ヤス子を手伝い始める。
ヤス子は二人に亮の家族に何があったかを説明する。
「402便が消息を絶って、亮君が亡くなられたとされた半年後に、
 ご両親は離婚されました。
 離婚後、母親は海外へ。
 父親は、会社をリストラされてその後行方不明。
 慰霊祭で会ったのが最後だったんだけど、半年ほど前に公園で・・・。」
ヤス子は品川の公園前を通りがかった時、瑠璃子の母親が出したCDが
聞こえてきた、と二人に言う。
「公園に仮住まいされている方が、聞いてた・・・」
「ホームレスの人?」と亜紀。
「亮君のお父さんじゃないかと思って・・・。」

すぐに公園へ向おうとするテツ。慌ててヤス子が止める。
「勢いだけじゃ物事は進まない!」とヤス子。
「勢いがなかったら物事なんて進まない!」とテツ。
「二人で分ければいいんじゃない?
 こっち(テツ)は、ダーッと、バーっで、
 こっち(ヤス子)は、クドクドを担当すんの!ね!」と亜紀。
煮え切らないヤス子に苛立つテツ、
「もぉぉう、お前はー!!」ヤス子の髪をくしゃくしゃにする。
「わかったわかった!
 2006年の黛ヤス子は、ダーっとかバーっとか、 
 バカらしくて、やってられないんだよな!?
 俺が行って、バーっとダーッと、捜してくるから。
 あばよっ。クドクドさん!」
テツはそう言い公園に出かけていく。

「変わんないなー。ヤッチとテツは。」亜紀が嬉しそうに笑う。
「ヤッチも、テツと一緒にお父さん捜してきて。
 私は亮君のお母さんと話してくる。
 髪の毛直して。」
亜紀に背中を押され、ヤス子はテツの後を追った。

ダーッとバーッとさんと、クドクドさん。(笑)
そんな二人をまとめる亜紀。
なんだか素敵な3人です。すごく上手くかみ合っていますね。

そして、猪突猛進型のダーッとバーッとさんは、公園で地図を広げて
迷っていました。(笑)

「あっち。」テツの背中を叩き先を行くヤス子。
いつか二人は競歩大会。(笑)テツ、転ぶ!?


航星が加藤教授に持論を話す。
「402便は、マイクロブラックホールに遭遇し、飲み込まれてしまった
 わけですよね。」
「ああ。私の計算によれば、そのマイクロブラックホールは非常に安定し
 寿命も長い。
 そして、太陽の回りを、地球と同じぐらいの軌道で回っているんだ。」
「僕の考えは、とても単純なんです。笑われるかもしれませんが・・・」
「402便の乗員乗客が、十年前のどの地点に戻るのか、
 弟は、その正確な時間を予測できないか、と言うんです。」
と甲斐(尾美としのり )。
「予測してどうする?」
「マイクロブラックホールに飲み込まれる時点より前に戻るのであれば、 
 それを回避する方法を考えると。」
「そんな方法あるわけないだろ!」
「僕たちが戻る正確な時間を割り出すことは出来ませんか?」
「何の為に?」
「みんなを助ける為にです!
 このまま、ただ何もせずにその時を待つだけなんて・・・
 絶えられない。」
加藤は胸ポケットから何かを取り出す。
「君が機内で取った写真だよ。
 それで論文の一つでも仕上げて、残された時間を、有意義に過ごすがいい。」
加藤はそう言い席を立つ。

「誰かの為に生きたことのない人なんじゃないかなーあの人は。」
加藤に聞こえるように甲斐が言う。
「それとも、十年前のいつの時点に戻るのか、
 その正確な時間を割り出すことは難しくて出来ないんじゃ。」
「甲斐さん!」
「出来ます?」
「・・・」
加藤は書類に向い始めた。

=残された時間は、あと6日=

早朝の公園。
「黒木さーーん!」突然大声で叫び出すテツ。
「止めてよ。山じゃないんだから。あんた山男じゃないんだから!」とヤス子。
それでも叫ぶテツ。
「静に捜そうよ。朝だから。近所迷惑だからさ。」
「俺がどう捜そうと俺の勝手だろ。いちいち文句つけんな!」
そう言い一人で歩き出すテツ。
「顔知ってんの!?」
「・・・」
「亮君のお父さんの顔知ってるの!?」
「ンッフッフッハッハッハ!
 持ってきたんだよぉぉ!」
テツはポケットから亮の父親の写真を取り出した!
スキップしながら公園を突き進むテツの姿を見つめ、ヤス子は別の方向に
走り出した。

全部書ききれませんが、二人の絶妙なやり取り、全てツボ!!
猪突猛進型なテツですが、ちゃんと準備もしていました。
その勝ち誇った表情!そして悔しそうなヤッチの表情!(笑)
山男発言は、山本さんが同クール『氷壁』に
山男役で出演されているからですね!


その頃、亜紀は弥生と会っていた。
「父親には合わせたくないなー。
 もう終わったことだし。
 亮は、私が今住んでいるロスに連れて帰ります。」
亜紀はためらいながら、402便と乗員乗客が再び消えると書かれた
新聞を差し出す。
「亮君は、ここが10年後だとういうことは理解しているはずです。
 でも、10年という時間の重みを、まだ実感していないと思います。
 再び、消えてしまうかもしれない、ということも・・・。
 限られた時間しかないんだとすれば、
 今亮君にとって、何が一番いいのか、考えてもらえませんか・・・。」
新聞記事に動揺する弥生・・・。

亮は父と映った写真を握り締めて眠っていた。
そんな亮を弥生は見つめ・・・。

ホームレスは公園からの撤去命令が出て、駅の向こう側に移されたらしいと
ヤス子と合流したテツが言う。
「ここ飛行機が良く見えるんだよね。
 昼間、羽田に帰ってくる飛行機が、よく見えるの。
 お父さん一人でここから、飛行機見ていたんじゃないのかなー。」
そう呟くように言うヤス子の横顔を見つめるテツ。

テツは、同じような思いで飛行機を見つめるヤス子の姿を思い浮かべる。

「さ、行こう!」
二人は駅の向こうに捜しに行く。

ゴミ箱を漁るホームレスがいた。
「黒木さん。黒木さんですよね。黒木さんでしょ?
 黛です。遺族係担当していました。」
小走りで逃げ出すその男を捕まえようとするヤス子。
二人はその場に倒れこむ。
「黒木さんですよね!?黒木さんでしょう!?
 新聞見たんですよね。ご存知なんでしょう!?」
その場から逃げようとする男の足にしがみつくヤス子。
「亮君が、亮君が!生きてたんです! 
 生きて帰ってきたんです! 
 お父さんに買ってもらった虫かご持って!」
ズルズルと身体を引きずられても、ヤス子は決して手を離さなかった。

=10年前=
「亮!ほら。」空港で虫かごを渡す誉(鶴見辰吾)。
「お父さんありがとう!」笑顔で受け取る亮。
「楽しんでこいよ。」
「うん!」

誉がその場に座り込む。
ヤス子は誉の手を握り必死に説得し続ける。
「あの時の姿のままで帰ってきたんです!
 亮君、会いたいって言ってました。捜して欲しいって言われたんです。
 お父さんに会いたいって!」
誉はその言葉に泣き崩れた。
テツはヤス子の必死さに、動くことさえ忘れていた。

誉と一緒に風呂に入るテツの叫び声が浴室から響き渡る。
亜紀は誉の着る服を買って戻ってきた。
ヤス子は亮と誉をあわせる段取りを組んでいた。

「抱きしめたんだって!」菊介が亜紀に言う。
「え?」
「姉ちゃん、しがみついて、離さなかったんだって!」
「いやぁだ!なーに!?
 亮君のお父さん捜しながらそんなこと!
 ヤッチがテツに!?情熱的〜!」
勘違いして喜ぶ亜紀。
「そんなことないでしょ!」
「亮君のお父さんに、しがみついて、」菊介が説明する。
「チッ!」舌打ちする亜紀。
菊介もヤス子とテツがどうなったのか聞こうとするが、
ヤス子は何も答えなかった。

「バーっと、ダーっと捜したから良かったんだね。」と亜紀。
「偶然でしょ。」ヤス子が答える。
「素直じゃないなぁ。
 テツとはどうなったのよ?」
「もうここ泊まらないってさ。ホテルに戻るって。
 亜紀はどうする?」
「なんで、テツのこと追い出すの?」
「追い出すとかそういうんじゃなくって。」
「何があったの!?テツと何があったの!?ヤッチ!!」
風呂から上がってきた為、話は中断してしまう。

「本当は、病院に行って点滴打って検査しなければいけないんだよな。」
食事の支度をする亜紀にテツが言う。
「でも時間ないもんね。亮君また死んじゃうし。」と亜紀。
「おい。死んじゃうとか言うなよ。」
「あ・・・でも、そうでしょ。私たちだって・・・。」
「そりゃ、そうだけど・・・。」
「あ・・そうだ!一人になったときに開けてみて!」
亜紀はそう言いテツに封筒を渡した。

「これを飲んだら、ホテルにご案内します。
 亮君が待っています。」ヤス子が誉に言う。
「どんな顔して会えと言うんです!
 私は全てを失ってしまった。以前の私とは違うんです。
 合わす顔がない!
 別れた妻も、今の私を知ったら何て言うか・・・。」
「亮君に、会いたかったんじゃないんですか?
 亮君のこと、ずっと思ってたんじゃないんですか?」
誉が頷く。
「だったら・・・」
「10年は長いです。黛さんだって、」
「わかるから言ってるんです!
 後悔してほしくないんです。
 会いたいっていう気持ち以外に、今必要なものはありません。
 どうか、何も考えずに抱きしめてあげて下さい。」
テツが思わず発言する。
「俺は、亮君と同じ立場なんで、言わせて下さい。
 10年後の2006年にきたこと、良かったなーって、思いたいんです。
 わけのわかんないことに巻き込まれて、
 けど、会えて、良かったって。
 今ここにいること、良かったって思いたいんです。
 だから・・・だから・・・
 どうにもならない出来事に、負けないで下さい!」
「そうですよ。負けないで下さい!」
亜紀が、ヤス子にそう言った。

誉の思いは誰よりも理解出来るのはヤス子でしょう。
そんな誉にヤス子は
「後悔しないように。抱きしめてあげて。」と説得します。
不器用な自分には出来なかったこと・・・。
そしてヤス子は、テツの誉への言葉の中に、彼の本当の思いを知る。
この時のヤス子の表情に涙。
そして、そんなヤス子に、「負けないで」とエールを送る亜紀の姿にも涙。


ロスに経つ弥生と亮の世話をする坂倉(升毅)の携帯に連絡が入る。
「あの・・・ごしゅ・・・いや、お父様が、
 たった今こちらに。」
亮が走り出す!

「おばさん!」
「・・・おばさんだよ。ごめんね、遅くなっちゃって。」
「お父さんは!?」
「こっち!」
二人は手をつなぎ、ホテル内を走り出す!

ホテルのラウンジで亮を待つ誉。亮がゆっくりと近づいていく。
「お父さん?」
「亮!」
「お父さん!ただいま!!」
「お帰り。お帰り、亮!」
誉が亮を抱きしめた。

二人の様子を笑顔で見つめていたヤス子は、二人を本当に嬉しそうに見つめる
テツの笑顔に切なくなる。
そして亜紀もまた、ヤス子の悲しげな表情に気付き、辛い表情に。

弥生の姿に気づき、亮を放すべきか迷う誉。弥生が優しく首を横に振る。

「ごめんね、お父さん。
 僕、クワガタを捕まえたんだよ。お父さんに見せようと思って。
 お父さんが買ってくれた虫かごに入れて、飛行機に乗ったんだけど・・・
 ごめんね。」
「そうか。クワガタ捕まえたのか!すごいじゃないか!
 また・・・今度一緒に行こう!お父さんと一緒に。」
「お母さんは?」
「・・・お母さんも一緒にな!」
「ほんと!・」
「うん。」
「良かったー!」亮の笑顔が輝いた。

弥生はロス行きをキャンセルした。

瑠璃子(成海璃子)の姿に気づいたヤス子は、彼女の手を引き誉の前へ連れていく。
「黒木さん。後藤さんです。」
「どうして!?
 あ・・・そうか。そうでしたよね。あなたも帰っていらした。
 あなたのお母さんからCDを頂きました。
 私もあなたのお母さんも、子供を一人で飛行機に乗せたことを
 後悔していたんです。
 あなたのお母さんは、ありきたりの慰めを言う方じゃなくて、
 何ておっしゃったと思います?」
誉はそう言い瑠璃子のCD『Memory of Ruriko』を見せながら言う。
「私の自慢の娘が一緒だから、亮君は寂しくないわよって。」とヤス子。
「そう!そんな感じで。
 きっと天国で、娘の弾くピアノを聴いて楽しくやっていると言われ、
 あなたのCDを聞きながら、亮を思いました。
 お母様に、よろしくお伝え下さい!
 ここであなたに会えるなんて・・・。」
「・・・母のやったこと・・・無駄じゃなかったんですね。
 死んだ娘のCD出すなんて、サイテーだと思っていました。」
「私がぎりぎりのところで踏みとどまって生きていられたのは、
 お母さんから頂いたCDのおかげなんです!
 絶望のどん底で・・・あなたの聞くピアノが唯一の救いだった!
 感謝しています!」
誉は瑠璃子の手を取り頭を下げた。

夜道を並んで歩く亜紀、ヤス子、テツ。
「ねえヤッチ。ヤッチは、何が救いだった?
 絶望のどん底にいたとき。」
「私は絶望のどん底には、」
「いたでしょ!私や、テツが死んじゃった時。どん底でしょ!?」
「・・・てか、何で私たち、一緒に歩いてんの?」
「え!?」「え!?」
「そして、何で私が、真ん中!?苦手だなー。」
「私の質問に答えてよー。
 どん底にいた時、何がヤッチの救いだったの?」
「・・・」
ヤス子が観念して答えようとした時、テツのお腹が鳴る。
「もう!テツー!」亜紀がテツを叩く。
「腹減ったなーと思って。」とテツ。
「なんか二人で食べてきなよー。
 私はうちに約一名待ってるのがいるからさ。」
「あー、菊坊ね。あいつも何とかしなきゃ。
 今のままじゃヤッチ一人残して心配で行けないよ。」
「そうだな。」とテツ。
「あのね、介護保険っていうのが出来たの、知ってる? 
 介護の度合いによって保険が出るようになったの!
 だから心配しなくて大丈夫だから。
 65歳以上と、40歳から64歳までの医療保険に加入している人が
 対象で、だから私あと2年なんとか辛抱すれば、」
「おーまーえーはー!」テツがヤス子の髪をボサボサにする。
「ったくもう!俺行くわ。ホテル戻る!」
「え、メシは?」亜紀が聞く。
「また今度。じゃーなー!」テツが一人立ち去った。

「ヤッチー!」ヤス子に迫る亜紀。

噴水前。ヤス子は亜紀に説明する。
「指輪をね。」
「指輪?」
「お誕生日、おめでとう、とか言ってさ。」
「え、それって、まさか!!」亜紀の口を塞ぐヤス子。
「ま、そういうことだから、あとは察しな、ね!」
「そうか・・・そうなんだ。
 やっぱり、ヤッチは諦めてるんだね。
 なんかさ、もうどうでもいいやって思ってるところがある。
 菊坊が言ってたさ、いろんなこと、諦めてきたって。」
「それはね、諦めてきたんじゃなくって、
 何がやれるかわかってきたの。
 昔はね、若い頃は、出来ることは100個あるって思ってたけど、
 今はそれが10個で、」
「10個ぉ!?」
「例えば。」
「10個ぉ!?」
「例えばだって!」
「10個ぉ!?」
「しつこいよ!」
「・・・」
「たとえば、100個出来ることが10個になったとしても、
 その10個が自分に確実に出来ることなら、
 私はそれをダメなことだとは思わない。
 それは諦めたんじゃなくて、
 自分がどんな人間かわかってきたってことだから。
 自分がわかるってことは、年を重ねることなの。」
「私がいても!?
 私やテツがいても、10個しか出来ない!?
 亮君のお父さんに、しがみついたんでしょ!?
 ダーっとバーっと、いったんでしょ!?
 そういう情熱は、11個目じゃないの?
 ヤッチ!なんか言いなさいよ!
 ヤッチ!なんか言え!!」
「わかってるよ!私だって、わかってるよ!
 どうしようも出来事に負けたくないって。
 負けたくないって思ってるよ。」
「じゃあ大丈夫だ!
 ま、100個は無理でも、12個目はある!挑戦しな!」
亜紀が笑顔で封筒を差し出す。
「あとで、一人になったときに見てね。」
そう言い亜紀は走り去った。

長崎市立山手第三小学校同窓生名簿を広げ、誰かに電話をする
神蔵竜蔵(ベンガル)、神蔵英子(大川栄子)夫妻。
「黛さんに相談してみましょうよ。
 弘美にも、本当のことを話しましょう。ね!
 もう会えなくなるかもしれないんだから・・・。」
英子が夫にそう言った。

長崎から出てきた藤吉と桃子を出迎える柚子。
「お母ちゃん!!」
「桃!」
二人はギュっと抱きしめあった。

「もしもし。瑠璃子です。
 お母さん・・・私の、コンサートの件だけど。」

ピアノの鍵盤を見つめる菊介。

辺りを見渡した後、ヤス子は亜紀がくれた封筒を取り出す。

同じ頃、テツもホテルで亜紀の封筒を取り出した。

中には、一枚のチケットとメモが入っていた。

『東京ファンタジーパーク ワンデーパス
 有効期間 2006年3月31日まで』

『観覧車で
 チューしておいで黒ハート

=残された時間は、あと5日=


亮の父親を見つけ出すことが、瑠璃子の頑なな心を解きほぐすことにも
つながるなんて!
二組の親子の雪解けがうれしかった!感動的なシーンでした。
弥生役の杏子さんは、『雨と夢のあとに』では愛情を押し付けるような
母親役だったので、今度もか!?とハラハラしましたが、
今回は優しくてよかった!

瑠璃子の母親も不器用な人で、自分の思いを娘に伝えることが
今まで出来なかったけれど、今度のことで瑠璃子は母の思いに触れ、
自分から歩み寄ろうとしています。
きっと誤解も解けることでしょう。

誉の思い=ヤス子の思い。
今まで自分の思いをあまり語ってこなかったヤス子の悲しみを
同じように見せてくれました。
「私は辛かったのよ!」と語られるよりも、この方がよっぽど効果的。
時におちゃらけて自分の思いをはぐらかしていたヤス子の本当の悲しみを
誉を通して知り、余計に胸に来るものがありました。

「・・・黛ヤス子の言葉にこういう言葉があります。
 泣いたりわめいたり出来たらどんなに楽だろう。」
この言葉の中にヤス子の感情がギュっと詰まっていて、切ない。
ヤス子の言葉は理論屋の加藤教授の心にもグサグサと突き刺さっていく
ようで、彼は今後どう変わっていくんでしょうね。

自分のことを後回しにして。
それとも、自分のことはどうしたらいいかわからないから?
亮のため、誉のために、一生懸命なヤス子はとても素敵でした。

亮君の手を取りホテルを走るヤス子の笑顔はまるで天使のよう。
引き離された家族の心を結ぶ、ヤス子は天使のようです。

そして、自分のこととなると臆病になってしまうヤス子のことを
自分のこと以上に心配する亜紀。
亜紀はテツとヤス子にちゃんと向き合ってほしいんですよね。
恥ずかしそうにプレゼントを渡す亜紀が可愛かった。いい子だよな〜。

こうなったらなんとか加藤教授には10年前の時間を計算してもらい、
そこから新たな突破口を発見してもらいたい!



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この記事へのコメント
こんにちは。

ちーずさんのおっしゃる通り、ヤッチは直接自分の口で辛さを言わないから余計に辛さが伝わってきたんだと思います。
亮君のお父さんがいた公園が羽田に離着陸する飛行機が見えるところって言った時も、何も言わないけど、ヤッチもここから飛行機を見てたんだな^って伝わってきて泣いてしまいました。

ほんと、よいドラマだなぁと思います。
Posted by ひいな at 2006年02月17日 09:28
人の事なら一生懸命になれて、理解も深いヤス子なのに・・・
でも、そんなヤス子には亜紀という親友がいて本当に良かった!
結局ヤス子と亜紀は人の事に必死になれる似た者同士なんだなぁ〜って微笑ましいです♪
Posted by まこ at 2006年02月17日 11:12
ドラマを観た日も、見逃した日も読ませて頂いてます。
2月16日放送の「小早川信木の恋」をビデオ予約してたつもりが「ガチバカ!」に・・・
お助けください(THT)

小林聡美さんの演技に毎回なんだか涙が出ます。
この回でのテツの元へ行くべきか葛藤して行き来するシーンは笑えました(>▽<)
Posted by なかなか at 2006年02月17日 17:23
コメントも、TBもエラーで、だめでした。
再度です。

亮くんのお話しで、父親のホームレスに落ちぶれた
彼を、タックルまでして、会わせた所から、瑠璃子
の心も開いてくれた。
桃子一家の八百屋とは思えない家族の対比に、泣かされたり笑ったりで、忙しかったです。
Posted by mari at 2006年02月18日 03:29
ちーずさんこんにちは
誉を通してヤス子の気持ちを見せたのは、
切なさががぐっと伝わりますね。
私も加藤には、ぜひなんらかの解決法を見つけ出してもらいたいです!!
Posted by まりこ(^▽^) at 2006年02月19日 12:37
こんにちは。コメントありがとうございます!

ひいなさん。
そうそう。飛行機を見つめていたんだろうな〜って想像していたら、
そのシーンが流れて・・・
テツがちゃんと、そういうヤス子の気持ちに気付いてあげていて、という
流れが素敵でした。
素敵なドラマですよね〜。
前クール『あいのうた』のように素敵なドラマなのに視聴率が残念です。

まこさん。
ヤス子のために一生懸命動く亜紀、イイコですよね〜。
亜紀にも幸せを!
でも今の亜紀は、ヤス子のために一生懸命になることが、
彼女の幸せでもあるのかな。

なかなかさん。
読んでくださりありがとうございます!
「小早川」、感想だけにしようかと思っていましたが、
なかなかさんのコメントに頑張りました。^^
公式あらすじに付け足した感じですが、少しでも伝わると嬉しいです。

mariさん。
メンテ中ご迷惑をおかけしました。
私も同じ時間帯、何度もここにコメントしてみましたが投稿出来ず。
メンテが終わってみたら、同じものが3つ付いていました。
(でもmariさんのは付いてませんでした)
このドラマ、泣いたり笑ったり。今クール一番のお気に入りです。

まりこさん。
加藤教授、解決法にたどり着くかなぁ。たどり着いて欲しい!
ヤス子のためにも!!
でもそうなると、加藤教授は失恋しちゃうことになる!?
Posted by ちーず at 2006年02月19日 14:34
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