2006年07月14日

下北サンデーズ 第一回公演

『小劇場と書いて「ビンボー」と読む!?』

「私は心から笑ったことがない。 
 それがなぜだがわからない。
 私は何かに付け、冷静かつ現実的な人間なのだ。
 いわゆる、年頃の人間が熱く心に抱く、
 夢と言うものを持ったためしがないし、
 おそらくこれからも持つことはないだろう。
 それは所詮人間は自然の摂理の一部、
 という一種の、科学的諦めの境地なのかもしれない。」


歩道橋からぼーっと原宿の町を見下ろしていた里中ゆいか(上戸彩)は、
ふと、街を行き交う人々を指を指しながら数えてみる。

「なのに・・・なのに、だ。
 そんな私に、これから始まる連続ドラマノヒロインをやれと言う。
 山梨から上京し、都会で一人暮らしを始めると言う、
 本来なら胸弾むような環境の変化でさえ、
 全く持ってピンとこない。
 そんな不感症の私に、である。」
原宿でクレープを買ってみたゆいかは、一口食べて
それをゴミ箱に捨ててしまう。

その頃、下北沢の小さな貸しスタジオでは、伊達千恵美(佐田真由美)、
八神誠一(石垣佑磨)サンボ現(竹山隆範)、キャンディ吉田(大島美幸)、
ジョー大杉(金児憲史)、寺島玲子(松永京子)、佐藤新(藤ヶ谷太輔)、
田所双葉(高部あい)ら、小劇団・下北サンデーズの面々が稽古に汗を
流していた。
隣の家の主婦が、スタジオから聞こえる笑い声に、迷惑そうに
窓を閉める。

ストップモーション(合図とともに御代にあったポーズを作る
演劇の基本レッスン)
感情解放(お題の感情を瞬時に表情にする演劇の基本レッスン)

そこへ、劇団の制作担当・江本亜希子(山口紗弥加)がやって来た。
「みんな集合!」
厳しい様子で団員たちに声をかける。

逃げようとしたサンボ、ジョー、キャンディに、「ハウス!」
山口さん、迫力あります。(笑)いいキャラだ〜!


「しかもそのドラマの舞台が、なんだかどよ〜んと
 しみったれた環境だとしたら・・・。
 これはもう、見るに耐えないと思うのだ。
 普通は・・・。」


自由が丘。
街でティッシュを渡されたゆいかは、そこに入った紙に書かれた
『利息時利22%』の文字に、戻ってティッシュを返す。

=ラーメン眠眠亭=
店主は替え玉だけを安いからと注文する劇団員、ジョー、キャンディ、
サンボに呆れ顔。
スープなしの、50円の替え玉に食らいつく三人。

店のメニューは、『餃子ゾンビ』『俺は俺の豆腐を食いたい』
『さすらいのニラレバ野郎』『人にやさいを』『情熱の酢豚』
『チャーハンギャング』『脳天津』『未来は僕等の中華丼』
『メンダメンダ』『ミサイルメン』『電光石火』
『もやしほしい』『ドブネズミミソ』『日曜日よりのシオ』
『すきごま』『あの娘にキムチ』『キング・オブ・チャーシュー』
時効警察のラーメン屋さんを思い出します。(笑)
店の前には髑髏が看板を掲げていて、不思議な雰囲気。
値段は、キング・オブ・チャーシューで800円。少しお安め?


「絶対にあり得ないと思うのだ・・・。
 このシチュエーション。
 ゴールデン・タイムでは・・・。」


実家から送られてきた沢山の野菜。
玄関には、祖父・富美男(北村総一朗 )が作った
『里中(男)』と書かれた表札。魔よけ、防犯対策だ。
電話口では、旅館を営む父()や母()が娘の心配をする。


「だけど今でも信じられない。
 これから巻き起こる、チープでディープなドラマの主人公に、
 まさかこの私が演じることになるなんて。」


"Funny Fanny"という店の前に集められた、八神、双葉、サトシンに、
サンボ、キャンディ、ジョーはある頼みごとをする。
 
「私とこの情けない人たちの空は、 
 確かにつながっていたのだ
 ゆっくりシャワーも浴びられない生活が、
 もうすぐ私を待っている。
 ・・・とんでもない夏。」


ここで女性のシャワーを浴びるシルエット。『イメージ映像
 ※里中ゆいかとは関係ありません』
というテロップに笑。


自由が丘から1時間半以上かけて千葉大まで通うゆいか。

千葉大学理学部入学説明会。
「時間間違えちゃった・・・。未熟・・・。」

やげて説明会が始まる。
学部長(谷津 勲)の挨拶の時、なぜか、一人、また一人、
そして全員がゆいかの方を振り返る。

ゆいかの隣に座る学生たちは、ゆいかに専攻を聞く。
「医学部」と答えるゆいかに
「それはわかってる!全員そうだ!」
「・・・えっと・・・ゆい科!?
 ・・・なんちゃって。」
このギャグに二人は大笑い。
「ギャグの偏差値は低いんだ・・・」とゆいか。

学部長の挨拶が終わると、突然一団が壇上に上がる。
白髪のカツラにスーツ姿のサンボが歓迎の言葉を述べる。
「新入生諸君、まずは入学、おめでとう!」
「・・・・・」
「おめでとう!!」
「・・・ありがとうございます。」
「君たちは、新に優れた、人材である。
 壊れそうなものばかり、集めてしまいがちな、
 ガラスの十代を、学校と塾の、往復に費やし、
 それでも飽き足りず、将来、役に立つのかどうか怪しい、学問を、
 必死になって習得しようとしている。
 まさに、バカの鏡である!
 人生棒に振ってでも、夢中になれる何かを見つけろ!
 その、薄っぺらい胸板を、夢や希望で、膨らませてみ!
 それでは最後に、みんなにお祝いの言葉を送ろう。」
舞台の上の三人が取り出したのはノコギリ。
そして突然教壇を切り始めた!
混乱する学生や講師たち。
すると黒尽くめの集団が現れ、「下北サンデーズ.com」と書かれた
HPのアドレスらしきものをPRし、嵐のように去っていった。

その様子を目の当たりにしたゆいかは、彼らの突拍子もない行動に、
不思議と笑みが漏れてしまうのだった。

ゆいかの隣に座っていた学生たちが、なぜ笑っていたのかと
聞いてみる。
ゆいかが「コマネチ!」としてみると、二人は死ぬほど笑いころげる。
「きつ・・・。」
そう言い残し、ゆいかは二人の前から立ち去った。

この二人も面白い!
この秀才君たちとは、笑いのレベルが違うんですよね。(笑)


「私は山梨県の山奥にある旅館の一人娘として生まれた。
 三代目の父が必死で切り盛りしたお陰で、
 今ではその辺り一帯、一番の老舗旅館だ。
 母は動物学者。
 私は学者である母の血をひいて、大学も理数系に。
 両親はいつもバタバタと忙しかった。
 だから私は小さい頃、両親に遊んでもらった記憶はない。
 そんな私の遊び相手は、いつも富美男おじいちゃん。
 チャンバラをしたり、お唄を歌ったり、」


「ゆいかが、主役だ!」
祖父はそう言ってくれた。

「習字を習ったり。
 でも、時々なぜだかいなくなってしまって、
 そんな時は、おじいちゃんの部屋でよく泣いていたっけ。
 今思えば、どうしておじいちゃんは時々いなくなったんだろう。
 三度笠と一緒に・・・。」


逆方向の電車に乗っていることに気づくゆいか!

「私にはどうしても忘れられない記憶がある。
 それは新学期がもうすぐ始まろうという、
 私の9つの誕生日。」


祖父に欲しい物はと聞かれたゆいかは、
「私、欲しい物はない。
 おじいちゃんが、遊んでくれるから!」と答えた。

「あの時のおじいちゃん、とっても悲しそうな目をしていた。
 多分、その頃からだ。
 私の顔から、次第に笑顔が消えていったのは・・・。
 って、何でそんなこと思い出してんだ?私・・・。」


その晩、ゆいかは、早速今朝知ったサンデーズのHPにアクセス。
メンバー紹介を見たゆいかが呟く。
「痛々しい・・・。」
4月14日〜17日まで、『鏡の中のカルメン〜響け!電気釜〜』
という芝居が公開されるようだ。
前売り1800円、当日2100円、指定2300円。
場所は、下北OFFOFFシアター。

「劇団かぁ。
 オペラとかミュージカルとか、そんな感じかな・・・。
 それにしてはチケット代安いし・・・。
 下北沢・・・日曜の夜なら・・・!」
舞台に並んだ一同を思い出し、つい笑ってしまうゆいか。
「いや!!あり得ない!!あり得ないぞ、里中ゆいか。」

5日後。
いつものようにスーツを着込んだゆいかが、下北沢にいた。
時間は五時少し前。
「またもや早く着いてしまった。未熟・・・。
 人口密度的には原宿より混んでいるかも。」
人差し指を少しまげて、街にいる人々を数えるゆいか。
「原宿未満・・か?」

街を見渡すと、OFFOFFシアターの看板が目に飛び込んできた。
同じフロアーには、駅前劇場が入っている。

時間まで、下北探索をするゆいか。
『鏡の中のカルメン』のポスターが貼ってあるラーメン店に
足を止める。髑髏が看板を持つ眠眠亭だ!
ドアを開けると、バンドの生演奏!そして「いらっしゃい!」の挨拶。
演奏が終わると、三人は厨房に、一人は向かいのギターショップに
急いで戻る。

「この街ってすごいゴチャゴチャしていますよね。
 細い路地に、古着屋とか、雑貨屋とかいっぱい並んでて。」
「昭和14年から、びっしりだよ。」店長が説明する。
「そんなに!?
 私ちゃんと劇場に戻れるかな・・・。」
「これから芝居見にいくの?」
「下北サンデーズっていう、
 表に、ポスター貼ってありましたよね?」
「え、その格好でサンデーズ?」
「お芝居見に行くのに正装は基本でしょ?」
店長や店員が笑い出す。
「これ、美味しいですね、ほうとう。」
「ラーメンだよ!」
「メン・・ダメンダ」メニューを指差しゆいかが言う。
「メンダメンダはな、麺だけじゃないんだよ。
 スープも美味いってとこがミソなんだよ。
 でもミソラーメンじゃないんだよ。」
店長の言葉に店員のマキとハイロも「イェー!」とあわせる。
店長は、サンデーズの連中はスープを飲まずに替え玉だけ食べていくと
文句を言う。
「ヤツラの主食は主にパンの耳と替え玉50円だよ!」
彼らがこの店に来ると知り驚くゆいか。
酷いときには閉店語も「〆のラーメン・・・」と呟きながら
やって来る。
「ノコギリでカウンター切ったりしません!?
 あれ、さっき、主食はパンの耳って言ってませんでした?
 役者さんって、お金いっぱい持ってるんじゃないんですか?」
ゆいかの言葉に笑い出す三人。

そこへ、劇団・ロリコン伯爵の役者たちがチラシを貼らせて欲しいと
やって来た。
快く引き受ける店長。
「オーイ。これ、貼っといてー。」
とタモリさん風に店員に渡す。
「色んなバンドや劇団やダンサーの連中が、
 宣伝させてくれって店訪ねてくるんだよ。
 最近じゃ、美観を損ねるとか抜かしやがって拒否る店も増えたけど、
 まぁ、これもこの街の匂いっていうかな。
 伝統みたいなもんだからさ。
 俺は気に入ってるよ。」と店長。
「あの・・さっきのジャーンってうるさいやつ、
 もうしないんですか?」
「うるさい!?
 あれはお客さんが来た時だけな。」
「じゃあさっき飛んでった人は?」
「あれは向かいのギター屋の黒沼さん。
 通称、リッチーブラックヌーマ!
 ねえ、麺伸びちゃうよ。」
「はい!」
ゆいかはその時、もうすぐ6時になるということに気づき悲鳴を上げる。

「未熟・・・未熟・・・」
そう呟きながら劇場へ走る。


隣の『駅前劇場』には行列が出来ているが、
『OFFOFF劇場』には一人も並んでいない。
チケットを買う段階で、思わず引き帰そうとするゆいかを、
亜希子たちは逃がさなかった!

劇場には、サンデーズにスタジオを貸しているオーナー・下馬伸朗(古田新太)や、
退屈そうな様子で開演を待つ代沢二朗(藤井フミヤ)の姿があった。

どこに藤井フミヤさん!?と思いビデオで確認したら、
いたいた!サングラスに帽子かぶって、大あくび!


「こんな近くでいいのかな・・・。
 緊張してきた・・・。」

飲食、写真撮影、携帯電話。
怒られまくるゆいか。

やがて会場のライトが落とされる。
ゆいかは舞台にスポットライトを浴びた、ウェディングドレス姿の
女性を見る。
よく見ると、それはゆいか自身。自分に向って微笑み、手を差し伸べる。
「わたし・・・。」

やがて舞台が始まる。

「それから目の前で起こったことは・・・。
 そう。それは私にとって奇跡の出会いだった。
 テレビも映画も、ましてや舞台など
 まともに見たことのない私が、
 これほどまでに心を揺さぶられたことが
 今まであっただろうか。
 華麗なダンス。
 表情豊かな役者さんの演技。
 テンポのいいセリフの掛け合いと、 
 目の覚める様な早変わり。
 めくるめく劇世界に、私の心はずっと高鳴りっぱなしで、
 悲しくもないのに涙が溢れてきて・・・。
 正直、ストーリーはよくわからなかったけど、
 全身全霊で役を演じる彼らは、
 今までの私の周りにいたどんな人たちよりも
 生き生きとして見えた。
 そして私は気づいてしまったのだ。
 舞台をやっている間中、私の心はゆっくりと、
 だけど確実に、音を立てて動いているのを。」




そんなゆいかに、サンデーズの座長・あくたがわ翼(佐々木蔵之介)が
親しげに話しかけてくる。
「そんなに良かった?この芝居。」
「え・・まあ・・・。」
「ありがとう。
 この作品は、俺自身が抱えた心の闇を、
 ビビッドに、かつ、グルービーに、センシティブに
 立体化したものなんだ。」
あくたがわはゆいかの手を握り締め、
「君みたいな、素晴らしい観客と出会えて光栄だよ。」と言う。

そこへ、役者たちが戻ってきた。
「さっきまで舞台にいた俳優さん・・・
 !!
 本当にパンの耳食べてる!!」

その場をそっと立ち去ろうとするゆいか。
主演の千恵美の登場に、「カルメンさん、足長っ!」

役者たちは自分たちの公演に大満足。
「きっと、演劇の神様が舞い降りたんですよ。」と八神誠。
「演劇の神様・・・。」
さっき自分が見た、ウェディングドレス姿の自分を思い浮かべるゆいか。

「この子はな、演劇の神様ならぬ、
 演劇のミューズ(女神)かも知れないぞ。
 10年間サンデーズやってきて、
 これほどまでに熱く俺たちの芝居をキャッチしてくれた子は
 いただろうか。
 感動のあまり立ち上がることも出来なかったなんて。」
あくたがわが劇団員たちにゆいかをそう紹介する。
その場を去ろうとしたゆいかだが、誠一にリストバンドを見せられ、
大学の説明会に乱入してきた謎の一団がサンデーズのメンバーだったと
気づき驚く。
実はサンボたちは、亜希子にチケット販売ノルマの件でしぼられ、
ラーメン屋店主・広田のアイディアの元、
各大学でパフォーマンスを繰り広げていたのだった。
「俺たちのようにメッセージ、身体に直書きしてよ。」
そう広田に言われ、体に劇団の名前を一字ずつ入れて
参上したわけだ。

ちなみに広田の刺青はハトの絵と平和。
店員の一人は、『極道改革』。
もう一人は、立つイタチ?


高学歴の連中に一泡吹かせたいと、学歴コンプレックスを抱える
サンボの意見を取り入れ、偏差値78以上の大学をオール制覇したらしい。

その後、誘われるままサンデーズの飲み会に同行したゆいか。
「うかうかと着いてきてしまった。
 未熟・・・。」

その席で、ゆいかはみんなが役者をしながらバイトをしまくっている
生活を知り驚く。
サンボは24時間営業のサウナで。
キャンディは工事現場。
ジョーは警備員。
サトシンは漫画喫茶。
双葉は下北の古着屋。
玲子は塾の講師。
千恵美はキャバクラでバイトをしている。

劇団員たちはカウンターに座り、パクチーの入ったコーヒーを飲みながら
ペンを走らせる"ケラリーノ・サンドロヴィッチ"の姿に気づく。

ケラリーノ・サンドロヴィッチ(1963〜)

「元パンクバンド・"有頂天"ボーカル!
 "劇団健康""劇団ナイロン100℃"主催!
 岸田戯曲賞や、ほかにも色々受賞しているの! 
 映画やテレビも作るし、
 公演を打てば、ホンダ劇場はいつも満員なの!」
「下北沢のカリスマよ!」

みんなの熱い視線に気付いたケラが一言。
「食べるな。」

「食べるな・・・。
 食欲は創作の敵と、ケラさんは何かに書かれていた!・・・ような。」
「お言葉、ありがとうございます!」
みんなは食べることを辞めてしまう。

結局終電を逃したゆいかたち。
玲子たちに一緒に泊まっていくか誘われ、
「いくら何でもダメですよ。 
 初対面なのにそんなこと・・・」

「してるし・・・。」

レトロな雰囲気漂う玲子の住むアパート。
1階は男子専用。

玲子の部屋。
照明から天井まで草が飾られ(?)
部屋にはキノコが生えている。
「ロハスなの、ロハス!」
意味不明。(笑)

「カルチャーショックでしょう?
 家賃2万8千円、六畳風呂なし、トイレも共同!
 築40年のオンボロアパート。
 でも慣れちゃえが結構快適よ。
 空き部屋ばっかであまり人に会わないし。」

隣の部屋から、酔っ払って寝言を言うキャンディの声。
「壁が薄いのだけが、難点ね・・・。」

明日も朝早いから、とあっという間に眠ってしまう玲子。
ふと目覚めると、ゆいかの姿はなく、
『ありがとうございました』とメモが残っていた。

道に落ちていた100円玉をさりげなく取り合うサンボとジョー。

結局ゆいかは泊まらずに帰った。
もらったパンフレットに挟まれたチラシを広げ、
「劇団ってこんなに沢山あるんだ。」と驚く。
デジカメで撮った写真を見つめ、
「でも私は確かにここにいたんだ。」
そして突然、千恵美のカルメンを真似し出す。
「演劇のミューズ・・・。」

チラシの中に、『下北サンデーズ新人劇団員オーディション』の
お知らせが入っていた。

「ゆいかが、主役だ。」
祖父の言葉が頭をよぎり、微笑むゆいか。
「・・・いやいやいや!!
 あり得ない。
 あり得ないぞ、里中ゆいか。」

そして、オーディション会場。
ゆいかは面接を受けていた。
志望動機を聞かれ、
「ぜ、ぜ、ぜ、前回、この、公演を、み、み、み・・・」
「合格!」あくたがわの即答。

「ぜぜぜ、とか、みみみ、しか言ってないじゃない!」千恵美が反発する。「前回公演を見て感動して自分も芝居作りに挑戦したくなった。
 まあ大方そういうところだろう。」とあくたがわ。
だがそんなあくたがわの言葉も耳に届かないほど緊張するゆいかは、
志望動機を必死に言い続けていた。

「ゆいかちゃん、落ち着いて。」と、誠一。
「俺も合格でいいよ。ゆいかちゃん、可愛いし!」とサンボ。
「賛成!」「賛成!」野郎どもは全員大賛成。
「だってもう充分じゃないか。
 この子とサンデーズが出会ってしまった。
 これは運命なんだ。
 この子が見に来た時のステージの感触、
 みんなまだ体が覚えてるだろう? 
 俺だってあの時思わず、自分の立場を忘れて
 芝居に見入ってしまった。」
「まあ・・・確かに・・・。」キャンディーが納得するが、
「そんなのただの偶然じゃない!」と千恵美は面白くない。
「それだけじゃない。
 見ろ、彼女のルックスを。
 純粋そうで、それでいてときに大胆なことをしでかしそうな、
 この感じ!
 俺は、コイツを見ていると、メラメラと創作意欲が湧いてくるんだ。
 こいつはきっと、サンデーズの、いや、演劇界のミューズになる!」
「翼の場合、メラメラじゃなくてムラムラじゃない!?
 これはオーディションでしょう!?
 大体なんでこの子一人だけしか来ないわけ?」
「俺が全員書類で落とした。」
「何それ!私そんなの絶対に認めない!!」

「私もこの件は、劇団の運営を任されている身として
 どうかと思います。
 サンデーズは芝居が売りです。
 ルックスで役者を選ぶなんて、サンボやキャンディは
 とっくにクビです!」と亜希子。
「じゃあどうしたらいい?
 どうしたら彼女を認める?」とあくたがわ。
「ちゃんとチラシに書いてあったでしょう?
 実技ありって。
 その子がどれ位演技が出来るか、
 見せてもらおうじゃない。」と千恵美。
「実技が良かったら合格できるんだな。」
「あなた、稽古着は?」
「はい。動きやすい格好ですよね。」

実技にアドリブ芝居をやらされると聞き、ゆいかはますます緊張しつつ、
着替えに席を外す。

そのさなか、スタジオを貸している下馬が突如やって来る。
「出てってくれないかな。
 お前ら今日からこの稽古場使用禁止!」
下馬は入り口に張ってあった『下北サンデーズオーディション会場』と
書かれた赤い張り紙を手に怒り出す。
「ここは、私が舞踏の練習用に開いたスタジオだ。
 空いている時は仕方なく貸してやっちゃいるが、
 お前らみたいな三流劇団が足を踏み入れる場所じゃないんだ!
 お前らが使ったあとは、声がうるさいの、ゴミをちゃんと出さないの、
 近所からの苦情が多いしな!
 役者になれるとか、舞台に立てるとか、
 ムシのいいことばかり言って、
 これ以上善良な若者を闇の世界に引きずり込むのはやめろ!」

「闇って?それどういう意味ですか?」あくたがわたちが睨みつける。
「この前の舞台、見せてもらったよ。
 テンション任せの演技に、中途半端なダンス。
 脚本も演出も独りよがりのマスターベーション!
 前々から様子を伺っていたが、思ってた通りだ!
 基礎も何も出来ていない!
 あんなのに人が来るわけないだろう!
 あれは、芝居じゃない。ただのゴミだ!
 わかったら、とっとと出ていってくれるかな。」

「情熱は・・・情熱は基礎を越えます!!」
体操服に着替えたゆいかが仁王立ち。

「さっきの言葉、撤回して下さい!
 サンデーズはゴミなんかじゃありません!」
「聞けば君は、いい大学に通っているそうじゃないか。
 目を覚ましなさい!
 こんなところにいたって人生棒に振るだけだ。
 親御さんのことも考えなさい!」
「寝ぼけてなんていません!
 私はここにいたいからいるんです。」
「明日の生活にも困っている表現者気取りか!」
「私、サンデーズのお芝居を見たあと、
 自分なりに勉強しました。
 この街が、小劇場の劇団にとって聖地であること。
 なかなか舞台だけでは生活が難しいこと。
 でも私、こう考えることにしたんです。
 あなた知ってますか?
 普通に企業に就職する人と、
 こうして小さな劇団でお芝居している人とでは、
 ざっと計算して生涯賃金で1億円ぐらいの差がつくんです。
 私理数系だからきっちり計算できます。
 日本人のサラリーマン、平均年収が439万で、」
「あーもう!何が言いたいんだ!」
「ここにいる人たちの数を数えて下さい。」
「は?」
「いいから!!」
「ひぃ、ふぅ、」
「そう、10人!!」
「数えろって言っておいて・・・。」
「〆て10億円です。
 あの日、私が見たサンデーズのお芝居には、
 ここにいるみなさんが人生で棒に振った10億円ものお金が
 つぎ込まれているんです。
 それってすごく贅沢だと思いませんか?
 それにあなた、私と同じ回のお芝居、見ましたよね?
 始まる前から不機嫌そうだったからはっきり覚えているんです!
 あなた、色眼鏡をかけてあのお芝居を見ていませんか?
 そしてさも、自分の意見が真っ当であるかのように、
 人にぶつけてませんか!?
 少なくても、私にはサンデーズのお芝居は素晴らしかった!
 確かに、ちっちゃなステージだったけど、
 みなさんの舞台にかける熱い情熱に、いっぱいいっぱい感動した。
 生まれて始めて素敵な時間を過ごした。
 作品をどう受け止めるかは人それぞれです。
 お芝居を見て、心打たれた人が一人でもいれば、
 その劇団は表現をする資格は充分にあると思います!
 そしてこれは、私自身が選んだ道です。
 こちらのオーナーだかチューナーだか何だか知りませんが、
 人の人生を決める権利は誰にもない!
 だからそんなあなたに、私から退場処分を申し付けます。」
ゆいかは下馬が手にしていた赤いポスターを奪い、それを掲げ、
「レッドカーーード!」と言い渡す。
唖然とする下馬、そして劇団員たち。

「人生、1億円。
 いや、君だったら、1億5千万くらい、棒に振っても後悔しないんだな?」
「・・・そんなのわかりませんよ。
 でもそれ怖がってたら、何でもやっていけないと思います。」
「・・・好きになさい。」
下馬はスタジオの使用を許可。

「あんまり、大きな声出すんじゃないよ。」
窓の向こうの隣人を睨みつけ、ぴしゃりと窓を閉める下馬。
「はい!!」
「うん!いい笑顔だ!」
下馬はそう言い笑顔を見せながら帰っていった。

「合格だ!里中ゆいか!」とあくたがわ。
下馬とのやり取り、小道具の使い方まで完璧と、
他のメンバーたちも褒め称える。
「でも私、何も考えてなくて、
 思いついたことを、バーって。」
「それでいいんだよ。
 考えてもみろ。
 今こうやって話していることだって、台本なんてないんだ。
 さっきだってそうだ。
 あの状況で、自分の感情をあれだけストレートに言葉に乗せることが
 出来たら、女優としての素質充分だ。」
みんなに歓迎され、嬉しそうに微笑むゆいか。
「半年間は研究生よ!
 これまでのサンデーズの伝統どおり。」
千恵美は怒ったようにそう言う。

「人は私をきっと物好きだって笑うだろう。
 だって、何もかも揃っているこの世の中で、
 自ら進んでイバラの道を行くのだから。 
 その時私は、夢しか持っていないこの人たちが、
 確かに輝いて見えたのだ。
 下北沢という街にくるまれていると、
 私の中で何かが変わる。
 いや、変えようという気になったのだ。
 何分未熟者なので、あまり自信ないですけど。
 どうです?私、きちんと笑えてますか?」


こうしてゆいかは、ビンボーだけど夢のある、下北での演劇生活を
スタートさせる。

※あらすじは一部公式HPを引用しました。


ゆいかが着ていた体操服には『3年B組』の文字!(笑)

こういうドラマ、大好きです!
遊び心も楽しいし、ゆいかの呟きにもどことなく共感しちゃう。

おじいちゃんが三度笠と共に時々いなくなったのは、
お芝居をやっていた!?
ゆいかはそんな血をひいているのかもしれません。

前半、ブツブツと呟くように話していたゆいかが、
下北サンデーズをバカにする下馬に、
あんなに熱く熱く訴え出した。

ある日突然、今までとは未知の世界の魅力にハマる。
そんな経験って私にもありました。
そんな"熱い想い"を思い出しながら、
ゆいかがどう演劇にハマっていくのか
見つめていきたいです。

佐々木さん、古田さんら、個性あふれる俳優さんの演技が楽しみ。
藤井フミヤさんはどの辺りで絡んでくるのでしょう。
ケラリーノ・サンドロヴィッチさんは今回オンリー!?

「下北以上 原宿未満」
その間には何がある!?

楽しいドラマになりそうです!


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原作はこちらの雑誌に掲載されていました。
B000G8O1VUpapyrus (パピルス) 2006年 08月号 [雑誌]幻冬舎 2006-06-28by G-Tools



主題歌は、藤井フミヤさん!
B000FJGW1W下北以上 原宿未満藤井フミヤ 佐橋佳幸 ソニーミュージックエンタテインメント 2006-07-12by G-Tools




CAST
里中ゆいか(上戸彩)
あくたがわ翼(佐々木蔵之介)サンデーズの座長

伊達千恵美(佐田真由美)下北サンデーズ劇団員
江本亜希子(山口紗弥加)劇団の制作担当
八神誠一(石垣佑磨)
サンボ現(竹山隆範)(カンニング)
キャンディ吉田(大島美幸)(森三中)
ジョー大杉(金児憲史)
寺島玲子(松永京子)筑波大学卒
佐藤新(サトシン)(藤ヶ谷太輔)(ジャニーズJr.)
田所双葉(高部あい)

(大杉漣)(特別出演)
下馬伸朗(古田新太)
代沢二朗(藤井フミヤ)

里中 花(木野 花)
里中 十郎(半海一晃)
里中富美男(北村総一朗 )

赤茶げ先生(黒沢かずこ)(森三中)
ヒロ太(三宅弘城) ラーメン屋店主
ケラリーノ・サンドロヴィッチ(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)
ブイさん(堀まゆみ)
黒沼(岩男万太郎)ラーメン屋向かいのギター屋
三谷幸三(眼鏡太郎)
野田秀夫(辻 修)
マーキー(龍 )
友香(信川清順)

ゆいか(子役)(桑島真里乃)


スタッフ
<<演出>>
堤幸彦ほか
<<原作>>
石田衣良
<<脚本>>
河原雅彦ほか
<<音楽>>
屋敷豪太
<<プロデューサー>>
桑田潔
市川竜次
<<制作>>
テレビ朝日
オフィスクレッシェンド



上戸彩さんの主な出演作品


この記事へのコメント
ちーずさん、こんにちは♪
TBさせていただきました。

楽しそうなドラマですね。
国際情勢不安の広がる今、夢と希望に溢れたドラマってとても大切なように思います。
古田新太さんがまたいい味を出してますネ。
Posted by れい at 2006年07月14日 13:52
スゴイ!ラーメン屋のメニューが詳細に!
元ネタはブルーハーツ&ハイロウズですね。
面白いです。
Posted by giotto at 2006年07月14日 14:02
こんにちは。ちーずさん
コネタだ!っていうのはわかるんだけど
どこから引用されてるのかわからないけど
でも面白かったですよ〜。
何気にラーメン屋の3人組が一番つぼです!
Posted by みのむし at 2006年07月14日 20:10
ちーずさんこんばんは、期待以上の面白さです、いきなり目に飛び込んできた電柱の看板4丁目イタリアン料理、ドッチノ4−10って裏番組ジャンそれもチャンネルまでいれるとは!

たいした事ではないのにテロップをいれる憎さやラーメン屋のメニュー、習字で書いた「渚のハイカラ人情」細かいところでかなりの小ネタ、小ネタさがしが中心で見てしまいそうです。

後半から絡んだ古田さんが軸になるのかな?

てるてるに出ていたエラ子の演技にも期待します。

佐田さんは好きなタイプですが、あまりドラマでの露出がないので、ゆいかの憧れの人であってほしいライバルになると悪役になるので悲しいかな!
Posted by けた at 2006年07月14日 21:15
こんばんは。
いつもお世話になっております。
僕もこういうドラマ好きですわ。
何が飛び出すかわからない
ドキドキとワクワクがありますね。
フミヤさんも魅力的なキャラクターのようです。
Posted by SHINGO。 at 2006年07月15日 20:13
こんにちは。ウチらの地方では、日曜昼3時からやってます。
GWに東京行って、下北も行きましたので、楽しみにしてました。でもあんな人たちは居なかったですけど。ごく普通の若者ばかりで。もっとアングラな所に行かないと会えないのかな。

なぜ千葉大学、下北なら明大のほうが近いのではと思ったけど、都心部をはさんで反対方角にある千葉大、夢とはかけ離れた現実世界の象徴、なんて勝手に解釈してます。

これからどうなるか楽しみです。では3日遅れで観ます(^^)v
Posted by 山崎 at 2006年07月17日 13:02
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