2007年02月13日

東京タワー〜オカンとボクと、時々オトン〜 第6話

『オカン上陸』

中川雅也(速水もこみち)は、母の栄子(倍賞美津子)と
東京で再び一緒に暮らすことを決意。

「ドラマチックやー!
 先輩カッコよか!男の鏡たい!
 それでおばちゃん、東京に来ると?」
バカボンこと耕平(柄本 佑)は感動するが、
「まー、そう言うとったけん、来るんやないと?」
とテンションが低い。
「意外な返事やったんよねー。」

その頃栄子は、香苗(浅田美代子)の店で、
香苗や常連客たちと別れを惜しんでいた。

雅也のアパート。
「オカンのことやけ、心配せんでよか、
 気持ちだけ貰うとくっち・・・って言いそうなもんやろ?
 実感がわかん・・・。
 これから俺がオカンば養っていかな、いけんのよねー。
 引越し代も集めんといけんし。
 ・・・ほんとに来ると!?」
「何で俺に聞くん!先輩、腹くくらんね!」
「わかっとうよ・・・。」栄子が家に戻ると、外で兆治(泉谷しげる)が待っていた。
「暫くやのー。
 東京へ行くんか?」
「・・・」
「60過ぎのおばあさんが、知り合いもおらんとに、
 暮らしていけるような街やないけんのー。」
「・・・おるけ。
 マー君がおるけ。
 場所はどこでも関係なか。
 ・・・東京に行くけん。」
「そうか。
 覚悟決めたんやな。
 ・・・そしたらの。」
兆治がかえっていく。

そして、栄子は東京に出てきた。
「オカン!」
「マー君!」
「待ったと?」
「ううん。
 高いねー!」
東京タワーを見つめる栄子。
「行くよー!」
雅也の声をかけられ、慌てて雅也の後を付いて歩く。

1996年東京
雅也は笹塚に少し広いアパートを借りて、栄子を受け入れた。
駅のすぐ側。下はボーリング場。
「賑やかで良かね!」と栄子はとても嬉しそう。

「さてと、片付けるかね。」
「オカン。荷物それだけなん?」
栄子の荷物は、ぬか床と、カバンと、小さなタンスが一つ。
「大事なものだけしか持ってこなかったけ、
 これが、オカンの全財産!」
「そげん貧乏臭いタンスなんか持ってこなくても良かとに。
 どうせ、たいしたもんなかろう。」
「そげなことなかよ。」
「オカン。
 当面の生活費や。
 引越しでだいぶ使ってしまったけん、
 暫くは苦しいかもしれんけど。」
雅也が封筒に入れた金を差し出す。
「・・・そしたら、オカンも早くに仕事探すけん。」
「東京じゃそげん簡単に見つからんよ。
 こっちの病院で、しっかり病気ば治してから
 探したらええ。」
「・・・マー君?」
「なんね。」
「・・・オカン、ずーっとこっちにいて、ええんかね。」
「ええも悪いも、もう来てしもとるや。」
「そしたら・・・」
イスに正座する栄子。
「お世話になります。」
そう言い嬉しそうに微笑んだ。

その頃バカボンは、雅也が出ていってしまった寂しさを
レオ(チェン・ボーリン)や徳本(高岡蒼甫)に訴えていた。
アパートの部屋をノックする音。
「先輩!?」慌てて部屋を開けると、
久し振りに帰宅した手塚修一郎(石黒賢)だった。
アジアから中東をフラフラ旅行していたらしい。
「相変わらず自由っすねー!」徳本たちが笑う。
「あれ!?バカ坊ちゃんは!?」
「それが・・」
「また家賃滞納!?」
「先輩引っ越したんよ。」
「え!?」
「お母さんこっちに呼んで一緒に暮らしよる。」

買物に出た栄子は、野菜の値段の高さにびっくり!

「18歳で、オカンの元を離れてから6年。」

漬物を刻む栄子。
ぬか漬けの壷。
テーブルとイスの足には、床を傷つけないように布が
巻かれている。
広告で折ったゴミ入れ。
そして、九州から持ってきたタンス。

卵を焼きながら、「マー君ー!」と呼ぶ栄子。

「ボクとオカンは、
 東京で、また一緒に暮らすことになった。」


「マー君!早く起きんしゃい!」

雅也の部屋の机には、イラスト道具が所狭しと置いてある。
きちんと並べて置かれた週刊誌。
ファミコン。
マジンガーZのロボット。
壁には松井選手のポスター。。
雅也はテーブルの横に布団を引いて眠っている。

「マー君!早く起きんしゃい!
 仕事に遅れるよー!」
「うわぁぁぁ!!遅刻やーーーっ!!
 遅刻や遅刻!!」
「早う食べんしゃい。
 マー君の好きなぬか漬けよ。
 今日の味噌汁は、キャベツたい!」
テーブルの上にはおいしそうな和食が並べてある。
「買物、行ってきたん?」
「東京は野菜が高かねー!びっくりした!
 あ!ひどい寝癖たい!」
手のひらにツバをつけ、雅也の頭を撫で回す栄子。
「あーもう、ええって!!
 時間がないけ。」
「待ちんしゃい!
 ズボンに穴が開いとるよ。
 はよ、脱ぎんしゃい。」
「うわぁ、もう、ええんよ、これはこれで。」
「ばってん!
 仕事場にボロ着てったらいけんよ。
 はよ脱ぎんしゃい。」
「あーもう、せからしか!
 宅配便で筑豊に送り返すばい!」
「そげん意地悪しても、帰る家がないけんね。」栄子が笑う。
「・・・」
玄関で靴を履く雅也。

「5月にある人は言ってた。」

「マー君!お弁当、持ってきんしゃい。」
「いらん!」

「東京でも、田舎町でも、
 どこでも一緒。」


「マー君!何時に帰る?」雅也を追う栄子。
「わからん!」
マンションの外まで追いかけてきて、大声で雅也を呼ぶ栄子。
「マー君!夕飯何がええんかね!?」
「・・・もうマー君って呼ぶなや!」
「雅也さーん!いってらっしゃーーい!」
人々の笑いを気にすることなく元気に手を振る栄子。
そんな栄子に困り果てながら、雅也は仕事場に向う。

「結局は、誰と一緒にいるのか、
 それが、大切なことだから。」


台所と雅也の部屋の位置が、実家と同じ配置なんですね!
まるであの頃に戻ったみたいです。
栄子の嬉しそうなあの笑顔!


姿見を見ながら鼻歌を歌い、髪を整える雅也。
その日はまなみ(香椎由宇)とのデートの日。
ファッション誌をチェックし、ジャケットを袋から取り出す。
雅也は東京タワーの写真に、まなみと一緒にライトが消える
のを見て、そして手をつないだことを思い出す。
自分の手を見つめて微笑む雅也。

台所ではバカボンが栄子の作ったご飯を食べながら、
病院までの電車の乗り継ぎを教えている。
「おばちゃん病院まで行けるやろか・・」不安がる栄子。
「大丈夫たい。
 ただお洒落していかんと笑われる町やけ、
 それだけは気をつけるんよ。」
「バカボン、すっかり東京の人たい!」
「そうたい!シティーボーイたい!」
「おばちゃんずーっと田舎に住んどったけ、
 60過ぎて突然、渋谷区民になったとよ。」

「ちょっとオカン。
 見ないんだったら消しー。」
部屋から出て来た雅也がテレビを消そうとリモコンを手に取る。
「何でリモコンがラップで巻かれとう!?」
「そうやっとくと埃が入らんとよ。
 便利やろ?」
「まったく。貧乏臭いことしやがって。
 !!うわーーーっ!!何縫うとるん!」
雅也の穴の開いたジーンズが、きっちりと縫い付けられている。
「だって、どげんしたらそげな穴が開くんかねー。
 あれ!お洒落して出かけると?」
「仕事や。」

そこへ、電話がかかってくる。
「ええっち!俺が出るっち!」
慌てて栄子より先に受話器をとる雅也。
「はい!
 え?
 うん。
 起きとうよ。」

「デレデレした声出して・・。」と栄子。
「彼女たい。デートに行きよる。」とバカボン。
「彼女!?
 マー君!彼女がおると!?」

「せからしか!」

栄子はバカボンと目を合わせ、そして雅也から受話器を奪う。
バカボンが雅也を押さえつける。

「もしもし、マー君がお世話になっております。
 オカンです!
 あ、約束しておったと?
 だったら、うちに来たらどげんですか?
 お昼ごはん作って待ってますけん。」

「今行くけ!」
受話器を奪い返した雅也はそう言うと、母を睨み、
そして急いで家を出ていった。

「待っとるけんねー!」
上機嫌で手を振る栄子。

まなみに遅刻したことを詫びる雅也。
雅也が歩き出すと、まなみが雅也のジーンズを指差して言う。
「何?それ。」
電話ボックスに映して見ると、ウサギのワッペンが付いている!
「あーっ!オカン!!」
まなみが楽しそうに笑う。

お米を研ぐ栄子。
「マー君に、彼女ねー。
 ・・・ドキドキしてきたばい!」
「そげん緊張するような相手じゃなか。
 中の下や。」
「ねえバカボン、この洋服で大丈夫やろか。」

「ねー、変じゃない?この服。」まなみが雅也に聞く。
「ううん。」
「大丈夫かな。」
「あのー、別に、無理に会う必要ないんよ。」
「え!?」
「せっかくの休みなんやし、映画、行かんね?」
「でも、せっかく誘ってもらったし、
 それに・・・マー君のお母さんに会いたい。」
「・・・
 あ!俺、のどか沸いたけ、茶せんね?」

12時を過ぎても雅也たちは帰ってこず、
栄子は落ち着かずにウロウロ。
インターホンが鳴る。

「はじめまして!マー君のオカンです!」
ところが、やって来たのは手塚、レオ、徳本だった。
「どうも、はじめまして!」「お祝い」「持ってきました!」

三人に食事を振舞う栄子。
三人は母の手料理に感激しっぱなし。
「このぬか漬けはお母さんが?」手塚が聞く。
「母ちゃんから引き継いだ、100年もののぬか床たい。」
「じゃあわざわざ、九州から持ってきたんですか?」
「はい!」
「どうりで美味いはずです。」
栄子は美味しそうにぬか漬けを食べる手塚の顔を
嬉しそうに見つめていた。

栄子に会うのを楽しみにしているまなみだが、
雅也はなかなか家に行こうとしない。

仕事があるからと先に帰る手塚に、栄子はタッパにぬか漬けを
詰めて持たせる。
「うちの母も、田舎で良く作ってました。
 ちっちゃいタッパーでチマチマと。」
「お母さん、田舎におるん?」
「・・ええ、ああ。
 この通りふらふらしてますから、なかなか。」
「そうね。」
「立派ですね、マー君は。」

喫茶店の次は本屋、そしてまた、どこかへ寄り道しようとする
雅也。

インターホンの音が鳴る。
「はじめまして!
 マー君のオカンです。
 ・・あれ・・」
玄関に立っていたのは、鳴沢(平岡祐太)だった。

締め切りの原稿を取りにきた鳴沢。
栄子と鳴沢は、雅也の部屋を探していく。
「あ!これだと思います。」
「ごめんなさいね、忘れっぽい子で。
 本当にご迷惑かけとるんでしょうね。」
「いえ・・大丈夫です。」

「鳴沢君、ご飯よそったけん、食べていきんしゃい。」
「ご飯?」
「おばちゃんのご飯、美味しかよ。」とバカボン。
「いえ、これから打ち合わせがありますから。」
「あら・・・。忙しい?」
「そうですね。」
「そうなん・・」
「じゃあ、失礼します。」

徳本は、栄子の寂しそうな表情を見逃さず、
「お母さん!いいっすか、食って。」
と声をかけ、そのご飯を食べ始める。

「ばってん、マー君たち遅かねー!」
時刻はもうすぐ午後五時。
「おばちゃん、先輩もう帰ってこんかもよ。」
「二人きりで楽しんでるんじゃない?」とレオ。
「そうかもしれんね。」栄子が微笑む。

「マー君。」
「ハイ!」
「もしかして、私のことまだお母さんに紹介したくないの?」
「いや、そういう訳やないんやけど・・。」
「ほんとに?」
「ほんとほんと!ほんとだよ。」
「じゃあ行こうよ。」
「じゃあ・・行こう。」

鳴沢はそんな二人の姿を見かけ・・・。

玄関の前。
「見ても、引かんでよ。
 田舎くさーい、貧乏くさーい、ただのおばちゃんやからね。」
雅也がまなみに言う。
「いいから。」
まなみに言われ、雅也が部屋の戸を開ける。
すると・・・
鼻ひげメガネをつけたオカンと、レオ、徳本、バカボンが
おどけた様子で待ち構えていた。
おもわず戸を閉める雅也・・・。
「見た!?」
「うん。」

「マー君!」栄子が出てきた。
「はじめまして!
 これ、おみやげです。」とまなみ。
「はじめまして!
 マー君のオカンです!」

アパートの住人たちとマージャンをする雅也。
台所では、栄子がまなみに、がめ煮の作り方を教えている。
そんな二人の背中を雅也は見つめ・・・。

「器用やね。」
「実家にいた時はよく手伝ってたんです。」
「ご両親は何しとる?」
「父を小さい頃に亡くなって、
 母は旅館を。」
「お母さん自慢のお嬢さんやね。」
「・・・」

「ちょっとオカン!
 なんでんかんでん、聞くなよ!」
「楽しくお話ばしとるんよ。
 マー君はそっちで飲んどきー。」
「マー君っち呼ぶなよ!」
「マー君はマー君やきー。」
「・・もうええっ!!」

「仲良しなんですね。」
「そう?いつまでも反抗期たい。
 まなみちゃん、あげん怒りん坊の、どこが好きになったと?」
「・・・どこでしょう。」
顔を見合わせて微笑む二人。

まなみを送っていく雅也。
「今日は、悪かったね。
 今度、休みが取れたら、」
「又家に遊びにいってもいい?」
「え!?」
「もっとお母さんに料理教えてもらいたいし。」
まなみの言葉に困惑する雅也。

家に帰ると、母はぬか床をかき混ぜていた。
「いい子やね、まなみちゃん。
 あんたもしっかりして、ちゃーんと幸せにしてあげな
 いけんよ。
 お仕事も、約束ば守らなきゃいけん。
 鳴沢君やて忙しいんやから。」
「・・・」
「マー君!」
「わかったっち!」

いくつになっても親にとって子供は子供。
つい、子供の為と思って口うるさくなってしまうんですよね。
栄子の言い方はとても穏やかだけど、
それでも雅也にとっては心地の良いものではないようで・・。


部屋で仕事をしていると、母がテレビに大笑いする声が
聞こえてくる。
「ちょっとオカン!!」
「マー君!ちょっと見て!!面白かよ!」
オカンは自分の笑い声を迷惑がっている雅也に気付かなかった。

そこへ電話が入る。
「はい。
 ・・あ、ごめん。あと30分ぐらいやけ・・。」

電話の相手は鳴沢だった。
鳴沢は上司に、雅也が毎回締め切りを守らないことを
怒られてしまう。
「もう切れば?
 イラストレーターなんて他にいくらでもいるんだから。」
「あの・・でも・・中川のイラスト評判いいですし。」
「鳴沢、せっかく企画通るようになってきたんだろう。
 お前には期待してるんだからさ。
 あんまりいい人やってると、出世しないぞ!」
「・・・」

イラストを書き上げた雅也は鳴沢のいる事務所に駆け込む。
「お待たせ!
 ・・・ごめん。
 最近仕事に集中出来んで、困るけ・・。
 はい。」
「ああ、その仕事・・
 もう他に振っちゃった。」
「え・・・
 そしたら、ギャラはどうなるん?」
「又他に仕事あったら頼むよ。
 じゃあ俺会議に行かないと。」
「・・・なんねー。
 友達がいがなかねー。」
「・・・中川はごめんで済むかもしれないけど、
 責任取るのは俺なんだよ。
 いいね、中川は。
 いつまでも自由で。
 でもまともに働いているとさ、
 いつまでも中川のペースになんか合わせてらんないんだよ。」
鳴沢はそう言い会議に行ってしまう。

雅也が家に戻ると、オカンは又アパートの住人に食事を
振舞っていた。
栄子は食事を勧めるが、雅也は仕事があると部屋に篭ってしまう。

机の上には電気代、水道料金などの請求書。
そして、区役所からの催告書。
暗い表情の雅也。
顔を上げたとき、今までそこになかった"ベッド"が
置いてあることに気付く。

「ちょっとオカン!オカン!」
「なんね?」
「どうしたん、これ!」
「ぺちゃんこの布団で背中が痛かろうが。
 疲れもとれんやろ?」
「ばってん・・」
「毎日のことやけ、奮発してええの買ったけ。
 ここで、寝んしゃい!」
「そんな金、持っとったん?」
「これで貯金、ぜーんぶ無うなった。」
「・・・」

ベランダの鉢植えに水をやっていた栄子は、
雅也が出かけようとすると駆け寄ってくる。
「マー君!マー君?どこ行くん?」
「・・・」
「マー君!」
雅也は栄子を無視して出かけてしまう。

ファミレスで仕事をする雅也。
丁寧に色を塗っていたが、突然、ペンでぐしゃぐしゃに
塗りつぶしてしまう。

「お帰り。」
「・・・」
「また徹夜でお仕事してたん?」
テーブルに並べられたたくさんのご馳走。
「・・・オカン。」
「うん?」
「どうするん、これ。」
「友達も、仕事の人も、いつ来るかわからんけ。
 お腹空かせとったら可哀想でしょう。」
「今日は誰も来んばい。」
「じゃあ・・五目御飯にして、お隣さんにおすそ分けしよう。」
「近所づきあいもなかとに。
 知らんばあさんからいきなり飯貰っても
 気持ち悪いだけたい!」
「何怒っとるん?」
「怒っとらんよ。
 ばってん、九州の田舎とは違うんやから、
 来る人来る人振舞わんでもええんよ。」
「ばってん、みんな美味しい美味しいって食べてくれるよ。」
「誰の金やちょ思っとー!!」
「・・・」
「・・・ええよもう。
 オカンの好きにしー。
 誰にでも好きなだけ振舞ったらよか。」
「・・・どこ行くん?」
「どこ行くん、誰と会うん、帰りは何時なん・・
 いちいち全部報告せんといけんと!?
 もう息が詰まるわ!
 ここは、俺の家やき!!
 もう帰ればよかとに。」
「・・・」

あても無く走り続ける雅也・・・。

台所で放心状態の栄子・・・。

雅也は、アパートの廊下に膝を抱えて座っていた。
そこへ手塚がやって来る。
「よう。」

手塚の部屋。
酒と、栄子のぬか漬けを出し、炒め物を作る手塚。
「やっぱ落ち着くわ。」と雅也。
「帰らないでいいの?
 お母さん心配してるんじゃないの?」
「・・・こげな生活、いつまで続くんやろうか。
 これからずーっとや思ったら、
 気が遠くなる・・・。」
「ふるさとは、遠くにありて思うもの、ってね。
 お母さん筑豊にいてくれた方が都合が良かった?」
「・・・」
「まあ東京の生活に慣れれば、誰でもそう思うよ。」
「手塚さんのふるさとは、どこなん?」
「福島。
 実家のお袋に、たまには顔でも見せてやるかって、
 田舎帰ったりするだろ?
 懐かしいのは最初の10分。 
 あとは・・
 仕事は何してる?
 いい年なんだから結婚しろ。
 孫の顔が見たい。
 一日と持たずにとんぼ返り!
 親なんてそんなもんだよ。
 いないと寂しい。
 でもいると鬱陶しい。」

家で食事の支度をする栄子。
そこへまなみが訪ねてきた。
「お母さんに教わったとおりに作ったつもりが、
 なんか一味足りなくて。」
タッパにがめ煮を入れて持ってきたまなみ。
栄子はそれを一つつまみ、
「うん!干ししいたけの戻し汁やね。」
「忘れてました!」
「でも、これはこれで良か味よ!」
嬉しそうに微笑むまなみ。
テーブルの上の大量のおにぎりに気付くまなみ。
「ああ、炊きすぎてしまったけん。」
そう言い、おにぎりを握りはじめる栄子。
「何かあったんですか?」
「・・・」

手塚の部屋。
「けどな、俺たいしたもんだと思ったよ。
 マー君がお母さんと住み始めたって聞いた時。」
「・・・」
「俺にはとっても出来なかったから。
 おふくろが危篤だって聞いた時もさ、
 こっちでフラフラしてたぐらい。
 まあ死なないと思ってたからね、なんとなく。」
「・・・それで・・」
「・・・死ぬでしょう。だって危篤だもん。
 ・・・いつかさ、マー君にも来るかもしれないよ。
 何年後か、何十年後か。
 このぬか漬けをすっげー食いてーって思う日が。」
「・・・・・」
雅也はタッパに入れられたぬか漬けを見つめ・・。
「ま、そんなのはその時にわかればいい話!
 ・・けど、あのでっかい壷抱えて東京に出て来た
 お母さんの覚悟だけは・・・わかってあげたら?」
「・・・」

栄子と並んでおにぎりを作るまなみ。
「止まっとったかもしれんね。
 私の中じゃ、18歳のマー君のまんまで、
 時間が止まっとったけ。
 いっぱい世話してあげなきゃいけんって
 思ってたばってん、
 まなみちゃんや、友達もおるし、
 仕事も頑張っておるし、
 マー君東京で一人で、立派にやっとったんやね。」
「お母さん。」
「嬉しいんよ。
 東京に出てきて、知らなかったマー君を知ることが出来て、
 それだけで、出て来た甲斐があったけ。
 まなみちゃん?マー君のこと、これからもお願いします。」
まなみが嬉しそうに頷く。
皿には、栄子が握った大きなおにぎりと、
まなみが握った小さなおにぎりが並ぶ。
「ずっと考えていたんです。
 この前お母さんに聞かれて、
 マー君のどこに惹かれたんだろうって。
 はじめて会った時から自由な人でした。
 私には無かったものだから・・・
 きっと中川君は、どんな自分でも、
 全部受け止めてくれる人がいるから、
 あんなに自由になれたんですね。
 お母さんに会ってわかりました。
 羨ましいです・・・。」
「・・・」

雅也が家に戻ってきた。
家の中は真っ暗。
「オカン?」
テーブルの上にはたくさんのおにぎり。
雅也はぬか漬けの入った壷を見つめ・・・。

そして、オカンが田舎から持ってきた小さなタンスの
引き出しを開けてみる。
雅也がデザインした、かっぱ屋の暖簾。
額縁に入れられた、美大の合格通知書と大学の卒業証書。
思わず目頭が熱くなる雅也。
スクラップ帳を開いてみる。
『祝 マー君のはじめてのイラスト』
『ウーマンスタイル5月号掲載
 おめでとう!』
今までの雅也の作品全てが、綺麗に貼り付けられてあった。
表示には、『マー君 イラストファイル』と書いてある。

「あのでっかい壷抱えて東京に出て来た
 お母さんの覚悟だけは・・・わかってあげたら?」
手塚の言葉。
壷を抱えて元気に手を振る母の姿。
「大事なもんしか持ってこなかったけ。
 これが、オカンの全財産。」母の言葉。

そこへ栄子が戻ってきた。
「帰っとったん?
 ご飯食べた? 
 すぐに支度するけ。」
手を洗い、ぬか床をかき混ぜる栄子。
「こげな時間まで、どこ行っとったん?」
「マー君が意地悪言うけ、家出たい。」栄子が笑いながら言う。
「・・・オカンかて、ちーとは考えてみたんよ。
 横浜の早苗んちに行こうか。
 香苗んち世話になろうか。
 考えたけ・・・。
 オカン、やっぱり、マー君ち以外、
 行くとこないけ・・。
 困ったけんね。」無理に微笑む栄子。
「・・・これからは、ここが・・
 オカンと俺の家たい。
 それで、死ぬまで・・・東京におったらええ。」
栄子は、雅也の言葉に涙がこぼれそうになるのを必死にこらえ、
ぬか床をかき混ぜ続けた。

ビルの屋上。
「綺麗やね・・・。
 登ったらきっと、見晴らしがええで、
 気持ちよかろうねー!」
東京タワーを見つめて栄子が言う。
「寒かけん、もう戻るよ。」
「・・・そうね。」
雅也は東京タワーを見つめ続ける栄子の背中を見つめ、
「オカン!
 今度、連れてっちゃるけ!」と微笑む。
「ハイ!楽しみんしとこ!」栄子が嬉しそうに微笑んだ。


※一部公式HPあらすじを引用しました。


タイトルの『オカン上陸』にマー君の思いが表れている
ような気がします。
台風のようにやって来て、マー君の為に良かれと思って
彼のペースを引っ掻き回してしまっていたオカン。

最初はお互い、気を使っていたとしても、
だんだん、お互いの存在が邪魔に思ってしまいことが
出てくる。
オカンはそんなことないかもしれないけれど、
仕事をするマー君は、オカンのテレビの音と笑い声に
文句を言おうと思っても、オカンの無邪気な様子に
我慢してしまったり。
仕事で落胆して帰ってきてみたら、他人が上がりこんでいて
母親は嬉しそうにご馳走していて。

そんな不満が溜まりに溜まって、とうとう爆発してしまいました。

マー君のように親をうっとうしく思ったこと、
誰にでもある思い出の一つなのかも。

突然部屋に置かれていた"ベッド"。
雅也が学生の頃、オカンが突然プレゼントした"バイク"の
ストーリーを思い出しました。
病気と闘うオカンなのに、子供の健康を真っ先に願い、
なけなしのお金を叩いて、自分のではなく息子にベッドを買う。

そんな母の愛情も、払わなければならない公共料金などもあり、
雅也にとっては無駄な買物に思えてしまう。

雅也の家に来た友達、そして仕事先の人間に、
食事を振舞う栄子。
そういえば、栄子は雅也が子供の頃、引っ越した先で
友達を作ろうと、バカボンと徳本を食事で釣って(言葉悪いけど)いましたっけ。
雅也の友達だから、自分の子供と同じ様にお腹いっぱいに
してあげたい。
そんなオカンの思い。
裕福な暮らしじゃないんだから、それが無駄なことにしか
思えない雅也の思い。

そして、雅也はとうとう爆発してしまいました。
まだ越して間もない頃の、「宅配便で送り返すぞ」は
冗談ということが伝わってきましたが、
「もう帰ればよかとに・・」
からは、本気でそう思っているんだろうな・・・と感じ、
マー君の気持ちもわからくはないんだけれど、
栄子の気持ちを思うと辛いですね。

第2話で、河原で雅也に田舎の川の名前を効かれた手塚は、
「忘れた」と言っていました。
手塚は母の最期を看取ることが出来なかったことが、
ずっと、心の傷になっていたんですね。
川の名前も、本当は覚えているんでしょうね。

まなみも本当にいい子です。
教わった料理を、家でちゃんと作ってみる。
味が同じにならなくて、又聞きに来る。

「きっと中川君は、どんな自分でも、
 全部受け止めてくれる人がいるから、
 あんなに自由になれたんですね。」
まなみは栄子にそう言っていました。
まなみは母親に、カメラマンという仕事を認めてもらえず、
それで悲しい思いを抱えているんですね。

本当は自分の母親とも、栄子としているように、
一緒に料理をしたい、教わりたい、と
願っているのかもしれません。




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感動のポイントをまとめています。
第一話:母の手紙と一万円札
第二話:母の手料理でいっぱいの冷蔵庫
第三話:ハルの通帳と、雅也宛の箱(沢山のギザ10)
第四話:公衆電話
第五話:真珠の指輪
第六話:古いタンスに大切にしまってあったスクラップ帳


雅也の部屋の番号:816230413


蕾 (初回限定盤)(DVD付)蕾 (初回限定盤)(DVD付)


全国のローソンで「オカンのおにぎり」発売中!
1月6日〜2月19日まで。360円。
http://wwwz.fujitv.co.jp/tokyo-tower/goods/index.html


原作。まだ読み途中です。
4594049664東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~リリー・フランキー 扶桑社 2005-06-28by G-Tools



フジテレビ公式グッズ





キャスト
中川雅也(速水もこみち)
佐々木まなみ(香椎由宇)
山田耕平(柄本 佑)
前野和夫(山崎裕太)
中川富美子(佐々木すみ江)
藤本ハル(赤木春恵)
藤本香苗(浅田美代子)
鳴沢一(平岡祐太)
手塚修一郎(石黒賢)
徳本寛人(高岡蒼甫)
レオ・リー(チェン・ボーリン)
中西靖子(久保田磨希)アパート管理人
佐々木慶子(朝加真由美)
担任(斉藤洋介)
オカマバーのママ(深沢敦)
中川兆治(泉谷しげる)
中川栄子(倍賞美津子)


ほか


スタッフ

■原作
 リリー・フランキー
 「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(扶桑社刊)

■脚本
 大島里美

■プロデュース
 中野利幸

■演出
 久保田哲史

■音楽
 河野 伸
 澤野弘之

■制作
 フジテレビドラマ制作センター

■主題歌
 コブクロ『蕾』
 (ワーナーミュージック・ジャパン)



速水もこみちさんの主な出演作品


この記事へのコメント
初めまして。
東京タワー見逃してしまったので、こちらであらすじを確認出来て良かったです!
後半も楽しみにしています。
Posted by あい at 2007年02月13日 07:02
一族のあとに観ているので親子関係の違いを痛感しています!金や権力をもった万表家とオトンと別れて苦労したマー君の家庭が対象的ですが愛されている分マー君のほうがいいかな?

まなみの使い方も凄くいいですね!当初は安っぽい恋愛ドラマになるのか心配でしたが違和感がない栄子との絡みは好感がもてます。

今回の手塚の部屋はマー君が出た部屋でしょうか?レイアウトとガラスの数字が同じようでしたね?塩むすびやナンバープレートの数字のアップ色々ありますが謎がとけません!謎をふっといて悪いのですが意味はないのでしょうか?
Posted by けた at 2007年02月13日 21:31
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