2006年10月29日

魂萌え! 第2回

『水底の光』(10月28日放送)

「自分たちのことばっかり!
 もうこんな所にいたくない。
 家って何?
 夫の心はここにはなかった。
 この家での私の今までは、一体何だったの・・・?」


デパートの屋上。
プチ家出をした敏子は、親友を頼ろうと携帯で連絡。
でも生憎三人とも都合が悪く。
困った敏子は、屋上から景色を眺めている時に見つけた
一泊4千円の文字に惹かれ、女性専用のカプセルホテルへ。

戸惑いながら、部屋へ入っていく敏子。
狭い部屋の中、椅子に座り考える。

「私はどこへ行けばいいんだろう・・・。」「あなた・・・。
 10年ですって。
 10年?
 一人の女とそれだけ関係が続いていたなんて。
 何が木曜日ごとに蕎麦打ち教室に通うですか。
 何が定年後の男の趣味ですか。
 あなたが通っていたのはその女のやっている蕎麦屋で、
 木曜が定休日でゆっくり忍びあえるからじゃないですか。
 ずーっと騙してたんじゃないの。私を・・・。
 あなた!
 あなた!
 何とか言ったらどうですか。何とか!
 あなた!
 あなたってば。
 言いなさいよ、何とか・・・。
 いきなり勝手に信者って・・・。
 もう何も出来ないじゃないの・・。」


敏子の、相手にはもう届かない心の声。
高畑さんの呆然とした表情、そして涙・・・。
切ないです。


悲しい微笑みを浮かべて一枚の写真を見つめる昭子。
彼女の手からその写真が滑り落ちる。
「お母さん?」娘が問いかけても黙ったまま。
落ちた写真には、隆之と自分の2ショット写真・・・。

707号室から聞こえてくる女性の号泣。
バックからバスタオルを取り出し、頭に被り泣き続ける敏子。

「お客様、お客様。
 すみませんが少しよろしいでしょうか。
 このホテルの者です。」
「はい・・・どうぞ。」
「大変恐縮ですが、お客様。
 もう少しお声を下げていただけると、
 ありがたいのですが。
 実は、周辺の部屋の方からクレームが来ておりまして。」
「ご・・・ごめんなさい。」
「いえ、いいんですよ。」
二人の視線が合う。
「お・・・お墓屋さん・・。」
「!!あの説は・・・
 ひいらぎの里霊園を、お買い上げ下さって
 ありがとうございました。」
「確か、野田さん。」
「はい!野田です。」
「転職なさったんですか?
 カプセルホテル屋さんに?」
「あ、いえ。転職と言いますか、私、こちらの方が本職で、
 霊園の方は、」
「アルバイトなのよねー。」
宮里(麻生美代子)という年老いた女性が部屋にやってきた。
「泣いてた人ってあなたー?
 あのねー、こういう所はねー、
 ほら、こんななの。薄っぺらなの。
 音なんて筒抜け。」
宮里が壁を叩く。
「ほんとだ。」
「当方の施設は、壁ではなく、間仕切りでしかないと
 お考え頂きたいんです。
 カプセルホテルというのは、この簡便さにより、
 お部屋を安く、安全かつ清潔に、ご利用いただく仕組みと
 なっておりまして。」
「その辺りをご理解・ご納得の上、
 引き続きご利用下さいませ。ね!
 では、のちほど、ね!」宮里が出ていった。

「先ほど泣いていらした件ですが、
 以前、お宅にお伺いした時の、続きですか?」と野田。
「・・続きです。」
「なんだか、いつも、私、お取り込み中にばかり
 お邪魔する形になってしまいまして・・・。」
「ほんと・・」
「すみません。」
「いえ、私こそ、また、みっともないところを、
 人には見られたくない姿ばっかり・・・」
「その・・・別々に見られるよりですね、
 一人にまとまって見られる方が、気楽だと考えてくだされば。」
「え・・・。
 いい考え方・・・。」
敏子がやっと微笑んだ。

その時敏子の携帯が鳴る。
「フロントにおりますので、何かありましたら御連絡を。」
野田が部屋を出ていく。

電話は娘の美保からだった。
母がいないことを心配してかけてきたのだ。
子供たちに、友達の家に泊まると嘘をつき、電源を切る。

「これって、家出じゃないの?
 知らない間にプイっと出かけちゃうなんて、
 お母さんらしくないよ。」
美保は心配するが、兄の彰之は取り合わない。

母が泊まると聞き、自分のご飯の心配をする長男に怒!

夕食にカップラーメンをすすりながら、
兄と妹はそれぞれの事情をぶつけ合います。
自分の家族がそんな風に争う姿、見たくないですね。


カプセルホテル。
風呂から上がった敏子は、販売機でお茶を買っていると
宮里に声をかけられる。
「私、もうこのホテル長ーいの。
 わからないことがあったら何でもね。
 で、あなたどうしてこちらに?」
「ええまあ、いろいろ、ありまして。 
 一人で、考えてみようかなって。」
「あら。でもあなた、帰る家があるなんてお幸せよ。
 ないんですもの、私。
 昨年主人が死にましてね。」
「そうだったんですか・・・
 私もこの、4月にです。」
「何があったか知りませんけれどもね、
 もうどうにでもなれって思うのは決していいことじゃないわ。
 やけになって飛び越えた柵の向こうは地獄かもしれませんでしょ。
 私はね、主人に死なれて、首をつりましたの。」
「え!?」
「でも、ご覧のとおり、生きておりますけどね。
 あ、そうだ。すいませんけどね、あの、小銭貸して下さい。」
敏子から小銭を借りて、販売機で飲み物を買う宮里。
「主人はね、飲食店のチェーンで、
 とても成功しましてね。
 とってもお金持ちだったんですよ。
 別荘に、海外旅行にクルーザー。
 それは、楽しい毎日でした。
 でもね、全てがひっくり返ってしまったんです。
 主人の甥が、事業に失敗しましてね。
 山のような借金を残して行方をくらましてしまったんです。
 私共はその保証人だったものですからね。
 家も、別荘も、会社も、全て人手に渡ってしまったんです。
 そして、山の中の一軒家に移り住むことになったんです。
 お家賃もとてもお安かったものですからね。
 その中で、主人が倒れたんです。心筋梗塞で。」
「それで?」
「入退院を繰り返してすっからかんですよ。
 そして、去年とうとう主人が亡くなって。
 私お葬式済ませてから、家のかもいに、縄をかけましてね。
 ぶら下がりましたの。」
「・・・」
「もっとお聞きになりたい?」
「え・・ああ・・・。
 でも、どうして・・・」
「生きてるかってことですよね。
 丁度、その日に、甥が見つけてくれたんです。
 行方をくらましていたその甥です。
 7年も音沙汰がなかったのに。
 どういうわけか、突然その日に、私を訪ねてきたんですね。
 そういう訳で、私、生きております。」
「甥子さんは?」
「ええ、次の日、私が意識を取り戻したら、
 私の目の前に、甥の顔があったんです。
 彼は私の手を握って、号泣していました。
 私はもしもこの世で、また甥に会うことが出来たら、
 ああも言おう、こうもなじろうって、
 想像していたんですけどね。
 もう何も言葉は出ませんでした。」
「でも、恨みはなかったんですか?」
「甥が起こした不祥事は、今となっては私たち二人の絆です。
 もう、甥は一生私から離れていくことはないでしょう。
 私の面倒を見続ける。
 それが、甥の罪滅ぼしですからね。
 ごめんなさいね、こんな長い話を聞かせちゃって。」
「いいえ、とんでもない。」
「そお?じゃあね、1万円でいいわ。」
「???は???」
「私ね、いつもこう思うんです。
 人様のむごい経験を味わうのに、ただでってことはないだろうって。
 つまりね、私の話は有料なんです。」
「有料・・お金、払うんですか?」
「自分より不幸な話を知ると、この人よりまだマシだわーって
 ずいぶん気晴らしになりますでしょ。
 だからその御代を頂きますの。一万円。」
「・・あの、お安くなりません?」
「なりませんの。」
敏子は渋々財布を取り出し、そして1万円を差し出した。
「あと1万円いただけたら、あなたの話も伺うわよ。
 人に聞いて欲しいこと、心の中にたくさんおありなんじゃ
 ないかしら。
 私いつも思うんですよ。
 お金払ってでも、溜まったものを全部吐き出すと、
 胸がすーっとするもんだって。」
「今日のところは結構です。」
敏子は宮里の前から退散する。

宮里さん、1万円って。(汗)
確かに宮里さん、甥に騙され、何不自由ない暮らしから一転、
家を失くし、苦労をしたのかもしれないけれど、
ダンナさんとは支えあって生きてきたわけで・・・。
敏子とどちらが不幸かなんて、わかりませんよね。
敏子を元気付けようと思い、そしてお金を請求しなければ、
いいおばあさんなのに・・・。
敏子さんも素直だなぁ。私ならきっと、払いません。

・・・と、私は宮里さんにムカついてしまったんですが、
部屋に戻った敏子はなぜか笑い出しました。
そしてお財布をしっかり握り締めて、眠ることが出来たよう。
ちょっとは癒されたようで・・・不思議!

もしかして、その甥っ子が、野田なんですかね。
そういえば野田は宮里に缶コーヒーを買って渡していましたし。


翌日。ロビーに下りてきた敏子は野田に挨拶する。
「夕べはぐっすり眠れました。
 主人が死んでから、ぐっすり眠ったなんて感じ
 ずっとなかったし。」
「いろいろと、疲れてらしたんですよ。 
 時にはこういう所で寄り道なさるのもいいかもしれません。」
「寄り道?」
「長く遠出なさるのはお勧めしません。
 おうちに、帰られた方がいい。」
「マネージャーさんがそんなこと言っていいんですか?」
「よくありません。クビです。」
笑いあう二人。
「夕べ、宮里さんって方にも、帰る家があるのは幸せなことだって
 言われました。」
「そうですか・・・。」
「お風呂で会って、波乱万丈なお話伺いました。
 本当でしょうか?」
「ひょっとして、一万円お支払いに!?」
敏子が頷く。
「お金を巻き上げられたと、文句を言いに来るお客様も
 いますから。私共が断れば、宮里さんも無理強いはしませんし。」
「いいんです、私、自分の意思で払いましたから。」

野田は従業員を見かけ、カウンターに戻っていく。
敏子はその後、外出。
ためらいがちに中華レストランへ入り、餃子定食を頼む。
周りのサラリーマンたちはビールを飲んでいる。
敏子も、声を裏がえらせながら、ビールを注文。

主婦ってあまり昼間っからビール飲んだりしないですからね。
それも昼間っから、店で一人で。
敏子にとってはこれも冒険なんですね。


ホテルに戻った敏子。野田はもう帰ったあとだった。
野田に買ってきた餃子を、敏子は従業員に差し入れする。

コーヒーの缶が転がっている。
気になり、その先を見てみると・・・宮里が倒れていた!

宮里は脳出血を起こしていた。
病院に付き添う敏子の元に、野田が駆けつける。
「宮里さんの甥っていう人に連絡つきますか?」敏子が聞く。
「連絡ならもうついてます。
 私が宮里の甥です。」
「ええ!?」
「私は、叔父から大金を借りて事業に失敗し、
 借金取りから逃げ回った末に、叔母を自殺未遂にまでおいやり、
 悲しい目にあわせた男です。
 まだ、借金を払い終えていなくて、それで仕事を掛け持ちして
 いるんです。」
「・・・」
「こうなった以上、叔母の面倒は一生、私が見ます。」

敏子は苦悩する野田の姿を見つめ・・・。

そして敏子は自宅に戻った。
長男は、敏子にビールを注ぎながら、
妻たちは来月帰国すると話す。
「ふーーーん。」
息子の乾杯をかわす敏子。おっ。強くなりました!
「ふーーんって。」
「彰之。来月だったらまだ、日があるし。
 母さん、間に合うように言っておこうと思うけど、
 私、あなたたち一家と、この家で同居する気、ないわ。」
「ええ!?」
「だから、そっちもそのつもりで、今後の日本での生活設計、
 ちゃんと立てて頂戴。」
「・・・今になって。」
「今になってって言われる筋合いないと思うの。
 だって母さんこれまで、一度も、
 同居を承諾するって返事してないはずよ。
 あなたが強引にその方向で、押し切ろうとしただけ。」
「でも、」
「考えておいてくれって言ったわね。
 だから考えたの。
 そして断ることにした。これが、結論。以上。」
「いや、以上って。」
「以上だもの。」
「じゃ・・・あの・・・親父の希望はどうなりますか?」
「定年の日に父さんが、あなたにかけたっていう電話?」
「そうですよ!長男であるお前が、いずれ日本に帰って、
 この家を継いで母さんの面倒を見てやれって。
 俺は、それが親父からの遺言だって思ってますよ。」
「それはそれで、お父さんのその時の気持ちだったとは思う。
 でも、いずれって話じゃないの。」
「そのいずれっていうのが今じゃないですか。」
「違う。今じゃない。
 私が誰かに面倒を見てもらわなきゃならないなんて、
 まだずっと先の話よ。
 この通り充分、元気で健康だし、
 お父さんだって電話したときには、自分がこんなに早く
 死んでしまうなんて思ってもみなかっただろうし。」
「それは・・でも・・・死んでしまったわけだし。
 お母さんは、これから先のことを考えないと。」
「私には、俺のこれから先のことって聞こえるわ。」
「・・・」

敏子、よく言った!
敏子の背後には隆之の遺影。
隆之も、同じ思いなのかも。


翌日。
「遺族間で話し合いが付かないとなると、法廷相続で分けるしか
 ないんですよね。
 預貯金が1千万。あとこの家。
 母さんの取り分が2分の一。俺と美保が4分の一ずつ。」と彰之。
「分けるったって、この家のこぎりでギリギリ切るわけいかないし。」
と美保。
「売却して現金化すれば簡単だよ。
 俺が調べたところによると、うわものは古くて値が付かない。
 土地が3千万ぐらい。
 それぞれが、自分の取り分を持って、新しい生活を始めるってことに
 なりますよ。
 母さん、どうしても同居が嫌だって言うんだったら、
 これしかないんですよね。」
「・・・」
「なんか私ショックだなー。
 育った家がなくなっちゃうなんて。」
「母さん、美保もこう言っている事だし、
 もう1度考え直してくれませんか?
 母さんだってこの住み慣れた家に、愛着、あるでしょ?」
「あるわよ。」
「なら、」
「でも、同居は、嫌。」
「じゃあどうするんですか!
 分けようがないでしょう。」
「分けない。」
「は?」
「家も売らない。」
「どういう意味?」と美保。
「言ったとおりの意味よ。
 一人で、ここに住むつもり。
 やっと覚悟が決まった。
 母さん死んだらその時、改めて二人でこの家を分けなさい。
 残ったお金も同じ。」
「でも、」「だったら、」
「三人で分けたいって言われても、知ってのとおりのささやかな財産よ。
 でもそれは、お父さんと私が、それなりの生活の苦労の中で、
 倹約して作ったものなの。 
 だからわずかとはいえ、家も貯金も残ったんじゃないの。
 夫婦で作った財産は夫婦のものじゃいけないの?
 お父さんが死んだ今、お母さんが受け継ぐ。それが悪い?
 あなた達はまだ若いんだから、
 家やお金が欲しいんだったら自分たちで作りなさい。
 これからの人生の中で。」
「お父さんとお母さんがそうしてきたようにってこと?」と美保。
「うん。」敏子が頷く。
「はじめは、6畳一間で始まった結婚生活だったわ。
 彰之が生まれて狭くなったんで、ニ間のアパートに越した。
 その次は社宅。
 二人で倹約して、一戸建てを買う頭金作った。
 生活をより良くする為に努力してきた。」
「・・・うん。」美保が頷く。
「だから、簡単にお父さんの、遺産を欲しがるあなた達は
 甘いと思うし。」「けど俺たちには、法律で決められた分は
 受け取る権利はあるんだから。
 出るとこ出れば、」
「だったら出るとこ出なさい。
 お母さん構わないわ。」
「・・・」

もんじゃ焼き屋。
美保が恋人のマモルに、結局兄は妻の実家が千葉なので、
その近所でマンションを探し、実家の家業(運送業)を
手伝うことになったと説明する。
「まあ俺、とりあえず美保のお母さんが全部相続するんで
 いいと思うけどな。
 どう思っても、人んちの話だし。」
「人んちの話じゃなくなるかもしれないでしょ!
 私とマモルが結婚したら。」
「やっぱ、結婚する気?」
「嫌なの!?」
「いやいや。」
「マモルの実家は前橋の酒屋さんで、いずれその店コンビニにする
 予定なんでしょ?
 その場合、現金はいくらでもいると思うのよ。
 だから嫁の私が、まとまった物を持っていけば
 歓迎されると思わない?」
「けどさ、金持ってきたからって歓迎されて、嬉しいんか?」
「なら無一文の嫁でもいい?
 だったら私、お父さんの遺産、相続放棄しても構わないんだけど。」
「そういうこといろいろ考えてたわけだ。」
「うん。私は、お母さんがあの家で楽しく暮らしてくれれば、
 その方がいいかなーって思うし。
 マモルが構わなければだけど。」
マモルが笑う。
「何?」
「何でもない!」

娘の美保は、大好きなマモルのことを考えて
遺産を気にしていたけれど、とりあえずは母親の幸せを
考えているようで、ほっとしました。
マモルが結婚をはぐらかしているのはちょっと気になります。


ある日、蕎麦打ち教室の今井から電話がかかってくる。
「うちの教室の生徒で、塚本君というのが、
 関口君がよく行くと言ってたそば屋のことを思い出しましてね。
 それなら一度そこへ、奥さんをご招待しようという
 話になりまして。
 阿武隈という店なんですが。」
「阿武隈・・・。」

それは、夫の愛人の店だった。
夫の遺影を見つめて敏子は答える。
「はい。是非伺いたいと思います、私。」

阿武隈。
店の前で、入ろうかどうかためらっていると、
隆之の友人・塚本(村井国夫)が声をかける。
「塚本と申します。
 関口君とは、今井さんの教室で何度か顔を合わせておりまして。」

二人は一緒に店の中へ。

店内を見つめながら、夫が愛人とそこで一緒に蕎麦を打つ姿を
想像する敏子。

蕎麦を持ってきたのは、昭子の娘だった。
敏子が関口の妻だと知ると、娘の顔色が変わる。
敏子は昭子が具合を悪くして入院していることを知る。

店を出た敏子が一人になると、娘が追ってきた。
「あの、お金のことなんですが。」
「足りなかったんですか?」
「いえ。
 今の店を出す時に、関口さんに500万出していただいた件です。」
「・・・500万!?」
「急に亡くなってしまったんで、どうしたらいいものかと・・・。
 でもうちはまだ、経営が厳しくて。
 一応母は、頂いたお金だと申しておりますし、
 何とかこのまま、お許し願えたらと。
 母の立場は、わかっておりますが、
 母は、心から関口さんが好きでした。
 本当です。
 母は関口さんが亡くなったショックで今入院しているんです!」
「・・・」
「すみません。」
娘が走ってその場を去る。

自分に内緒で愛人に500万もの大金を贈与していた・・・。
敏子はショックで、付けていた真珠のネックレスを
引きちぎります。
地面に散らばるパール。
その場に泣き崩れる敏子・・・。
夫からのプレゼントだったのかな・・・。


「関口さん。」
振り返ると、そこに塚本がいた。

喫茶店。
「何か・・・ご事情があるのかもしれませんが、
 あの店にお招きしてしまって、申し訳ありませんでした。」
「塚本さんのせいじゃありません。
 阿武隈に行ったのは私の意思です。
 今井さんから連絡をもらったとき、断ることも出来たんですから。」
「でも断られなかった。なぜ?」
「・・・関口が、亡くなってからいろいろあって。
 私つくづく思ったんです。
 何も知らずに、気づかないまま、
 うかうかと幸せなのは嫌だって。」
「うかうかと幸せ?」
「何だかんだいっても、私の今までの暮らしは、
 世間の風にさらされることなく生きてこれたんです。
 別にそれは、私が望んだわけじゃないけれど、
 気がついたら、そうだったし。
 でも・・・これから先、苦しんだり、傷ついたりしても、
 自分の、人生の道筋にあることなら、知るべきことは、
 きちんと知らなければならないって。
 一人で、ちゃんと向き合わなければならないって。
 だけど・・・ちゃんと受け止められない・・・。
 やっぱり私・・・。」
泣き出す敏子。
「あなたは、激しい人なんですね。」
塚本はそう言い、拾ったパールを敏子の手に乗せる。
「最初はあなたをお見かけした時、
 何て大人しそうな、可愛い方だって思ったんです。
 彼にも素敵な奥さんがいたんだなって
 ちょっと羨ましかったんですよ。」
「私可愛くなんかありませんけど、
 でも・・・大人しかったのは、そうだったと思います。
 このところなんだか、すっかり変わってしまって、自分でも。」
「伺っていいですか?
 いろいろあったって、先ほど・・・」
「あったんですけど。」
「無理にとは申しません。
 僕なりに察しているところもある。
 ただ・・・人に話すことで、気が楽になると言うことも。
 僕にだったら二度と会わずにすむ相手です。
 行きずりの、そういう相手になら、
 心に溜まっているあれやこれやを、
 お話になりやすいということは、ありませんか?」
「・・・」

病院。
「奥さんをいる人なんて好きになるもんじゃないわね。」
昭子が娘に言う。
「だったら最初っからやめておけばいいのに。」
「亡くなった事さえ知らされないまま、
 知ったときには、お通夜もお葬式もすっかり終わったあとで・・・。
 私はお墓の場所さえ知らないのよ!
 ・・・あの人はどうしているのかしら。」
「あの人って?」
「隆さんの奥さんよ。
 私のこと突き刺すような目で見てた。
 お線香あげに行った日・・・。
 あの人と私と・・・どっちの方が悲しいのかしらね・・・。」
窓に映った自分の姿を見つめる昭子。

バーで飲む塚本と敏子。
「何を考えていらっしゃるんですか?
 悲しそうな顔、なさってましたよ。
 女の人の涙には、いたって弱いんです。」
「塚本さんは、奥さんに悲しい思いをさせたことは
 おありですか?」
「白状すれば、僕も関口君と似た様なことをしたことが
 ないとは言えません。」
「そう。」
「何度もねじくれたり、それをほどいたりしながら続くのが、
 夫婦なのかもしれません。」
「私はねじくれをほどこうにも、
 もう関口は亡くなってしまいましたし。
 生きていて、思いっきりぶん殴れもすれば、
 また違ったのかもしれません。」
「はい。」
「引っ叩いて、蹴飛ばして、引っかいて。」
「それから?」
「冷凍庫に入れて、カチンカチンに凍らせて、
 粉々にしてやる。」そう言い笑う敏子。
「やれなくて残念でしたね。」
「ほんと!」
「・・・撤回していいですか?」
「は?」
「さっき、行きずりと申したことです。
 僕はあなたのことを、もっと知りたくなりました。
 あなたにも、僕を知ってほしい。」
「・・・」
「ホテルに、部屋を取ります。
 そこであなたをお待ちしています。
 携帯をお持ちですね。」
「・・ええ。」
「教えて下さい。
 部屋が決まったら、メールを入れます。」
「・・・」
「もちろん、断られるのはご自由です。」

その後・・・
敏子の携帯が鳴る。
塚本からだった。
敏子はメールを見つめ・・・。
そしてそっと瞳を閉じる。

宝石店。
「二人の、記念に。」
塚本が、ブルーのドレスを着た敏子に
青い石のネックレスをプレゼントする。
敏子がうつくしく微笑んだ。

目を開ける敏子。
彼女は自宅にいた。
ドレッサーから宝石を入れた箱を取り出し、
そしてその箱を開ける。
ブルーの宝石が美しく輝く。

そこへ、親友たちがやって来た。
敏子は息子夫婦の同居を断ったことを報告する。
「よーく考えた方がいいわよ。
 子供と一緒に暮らす方が、
 先々のことを考えたら、心丈夫なんだから。
 年取って一人は寂しいわよ。」と美奈子。
「そんなの年取ってから考えればいいのよー。
 人生なんてどう転ぶか誰にもわからないんだもの。
 新しい恋人が敏子ちゃんに出来るかもしれないし!」と栄子。
「まあね。
 先の生活の為に、今の生活、我慢や気兼ねして
 窮屈に暮らすことないわよね。
 人生には、決断しなきゃなんない時があるのよ、たぶん。
 敏子ちゃんには、今がその時なのよね。」と和世。
「うん。私もそう思ったの。
 正直言うとね、私、家族とか、夫婦とか、
 そういう絆をあまり信じられなくなっているのかもしれない。
 ずっと一緒にいたって裏切られるんだから・・・。」

昭子が退院する。

敏子は親友たちに、夫の愛人のことを話した。
「忘れるしかないわよ。」と美奈子。
「だめよ!忘れるなら500万を取り返してからよ!」と和世。
「そりゃあそう!」と栄子。
「取られっ放しってこと、ないわよね。」と美奈子。
三人は取り返すよう勧めるが、
「ダメ。弁護士さんそう言ったの。
 区役所の法律相談に行ったの。
 借用書があるわけじゃない、証人がいるわけじゃない。」
悔しがる4人。
「めちゃめちゃ悔しい!」
テーブルをバンと叩く敏子。驚く三人。
「敏子ちゃん!性格獰猛になっちゃったんじゃないの?」と栄子。
「獰猛は可哀想よ。
 でも雰囲気変わった!確かに。」と美奈子。
「今まで、人前で感情表すタイプじゃなかったもんね。」と和世。
「言っちゃ悪いけどね、今まで周りの顔色を見て、
 物を言ったり決めたりするところがあった。」
「よく言えば控えめ。」「悪く言えば、優柔不断。」
「人間苦労すると変わるのよ。
 なんか、今までより、人としての輪郭がはっきりしてきて、
 その分綺麗になった。」
楽しそうに笑いあう4人。

三人を見送ったあと、敏子はポストに柴浜カントリークラブからの
年会費滞納の督促状が届いていることに気づく。

「家中、どこをどう探しても、
 柴浜カントリークラブの、ゴルフ会員権の保証書なんて、
 見つからないんですけど、お父さん。
 ・・・ゴルフの会員権は相続の対象になるそうですし、
 問い合わせたら今は、市場価格400万ほどで
 取引されているって。
 ・・・何とか言ったらどうですか?
 お父さん・・・。
 あなた・・・。」

公式HP


主人公の敏子は、夫の死後、夫の裏切りを初めて知りました。
愛人との対面。子供たちの遺産目当ての言い争い。

もしも夫が生きていれば、自分の思いをぶつけることが出来たのに。
それが出来ない分、抱え込むしかない辛い思い。

いろんな思いを抱えての、敏子のプチ家出。

そして、野田との再会。
宮里との出会い。
敏子の世界が広がっていきます。

そして・・・自分を慰めてくれた塚本に誘われ・・・。
あれは、一度限りのこと?
敏子が愛人の立場になってしまったら、ちょっと嫌です・・・。

彼女自身が大きく変わったことで、これからの敏子はどんな人生を
歩んでいくのか、とても気になります。

『魂萌え!』映画版
2007年1月公開。
敏子=風吹ジュンさん 昭子=三田佳子さん
寺尾聡さん、常盤貴子さん、豊川悦司さんも出演!
http://www.tamamoe.com/


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キャスト
関口敏子(高畑淳子)
伊藤昭子(高橋恵子)

関口彰之(山本太郎)
関口由佳里(猫背椿)

関口美保(酒井美紀)
マモル(杉浦太陽)

今井(山本龍二)蕎麦打ちの講師
塚本(村井国夫)隆之の蕎麦打ち教室の友人

山田栄子(小柳ルミ子)敏子の高校時代の同級生
江守和世(仁科亜希子)敏子の高校時代の同級生
西崎美奈子(木野 花)敏子の高校時代の同級生

野田(宇梶剛士)墓地のセールスマン

関口隆之(大和田伸也)敏子の夫。心臓麻痺で急死

原作
桐野夏生

脚本
斉藤樹美子

音楽
スパニッシュ・コネクション


原作も読んでみたくなりました!
4620106909魂萌え !桐野 夏生 毎日新聞社 2005-04-21by G-Tools



音楽が敏子の気持ちと上手くマッチしています!
B000HXE34ENHK土曜ドラマサウンドトラック「魂萌え!」Spanish Connection 伊藤芳輝 大渕博光 ビクターエンタテインメント 2006-10-25by G-Tools



意外や意外!
この作品、高畑淳子さんの初主演作品だそうです。
高畑淳子さんの主な出演作品


【魂萌え!の最新記事】
15:44 | CM(5) | TB(0) | 魂萌え! | Edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
●【「!!あの説は・・・ ひいらぎの里霊園を、お買い上げ下さって ありがとうございました。」
】という箇所の、
「あの説」は
「あの節」。
●【遺族間で話し合いが付かないとなると、法廷相続で分けるしか ないんですよね】という箇所の、
「法廷相続」は
「法定相続」。
Posted by Anne Sullivan at 2006年10月29日 17:39
ドラマを観ないでのコメントごめんなさい!一話めの感想や二話目のレビュー読ませて頂きました何かドロドロ系は嫌いな自分は愛人とか不倫がちょっと苦手で二話目も視聴していません。

ちーずさんのレビューを読む限りドラマの内容は違う方向なのですね?自分を全て受け止めてくれていたと思っていた亭主の愛人問題、やり場のない怒りや遺産をあてにする子供達、プチ家出で家庭を守ってきた自分と他人の生活、どちらが幸せなのか自問自答する、ちいさいロードムービーなのかな?

やはり自分の未熟さが露呈します「クライマーズ・ハイ」で勉強したはずなのに、視野が狭っま!
Posted by けた at 2006年10月29日 20:51
もう最高ですね。
女優高畑淳子の真骨頂、存分に見させてもらってますよ。
近々文庫化されるらしいので、原作読んでみようっと。
Posted by マンデリン at 2006年10月29日 21:20
>[私には、俺のこれから先のことって聞こえるわ。」

これはよくぞ言った!と思いましたね。
どんどん積極的になっていく敏子が面白い。
宮里さんお話が非常に上手。私もきっと断るだろうけどその時余裕があれば払っちゃうかも知れません・・・。
お友達が「敏子ちゃん、敏子ちゃん」と呼ぶににちょっと違和感があります。まぁ普通に呼びにくいという面が大きいのですが・・。旧友ということでのこの表現なのかもしれませんが、「敏ちゃん」とか、なんかあだ名はなかったのかなぁなんていちいち思ってしまいます。いかんいかん。
Posted by ぷうわん at 2006年10月31日 17:59
最終回の録画失敗、残念でしたね!

前半の二人の女優さんの演技が凄すぎて浮気しているわけでもない自分が、もうやめて僕が悪かったと謝るくらいの迫力でした、ドロドロ系の嫌いな自分も二人のセリフに納得させられました。

野田の生きていかなければは、自分の中に入れとかなくてはいけない言葉でした!まだ自分はネガティブな考え方も有るのかも全てポジティブに考えていた頃に戻らないと!

猫背椿さんが解らずイメージができませんでしたが
よく出ている女優さんでしたやっと繋がりました。

なんで彰之があの口調なのか解りませんが親を頼るより守っていく年齢ですね!

らすと5分で描いた結末は視聴者一人一人がエンディングを考えてしまう素適なラストでした!

いつも、いい作品を教えて頂けるちーずさんには自分にHHKにも興味をもたすなんて!

忙しそうなので必要ないかもしれませんがビデオはとっときますね!
Posted by けた at 2006年11月05日 23:02
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