2007年02月06日

東京タワー〜オカンとボクと、時々オトン〜 第5章

『最後の旅行』 

がん手術のために入院した母、中川栄子(倍賞美津子)に付き添うため、
雅也(速水もこみち)は筑豊に帰京。

「オカン!!」
病室に飛び込むと、栄子は入院患者たちと花札を楽しんでいた。
一人勝ち状態の栄子は上機嫌!
「あの・・・」雅也が声をかける。
「あれ!マー君!
 なんで?来てしまったと?
 仕事はどげんしたと。」

「あら、良か男!」
「そうやろ!うちの息子たい!
 東京で、イラストレーターばしとると!
 すごかろー?」
栄子が入院患者に自慢をする。「明日の手術で、ガンに侵された甲状腺を全て摘出する予定です。」
医者が雅也に説明する。
「あの・・・それで・・」
「声帯付近に残ったガンについては手術を行わず、
 別の治療法で対処します。」
「別の・・治療・・」
「お母様、声を残すことを、今回の手術を受ける条件にしていらっしゃいます。」

病室に戻る雅也。
栄子の元に、店の常連客たちが見舞いに来ていた。
楽しそうに笑う母の笑顔を見つめる雅也。
「マー君とこれから、電話で話せんようになったら困るけんね。」
明るくそう話していた母の言葉を思いながら・・・。

夜。雅也は母と二人きりになると聞いてみる。
「オカン。大丈夫なん?」
「心配せんでよかって言うたろが。」
リンゴの皮をむきながら栄子が答える。
「本当に声帯、切らんでよかと?」
「もう決めたことやき。
 食べんしゃい。」
「・・・」
「そげな顔しなさんな。
 あんたのオカンは、大概のことじゃ死にゃせんばい。」
そう言い微笑む栄子。
母の手からリンゴを受け取る雅也。

「オカン、いつもと全然変わらんね。」
病院の廊下で香苗(浅田美代子)にそう話す雅也。
「あんたが帰ってきたけん、倍元気になっとう。」
「・・・」
「ねえマー君、ずっと、こっちにおられんと?」
「・・・」
「筑豊に、帰ってこれんと?
 姉ちゃんあんたが側におるんが、一番の励みになるんよ。」
「・・・」

ストレッチャーに寝かされた栄子が運ばれてくる。
「姉ちゃん。」
「こげん大げさにせんとも良かったのに。
 ばってん、それじゃ、感じが出らんのかね。」
栄子が手を差し伸べる。
「握手。」
その手を握り締める雅也。
そして栄子は手術室に運ばれていった。

「すみませーん。」
雅也の住むアパートにまなみ(香椎由宇)が訪れる。
「可愛いねー。」「名前なんて言うの?」
出て来たアパートの住人に怯えるまなみ。
「あのー、中川君、いますか?」
「お姉さん先輩のなんね!?」
上半身裸のまま、バカボンこと耕平(柄本 佑)が聞く。
「大学の同級生です。
 ずっと連絡しても、つながらないんでちょっと心配で。」
「先輩なら九州に帰っておるよ。」
「何かあったんですか?」
「・・・」

手術後。
病室でぐっすりと眠る栄子。
雅也は母が病室に真珠の指輪を持ってきていることに気付く。

「綺麗やねー。
 オトンがくれた指輪なんやろ?」
まだ幼い雅也がその指輪を見て栄子に言うと、栄子は嬉しそうに微笑んでいた。
雅也はその時のことを思い出し・・・。

雅也は病院の公衆電話から、仕事の締め切りを延ばしてもらえないかと
交渉してみるが、聞いてもらえず・・・。

そこへ、兆治(泉谷しげる)がやって来る。
「今頃・・・。」父の背中にそう呟く雅也。

栄子の病室でタバコを吸う兆治。
「なんや、元気そうやの。」
「元気なわけ、なかろうも。」
「ほうか。」
病室の外で二人を見守る雅也は、母の指に真珠の指輪があることに気付く。

かっぱ屋で話す雅也と兆治。
父はカウンターに、息子はテーブル席に。別々に座り酒を飲む。
「オカン"かっぱ"閉めるん?」
「暫く入院するけ、借り賃ばーっかかかるけんのう。」
「そうなん・・・
 オトン。」
「なんや。」
「オトンは、暫くオカンの側におられんと?」
「・・・オトンかてそげん暇やないけの。」
「ばってん、」
「側におっても何の役にも立たんやろ。」
「・・・」むっとする雅也。
「じゃあ、行くけ。」
タバコの火を消し、席を立つ兆治。
「・・チビは、東京に帰るんか?」
「・・・」
「・・そしたらの。」
「オトン!」
兆治が帰っていく。

雨の中実家に戻った雅也は、濡れた身体を拭きながら、
ふと、母が大切にしていたぬか床を見つめ・・・。

久し振りの自分の部屋は、綺麗に片付けられていた。
テーブルのいつもの場所に雨のしずくが落ちてくる。
雅也は、ここに越してきた日に母と二人で同じ場所に桶を置いたことを
思い出しながら、印をつけたその場所にグラスを置くのだった。

「あの頃、オカンは想像していただろうか。
 年老いた自分が、この町で一人、病魔に襲われ、
 ため息をついていることを。」


雅也が病室に行くと、香苗と栄子が楽しそうに話をしていた。
常連客の話題で盛り上がっているらしい。
「オカン。
 そしたら、東京に、帰るけ。」
「・・・」
「仕事があるけ。」
母の目を見れずにそう話す雅也。
「はいはい!
 わざわざ、遠くから、お世話さまでした。」栄子が明るい笑顔で言う。
「そしたらね。」
息子の姿をベッドから見送る栄子。

「マー君!」栄子が廊下に出て来た。
「これ、お見舞いでもらったんよ。帰りに食べ!
 リンゴとバナナとぶどう!」
「もう、出てこんでええっち!」
「忘れもんなかね?新幹線のチケットは持ったと?
 バスの時間調べた?」
「大丈夫やって!
 ほら、はよ戻り。」
「はいはい。
 ・・・そしたらね!」
栄子は笑顔で手を振り、そして病室に戻っていった。

「5月にある人は言った。
 どれだけ親孝行をしてあげたとしても、
 いずれ、きっと後悔するでしょう。
 ああ、あれも、これも、してあげれば良かったと。」


1995年 東京
必死にイラストを書く雅也。
「締め切りまであと5分だよ!?
 ・・もう、始めて任されたコラムの挿絵を、
 どうしてよりによって中川に頼んじゃったのかなー。」
イラストを取りに来た鳴沢(平岡祐太)が愚痴をこぼす。

「お茶でございます。」
エプロンに三角巾をつけた、まるで新妻モードのバカボン。
「ありがとう。
 ・・熱っ!!」
「すみません!すぐに入れ替えます!」

「あーーーーっ!!終わらんーっ!!」
頭をかきむしる雅也。
「もうちょっと!諦めないでよ!
 せっかく好きなイラストの仕事なんでしょう!?」と鳴沢
「いやあ・・・好きな仕事も、仕事となると・・・仕事やねえ・・・。」
「・・・ダレてきちゃったってわけ!」
「ええんかねー。
 書いて出して書いて出して、そんなんで。」
「悩んでる暇があったら締め切り守ってよ!
 あ、これでいいや!」
イラストの山から一つ拾い上げ、社に戻ろうとする鳴沢。
「あ、まだ途中やけ!」
「いいよ。こっちで何とかするから!」
鳴沢が帰っていく。
「・・・すっかり社会に、まみれとうねー。」雅也が呟く。

まなみはカメラを諦めずにいた。
「佐々木、おめでとさん!」
社員に雑誌『歩道』を渡されるまなみ。
まなみはその記事に微笑み・・・。
デスクに置いたボードには、東京タワーの写真が飾ってあった。

「先輩、友達が来とるよ。」バカボンが不機嫌そうに告げる。
まなみだ。
「ちょっと、待っとって!」
慌てて部屋からまなみを出すと、雅也は遊びに来ていた住人と、
麻雀や、部屋に張ったグラビア写真をを片付け始める

「お待たせ。どうぞ!
 汚いとこだけど。」
「ごめんね、急に。」
「どげんしたと?」
「あ、これ。一番最初に見てもらいたくて。」
「え?」
「初仕事。
 まあ中川君よりずいぶん遅くなっちゃったけど。」
雑誌に掲載されたまなみの、石畳の町の風景写真。
「おめでとう!」
「ありがとう。」

「お茶、どうぞ!」バカボンがぶっきらぼうにお茶を出す。
「ありがとう・・」
「あの確認やけど、二人はただの友達なんよね?
 まだチューとかしとらんのよね!?」
お茶を噴出す二人。
「好きなの?マー君のこと。」レオ(チェン・ボーリン)がまなみを、
「お前はどうなんだよ!?」徳本(高岡蒼甫)が雅也を問い詰める。
「ここ、空気悪かけん、外いかんね!?」
アパートの住人たちに冷やかされながら、雅也はまなみを外に連れ出す。

「あ、あの・・悪かったね。」
「ううん。面白い人たちだね。」
「・・・」
「・・・久し振りだね。」
「あん時は、急にいなくなって、悪かったね。」
「ううん。
 お母さんの具合はどう?」
「オカン?
 ああ・・退院して、おばちゃんの店手伝いながら、
 病気、治しよる。」
「じゃあ、今も一人で九州に?」
「うん。」
「そっか。
 離れてて、心配になる?」
「ああ、大丈夫や思うけど・・・
 まなみちゃんの親は元気なん?」
「うん。」
二人は、東京タワーの写真を使ったポスターに目を留める。
「ねえ知ってる?」
「うん?」
「東京タワーのライトの色は、夏と冬とで違うんだよ。」
「そうなん。」
「最初に見たのも冬のタワーだったね。」
まなみの横顔を見つめる雅也・・・。

アパートの住人たちが雅也を噂する。
「アイツもほんと、煮えきれない男だからな。」
「先輩今頃あの女にたぶらかされておるんやろか。」
「マー君女の扱い知らないんだから!
 "ボク会って3秒で好きって言えるよ"」とレオ。
「そりゃ待ちがっとる。」中国語の部分を理解している!?バカボン。
「まずは、女なんか抱いちゃえばいいんだよ。」と徳本。
「それはそれで間違っとる!」とバカボン。

そこへ雅也が戻ってきた。
「先輩!どうやった?」
「せからしか!」
「チューした?」「押し倒した?」
「やかましか!
 もうよかろうも!」

アパートの管理人が、香苗からの電話を告げる。

不安そうに電話に出る雅也。
「もしもし・・」
「マー君!久し振りですねー。
 どげんしよるとですか?」香苗の明るい声が響く。
「最近は・・仕事で忙しくしとるよ。」
「へー。稼ぎよるとですかー!」
「そうでなか。
 どうしたん?」
「姉ちゃんも、最近大分調子がええんで、
 旅行にでも行こうって話してたんよ!」
「旅行!いいんやない?」
雅也の反応に、香苗も、となりで受話器に耳を付ける栄子も大喜び!
「そうやろ!
 行き先は、ハワイやから!」
「ハワイ!?はー、また豪勢やね!」
「旅費は、あんた持ちやから。」
「は!?いや、今それどころやないんやけど。」
「マー君、オカンは別にええんよ。
 ばってん、オカン元気なうちに、マー君と一緒に
 ハワイ行きたかったと。
 冥土の土産やきね。」と栄子。
「あれからちーっとも帰ってこんでから。
 そんぐらい親孝行せんね。わかったね」
香苗はそう言い受話器をガチャンと置くと、栄子と二人で大はしゃぎ!

「なんでなん・・・」
雅也はそう呟きながらも、預金通帳をチェック。
通帳には29,731円。手元にあるお金も合わせてみるが・・・
「はぁ・・・。全然足りん!」

雅也は鳴沢に仕事を紹介してもらおうと、彼を訪ねていく。
「あのー、もっと仕事、なかかねー。」
「まあ、周りにも聞いてみるけど、
 ちゃんと締め切り守れるの?」
「多分・・」
「それじゃダメ!」
「守るけん!」
「絶対?」
「絶対!」
「じゃあ聞いてみるよ。」

そして雅也は、交通整備のバイトにも精を出す。

ハワイのパンフレットを広げる雅也。
その金額、112,800円〜174,800円。
「うわ、高かねー。」

雅也は空き缶にハワイ旅行の資金を溜め始め、
そして仕事に精を出す。
銭湯の壁の絵、雑誌の挿絵など。
締め切りに間に合わそうと頑張るも、
「無理や・・。全然間に合わん・・。」
手伝おうとした住人に紙を破られ、
「・・・・・何でなん・・・。」

町で似顔絵描きをしてみるが、人は全然集まらず。

そこへ、レオ、徳本、バカボンが手伝いにやって来た。
感謝をする雅也だったが、三人が雅也の本等を売りに来たと知り、
慌てるものの、止めることも出来ず・・・。
しかも誰も足を止めようとしない。
レオは徳本の言い方が怖いからだと言い、笑顔を振りまくと、
レオのファンが集まり、喜んで本を買っていってくれた。
ビートルズのLPまで持ち出していた三人。
「それは売らんといてよー!」
「おばちゃんのハワイの為たい!孝行、孝行!」
「もう・・・なんで俺がここまでせんといけんと・・・。」
ダンボールの中から、雅也はバカボンと名前の付いた、
マジンガーZのロボットを見つける。
「あ・・」
「先輩、ずっと持っとってくれたんやね。」バカボンが微笑む。

1982年 福岡 筑豊
「マー君、あんた、オトンのこと好きね?」栄子が雅也に聞く。
「うん。」
「新学期から、小倉に住むね?」
「えー、また引っ越すと?」
「アパート借りて、オトンと三人で、住まんね?」
「え!?ほんとう!?」
「三人で住むかね。」栄子は指にはめた真珠の指輪に触れながら
笑顔で言う。
「きれいやね。
 それ、オトンがくれた指輪なにゃろ?」

雅也との別れを号泣して悲しむバカボンと和夫。
「小倉に行っても、たまには遊びにくるんよ!」
「先輩、これ、餞別たい。」
バカボンがマジンガーZのロボットを渡す。
「ありがとう。」
「これは俺からや。」和夫が野球のボールを渡す。
「ありがとう。
 絶対絶対、遊びにくるけんね・・。」
号泣する三人。

ところが・・・

「そうね・・。」栄子が電話を切る。
「マー君・・・
 やっぱり、行かんことにしたんよ。」
「え!?」
「小倉には行かんと。」
「嘘やろ?」
「行かんよ。」
「オトンは!?」
「・・・知らん。」
栄子は指輪を外し、電話の横に置いた。
「なんでなん・・・。」
雅也は友達の選別を見つめ・・・。

=東京=
「もう止めや。」
マジンガーZのロボットを箱に戻す雅也。
「オカンもオトンも、もういい年なんやけ、
 いい加減上手くやってくれたら、
 俺が孝行せいって責められることもなかとに。
 どうせ金も集まらんけ、ええよ、もう。
 オカンにそう言えば、済む話やけ。」

ぬか漬けをかき回す栄子。
テーブルの上には、『五十嵐不動産』と書かれた郵便物。

「お母さん。」
披露宴の会場から出て来た母()に声をかけるまなみ。
「珍しいわね。
 お母さんがこっちに来ても、いっつも忙しいって出てこないもんね。」
「ねえお母さん、私ね、やっと雑誌の写真を撮らせてもらえるようになったの。
 まだ小さいんだけど。」
そう言い雑誌を見せるまなみ。
「・・・で、いつまで東京でフラフラしてるつもり?
 もう充分でしょう?
 お母さんね、周りの人にあんたのこと説明するの恥ずかしいわ。」
「・・・」
「いつになったら帰ってくる?」

夜。
川沿いの道を、雅也と並ぶまなみ。
「中川君は、いつまで東京にいるんだろうとか考えたりする?
 確かなものもまだなーんにも掴んでないのに。
 ずっとここにいていいのかな、とか。」
「・・・わからんけど、
 わからんけど、多分まだなーんも掴んどらんけん、
 帰らんのだと思う。」
二人は夜に浮かび上がる東京タワーを見つめていた。
「そっか。
 そうだね。」まなみが微笑む。
まなみの横顔を見つめる雅也。
「あの・・・
 あの・・・俺、ずっと、」
「・・・」まなみが雅也を見つめる。
「ずっと、」
雅也の言葉を待つまなみ。
だが雅也はその先を言えず、視線をそらしてしまう。
東京タワーを見つめて微笑むまなみ。
ふと、腕時計で時間を確認する。
「ねえ知ってる?
 午前0時に、東京タワーのライトが消える瞬間を
 一緒に見た二人は、永遠に幸せになれるんだよ。」
まなみはそう言い雅也に微笑む。
東京タワーを見つめる二人。
そのとき、2人の見つめる東京タワーの灯りが消えて…。
嬉しそうに微笑む二人。
そして二人は、手をつなぎ、灯りを消した東京タワーを見つめ続けた。

まなみと手をつないだ手をニコニコと見つめながら帰宅する雅也。
「ただいまー!」
「なんね、先輩、ご機嫌良かね!」
アロハシャツにレイを下げ、ウクレレを手にするバカボンが迎える。
レオと徳本はマージャン中。
「ちょっとね。」
「ちょっとこっち来んね。」
バカボンに左手をつかまれ、慌ててその手を振り払う雅也。
「ああ・・
 !!どうしたん、その格好。」
「はい!」バカボンがハワイ行きのチケットを渡す。
「なにこれ!?」
「激安チケットがあったけ、買うといたよ。」
「・・・・・」
慌ててハワイ資金の缶を開けると、中身は空っぽ!
「勝手なことをしとう!
 これから、デート代だってかかるとに!」
「女にかまけてるんじゃないよ。」と徳本。
「本気で恋すると、ロクな目に遭わないよ。」とレオ。
「お前らが告白せいって言うとったやろうが!
 はー、何でこげなおせっかいば焼く・・・。」

「孝行できるだけいいじゃないかよ。
 俺なんか孝行のしようがないからさ。
 地元で悪さして、家追い出されてるんだ。
 今でも電話の一つも出来やしないっての。」と徳本。
「僕も、帰るお金もないし、ママの顔も八年、見てない。」とレオ。
「俺は単におばちゃんが好き。
 先輩、これ、みんなから度の選別たい。」
バカボンはそう言い、雅也にポチ袋を渡す。
中を開けてみると、400円入っていた。
それを見つめて、嬉しそうに微笑む雅也。

その頃、嬉しそうに荷作りする栄子。
「そげなもんまで持っていかなくても。」香苗は言うが、
「何が起きるかわからんけんね。」
「・・・それより、どうするん?」
「どうするかねー。」
「姉ちゃんばっか、なんでこんな目に遭うかね。」
「帰ってきたら考えるけ。」
早苗は、不動産屋から届いた『退去通告書』を見つめる。

「オカンが甲状腺ガンの手術をした年、
 僕達親子は、生まれて始めて旅行に行った。」


羽田空港。(かな?)
「アロハ〜」ハイテンションな香苗と栄子の姿を見つけ、
思わず姿を隠そうとする雅也。
「マー君!!」

「親子で行く、最初で最後の旅行に。」

「一人で行動せんこと。」
「はい!」
「知らん人にはついていかんこと。」
「はい。」
「迷ったら、すぐホテルに帰る。ええね?」
「はーーい!
 添乗員さん、よろしくお願いします!!」
「じゃあ、このバスに乗るけ。」
雅也が東武の観光バスに乗り込む。
「???マー君!?」「ハワイは、このバスで行けると?」
「ええから、乗り!」

「なんでなーーん!?」

「予算の問題や。
 文句言うなら帰るばい。」
一行が着いた場所は、スパリゾート・ハワイアンズ。

女性たちの水着姿にドギマギする雅也。
女の子に声をかけられ舞い上がる雅也に、
母と叔母のはしゃぐ声が聞こえてくる。
頭にシャワーキャップをつけ、ビートバンではしゃぐ母達。
思わず他人のふりをする雅也。
「マー君!!」「マー君!」
栄子と香苗に声をかけられている間に、女の子たちは去っていった。
「何でやん・・・。」

「マー君、平泳ぎ教えて。」
「それ外せや、恥ずかしか!」
不機嫌にそう言いはなった雅也は、母の喉元の大きな傷に気付く。
「目立つね?プールじゃスカーフ巻くわけにはいかんけんね!」と栄子。
「フランケンみたいや。」
栄子が明るく笑い飛ばす。

夕食。
ポリネシアン・ショーを見ながらのバーベキュー。
栄子は残したらもったいないと、持ってきたタッパに料理を詰め始める。
そんな母の指には真珠の指輪があった。
「持ってきたん?指輪。」
「おめかしっていったら、これしかないけんね。」
「兄さんね、姉ちゃんに、ベタボレやったんよ!」と香苗。
「えーっ!?」
「パーティーで知り合ってから、3日もしないうちに、
 結納持って、実家に乗り込んで来たんよ!」
「そげな話、はじめて聞いたばい!」
「若い頃の話なんて。」と栄子。
「想像つかん。オカンの若い頃なんて。」
「オカンだって、最初からオバチャンだったわけじゃないんよ!」
「最近は、オトンに会うてる?」
「手術ん時に来たっきり。
 それっきり会っとらんばい。」

「ご一緒に、ステージで踊りませんか?」
スタッフに声をかけられ、
「うち、踊り大好きやけ!!」
栄子がステージに上がる。
「マー君!」ステージの上から声をかける栄子。
「はしゃぎすぎたい!」雅也が怒る。
「ばかちん!」香苗が雅也の頭を叩く。
「少しぐらい、はめ外させてやり。
 姉ちゃん、こげな機会でもなきゃ、おもいっきりハメ外せんやろ。
 帰ったらまた、いろいろと考えなきゃいけんことやし、
 ガンも治ったわけやないし。
 今でも不安抱えとる。
 たった一人の息子は、東京からちーっとも帰ってこん。
 ただでさえ心細い思いで暮らしとうとに。
 その家も、もう出てかな行かん・・。」
「・・・え!?」
「聞いとらんと!?」
「なんね?」
「病院の家ね、持ち主さんが変わって、
 取り壊しになるんよ!」
「・・・・・
 あの家・・・無くなるん?」
「はーあ。なーんも知らんとね。」
雅也はステージで無邪気に踊る母の笑顔を見つめ・・・。

雅也が栄子と香苗の部屋にやって来た。
「どげんしたと?」栄子が聞く。
「おばちゃんが、こっちで寝らんねっち、言いよる。」
「そうね!」
ベッドに横になる雅也。
「久し振りやね。マー君とこげんして一緒に寝るん。
 一緒にご飯食べて、同じ部屋に帰ってきて、
 おやすみなさいっちゅうの、いつ振りやろうね。」
「・・・」
真珠の指輪をケースにしまう栄子を雅也は見つめる。
「・・・オカン。」
「なんね。」
「オトンのことやけど、二人とも、もうええ年なんやけ、
 もう一回、ちゃーんと一緒に住んだ方が、いいんやないとね?
 お互い意地張らんで。
 オカンにとっても、オトンにとっても、
 それが一番いいことやっち、俺は思っとうけど。」
「・・・オトンは、他の女の人と住んでおるんよ。」
「・・・」
「覚えとう?
 昔、小倉で三人で住むっちゅーときに、
 急に取りやめになったん。
 あの頃から、その女の人と住んどるんよ。」
「・・・」
「だからええんよ。
 あんたはそげな心配せんで。」
ベッドに横になる栄子。
「マー君?」
「うん?」
「楽しか旅だった!
 オカン、一生忘れんけんね。」
栄子はそう言い眠りにつく。

羽田空港。
「そしたら、オカンたち帰るけ。」
「うん。」
「身体に気をつけて、しっかりがんばり。」
「わかったっち!」
「元気でね。」栄子は手を振り、そして搭乗口へ香苗と向う。
そんな母の背中を見つめる雅也。
母と一緒に暮らしていた頃の出来事を思い返しながら・・・。

「オカンは、マー君がおってくれたらそれでええ。」
「俺おるよ。
 オカンと、ずーっと一緒におるけ。」
幼い頃の、夕日を見つめながらの約束。

「・・・オカン!」
「どげんしたと?」栄子が振り返る。
母の元に駆け寄る雅也。
「オカン。
 東京に、来るね?」
「・・・」
「東京で、一緒に住まんね。」
「・・・」
「マー君、何言いだすと?」と香苗。
「そっちに行って・・ええんかね。」と栄子。
「姉ちゃんまで。 
 田舎にしか住んだことないんだし、
 病気も持っとるんだし。」心配する香苗。
「本当に、ええんかね。」
「うん。
 東京で、一緒に住もう。」
雅也の言葉に、涙を浮かべて微笑む栄子。
「姉ちゃんも、マー君と一緒におるのが、
 一番ええんやろうね。」香苗も納得する。
栄子は輝く笑顔で雅也を見つめる。
雅也もそれに答えるように微笑んだ。

手術のあとを隠すようにスカーフを巻き、
栄子は雅也と住んだ家を見渡すと、
東京行きのチケットを握り締めて、歩き出す。

「駅の名前も、電車の乗り方も知らず、
 知り合いも居ないこの町に、
 オカンはやってきた。」


風呂敷を抱えて、東京駅をウロウロする栄子。

「18歳の時の僕の様に。」

東京タワーを見上げる栄子。
「オカン!」
「マー君!!」
嬉しそうに手を振る栄子。
「高かねー!」
東京タワーを見上げる二人。

「ただ、僕が、東京にいるということだけを理由に。」



オカンの指輪が切なかった。
別れた夫が、昔プレゼントしてくれた指輪を
入院する病院に持ってきて、
そしてオトンが来るとその指輪を指にはめて。
まだオトンが好きなんだろうな、栄子は。

自分が病気をしようが、子供が何歳になろうが、
母親は母なんですよね・・・。
見舞いに来た雅也を見送る栄子の言葉にも胸が熱くなりました。

雅也とまなみ、二人の初々しい恋が微笑ましい。
まなみと手をつないだその手を洗いたくない気持ちもわかります。(笑)

始めての家族旅行。
目的のハワイには予算の都合で行けず。
バカボンが用意したチケットは、スパリゾート・ハワイアンズでしたか。
『ヒミツの花園』のメンバーと遭遇・・・はないですね。(笑)

まなみと母の関係が、あまり上手くいっていないようなのも
気になりました。こちらの親子も、雅也とオカンの姿に
影響を受けるのでしょうか。

そういえば、アパートの住人、手塚(石黒賢)はどこに!?
次週登場するようですね。

オカンがいよいよ上京してきました。
病気の母を一人にしておけない息子。
息子の側にいたい母。
見詰め合う二人の笑顔が素敵でした。



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感動のポイントをまとめています。
第一話:母の手紙と一万円札
第二話:母の手料理でいっぱいの冷蔵庫
第三話:ハルの通帳と、雅也宛の箱(沢山のギザ10)
第四話:公衆電話
第五話:真珠の指輪


雅也の部屋の番号:816230413



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原作。まだ読み途中です。
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フジテレビ公式グッズ





キャスト
中川雅也(速水もこみち)
佐々木まなみ(香椎由宇)
山田耕平(柄本 佑)
前野和夫(山崎裕太)
中川富美子(佐々木すみ江)
藤本ハル(赤木春恵)
藤本香苗(浅田美代子)
鳴沢一(平岡祐太)
手塚修一郎(石黒賢)
徳本寛人(高岡蒼甫)
レオ・リー(チェン・ボーリン)
中西靖子(久保田磨希)アパート管理人
佐々木慶子(朝加真由美)
担任(斉藤洋介)
オカマバーのママ(深沢敦)
中川兆治(泉谷しげる)
中川栄子(倍賞美津子)


ほか


スタッフ

■原作
 リリー・フランキー
 「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(扶桑社刊)

■脚本
 大島里美

■プロデュース
 中野利幸

■演出
 久保田哲史

■音楽
 河野 伸
 澤野弘之

■制作
 フジテレビドラマ制作センター

■主題歌
 コブクロ『蕾』
 (ワーナーミュージック・ジャパン)



速水もこみちさんの主な出演作品


この記事へのコメント
ちーずさんこんばんは、ひみつの花園のハワイアンセンター(現在は違いますが)は同じ事を思い浮かべました。スーパーアイドルの浅田さんと肉体派女優の倍賞さんの現在の水着姿はびっくりです!シャワーキャップは笑えたけど、ちなみにまなみの撮った写真も父上さまの石畳の町並みでしょうか?

雅也の子供の頃の回想シーンのオカン役は佐田真由美さんの起用でも良かったのかも?二人とも好きな女優さんで鼻筋や目元が似ていると思うのは自分だけでしょうか?

当初おもっていた、もこみち君人気にあやかって恋愛モードに突入なドラマになるかと思っていましたが綺麗なドラマになりそうですね!まなみの親の存在が華麗なるを観ていると余計な詮索をする自分が悲しい!

少し年代公証が違うような気はしますが、どんどんハマッテいきます。今回は雅也のまえでは気丈に振舞いオトンには治療が苦しいと本音を言うところと「そっちに行って・・ええんかね。」の潤んだ瞳の演技にやられました!
Posted by けた at 2007年02月06日 22:56
視聴率が低いそうですね!何でだろう?
男なのに次のシーンをみたところ、思わずに感動され、涙・・・!恥ずかしい!!!
親孝行しない人の将来はきっと親孝行も去れないに間違いない、下は上を見て成長するだからね!
「・・・オカン!」
「どげんしたと?」栄子が振り返る。
母の元に駆け寄る雅也。
「オカン。
 東京に、来るね?」
「・・・」
「東京で、一緒に住まんね。」
「・・・」
「マー君、何言いだすと?」と香苗。
「そっちに行って・・ええんかね。」と栄子。
「姉ちゃんまで。 
 田舎にしか住んだことないんだし、
 病気も持っとるんだし。」心配する香苗。
「本当に、ええんかね。」
「うん。
 東京で、一緒に住もう。」
雅也の言葉に、涙を浮かべて微笑む栄子。
「姉ちゃんも、マー君と一緒におるのが、
 一番ええんやろうね。」香苗も納得する。
栄子は輝く笑顔で雅也を見つめる。
雅也もそれに答えるように微笑んだ。

ちゃんと引用先を書きますので自分の記事には上記のセリフを引用してもよろしいですか?
Posted by 無料ドラマダウンロード案内所―管理者ccyy at 2007年02月07日 11:40
こんばんは。コメントありがとうございます!

★けたさん★
けたさんは木曜日、『拝啓』を見ていらっしゃるのかな?
いいドラマですよね。最近は『きらきら』も面白くなってきました。^^

そうそう、オカンはオトンには病気の苦しみを吐き出せるんですよね。
でも雅也には愚痴を言わない。
母親なんだなぁ・・・。
雅也に東京に来るよう言われた時の栄子は本当に嬉しそうでしたね!

★ccyyさん★
リンクありがとうございます。こちらもリンクさせていただきますね。
それから引用も、引用元さえ書いてくださればOKです。
よろしくお願いいたします!
Posted by ちーず at 2007年02月07日 22:29
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