2006年03月02日

神はサイコロを振らない the 7th day

『余命半年教え子に再会・・・・神様からの贈り物』

「おはよー!」
挨拶を交わしながらそれぞれのハブラシを手に取る4人。
昨晩は遅くまで4人で大宴会。
その流れで黛家に泊まってしまったテツ(山本太郎)が言う。
「ごめんな、今日はちゃんと家に帰るから。」
「いいよ、別に。・・・ずっと家にいてもいいよ。」とヤス子(小林聡美)。
二人の話に聞き耳を立てていた亜紀(ともさかりえ)と菊介(武田真治)は
にっこり!
だがテツは、両親に会いに実家に帰ると決めたらしい。
「なんだか俺全然緊迫感がないんだよなー。
 なんか、こんなこと話してても、この自分がいなくなるなんてな。」
ヤス子、亜紀、菊介、複雑な表情に。
ふと隣を見るとテツがいない。
「あれ!?」とヤス子。
「驚いた?消えたと思った?」
テツはしゃがんで姿を隠していたのだ。
「ハイハイ、飯飯飯!」
呆れてだいどころに戻っていくヤス子。「勝負下着って何!?」突然亜紀が聞く。
ヤス子が昨日寝言で「勝負下着つけて勝負するぞ!」と言ってたらしい。
意味のわかる菊介はカーテンで口を覆い、
君のわからぬ亜紀とテツは興味津々!
「誰と勝負すんの!?」とテツ。
「テツ?」と亜紀。
プロレスごっこでごまかすヤス子だった。

「楽しく、過ごせば過ごすほど、
 どんどん寂しくなる。
 一度は失ったと思っていたものが、
 今目の前にあるという現実。
 でも、再び失ってしまうのだという現実。
 あまりにもとっぴょうしもない現実を、
 考えれば考えるほど、
 どんどん寂しくなってくる。
 今はただ笑うしかない。
 負けないように、笑い飛ばすしかないのだ。」

朝食の片付けをしながらヤス子が亜紀に言う。
「ヤッチも家に帰ったら?
 お母さん心配しているでしょう。」
「今実家に帰ったら、今度はお母さんのことが気になって、
 もう戻ってこれなくなるよ。」
「・・・また、ピアノ弾くようになったの、しってる?
 あいつ、またピアノ弾くようになったの。
 だからこっちのことは心配しないで、」
菊介に駆け寄る亜紀。テツが菊介にご飯を食べさせている。餌付けらしい。
「菊坊!またピアノ始めたの!?」
「まあ、なんとなく・・・」
「今までのなんとなくとは違う響きに聞こえた!
 そのなんとなくの先には、野望や、希望や、欲望があるんでしょ?」
「いや、別に・・・」
「すごいよー!」大喜びの亜紀。

そこへ電話が入る。
神蔵の娘から、話したいことがあるとヤス子は呼び出される。

神蔵弘美(遠山景織子)の元に駆けつけると、母・英子(大川栄子)も
そこに現れた。
弘美の父・竜蔵(ベンガル)は、10年前、ガンの告知を受けていたと、
弘美はこの時初めて聞かされたのだ。
「今見てもらえば違う結果が出るかもしれない。
 私、病院に連れていく!」
そう言い父の元を訪ねる弘美。
竜蔵は腹を押さえて座り込んでしまう。

竜蔵は病院に運ばれ入院する。
「10年前、父は余命半年と告知されたそうです。
 母と二人で、何度も話し合って、延命治療は行わないことにして、
 あと半年、丁度担任をしていた6年生が卒業するまで、 
 精一杯生きようって、二人で話していたそうです。
 そしてあの日、親戚の法事に出かけた帰りの便で・・・。
 今回の出来事、割合すんなり受け入れたんで、
 おかしいなと思ったんです。
 でもそれは、父にすれば、どういう状況であれ、
 自分の命があと半年であることに変わりがなかったから。
 ただあと数日と言われたとき・・・」

「返して下さい。
 いや10年とは言わない。
 半年。
 私はほんの半年でいい。返して下さい!
 あと7日・・・人の人生、何だと思ってるんだ!」
あと7日で再び消えてしまう時、竜蔵はそう怒りをあらわにしていた。

竜蔵は、教え子だった一人の少年のことがどうしても気になり、
東京に居座ったのだった。
10年前、小学6年生だった少年。今は22歳、大学生のはず。
「そんな昔の教え子のこと、どうでもいいじゃありませんか。
 あと数日なら、自分のことだけ考えていればいいじゃないですか。
 そう思いませんか!?」
必死にそう訴える弘美。
「彼に会うことが神蔵さんの希望なら、叶えてさしあげたいと思います。」
「黛さんならそうおっしゃると思っていました。
 父の希望をかなえるというなら、黛さん、保証して下さいますか?
 少年に会うことで、父が、傷つかないように。
 再会したことを、必ず、良かったと言わせて下さい。
 その少年、酷い苛めにあっていたんです。」

「1996年、その少し以前より、
 いじめによる子供たちの不登校や自殺が社会問題化していた。
 なんてことは、子供と関わりのなかった私には、
 あまり記憶にないことだけれど。
 神蔵さんが小学校の経論をやっていたのは、そんな時代だった。」


「5年生の終りに転校してきた子で、新しい学校になかなか馴染もうと
 しなかった。
 なんとか、みんなと打ち解けて欲しいと思って・・・。」
その少年、綾瀬が前の学校で陸上をやっていたと知り、神蔵はこう話す。

「好きなことがあるっていうのは、悪くないぞ。
 強くなれ。
 自分に自信が持てる。
 今度、うちの学校でもマラソン大会がある。出てみるか?」
少年が頷いた。

「良かれと思って、綾瀬をマラソン大会のクラス代表に選んだんです。
 ところが、それを面白くないと思う子がいたようで・・・ 
 いじめが始まったのはそれからなんです。」

ある日、綾瀬少年のランドセルや教科書は、死ねと落書きされたうえ、
トイレに捨てられていた。

「私は気付かなかった。気付いてやれなかったんです。
 綾瀬が苛められたのは私のせいなんです。
 ふがいない担任の、私の責任なんです。
 たとえ10年過ぎても、私は教師として、
 綾瀬を守らなきゃいけない。守らなきゃいけないんです。」
そう言い自分を責める竜蔵。

神蔵夫妻は綾瀬の通う大学までは突き止めたが、
個人情報保護法のため、住所を教えてはもらえなかった。

ヤス子は彼の通う大学に行き、綾瀬翔一(城田優)を訪ねていく。
学生に聞くと、すぐに彼を見つけることが出来た。
彼と会ったことで、竜蔵が傷つかないように・・・。
弘美が言っていたことがヤス子の脳裏によぎる。

翔一から少し離れたソファーで考えるヤス子。
そこへ、テツから電話がかかってくる。
「うーっす。亜紀もさ、実家に帰ることになったんだ。」
「すぐ戻ってくるよー。お母ちゃんの顔みたらすぐに戻ってくるよー。」と亜紀。
「俺もすぐ戻ってくるじょー。
 あ、神蔵さんの話、どうなった?
 お前、一人で平気か?」
「うん。平気。大丈夫だよ。
 ・・・あ、ちょっといいかな・・・。
 あ、やっぱいいわ。」
「何だよ。むずがゆいから早く言えよ。」
「あー、いいいい。何でもない。何でもないから。」
「何か大変なことでも頼まれたのか?どこにいるんだ?
 すぐ来いって言うなら飛んでいくぞ。」
「パイロットだしね。」菊介が口を挟む。
「もしもし!手伝おうか?」テツが言う。
「いやあの・・・来て欲しいとかそういうんじゃないんだけど・・・
 あの・・・
 頑張れって、言って、くれる?
 ちょっと、なんていうかな、今こう・・・
 気合欲しいなっていうか、そんな。
 だから、がんばれーとか、そんな・・・。」
テツは受話器を握り締め部屋を移動。
玄関(?)に正座をし、心を落ち着け、思いを込める・・・。
が、背後に亜紀と菊介がニヤニヤして見つめている。
テツ、また部屋を移動。
そして部屋の戸を閉め、一人になると、心を込めてこう言った。
「頑張れ。」
ヤス子はその言葉に安心する。
「頑張れーーーー!!
 が・ん・ば・れー!!」今度は大声でテツが言う。
ヤス子に笑顔が戻る。
「ありがとう!ごめんね。すまん!じゃ!」
そう言い電話を切り。立ち上がる。

「綾瀬ショウイチさんですか?
 東洋航空の黛と言います。」

後藤瑠璃子(成海璃子)は母・杏子(高橋恵子)とコンサートの打ち合わせを
していた。
全ては母の思うとおりにと笑顔で従う瑠璃子。

「お母さんの為に、コンサートをやるそうです。
 限られた時間しかないっていうのに、自分の為じゃなくて、
 お母さんの為に、コンサートをやるって。
 そういうの、間違っているような気がして。」
甲斐航星(中村友也)が瑠璃子と杏子に言う。
「いいの。間違っててもいいの。
 私はお母さんの気持ち、わかってあげられないから。
 私がいなかった間、お母さんはどんな気持ちだったのか。
 想像することは出来ても、分かりあうのは難しいと思うし。
 すごく、時間がかかると思う。
 だから・・・今の私に出来るのは、コンサートぐらいしかないの。」
「瑠璃子・・・」
「お母さんの為のコンサート、絶対成功させるから。」
娘の言葉に杏子は複雑になる。
ドレスに着替えた瑠璃子を、杏子はぎゅっと抱きしめ、
そして号泣した。

娘の思いを知り、杏子も素直になれたのですね。
この母娘も、雪解け・・・かな?


ヤス子の話を聞いた綾瀬。
「お話はわかりました。
 でも・・・
 このあと練習もあるし。」
綾瀬は陸上を続けていた。
「僕の気持ちはさっき言ったとおりです。
 あの頃のことは・・・もう。」
「神蔵さん、今病院にいるんです。
 具合悪くて。
 お願いします。無理を承知で、どうか、お願いします。」
何度も頭を下げるヤス子。
そこへ綾瀬の友達がやって来た。
「あ!豊田!!
 こいつとかどうですかね?」
綾瀬は友達の一人をヤス子の前に引っ張り出した。

その豊田という友人が綾瀬のふりをして病院を訪ねていく。
「綾瀬?」
「はい!綾瀬です!」
「君が、あの、綾瀬!?」
「はい!!6年1組だった、綾瀬翔一です!」
そう言い竜蔵の手を取る豊田。
「なんか感じが・・・」
「変わりました?」
「なんていうかね、」
「10年もたっていますからね。」
「今も走ってるんですよ。大学では陸上部なんです。
 走ること、続けてるんですよ。」とヤス子。
「はい!」
「そうか!」ガッチリ手を握り合う二人。
「春の大会を前に、今日もこれから練習です!」
「忙しいところわざわざ来てくださって。」母娘も感激する。
「僕も先生に会えて良かったです。嬉しいです!」
だがヤス子は複雑だった・・・。

ものすごーく体育会系さんでしたね。(笑)
綾瀬役、豊田役の俳優さんの名前、エンドロールでわかるかな。
あとでチェックします。


「なんか別人みたいだったなー。
 うまく、出来すぎてますよね。
 何のわだかまりもなく私に会ってくれるなんて。
 10年すぎたってことなんでしょうか。
 だとしたら、10年過ぎるって、悪くないですね。」
竜蔵がヤス子にそう言った。
英子も弘美も、もっと早くヤス子に相談すればよかったと
心から喜んでいる。
ヤス子は心が苦しくてたまらない。

対策室に戻ると、テツ、亜紀、そして事情を聞いた職員たちが
「これから神蔵さんのところに行こうとしていた」と心配そうにヤス子を
取り囲む。
「で、どうだった?神蔵さん。」坂倉(升毅)が聞く。
「会えたのか?教え子に。」
「今病室で、」
「ヤッチよくやった!!ヤッチに拍手!!」大声で叫ぶ坂倉。
みんながヤス子に拍手を送る。
「やっぱ俺の頑張れが聞いたのかなー。」テツも嬉しそう。
だがヤス子の落ち込んだ様子に気付く亜紀。

ヤス子の携帯がなる。弘美からだ。
「黛さん!先ほどはありがとうございました。
 私の取り越し苦労だったみたいで。
 黛さんに、父が傷つかないようにしてくださいなんて
 失礼な言い方しちゃって、すみませんでした。
 傷つくどころか父は、今、黛さんが帰ったあとで、
 こんな言い方をしたんですよ。
 402便に乗っていてよかった。
 402便に乗って、10年後に来なければ、
 綾瀬さんの成長した姿を見ることは出来なかった。
 だから良かったって。
 10年後の綾瀬さんに会えたのは、神様からのプレゼントだって。」

弘美の電話にますます辛くなり、ヤス子は部署を飛び出していった。

「すみませんでした!!
 先ほどの彼は、綾瀬君ではありません。
 綾瀬さんは、苛められていたあの頃のことは、
 もう思い出したくないと言っていました。
 忘れよう、忘れなくっちゃ。
 この10年、ずっと忘れる為に頑張ってきた。
 本当に辛かったんだと思います。
 先生に会ったら、あの頃のいやな思い出が蘇ってしまう。
 だから、先生には悪いけど、会いたくないって。
 それを、私が無理を言って、
 本当にすみません。
 神蔵さんに会ってくれるよう頼んだんです。
 そしたら、代わりに友達はどうかって。
 ほんっとうにすみません!!」

「全て嘘だったんですか・・・」と英子。
「父を騙したんですね!」と弘美。
「すみません・・・。
 でも、陸上を続けているのは本当なんです。
 今も走ってるっていうのは本当なんです。」
「もういいです!」と弘美。
「これだけは本当なんです!」
「もう止めてください。」
「・・・みたかったな。あいつが走ってるところ。
 本当の綾瀬を一目でいい。見たかったなー。」竜蔵が呟くように言う。
「・・・行きますか?
 練習場所、聞いています。
 綾瀬君が走っているところ、見に行きませんか?
 神様からの、本当のプレゼント、見て下さい。
 いきましょう!」
「ああ。お願いできますか!?
 つれていって下さい。」
「はい!!はい、どうぞ。」
背中を差し出すヤス子。竜蔵をおぶろうとしている。
「はいどうぞって、あんた・・・」
「黛さん、ふざけてるんですか!?背負っていくなんて無茶です!」
「いやだって、」
そこへテツが駆けつける。
「すみません!うちのアホが、アホなことしちゃったみたいで。
 本当にすみません!」
テツがヤス子の頭を掴み二人一緒に頭を下げる。
そこへ今度は亜紀が、車椅子を押してやってきた。
「すみません。
 神蔵さん、行きましょう!」
「ご案内します!」ヤス子も笑顔でそう言った。

雨の降る陸上競技場。
「あの紺色のジャージを着ているのが、綾瀬君です。」
「あの子が、綾瀬・・・。大きくなったなー。」
「綾瀬さん、402便のこと、ご存知でしたよ。
 先生が乗っていらしたことも、再び消えるかもしれないっていう
 話があることも。
 先生のこと、気になってはいたみたいです。」
「それで会いに来ないって、どういうことだよな。」テツがついそう言う。
「いいんですよ。
 綾瀬がその後どうしたか、知りたかっただけですから。」と竜蔵。
「先生に言われたことがきっかけで、今も走り続けてるって、
 そう言ってましたよ。
 先生に言われたこと、覚えていましたよ。
 好きなことがあれば、強くなれるって。」
「・・・そう。」
綾瀬の姿を見つめる竜蔵。
豊田に言われ、綾瀬が竜蔵たちに気づいた。
見詰め合う二人。
綾瀬は、観客席に近づき、竜蔵に丁寧にお辞儀をした。
竜蔵は立ち上がり、
「綾瀬ー!綾瀬ー!」と大きく手を降る。
綾瀬が、笑顔で手を振り替えし、そしてまるで竜蔵に見せるように
走り出した。
「あの子が・・・苛められて泣いていたあの子が、走ってる。
 走ってるよ・・・。」
綾瀬の走る姿に感動する竜蔵。
「黛さん。ありがとう。ありがとう。」
竜蔵は涙ぐみながらヤス子の手を握り、そう言った。
そして再び綾瀬の走る姿を見つめた。

実家に帰るテツを見送るヤス子と亜紀。
「俺さ、ずっと気になってたんだ。
 402便がマイクロブラックホールに飲み込まれたこと、
 なんとかなったんじゃないかなーと思って。
 何でみんなを、10年後の世界に連れてきちゃったんだろうって。」
「責任、感じてたの?」ヤス子が聞く。
「いや。
 俺の仕事は、10年後に向けて飛行機飛ばすことじゃないから。」
「それはそうだけど。」
「そんな風に自分の仕事のこと考えてたら、
 なんか、すごい、気になったんだよなー。」
「でもそれはあなたのせいじゃないよ!
 マイクロブラックホールに飲み込まれたのは、操縦士の責任じゃないでしょう。
 どうしたの、急にそんなこと話し出して。」
「神蔵さん。
 いや、良かったなーと思ってさ。
 だって402便に乗ってなかったら、10年後の教え子に
 会えてなかったんだろ?
 そう思ったら、俺も少しだけ、救われたような気がしたんだよな。
 だから・・・ありがとう。
 神蔵さんの嬉しそうな顔見たらさ、俺の方が嬉しくなっちゃって。
 ありがとな!」
「私は別に。」
「よく頑張りました!!」テツがヤス子の頭をくしゃくしゃにする。
「ま、じゃあそういうことだ。じゃーな!
テツはそう言い実家に帰っていった。
テツを見送る寂しそうなヤス子。
「私もさ、私も、ちょっと気になっていることがあるの。
 自分の仕事を考えたときに、気になったことがあるの。
 あのお客さん、どうしたかなーって。」
亜紀が語り始める。

「402便に乗る前日だから、1996年8月9日。
 予定通りに到着したんだけど、眠っちゃっててなかなか起きない
 お客さんがいてね。」

亜紀はぐっすりと眠った乗客に声をかける。
到着に気付き慌てた男が慌てて立ち上がり、膝に乗せていた書類が
床にばら撒かれてしまう。夕べ眠れなかったらしい。
それを一緒に拾い集め、慌てて飛行機から降りようとする男。
亜紀が男の席に忘れられた鞄を手渡す。
「あの、頑張ってください。」
「ありがとうございます!」嬉しそうに笑う男。
『けものみち』で弁護士役でも出演中!

「すごく感謝されて、名刺までもらっちゃった。」
嬉しそうに笑う亜紀。
「カッコ良かったんだ。タイプだったんだ!」
「そんなんじゃないよー。
 初めての商談で、舞い上がっている感じがして、
 私もそうだったなーって。
 憧れのスッチーになって、初めて飛行機に搭乗したとき、
 もうすっごく心臓バクバクしてさ。
 やっぱり前の日は緊張して眠れなかったもん。
 そういうの思い出したらね、頑張ってほしいなーって。
 商談上手くいったのかなー。」
「どうなんだろうねー。」
「名刺は、持ってるんだけどさ、ヤッチー。」
「え!?」
「ヤッチ〜!」
「えーーー。」

名刺を頼りにその男を訪ねていく二人。
『MOTHER Communications
 高木雅史』
「飛行機の中で、この名刺を!?」
高木は亜紀のことをすっかり覚えていなかった。
「覚えてますよね!?
 一度、降り掛けたのに、わざわざ戻ってきて、名刺を渡したんですよ。
 出来上がったばっかりの名刺なんですって、ちょっと、誇らしげな感じで。」
「えぇ!?」
「ご親切にありがとうございますって言って、がんばりまーすって。」
「ご親切って、書類拾って励ましたぐらいで?
 そんなのスッチーとして当然なんじゃないかな!?当たり前のことじゃない?
 大体なんで今頃。」
「あの、じゃあ、名刺のことは!?」
「こんなの、しょっちゅう渡しているから。」
「しょ、しょっちゅう!?」
「今はそれなりに選んで渡すけど、
 スッチーにも当たり外れあるしねー。
 若いうちは数打ちゃ当たるって感じだったけど、
 誰だってそうだろ?
 スッチーといえば、食事に誘ったり、合コンしたり、
 だってスッチーだもん。そういうもんだろ!
 あ、ひょっとしてそのスッチー、お礼に何か期待してた?
 で、何もなかったから、ずーっと根に持ってた、なんてね。
 一体どういうスッチーだよ。」
「こういうスッチーです!
 私です!私がその時のスッチーです!」
「だって、かれこれ10年前だろ?」
「10年前のスッチーです!」
「その商談は上手くいったんですか?
 その客室乗務員はそれをとても気にしていまして。」
ヤス子が亜紀を引き止めながらそう尋ねる。
「悪いけど俺、仕事でミスしたことこれまで一度もないの!
 だから、俺の人生、失敗はなし!」
そう言い立ち去る高木。
「それは素晴らしいわ!
 何て素晴らしいお方!?
 初めての商談で、緊張して眠れなかった、あの初々しさを
 とっくに忘れ去って、飛行機に乗るたびにナンパ師のように
 名刺を配って歩くなんて、なーんてブラボー!
 なーんて品格のある!
 なーんてジェントルマン!
 お会いできて光栄です!
 はるばる、10年前から時空を超えてやって来たかいがありました!
 こんなクソッタレのために、親切にしたかと思うと、
 10年前の私に忠告したいよ。書類なんか拾うんじゃないってね!
 頑張って下さいって、笑顔見せるだけ損だって。大損だよ!」
「いい加減にしなさい。」ヤス子が止める。
「すいませんでした。お忙しいところ、申し訳ありませんでした。」
そう言いヤス子は先に立ち去った亜紀を追う。

「アキ!」
「いいよ。」
「なんも言ってないよー。」
「アホだって言うんでしょ。
 大人気ないって言うんでしょ。」
「うーん。大人気ないね。
 まあ、私も悪かったんだよ。
 会う前に言っておけばよかったね。
 覚えてないかもしれないよって。」
「覚えてないと、思ってたの?」
「思ってたよ。ちょっとは。」
「じゃあ、何で会いに言ったの? 
 私が頼んだから?」
「喜ぶ顔が見たくって。
 アキにはさー、私、なんもしてあげられないまま
 終わっちゃいそうだし。
 もしかしたら、名刺渡したこと覚えてくれてて、
 今でも感謝してたら、アキ、すっごい喜ぶかなーと思って。」
「どんよりした顔しかお見せ出来なくてすまんねー。」ヤス子に背を向けて亜紀が言う。
「どんよりしてんだ。」
「してるよー。」
「覚えてると思った?」
「覚えてたらいいなーって。」
「亜紀にとってはついこの前のことでも、
 あの人にとってはもう10年も前のことなんだよ。」
「そりゃ、わかってるけど。」
「頑張って下さいってあの人励ました時、
 10年後も覚えてくれてると思って、笑顔になった?」
「・・・」
「10年後も忘れないでいてほしいと思って、笑顔になったの?」
「うん。」
「違うだろ。」
亜紀が頷く。
「書類を拾って励ますなんて、あの人の言うとおり、当然なんだよ。
 私たちの仕事は、神蔵さんの、教師っていう仕事とは違って、
 忘れられて当たり前なんだよ。
 お客様の為に一生懸命働いたって、誉めてはもらえないよ。
 だって、それが私たちの仕事なんだもん。
 亜紀はそのとき、自分の仕事をしただけ。
 自然に笑顔になって、自然とお客様を励ました。
 それでいいんだよ。
 それでいいんだと思う。
 だって、それは、亜紀。あんたはしっかり仕事をしてた!」
亜紀が涙をこぼす。
「泣くなってー。」
「だって。」
「実家帰るんでしょ。」
「ヤッチありがとう。
 私には、ヤッチの励ましが一番だよ。
 ありがと、ヤッチ!」
亜紀が涙を拭く。
「いま、喜ぶ顔見せてやる。」
「あほ!
 こっちの方がアホでーす。」
二人はお互いのヘン顔に大笑い。

「神蔵さんの教え子の、あの青年も、
 神蔵さんのことは覚えていても、
 突然訪ねてきた東洋航空のおばさんのことなんて、
 忘れ去ってしまうだろう。
 それでもいいのだ。
 今目の前のことを、しっかりやるということは、
 きっと、10年後の自分に帰ってくる。
 10年後の自分に、帰ってくると、いいな。」


『十年前にがんばっていた仕事を、
 今も続けていますか?』

テツはあの時のことを思い出していた。
「積乱雲です。迂回しますか?」機長に尋ねるテツ。
「いや。このままいこう。」

テツが後ろを振り返った。


あの時、積乱雲を迂回していたら、
402便はブラックホールに巻き込まれなかったんでしょうか!?
10年前に戻ったとき、テツは迂回することが出来るのか!?

楽しい時間を過ごせば過ごすほど、別れのことを考えると辛くなる。
冒頭、歯を磨きながら笑いあう、何気ない幸せ。
4人のこんな姿をずっと見ていたいと思ってしまいます。

神蔵さんは、余命宣告されていたのですね。
彼にとって、10年後というのは、他の人たちとはまた違った意味のある
ものでした。
半年後にはなくなっていたであろう自分の命。
それを、こういった形で心残りだった生徒と再会できるとは。
最初は偽者の生徒でしたが、最後には本物の綾瀬と会えて、
きっと彼は「神様に感謝」したことでしょう。
まさに、神からのプレゼントでした。

テツも、責任を感じてしまっていたのですね。
神蔵が会えないはずの10年後の生徒に会えたことで、
彼の心が少し軽くなった、というのが良かった。

そして亜紀!
彼女にもいい話が!と喜んでいたのに、残念な結果に。
10年間の間に、人ってあんな風に変わってしまうものなのかな。
高木役の長谷川さん、10年前の初々しさと、10年後の冷めた雰囲気を
上手に演じていらっしゃいました。

アッチを励ますヤッチの言葉がまた良かった!
この言葉を聞く前は、アキたちが10年前に戻って、同じ場面となったとき、
彼の書類を拾ってあげないアキを想像しました。
でも彼女はきっと、10年前に戻っても、
同じように書類を拾い、励まし、そして同じように笑顔を見せるのでしょうね。

実家に帰る二人ですが、それぞれの実家のことも描かれるのかな。

追記:
豊田=山根和馬さん
http://www.avexnet.or.jp/talent/kazuma.htm
野ブタ。の怖ボーズ君でしたか!気付きませんでした。

綾瀬翔一=城田優さん
http://www.watanabepro.co.jp/shirotayu/



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この記事へのコメント
このドラマ、今期一番かも。(いや、白夜行か?アンフェアか?)
なんかあったかい気持ちになれるんです。
なんかジーンとくるんです。
小林聡美が素晴らしいんです。
ともさかりえと山本太郎との息もピッタリなんです。
・・・よね?(笑)
「なーんで正直に言うかなぁ。神蔵さん喜んでんだし良いじゃん!ヤス子」
と思ったけど、それじゃヤス子じゃないもんね。
それでこそヤス子だし、ナイスフォローだよテツ&亜紀!
亜紀に励まされた乗客役の人、最近気になる役者さんです。
Posted by なかなか at 2006年03月02日 10:38
なかなかさん、こんにちは。
コメントありがとうございます!

このドラマは笑ったり切なくなったり大忙し。(笑)
冒頭の4人の楽しそうなシーンをずっと見ていたいと
思いました。
すぐそこに別れが待っていると思うと切ないですね。
小林さんの丁寧な演技はやっぱりすばらしい!

高木役は、長谷川さん。
『けものみち』にも出演していらっしゃいますよね。
Posted by ちーず at 2006年03月02日 13:59
いい!いい!このドラマはいい!(笑)

見てて楽しい&見終わってあったかいものが
心に残りますよね。

役者さんたち、ほんとーに息が合ってるし。
今日はイヤミ上司・坂倉役の升毅さんがサイコー
でしたよー。「ヤッチ、よくやった!」って、
え?いつからそう呼ぶようになったんだっけ??

でも視聴率低いですよねー。今回、ついに7%台
みたいですよ。
みんな、わかってないなー。
わかる人たちで、応援しましょー!!
Posted by なつ at 2006年03月02日 14:23
視聴率低いのは曜日と局の影響もありますよね。
私はともさかりえのキャラが好きです。
Posted by moegi at 2006年03月02日 16:36
ちーずさん、こんにちは。

ヤス子は何だかずい分と素直になったようで
冒頭で4人がワイワイやってるとこ見てたりすると
私まで嬉しくなってしまいます。
菊介のちゃっかりぶりも可愛いし。
この兄弟は、テツと亜紀の前向きな姿勢に
すっかり影響されちゃってますね。
なんだかんだ言っても、
意外と似てるのが兄弟なんだなあ
って思ってしまいました。
Posted by のんのん at 2006年03月02日 17:18
実はこのドラマ最初見ていなかったんです、たまたま見た日があって、これは!と思い今までのあらすじが知りたくて、ここのHPにたどりつき(すごく詳細に書かれてあって助かります!)今でははまっています。

毎回感動させられるこのドラマ、402便消えないでほしい!
Posted by かあしゃん at 2006年03月02日 18:25
なんかせっかくここまでみんなの雰囲気がよくなってきたのにもうすぐ消えてしまうんですよね。
それを思うと本当に切ないですね。
今回の神蔵先生のお話も本当にジーンとしてしまいました。10年後に飛んできて神蔵さん夫妻は
本当に最後にいい思い出を作ってもらえたと
思いますね。
Posted by みのむし at 2006年03月04日 14:14
なつさん、こんにちは。
坂倉さん、いつの間にかヤス子の理解者に!?
ヤッチ、よくやった!には笑ってしまいました。
視聴率が低いのは本当に残念。
力のある役者さんと、素敵なストーリー。
私もこのドラマ、大好きです。

moegiさん。
前クールの同じ枠のドラマ、『あいのうた』も大好きだったのに
視聴率が低かった!
やはり、曜日的な問題も大きいのかなー。
残念ですよね。

のんのんさん。
冒頭のほのぼのシーン、微笑ましかったですね。
素直になったヤス子が可愛らしい。
菊介も、いつもいい味出していますね。
確かに、良く似た姉弟です。

かあしゃんさん。
お役に立てて光栄です!
笑って、切なくなって、感動して。
402便の運命が気になりますね。
私としては、10年前に戻り、ブラックホールを回避することで、
10年後、みんながどう過ごしているのかも見てみたい!

みのむしさん。
10年後にワープすることで、神蔵さんは絶対に見られなかった
未来を見ることが出来たんですよね。
今の治療薬を10年前に持って帰り、助かる、という方法はないのかな。
なんとかみんなの笑顔で終わってほしいです。
Posted by ちーず at 2006年03月05日 12:19
こんにちは。今回このドラマが一番好きです。でもなんで視聴率とれないんでしょうか。
今回もほのぼのしてしまいました。
Posted by みいちゃん at 2006年03月05日 13:00
遅くなりましたが、TB返して下さって有難う御座いました┏○))ペコッ
このドラマには本当に笑わされ、泣かされています。
今回の一番の笑いどころはヤッチの変な顔(・∀・)ニヤニヤ でも、テツに「がんばれ」と言って貰ったときのヤッチの笑顔は凄く綺麗でしたね。
心をキュッと摘まれたり、熱くされたり、涙を流させられたりするドラマ。
本当に見てよかったと思っています。
Posted by ショコラ at 2006年03月05日 15:27
こんにちは。コメントありがとうございます!

みいちゃんさん。
私もこのドラマが好きなので、視聴率が低いのが
残念です。
もっと沢山の人に見てもらいたいですね。

ショコラさん。
ヤッチ、おもいっきりヘン顔してましたね〜!
そしてテツに勇気付けられた時の笑顔はショコラさんが
おっしゃるようにとても綺麗でした。
一体どんなエンディングが待っているのか、
早く知りたいです。
Posted by ちーず at 2006年03月05日 16:18
さくらです♪

402便の乗員・乗客達に残された時間も後いよいよ3日。別れの時が迫ってきてますね。毎週水曜日に用事が入ってしまって、見れないんですが・・ここで復習させてもらってます。今回の話しのレビューを読んで、何故402便が10年の時を超えたのか、なんとなくわかったような気がしました。ひょっとしたら、402便は時空の渦に飲み込まれた後、ホントに墜落してしまったのかもしれません。でも、乗員・乗客全員心がいい人達なので、神様がこのまま死んでしまうのは可哀相に思い、本来なら見ることのできなかった10年後の世界で、10日間だけ生きることを許した・・。だから、402便は10日だけ10年の月日を越えたのかもです・・。ハッピーエンドを期待されてる方達には悲しい推測ですが、なんとなくそんなことを思いました。

確かに、満足度が高い割りに視聴率低い気がしますね。私もいいドラマだと思うので、色んな人に見て欲しいです・・。
Posted by さくら at 2006年03月06日 08:42
後、間違い部分ここでもみつけました・・。

「積乱雲です。迂回しますか?」記帳に尋ねるテツ。
記帳ではなく、機長ですね・・。

またまた、細かな指摘失礼します・・。
Posted by さくら at 2006年03月06日 08:44
さくらさん。
なるほど。時空に飲み込まれ、本当に墜落してしまった。
だとしたら、これは神様からのプレゼントですね。
10年後に戻った彼らが、ブラックホールに飲み込まれずに
新たな人生を生きていけるとうれしいです。
ここでも訂正ありがとう!
Posted by ちーず at 2006年03月07日 12:11
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