2006年03月09日

神はサイコロを振らない the 8th day

『残された3日間・・・皆を俺が助ける』

=東洋航空402便が再び姿を現した8日目
残された時間は、あ3日=

「今からホテルに来てくれ。」
「私にも・・・いろいろ準備とか・・・」
テツ(山本太郎)の電話にヤス子(小林聡美)はドキドキ。
その後ろで菊介(武田真治)は手を胸に置き、ドキドキを表現!
ヤス子が振り返ると、ニコっ!!
「とにかく来てくれ。甲斐さんや加藤教授もいるから。」
「え!?」
「ゴチャゴチャ言ってるなら、私がそっちに行こう!
 5秒以内に、君の住所を言いたまえ。」
電話をテツから奪い、加藤(大杉漣)が言う。「まあそういうわけで・・・
 二人っきりで会おうという計画は無残にも砕け散ってしまったが・・・」
家に集まったみんなの様子を部屋の向こう側から様子を伺う菊介。
「君は屋敷わらしか!」と加藤。
「あの、弟です。」
「弟!?」
「お前も一緒に話聞くか?」とテツ。
「いいのアニキ!?」
「アニキ!?
 ヤス子ちゃんの弟に自分のことをアニキと呼ばせる君の行動は
 間違ってるぞ!」
「ヤ、ヤス子ちゃん!?」とヤス子。
「君とヤス子ちゃんは、赤の他人だろ!?」
「誰が誰を何と呼ぼうと、いいじゃないですか。」とテツ。
「話、始めませんか?」一番若い甲斐航星(中村友也)がその場を治める。
「2月19日、午後9時32分4秒、402便の乗員乗客は10年前に引き戻されます。
 そして、402便が引き戻される時点は、
 マイクロブラックホールに呑みこまれる 以前であることがわかったんです。」
甲斐(尾美としのり)が説明する。

助かる可能性がある、とテツや航星。
助からない、と加藤。

そこへ亜紀(ともさかりえ)が実家から戻ってくる。
テツと航星は、10年前に戻った直後から、マイクロブラックホールに
呑みこまれるまでの3分間に何かをすれば、全員助かるかもと、期待を抱き
亜紀に説明する。
だが加藤教授は、例えマイクロブラックホールを回避しても、その後に
何らかのトラブルに巻き込まれる可能性がある、と言い、
君たちは助からない、と言い切る。
10年前の乗員乗客は、今の記憶を全て忘れてしまうからだ。

「402便って今どこにあるの?」と菊介。
「長崎空港の格納庫。」とテツ。
「じゃあ、長崎空港に行って、402便の自分がそれぞれ目に入るところに、
 注意書きを貼っておくっていうのは!?
 マイクロブラックホールにご注意を、とか、
 今から何か起きるけど、何が起きるかわかりましぇーん、とか。
 要は、回避するためのヒントを、」と菊介。
「10年前の状態に戻るんだから、今そういうことをしても意味がないんじゃ
 ないんですか?」と航星。
「ガムテープでしっかり貼っておけばさ、」と菊介。
「ああああ!剥がれないように、って、そういう問題!?」と亜紀。
「何か貼ったり書いたりしても、引き戻される時点で消えてしまのでは。」
「消えないように油性マジックで。」
「そ、そ、そうね。身体に書いておくとか。
 この際、刺青とか!」と亜紀。
「それも、消えるんじゃないかな。」と航星。
「消える、消えない以前に、それはちょっと・・・」と菊介。
「ちょっと、何!?」
「見るたびに、服脱がなきゃならないわけだし・・・」
「脱ぐわ、この際!」
「いやでも、脱ぐってことにまず、気付かなきゃならないわけですし。」と航星。
「じゃ、脱げって言ってくれる?」亜紀がテツに言う。
「え?俺が!?」
「操縦席に、亜紀を脱がせって書いておいて。」
「でも、それも消えてしまうわけだから・・・。」
「じゃ、どうすればいいの?」
「記憶を戻す、そういうのは、使えるんじゃないかな。
 だから、書いたり貼ったりするんじゃなくて、
 他の方法を探せば。」とテツ。
「どうあがいてみてもどうしようもない。
 冷静になって現実を見なさい。」と加藤。
「今、この現実にいる亜紀は、亜紀一人なのよね。
 10年前も、亜紀だよね。
 もし、助かったとしたら、今ここに、10年後の亜紀もいるってことじゃ
 ないのかな。
 でも、今ここに10年後の亜紀はいない。
 いないってことは・・・」とヤス子。
「そう。助かるということはあってはならない。」と加藤。
「今の現実が、違うものになってしまうから。」と甲斐。
「そう。どの時点に戻ろうと、何をどうしようが、
 402便の乗員乗客全員死亡。
 この歴史は、我々人間が変える事は出来ない!」と加藤。
「残念だが、加藤教授の言うことは正しいと思う。」と甲斐。
「それでも、何とかしたいんです。
 何とかして、助けてあげたい。」と航星。
「助けてあげられるものなら、助けてあげたいよ、みんな。
 10年前に戻って、死んじゃうなんて・・・。」と亜紀。
ヤス子も、乗員乗客一人一人を思い浮かべる。
「俺が・・・俺が助ける!
 俺が、忘れなきゃいいんです。
 忘れずに、マイクロブラックホールを、避けて・・・
 うん。避けて・・・
 その後に起きるアクシデントを、事前に回避すればいいんです!
 俺が忘れずに、しっかりと、操縦席に向えばいいんだ。そうだ!」
「忘れたくなくても忘れてしまうんだよ。」と加藤。
「忘れませんね。」
「忘れるんだ!」
「忘れません!」
「忘れるんだって!」
「忘れないんだって!」
「忘れるんだってば!」
「忘れないんだってば!」
「君は!一体どういう男だ!」
「こういう男ですよ。」
「君が助かると、この世で君は二人いることになるんだぞ!」
「二人いようが三人いようが関係ないです!」
「私の理論を否定するのか!?」
「理論なんて関係ないですね!」
「なんだとー!」
「402便が、何事もなく、長崎空港に到着できるように、俺がしますよ!
 俺は、今話したことも全部、
 今目の前にいる、あなたのことも、
 甲斐さんのことも、
 可愛くて、情けない弟のことも、
 ・・・恋人のことも、
 絶対に、忘れませんから!」

「いつだったか、加藤教授が言った。
 神はサイコロを振らない。
 我々人間も、神のそれに従うしかない。
 でも、本当にそうだろうか?
 本当に、神はサイコロを振らないのだろうか。」


甲斐(尾美としのり)が乗客たちを集め、加藤教授の出した時間を
説明する。
「もともと死んでいるのだから。」
ほとんどの乗客は諦めている。
「死ぬとか言われて怖くないの!?」啓太(丸山智己)が言う。
「怖いですよ。怖い。
 死ぬのが怖くないことはないですよ。
 しかし、こんなことを言ったら何ですが、一人じゃない。
 みなさん一緒だ。
 運命を共にする人がいる。」と神蔵(ベンガル)。
「そうね。たった一人で放り出されるわけじゃないから。」と英子(大川栄子)。
「うん、そうだよ。・・・私がいるじゃん!」と藍(矢沢心)。
「10年前、402便の消息が絶ち、皆さんの死亡が確定された。
 それは本当に突然のことでした。
 残された家族は、深い絶望と後悔にさいなまれました。
 でも、今回は違います!
 突然ではなく、あと3日あるんです。
 最後の日々を、大切な人と過ごすことが出来る。 
 別れを慈しむことが出来るんです。
 どうかそんな風に、残りの日々を捕らえてみていただけますか?」
甲斐は乗客たちにそう話した。

柚子(市川実和子)は、桃子(佐々木麻緒)に後押しされるように、
中武(明星真由美)とお笑いライブをするための場所を借りて欲しい、
とヤス子に頼んだ。
「大きくて、広い劇場です。
 そして、何千何万というお客さんを集めて下さい!
 お願いします!
 劇場をお笑いでいっぱいにするのが、中武さんの夢なんです!」
「先輩には、内緒で用意してあげたいんです。
 最後に、先輩の夢をかなえてあげたいんです。」
頭を下げる親子。
「わかりました。早急に手配します。」
「やったー!!
 先輩には、内緒だよ。 
 あ、そうだ。チラシもお願いできますか?
 思い出に残るように、素敵なやつを。
 最近はパソコンとかですぐに作れるんですよね。」
柚子はそう言いメモリーカードを渡す。

その頃、中武も柚子らを喜ばせようと自ら会場を探し、見つけ出していた。
そして、手書きのポスターを書き上げ、嬉しそうに見つめる。
柚子との再会を思い浮かべながら・・・。

テツは大屋本部長(岸部一徳)に、今から世界中の研究者を集めて欲しいと
頼んでいた。
機長に、積乱雲を迂回するかどうかの決断していた時のことを覚えているか、
とテツが問う。
「あの時点に、自分たちは戻るんです。」
「もし、迂回していたら・・・」
「違う結果が出ていたかもしれない。
 ひょっとして、救えるんじゃないかと・・・。
 自分は、東洋航空の操縦士として、402便の乗員乗客を全員救うのが、
 一つの使命だと思っています。」
「そうは言っても、我々の手には余る問題ですよ。」と大屋。
「上には伝えておきます。調査は、引き続き行われていますから。
 その報告を待って、上からの指示を仰ぎましょう。」
大屋はそう言い話を断ち切った。

大屋本部長がヤス子に言う。
「似てますね。木内哲也君と君。」
「髪の長さも背格好も全然違います。」
「そういう意味ではないでしょう。」
「ええ・・・。」
ヤス子は劇場を借りることになったと報告する。
「時間がないので勝手にやらせていただきます。
 私が個人的に勝手にやるという、一応ご報告に来ただけですので。」
「なぜそこまでするんです?
 君が何もそこまでお膳立てする必要はないと思いますが。」
「ずっと見てきたんです。
 長崎空港に降り立ったとき、
 10年ぶりの窓越しの再会。
 それからの数日間、みなさんのさまざまな思いを見てきました。
 決して上手くお世話が出来たとは思えていませんが、
 私のような者にも、奇跡のような瞬間に立ち会うことが出来たんです。
 最後まで、お世話係をしっかりとやり遂げたいと思います。」
「君にとっても、奇跡なんじゃないですか?
 似たもの同志の、木内君と君にも、別れが近づいているんじゃないんですか?
 君が望むなら、休暇を取っても構いません。」
「・・・それは、有給休暇ということですか?」
「もちろん。」
「勝手なことをするから、クビ、とかじゃなくて?」
「あなたの頑張りを、認めようとしているつもりですが。
 残りの三日間、自分の為に使ったら、どうですか?」
「私・・・実は私、最後までやり遂げますと、先ほどカッコイイことを
 言いましたが、
 実はずっと寝不足で、化粧の乗りは悪いは、髪はボサボサだは、
 なんかちょっと、思ってたんです。
 もう、乗客のことはいいから、休んでいいって、
 誰か言ってくれないかなーって。
 まさか大屋本部長が言ってくださるとは・・・びっくりです。」
「休みなさい。」
「いえ、びっくりして今一瞬休みました。
 心が休まりました。
 もう充分です!ありがとうございます。
 ・・・ありがとうござました。
 黛ヤス子、頑張ります!」

その頃藤吉(片桐仁)は中武に呼び出され、招待状を託される。

ヤス子は元気を取り戻し、会場探しに歩き出す。
そして、立派な会場を借りることが出来た。

自分の口座から大金を引き出し、支払いを済ませた。
「前日なので、キャンセルしても、これは戻りませんよ。
 いいですね?」
担当者に確認され、ヤス子は笑顔で頷いた。

黛家の縁側に並んで座る菊介と亜紀。少し離れた所に加藤。
「人間はね、誰しもいつかどこかで、生死に関わる。
 とてつもなく重大な自体に直面する瞬間がある。
 それがたまたま君たち402便の乗員乗客に訪れた。
 私はそれを伝えたに過ぎない。
 恨むなら、運命を恨みなさい。」
加藤の話を聞いているのかいないのか、菊介と亜紀は頬杖をつき
考え中。
「あ!電話!!
 私が消えたあと、402便の私のとこ、電話して!思い出せって。」
「飛行機の中は携帯電話、使用禁止ですよ。」
「あー!!」
「聞いてなかったの、今の話!」と加藤。
「パソコンどうでしょう!?」と菊介。
「メール?」
「機内に何か持ち込むこと自体不可能だよ。」と加藤。
「私メールってよくわかんない。」
「だから無理なんだってー!」と加藤。
「わかった!超能力は!?テレパシー!」と亜紀。
「聞きなさいよー!」
「私が消えた後、402便に向ってテレパシーを送る!」
「僕そういう力・・・」
「今やってみよう!」
二人は向き合い目を閉じて念じる。
「ねえ、年長の私の話をさ!
 もうちょっとさ、ちゃんと聞いてくれよ!」
「カトちゃんがうっとおしい・・・」
菊介、亜紀のテレパシーが届いた・・・!?
「嘘うそウソ!」(BY亜紀&菊介)
「何で君たち、そんなに楽しそうなの!?」
亜紀は、忘れたくても忘れられない強烈な思い出を作っておくのは、と提案。
「例えば・・・結婚式!
 テツとヤッチの!」
加藤が慌て出す。
「ねーちゃんの結婚式かー。確かに強烈で猛烈かも!」
楽しそうに話す二人。
「ヤッチの結婚!?」割り込む加藤。
「うるさいよー!」(BY亜紀&菊介)

チラシのレイアウトを見せられ大喜びの柚子。
「東京シティーホール!すごーい!!」
「これで良ければ、すぐに印刷に回します。」
柚子は練習もあるのでと、中武にポスターを見せに行く。

会場を重複していると気付いた藤吉は、ヤス子に中武から貰った
手書きの招待状を見せる。
『中武昇子&浜砂柚子
 奇跡のオン・ステージ!
 今ここに氷遠の友情を誓って
 別れに涙はキンモツ
 笑いの思い出を
 場所・下北ふれあいホール
 日時・2月18日・12時開演』
手書きのチラシを見つめるヤス子。
藤吉は中武が言っていたことをヤス子に話す。
『私の夢を応援してくれたあんた達家族の笑ってる顔を見てさ、
 それで、消えていくのが私の夢だよ。
 それが私の、今の夢だよ。』

「東京シティーホール!?そんな大きいところ、どうやって借りたの!?」
「黛さんにお願いしたんです!」
柚子の嬉しそうな様子に、中武は自分が借りた会場のことを言えなくなる。

中武と話すヤス子。
「すみません。中武さんの意向も聞かずに勝手なことをしてしまって。」
「いいよもう。それ、破って捨てておいてくれる?
 会場は私が電話して断っておくから。」
「私が断ります。」
「自分で手配したんだから自分でやるよ。」
「私が手配した方を、キャンセルします。」
「え!?」
「これ、柚子さんにお渡ししてもいいですか?
 今ここに、氷遠の友情を誓って・・・
 ちょっとこれ字、間違ってますけど。(氷→永)
 こんなあったかいチラシ、私には作れませんよ。 
 捨てるなんて出来ません!
 中武さんの気持ちを、柚子さんにお伝えしておきます。」

ヤス子は柚子に招待状を届けた。
「忘れんなよ、って言ってました。
 広くて大きな劇場を蹴って、
 名もない小さな会場を選ぶ。
 そんな、バカな芸人のタマゴもいたんだってことを。
 でもそれは、誰の力も借りず、自分で借りた会場だから、
 それが自分にとっては最高なんだって。」
「野球で言うと、ヤンキースの誘いを断って、草野球の試合に行くような
 ものですね!
 そういう人生もカッコいいと思います!
 エンタツアチャコも、常識を破り、
 新しい笑いを生み出したのです!」と桃子。
柚子は中武に会いに走る。

「先輩!
 先輩と一緒なら、どこだっていいんです!
 やりましょう、先輩!思いっきり笑われましょう!
 先輩の夢が、私の夢です!」
二人は泣きながら抱きしめ合った。

ヤス子は会場をキャンセルし、ポスターのレイアウトを破った。
「何やてるの?こんなところで。
 神蔵さんたち、帰るって、聞いた?」テツに突然声をかけられ驚くヤス子。

結婚写真にテツとヤス子の顔写真を重ねてはしゃぐ亜紀。
「あの・・・」
「何よー。二人っきりになったらテンション落ちたんじゃないの?
 またカトちゃん呼ぶ?」
「あの・・・残り3日、ずーっと姉ちゃんとテツさんのこと
 かまってるつもりですか?
 人のこと、かまって、生涯終えていいのかなーって。」
「・・・ほんとだよね。
 私もそう思ってね、実家に帰ってみたりしたんだけど、 
 なんか落ち着かなくて。
 私ってさ、夏休みの宿題もギリギリになるまでやらないタイプだったし、
 あれ、ちょっと違うか・・・。」
「どっか行きたいとことか、したいこととかあれば、」
「うーん。いや、私は、普通がいいんだよね。
 なんか、ごく平凡な、どこにでもある日常っていうの?
 そんな風に、普通にしてたいんだよね。 
 だから、感謝しているよ。菊坊がいてくれて。
 ありのまんまの私でいられたしね!
 からかって遊んだりも出来たし。飽きなかったよ。
 ・・・うん。楽しかった。
 菊坊が、いてくれて、よかったよ。
 サンキュ!」笑顔でそう言う亜紀。
菊介が亜紀を背中に頭をちょこんと乗せ、そして抱きしめる。
「どうした?」亜紀が優しく尋ねる。
「・・・」
「何、感動してんの?
 もしかしてさ、人からサンキュ、なんて言われたの、初めて?」
菊介が首を横に振る。
「じゃあ、10年ぶりとか。」
菊介がまた首を横に振る。
「しょうがないなー。
 しょうがいなー、菊坊は。」
自分の肩で泣く菊介の頭を優しく撫でながら、亜紀が優しくそう言った。

「コンサート、辞めたの。
 お母さんに無理しなくていいって。
 泣かれちゃった。
 残された時間は、あなたの好きなようにしていいわよ。
 お母さん、そう言ってくれた。」
瑠璃子(成海璃子)が航星にそう言う。
「だったらさ、一日だけ、俺に時間くれない?」
「え?」
「映画でも、行こうよ。」
「・・・」
「ね!」
「うん!」瑠璃子が嬉しそうに頷いた。

明るい未来を祈って長崎への帰郷を決意する神蔵夫妻。
テツとヤス子が見送りに駆けつける。
「正直、この10年後の世界では、あまりいいニュースは聞けなかった。
 政治家は相変わらずだし、景気は良くないし、
 子供たちは、防犯ベルなど持たされて、
 生きにくい時代になりました。
 教育者の端くれとして、一つお願いがあります。
 これから先の10年を、今よりずっと素晴らしい10年にしてください。
 それは、今この時代を生きているあなたが、
 あなたの人生を豊に生きるということです。」
ヤス子は無言のまま微笑み、そして頷いた。

「これから先の10年かー。
 いいよな、あの夫婦。引き戻される時も一緒だもんなー。
 ずっと一緒にいられる。」
テツが寂しそうにそう言った。
「ねえ!」
「あ、送ってくよ。まだ仕事残ってるんだろ?」
「・・・うん。」
ヤス子は言おうと思ったことが言えなかった。

ヤス子を社まで送るテツ。
早川機長が402便の整備点検の為に長崎へ向ったと、
テツがヤス子に言う。
そこへ加藤がやって来た。二人の間を引き裂くように部屋へ駆け込む。
「あ、10年前に引き戻されたとき、記憶を蘇らせる方法は
 見つかったのかなー!?」
「いえ。」
「乗員乗客を救う方法は?」
「いえ。」
「何か打つ手を考え付いたんだろ?」
「いえ。」
「何もないのか!?
 あんなおおぐち叩いておいて。」
「いいじゃないですか。」とヤス子。
「よくないよ!こいつは私をバカにしたんだよ。」
「してませんよ。」とヤス子。
「したよ!理論なんてどうでもいいって!」
「教授の理論を踏まえた上で、何か出来ることはないかと
 思っているだけです。
 この人は人をバカにするような人じゃありませんから!」
ヤス子がむっとして答える。
加藤、思わずヤス子の髪をぐしゃぐしゃに!
ヤス子がやり返す。
加藤が、そしてヤス子が、お互いの髪をぐしゃぐしゃにし合う。
「ちょっと待ってちょっと待って!」
間に入るテツが思わず笑う。
「あの・・・
 バカにしたつもりはなかったんですけど、 
 失礼な言い方してすみませんでした。
 俺は、最後まで諦めませんよ。
 けど・・・もし・・・もし、何も打つ手がなくて、
 俺が死んでしまったら、
 そしたら、あいつのこと、時々かまってやって下さい。
 あいつ、それなりに大人になって頑張ってるんですけど、
 意外と弱いところあるんですよね。
 人にはそういうとこ見せないんですけど。
 一人で生きてます、みたいな顔しちゃってるから。
 時々、応援してあげて下さい。
 これから先、俺はずっと側にいてやれないから。
 俺が死んだあと、バカな男がいたよなーとか、
 二人で笑い飛ばしたりとかしてね、
 あいつの肩の力、抜いてやって下さい。
 見守ってやって下さい。
 よろしくお願いします!」
テツの言葉を加藤は書類に向き合いながら黙って聞いていた。
テツはヤス子に「じゃあ!」と挨拶し、帰っていった。

「ほんと、バカな男だ。
 ものすごくバカだ。
 君も帰ってくれないか。
 論文の最後の仕上げがあるんだ。
 君がそこにいると気が散るから。
 帰ってくれ。」
ヤス子は動けずにいた。
「帰ってくれって!」
「・・・」
「もう!!
 ほら!
 テツヤちゃんを追いかけなさい!」
「テツヤちゃん!?」
「いいから行きなさい!
 ・・・
 神はサイコロを振らないが・・・
 ヤス子ちゃんはサイコロを振れ!」
「は!?」
「アインshタインの言葉じゃない。
 今のは私の言葉だ。
 自分の人生のサイコロは・・・自分で振るんだ!」
「・・・」
「っほら!
 あと2日と2時間だ。バカ女。」
加藤教授に背中を押され、ヤス子はテツを負った。

ロビーに走っていったが、テツはいなかった。
がっかりとするヤス子。
その背後をテツが通りかかる。
「ん!?」ヤス子の背中に目が点のテツ。
『ヤス子ちゃんは
 テツヤちゃんのことが
 今でも大好き!!』
赤いハートマークに囲まれたノートの切れ端には、
そう書いてあった。
それを外そうとしたとき、ヤス子が振り返る。
「おぉぉ!」
「おぉぉ!」
「おぉぉ!うっす。」ヤス子は今度は嬉しそうにそう言う。
「う、うす。」
「今、加藤教授がね、」
「あ!教授ー!」悪戯を納得するテツ。
「加藤教授が、あと2日と2時間だって。」
「あー。」
「何か予定は?」
「うん?」
「予定。」
手帳を調べるテツ。
「あー、特にないな。」
「では・・・一緒に、過ごしますか?
 最後の時間は、自分の為に使おうかなーって。
 消えてしまう、その最後のときは、一緒に過ごしましょう。
 私と一緒にいて下さい。」
ただただヤス子の顔を見つめるテツ。
ヤス子はペコっとお辞儀をし、そして歩き出す。
テツが嬉しそうにその後を追う。
テツがヤス子の背中をチラチラと見る様子に、何かあるのかと
必死に手を背中に伸ばすヤス子。
「綺麗なターンだね!」テツが笑う。
「取ってよー!」

「あなたが、今この時を忘れてしまっても、
 私は覚えている。 
 402便がやって来たことを、私達は忘れない。
 何もかも消えてしまうなんて嘘である。
 私たちの中に、思い出は残る。
 今この時を一緒に生きた、かけがえのない思い出は残るのだ。」


下北ふれあいう広場の会場は満員。
二人は生き生きと、芸を披露。
観客は笑顔と拍手を送った。

「いつか、笑って話せることが来るのだろうか。
 あんなことも、こんなこともあったと、
 笑って話せる時が。」


菊介は、瑠璃子を訪ねていく。

亮(小清水一輝)を追う黒木(鶴見辰吾)。
「嘘つき!お父さんもお母さんも、だいっ嫌い!!」
亮はそう言いホテル内を箸っていった。

『残された時間は、あと1日と9時間・・・
 最期の1日を、
 あなたなら、どう過ごしますか?』



中武さんの夢は、大きな会場を笑いでいっぱいにすることではなく、
柚子たち家族の笑顔でした。
彼女の夢は叶ったのですね。

それにしてもヤス子はすごい!
老後の為にコツコツ貯めておいたお金を、惜しげもなく
他人の為に使ってしまう。
そして、それが戻ってこないとわかっていても、
キャンセルしてしまう!

桃子は子供だから仕方ないとしても、ちょっと柚子はヤス子に頼りすぎ!
会場を押さえたり、チラシを作ったり、
金銭的な問題はあるかもしれないけど、
自分で出来ることは自分でやった方が中武への気持ちも現れるし、
あまりにもヤス子に頼りすぎで、気分が悪かった!

でもそれは、このドラマの中のメッセージの一つでもあったのですね。
柚子も変わらなければいけないところがあった。

瑠璃子のコンサート、楽しみにしていたのだけれど、突然の中止!?
でも、普通の女の子として時間を過ごす方が、彼女にとっては
幸せなことなのですね。

テツ、ヤス子、そして加藤教授のやり取りも泣けた!
加藤教授のおかげで、素直に自分の思いを告げられたヤス子です。

402便が積乱雲を回避するには、どうしたらいいのでしょう。
飛行機の燃料を減らしておく、というのではダメ?
何とか切り抜けて、みんなが今よりもずっと素晴らしい10年を
過ごせるといいですね。




※次回(3月15日最終話)の放送は通常より30分遅く
 22時30分 よりスタートだそうです。



ランキングに参加中!応援クリックよろしくお願いいたします。
人気blogランキング    TV Drama Ranking



神はサイコロを振らない DVD-BOX小林聡美 ともさかりえ 山本太郎 B000E8RCQ8


4122046238神はサイコロを振らない大石 英司 中央公論新社 2005-12by G-Tools



4120035948神はサイコロを振らない大石 英司 中央公論新社 2004-12by G-Tools



神はサイコロを振らない オリジナル・サウンドトラック神はサイコロを振らない オリジナル・サウンドトラック


この記事へのコメント
ちーずさんコンニチワ。
昨日も良くって、もう一度思い返したくて遊びにきました。

「いつか、笑って話せることが来るのだろうか。
 あんなことも、こんなこともあったと、
 笑って話せる時が。」 

ヤス子の言葉にいつも涙が出ます。
テツはカッコイイなぁ。
昨日はカトちゃんも良かったですね。
菊介は何しに行ったんだろう。
みんなのラスト、いったいどうなるんでしょう。
ハッピーエンド・・・はやっぱ望めないのかなぁ。
Posted by なかなか at 2006年03月09日 10:37
こんにちは!ちーずさん♪
昨日はせつないお話でしたね。泣いてしまった私です。
テッちゃんとヤス子とカトちゃんのコンビネーション?もサイコー
でした。菊坊と亜紀のシーンも。亜紀は素敵な女性ですね。
笑いとせつなさでいっぱいになりました。
来週、最終回は・・・どんな結末になるのか・・今からドキドキしています。
Posted by rats at 2006年03月09日 11:37
こんにちは。コメントありがとうございます!

なかなかさん。
私も昨日と今日二度見て、同じポイントでウルウル。
カトちゃんもいっぱい笑わせて、そして感動させて
くれまいたね。
10年後、なんとかマイクロブラックホールを回避し、
トラブルを乗り越え、新たな10年をみんなそろって迎えてほしいです。

ratsさん。
コンビネーション、最高でした!
ある意味、中武&柚子の芸より面白かったよー。(笑)
二人の舞台もアットホームでとても素敵でしたが。^^
次週最終回、さびしいですね。
良質なドラマなのに視聴率がついてこなくて、残念です。
Posted by ちーず at 2006年03月09日 13:40
なんとか乗客の皆さんに助かって欲しいですが、
時間のパラドックスを考え始めると頭が・・・
いったいどうなるのでしょう〜
Posted by きこり at 2006年03月09日 16:19
ちーずさん、こんにちは。

亜紀と菊介のWボケには冒頭から楽しませてもらいました。
話してる内容はとっても深刻で
2人とも真剣なのに爆笑!
テツとヤス子同様、
この2人のやりとりももっと見ていたい気持ちです。
切ないシーンも良かったですね。
亜紀は菊介にお礼言ってたけど、
菊介はまだ言葉にならないみたいで、
見てて歯がゆいけど伝わってくるものがありました。

そしてラストのヤス子には、
今回も泣かされてしまいました。
テツのさり気ない受け止め方にも
グッときました。

来週が最終回だとか。
切ないけれど暖かい気持ちが伝わってくるこんなドラマこそ、
たっぷり時間を掛けて描いて欲しいのにと残念です。
Posted by のんのん at 2006年03月09日 17:18
はじめまして。

来週最終回なんて驚き!
10年前に戻るのではなく、10年後の今に戻ってくるのは駄目なのか?
やり方はわからないけど。
と、思ってしまう。

確かに10年前に生き返っちゃったら問題だけど
再び消えた後に、再度登場なら大団円なんだけど。
そんなにうまくいくわけないですかねー

てつとやっちとあきを見られるのが後一回だなんて。。。
Posted by QT753 at 2006年03月09日 19:39
こんばんわ。

もう昨日はホントに泣きました。
菊坊と亜紀のシーンです。

ああ、もうどうなるんでしょうか…。
今クールしっかり自分の目で見ているドラマはアンフェアとこれだけなので、最終回、すっごく楽しみです。
本当は白夜行も見たかったんですが、塾の時間と被ってしまい、このサイトで内容だけわかったつもりでいました。
もう受験も塾も終わったので、今日は見てみようかな、と思います。

このサイトには、寝てしまった!とか見逃した!とかビデオ録画するの忘れた!とか、真っ青になるようなハプニングがあったとき、本当に救われてます。
これからも更新頑張ってください!!
Posted by 夜色 at 2006年03月09日 19:59
こんばんは。コメントありがとうございます!

きこりさん。
何とかみんなが幸せな新たな10年後にたどり着いて欲しいところです。
科学的に考えると無理そうですが・・・。
一体どんなエンディングが用意されているのでしょう。

のんのんさん。
菊坊&亜紀のやり取り、微笑ましかったですね。
カトちゃんに背中を押され、テツに最後の時間を
一緒にすごそうと、やっと素直に言えたヤス子は
とても可愛らしかったです。
10日間ということなので、10話かと思っていたのに、
1話減らされちゃったのかな!?残念ですね。

QT753さん。
はじめましt!
10年後の今に戻ってきてくれたら、
今の優しい関係がずっと続くのに、と思ってしまいますね。
私も、もっとずっとこの人たちを見ていたい!

夜色さん。
受験、お疲れ様でした!
ちゃんとドラマをセーブされていたなんて、
偉いですね!
ここがお役に立てて光栄です。
白夜行はご覧になりましたか?
私は裏をオンタイム・録画なしで見て、
白夜行はビデオでチェック。なのでまだ見ていません。
そちらは明日記事をアップしますね。
またお待ちしています!
Posted by ちーず at 2006年03月09日 23:58
チーズさん、コンバンワ。
低視聴率に泣かされたドラマでした。
内容が派手ではなく、淡々と進んでいくから、
ジックリ見ていると、ドツボにはまるんですけどね。来週で会えないと思うと、寂しいです。
Posted by mari at 2006年03月11日 03:12
さくらです♪

久しぶりにこのドラマ生で見れましたが、来週で終わりみたいですね。エンディングどうなるのかわかりませんが、加藤教授のいうことが当たってる気がします。10年後の世界に10年後のアッチやテツがいない以上、仮にマイクロブラックホールが回避できたとしても、その後なんらかの事故等がおき、乗員・乗客全員、運命をともにしたと見るべきでは??今回の10日間だけの10年後の世界への冒険は、突然色んな未来や夢を奪われてしまった、402便の乗員・乗客への、神様のプレゼントだったんだと思います。大事な人が死んでしまって別れてしまう運命は、誰しも迎えるもので誰にも変えられませんが、突然の別れではなく、10日間という別れに対して覚悟を決める時間が出来た・・。突然の辛い別れではなく、死ぬ前ですが本音を言い合うこともできた。10年後の人達にとっては、今回の記憶も残っていくのだと思います。

10年前に戻ったアッチやテツや乗客達が助からなかったとしても、ある意味ハッピーエンドの結末といえるのではないでしょうか??私は、無理にアッチやテツや乗客を10年後も生かすのではなく、別れの場面が感動的に描かれ、その後はヤッチや菊坊や加藤教授の人生のいい思い出の中に、アッチやテツや乗客さん達1人1人のことが刻まれ、アッチやテツや乗客さん達は10年後を生きる人達に色んな影響を及ぼしながら、彼らの思い出の中で生きている・・みたいなラストが、このドラマにはふさわしいと思います・・。まぁ、どうなるかはわかりませんし、アッチやテツが10年後も生きてて欲しいという気持ちもわかりますが・・アッチやテツが結局10年後も生きてるってことになると、やはり作られたEDという風になってしまいそうで・・。どういうEDになるんでしょうねぇ。
Posted by さくら at 2006年03月12日 16:51
こんばんは。コメントありがとうございます!

★mariさん★
同じく、ドツボにハマっています。
キャラに愛着を感じているので、最終回が寂しいです。

★さくらさん★
さくらさんのコメントを読み、そういうエンディングを迎えることが
このドラマとしての成功なんだろうなーと思いました。
でも、みんなが消えてしまうのは悲しい!
一体どういうエンディングが用意されているのか。
ヤッチの元気な笑顔で終わるのかなー。
Posted by ちーず at 2006年03月12日 20:56
ちーずさんこんにちは
テツが、ヤス子を加藤教授に託すところ、
そして、加藤が、テツの方に行くように
ヤス子の背中を押したシーンは、泣けてしまいました。
寂しいけど、みんなには、素敵な時間をすごしてほしいですね。
Posted by まりこ(^▽^) at 2006年03月13日 17:29
まりこさん、こんばんは。
コメントありがとうございます!

加藤教授、背中を押しながらあんな悪戯を!
それがまた、感動的でした。

最終回を見たあとのコメントとなりますが、
とても満足のいくラストでした!
Posted by ちーず at 2006年03月16日 19:47
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。