2007年05月04日

わたしたちの教科書 第四話

『校庭の奇妙な事件』

珠子(菅野美穂)は、喜里丘中学校でいじめがあったことを
証明する手がかりを得る。
喜里丘中学校2年3組の生徒・朋美(谷村美月)が学校内で
いじめがあったことを打ち明けてくれたのだ。

アンケート用紙の封筒を抱えてトイレに駆け込む耕平(伊藤淳史)。
個室に篭ると、封筒に誰かが忍ばせた、山田加寿子(鈴木 かすみ)に
ホテル前で手を引っ張られる写真を見つめる。
「何で・・・」
「加地先生。」
隣の個室から声がする。熊沢(佐藤二朗)だ。
「はい・・」
「・・紙・・そっちに紙、ありませんかね。」
「熊沢先生!!
 はい、あります。」
「あー助かります。すみません。
 どうも、ご苦労なさっているようですね。
 頑張る人ほど、負担のかかる仕事ですから。」
「でも、今みたいに、何もかも雨木副校長に任せているだけでは・・」
「若いなー。
 若い!!
 たまには、発散した方がいいですよ。
 どうです?今晩、一緒に。」事務所の蛍光灯を取り替える直之(谷原章介)は、
珠子が制服姿の女子高生を見送る姿を見かける。

「気をつけて帰って。」珠子が朋美に言う。
「はい。」
「また連絡するわ。」
エレベーターの戸が閉まる。

珠子が振り返ると、直之が微笑みを浮かべて立っていた。
「何を隠してる。」

「すぐに法廷に持ち込もうってわけじゃないの。
 まずは学校に質問状を送って、訴訟はその回答しだいで。」
資料をパタンと閉じる直之。
「これから、岩川出版の弁論なの。
 もう行かなきゃ。」
「それで、さっきの子は?」
朋美との会話を思い浮かべる珠子。

「誰があなたを苛めてくれたの?」
その質問に、朋美は震えだした。
「ごめん、大丈夫?
 話す気になった時でいいから。」
珠子の言葉に朋美は黙って頷いた。

「珠子?」
「彼女は、いじめの存在を学校側に突きつけるための、
 証人になれるわ。」
「3つ言っておかなければならないことがある。
 一つ目。
 うちの事務所には学校法人や市町村のクライアントも多くある。 
 君がこれから訴訟を起こそうとしている学校が、 
 うちのクライアントである可能性だってある。
 だとすればそれは、弁護士倫理違反だ。
 二つ目。
 誰を原告にするつもりだ。
 いくら気持ちがあったって、君は母親じゃない。
 共に暮らしたことがあったって、原告にはなれない。
 原告がいなければ、裁判なんて出来ないんだぞ。」
「・・・最後の一つは?」
「僕は君にこんなことはしてほしくない。
 珠子。今君がしようとしていることは復讐だ。」
「・・・」

耕平は、同僚の熊沢に、とあるキャバクラに連れていかれる。
「まずいですよ、女性がいる店じゃないですか!」
「男がいたら困るよ。」
既に酔いつぶれた状態の熊沢。
「もう帰りましょう!」
「ダメだよ・・」
辺りを見渡す耕平。
「わーぉ、さっそく品定めか?」
「違います!保護者がいたら困るから!」
「あー、すっごく気持ち悪い!」
耕平のカバンを開けて吐こうとする熊沢。
「僕のカバン!!」
「何これ!ムムムムム!」
「それは・・」
カバンの中にはホテル前で撮られた写真。
だが熊沢が取り出したのは、自転車のパンフレット。
「先生なに。これ買おうとしてんの?」
「は、はい、はい!!」
「ちょっと気持ち悪いわ。トイレ行く。」
熊沢がトイレに立つと、ほっとする耕平。

「真澄でーす!」
となりに女性が座る。
なんとそれは、同僚の希美(酒井若菜)だった!
お互いびっくりする二人。
「吉越先生!」
「真澄でーす!」
「真澄!?
 ・・・雨木副校長の名前じゃないですか!」
「加地先生、まさか、学校に告げ口したりしないですよね!?
 したら、先生もこの店の常連だってこと、バラしますよ。」
笑顔で脅す希美。
「初めて来たんです!
 熊沢先生に無理やり!」
「熊沢先生もいるの!?
 早く言ってよ!!
 あんな人に見つかったら何言われるか。
 私隠れてるからさっさと連れて帰ってよ!
 ちょっと失礼しますねー!」
最後だけ営業用の声を出し、希美が席を外す。

珠子の自宅。
訴訟委任状を見つめながら、直之の言葉を考える珠子。
白紙の委任者欄。
原告がいなければ・・・
珠子は明日香の戸籍を取り出す。
父親の欄には、『藍沢謙太郎』の名前。

『保証保全申立書』
申立人には、藍沢謙太郎の名前と印鑑が押されている。

資料を閉じると、珠子は『おとうさんノート』と書かれた
明日香(志田未来)のノートを手に取る。
雑誌で取り上げられた藍沢謙太郎の記事がスクラップされ、
父の似顔絵、『あすかのおとうさん』『おとうさんだいすき』と
クレヨンで書かれている。
『話題の企業家』『身だしなみは足元から』
ピカピカに磨き上げられた靴で写真に映る、
お洒落な企業家・藍沢謙太郎(河原雅彦)。
かつて自分が愛した男・・・。
珠子はこの男と幸せだった頃の自分を思い出す。

「珠子、モーニングでも食いにいくか?」
喫茶店のモーニング。
トーストを紅茶に浸して食べる謙太郎。
「美味い?」
「うん、美味い!」
微笑みあう二人。
婚約指輪を差し出す謙太郎。
「結婚、しようか。」謙太郎からのプロポーズ。

ノートを閉じた珠子は複雑な表情を浮かべ・・・。

あくる日、珠子は、行きつけの洋食店で耕平に会う。
「仁科は、何を話したんですか?」
「敵か味方かわからない人には言えないわ。」
「いや、ちょっと待って下さいよ。
 僕は味方ですよ!」
「へー。あなた、学校の敵なんだ。」
「いや・・そういうわけでは・・」
タバコを吸う珠子。
「一つだけわかったことがあるわ。
 あの学校には、いじめが存在する。
 だんだん見えてきた。」
水を乱暴に置く店員。
珠子と耕平はブラジル定食を注文。
「積木さん、本気で法廷に持ち込む気なんですか?
 やっぱり、そういうのは・・」
「明日、原告に会いに行って来る。」
「原告!?」
「明日香の父親。」
「だって、彼女の父親は、行方が・・」
「明日香のお線香をあげに、養護施設に言った時、
 居場所を教えられたの。
 父親は今、千葉の実家にいるわ。」
「そんな人・・
 自分の娘を放り出して引き取りもせず、
 葬式にさえ来なかった人ですよ。
 そんな人が協力してくれるわけないじゃないですか!」
「他にいないんだからしょうがないでしょ。」
「そんな人最低だ!!」
怒って水をがぶ飲みする耕平。
「最低ね。
 結婚も子供も会社も、全部放り出して、
 行方くらますなんて。
 ・・いい加減な男なのよ。
 二度と会うことなんてないって思ってたのに。」
タバコ(マルボロ)を灰皿に押し付ける珠子。
ブラジル定食(チャーハンにブラジルの国旗)が運ばれてきた。

喜里丘中学。
登校する生徒たちに「おはよう」と声をかける耕平。
山田加寿子を見かけると、つい隠れてしまう。
「・・・何も、隠れることないか・・」
朋美の姿を見かけ、話しかけようとすると、
熊沢が立ちふさがる。
「おはようございます。」
「おはようございます。
 楽しかったね。又行こうね。」
「いや、もう・・」

下駄箱で友達と楽しそうに話す朋美。
声をかけようとすると、今度は希美がやって来た。
「誰にも言ってないでしょうね!?」
「言ってませんよ。」
「熊沢先生には見られなかったし、
 加地先生さえ口を割らなければ、問題ないんですからね!」
「問題でしょ!教師が夜バイトをしているなんて。」
「私はね、毎日同じ服ばかり着て、先生同士結婚するしかない
 悲しい女教師にはなりたくないの!
 生徒の為に女捨てるなんてまっぴら!
 おはよう!長谷部君!」
「おはようございます。」
男子生徒が恥ずかしそうにうつむき、通り過ぎていく。
朋美が友達と歩き出すのを見た耕平、
「お話は、後ほどゆっくり!
 仁科、」
朋美に声をかけようとしたとき、
「校庭に出ちゃダメだ!!」
戸板(大倉 孝二)が足を怪我した男子生徒を庇いながら叫ぶ。
「どうしたんですか!?」
「校庭に画鋲がばら撒かれていて・・」

校庭一面に、画びょうが。深夜から早朝のうちにばら撒かれたらしい。
戸板から報告を受けた早紀(真木よう子)は、耕平と希美に
画びょうを撤去するよう命じる。
「えーーっ・・
 今日買物に行こうと思ってたのに・・。」
文句を言いながらロッカーを開ける希美。
するとそこから、空になった画鋲のケースが大量にこぼれ落ちる。
「あ・・・」
みんなが希美を見つめる。
「待って下さい!私は・・」

漁村。
藍沢家を訪ねる珠子。
少しためらいながら、敷地内に入っていく。
庭には、農作業をする惣次郎(山本學)がいた。
「こんにちは。」
「・・・」
「積木珠子と申します。
 謙太郎さんに会いに来ました。」
「帰ってくれ。」
「・・・謙太郎さんとは既に、手紙で話が通っています。
 証拠保全の際にも、手紙で詳しく事情を説明した上で、
 申立人になっていただきましたし、
 原告になっていただきたいということも説明して
 ありますから、了承していただけるものと、」
「ハンコを押したのは俺だ。」
「・・・え?」
「ようわからんかっただ。
 手続き上必要なのかと思って、俺がハンコを押して、
 あんたに送り返したんだ。」
「そうだったんですか・・」
「もうこれ以上かかわりたくねー。
 学校訴えるだなんて、あんた金がほしいのか?」
「・・・
 学校は、いじめの事実を認めようとしません。
 警察も、事故として扱っている以上、
 明日香ちゃんが亡くなった理由を追究するには、
 損害賠償を請求する、民事裁判を起こすしかないんです!
 父親である謙太郎さんに、原告となっていただきたいんです。
 お願いします。謙太郎さんに会わせて下さい。」
『訴訟委任状』を差し出す珠子。
「ダメだ、帰れ!」
「・・・」
珠子はツカツカと家のほうへ歩き出す。
「おい!ダメだって言ってるだろう!
 ほっといてくれよ!!」惣次郎が追って来る。

玄関には、ピカピカに磨かれた靴。
家に上がりこむ珠子。
「謙太郎!」
ふすまを開け、驚く珠子。
男が、靴を磨いていた。
「・・謙太郎。」
男は無心に靴を磨いている。
部屋中、靴磨き粉と布、ティッシュのゴミの山。
「久し振りね。
 明日香のことで話があってさ。
 手紙読んでくれたかな。」
謙太郎は黙って靴を磨き続けている。
「あなたに、原告になってほしいの。」
「・・・」
「ちょっと!
 聞いてんの!?」
謙太郎の手から靴を奪う珠子。
「・・・」
うつろな目で珠子を見つめる謙太郎。
「・・・誰?
 お前、誰?」
「・・・」
「返せ!」
珠子の手から靴を奪い取る。

惣次郎がやって来た。
「若年性の、認知症だ。」
「・・・」

学校。
画鋲を拾い集める耕平。
「何で私がこんなことしなきゃいけないのよ。」
文句を言う希美。
「あ!あぶない!」
希美を庇おうとした耕平の手に画鋲が突き刺さる。
「イテテテ・・」
「どうしよう、誰かが私を罠にかけようとしているのよ。」
「誰かに、恨まれたりしていませんか?」
「何で私が恨まれるんですか?
 私学校じゃ何もしてないんですよ!」
「・・・そうですか。」
「こう見えてもね、生徒たちが作った好きな先生ランキング、
 ナンバー1だったんですからね、私!」

藍沢家。
「昔の習慣が抜けんのだろう。
 ああやって一日中靴ばっかり磨いてる。
 なんも覚えておらん。
 会社のことは勿論、
 二度結婚したことも、あんたのことも、
 娘のことも。
 俺のことさえ、誰だかようわかっとらんのだ。」
「・・・いつからですか?」
「七年前からだと思う。」
「え・・私が結婚した頃です!」
「あんたの前から姿を消したのは、病気のことを
 知ったからだろう。
 負けず嫌いで見栄っ張りだったから、
 そんな自分が耐えられなかったんだろう。
 ヤケになって会社売った金持って、
 田舎の療養所みたいなところに逃げ込んで、
 だけどそこも3年前に閉鎖されて、
 俺のところに連絡が来た。
 けどそん時はもう謙太郎は謙太郎じゃのうなっていた。
 ・・・もういいだろう!帰ってくれ!
 あいつは裁判の原告になどなれん!
 委任状に、印鑑を押すことでさえ出来んのだから。
 帰ってくれ!」
惣次郎はそう言い、家を出ていく。

靴を磨く謙太郎を見つめる珠子。
「こんにちは。」珠子が謙太郎に声をかける。
「・・こんにちは。」
「・・積木珠子です。」
「・・・はじめまして。」
靴を磨く手を止め、珠子を見つめる謙太郎。
「・・はじめまして。」
珠子はバッグから名刺を取り出す。
「あの、私は、」
「綺麗だな。」
「・・・え?」
靴とブラシを放り出すと、謙太郎は珠子のめがねを外す。
「お前の目、ピカピカだな。」
「・・・」
「結婚、しようか。」
「・・・」思わず泣きそうになる珠子。
「結婚しようか。」
前のめりになる謙太郎をそっと押し戻し、
謙太郎の手からめがねを取り、かける珠子。
「あなたってさ、いつもそうやって女の人のこと
 口説いてんでしょう。」
「結婚しようよ。」
「私知ってるのよ。
 あなたってさ、初めて会ったばかりの女の人にも
 そういうこと言うんでしょう?
 そういうの、真に受けるバカな女がいるんだから。
 とくに、勉強ばかりしてた女なんてすぐに落ちるんだから。
 ・・・ほんとダメだよ、そういうの。」
珠子はそう言い、謙太郎の手に名刺を置く。
その名刺を落とすと、謙太郎は又靴を磨き始める。
「・・・よくさ、朝ご飯食べにいったんだ。
 仕事忙しいから朝しか時間ないとか言って。
 安い喫茶店入って、安いモーニングセット食べるの、
 お決まりのデートでさ。
 あんなにお金持ってたくせにさ。
 あんなので落とされるなんて・・・
 ほんと損した。
 ・・・どうして?
 どうして病気のこと話してくれなかったの?」
涙ぐみながら謙太郎の顔を覗き込む珠子。
「どうして?
 どうして言ってくれなかったのかな。
 ・・・私のこと信じられなかったのかな。
 この7年間、あなたのこと・・・
 謙太郎のこと、恨んでで生きてきちゃったじゃん・・。」
無心に靴を磨き続ける謙太郎。
「・・・あなたの娘、死んだの。」
珠子はそう言い、靴を磨く謙太郎の手を握り締める。
「明日香・・・死んだのよ。」
「・・・」謙太郎は反応せず、又靴を磨き始める。
「・・・じゃあね。」
珠子が部屋を出ていく。
惣太郎は靴を磨き続け・・・。

珠子は荒れる海を見つめながら、直之の言葉を思っていた。
『原告がいなければ、裁判なんて出来ないんだぞ・・』

学校帰りの耕平と希美。
「まさか、これからご出勤ですか!?」
「同伴する?」
「あのですね、吉越先生!教師という仕事は、」
「教師だってOLですから。」
「いやいや、OLだってそんなことは、」
そこへ、自転車に乗った男子生徒が通りがかる。
「あれ!長谷部君!」希美が呼び止める。
自転車を止める男子生徒。なぜか顔はうつむいたまま。
「塾の帰り?」
「ええ、まあ。」
「気をつけてね。バイバイ!」
「さようなら・・」

「三年の子ですよね。」耕平が聞く。
「うん、一年の時に担任だったの。
 私が顧問している新聞部の子でさ、
 新聞部なんて地味でしょう?
 あの子しかいないから全然楽なんだけどね。」
「あれ?」
「何?」
「いや・・なんか違うような・・
 何だろう・・・。」

翌日、校庭には又画鋲が撒かれていた。
「またか・・・。」
教師たちが希美を見つめる。
「・・・私じゃありません!」
希美が立ち去る。
黙って画鋲を拾い出す耕平。
「やるの?」
「このままじゃ、生徒たちが、危険ですから。」
「・・・」
耕平を見つめる戸板、八幡、熊沢、早紀。

ソファーで眠る珠子。携帯のアラームに目を覚ます。

珠子がマンションを出ると、タクシーの運転手に声をかけられる。
「お宅、積木さん?」
「ええ。」
「あー、良かった。
 ここに行ってくれって言われたから、この長距離を走って
 きたのに、お金持ってないんだもん。」
タクシーからピカピカの靴にトレーナー姿の男が降りてくる。
謙太郎だ。
「モーニング、食い行くか。」

洋食屋ぶらじる。
履いている靴を磨く謙太郎。
店員が無愛想にモーニングセットを置くと、
謙太郎は嬉しそうに微笑む。
「お父さんに連絡したから。
 もうすぐ来てくれるわ。」
謙太郎はトーストをちぎり、それを紅茶に浸して口に運ぶ。
「これ、美味いんだ。」
「・・知ってる。」
珠子は寂しそうに微笑むと、同じ様にパンを食べる。
「看護婦さん、どれがどれだかわかります?
 奥から、3列目です。右から、5列目にいるのが、
 あなたの赤ちゃんですよ。
 1、2、3、
 1、2、3、4、5
 ・・・あれかー・・・
 あれが俺の子か・・・
 遠いなー・・・よく見えない・・
 看護婦さん、俺の子、ベッピンさんなの?
 元気なの?
 ・・・ダメだよ。目離したら、わかんなくなるよ。
 遠いな・・・
 1、2、3、
 1、2、・・」泣き出す謙太郎。
そこへ、惣次郎がやって来た。
「さあ、行くぞ。立つんだ。」
謙太郎を無理やり立たせる惣次郎。
「待って下さい!」
謙太郎が持っていたティッシュが床に散らばる。
それを叩いて、何かを包んだティッシュを見つける謙太郎。
それを拾い上げ、ティッシュを破り捨て
包んであった印鑑を珠子に差し出す。
「・・・謙太郎・・あなた・・
 この印鑑を持ってきてくれたのね。
 これを届けに来てくれたのね。
 明日香の為に・・・」
印鑑を受け取り、謙太郎の体を支えて席に座らせる珠子。
「ありがとう。」
「・・・」
珠子は惣次郎に言う。
「彼には、訴訟を起こす意志があります。
 明日香の為に、訴訟を起こす意志があります!
 藍沢明日香さんの訴訟を起こすに当たって、
 謙太郎さんの、法定代理人になっていただけないでしょうか?」
「・・・」
「彼は、自分の意志で印鑑をここに持ってきました。
 明日香の父親として、訴訟を起こしたいと
 強く思っているからです。
 確かに、今の彼には、訴訟を充分に理解する能力は
 ありません。」
パンに紅茶を浸して食べる謙太郎。
「しかし、あなたは彼の、成年後見人として、
 家裁に選任してもらえば、
 彼の代理人となって、訴訟を起こすことが可能なんです!」
「お前・・・」息子を見つめて涙する惣次郎。
「お願いします!!」珠子にそう言い頭を下げる。
「ありがとうございます。」
珠子も惣次郎に頭を下げるのだった。

郵便局。
「内容証明でお願いします。」
珠子が西多摩市教育委員会宛の書類を提出する。

洋食屋ぶらじるの前を歩く珠子と耕平。
「学校側に、公開質問状を送ってきたわ。」
「質問状ですか!?」
「原告も決まった。
 質問状の回答を待って、納得のいくものが来なかったら。」
「あいや・・でも、」
「提訴するわ。」
「・・・」
「ちょっと待って下さいよ!」
ぶらじるに入る珠子を耕平が追う。
その姿を、早紀が見ていた。

翌日。
校庭に又画鋲が撒かれていた。
その掃除に向かう耕平と希美。
「どうしよう、今日時間ないのに・・」
「今日私のお客さんの誕生日なの!
 ナンバー1になれるかもしれないのに!」

「吉越先生・・・今月号の原稿先生の机に置いておきました。」
新聞部の生徒が声をかける。
「そう!」
「あ、あの・・」
「うん?」
「原稿チェック、していただけませんか?」
「あー・・・先生、ちょっと忙しいからさ、
 長谷部君に任せるよ。
 頑張ってね!」
「・・・はい。」

二人の会話を見つめていた耕平、
「吉越先生!!」希美を呼び止める。

職員室。
「やっぱり・・・
 やっぱりいません!」
三年生の出席簿を調べた耕平が言う。
「何がですか?」と希美。
「長谷部なんて生徒いません!」
「は?」
「三年生に、長谷部なんて名前の生徒、いないんです。」
「何言ってるんですか?
 いますよ。さっきも廊下で会ったじゃないですか。」
「大城先生、」
「はい。」
「三年生で、新聞部に入っている男子生徒がいますよね。」
「ええ、いますよ。」
「彼、なんて名前ですか?」
「長部です。」早紀が答える。
「え!?」と希美。
「長部ユウイチです。」と早紀。
「吉越先生、先生は、彼の名前を間違えて覚えてます。」
「・・・」
「彼の名前は、長部です。」
長谷部と書き、谷の字にバツを付ける耕平。
「谷は入っていません。」
「・・・でも、私ずっとそうやって呼んで、」
「本当ですか!?
 確か吉越先生、長部の担任になったことも
 ありましたよね。」と八幡。
「うわ、それ傷つくわ!」と戸板。
「だって、別に否定されなかったし。」
「彼は、待ってたんじゃないでしょうか。
 先生が、ご自分で気付いてくれるのを、
 待ってたんじゃないでしょうか。」
「・・・」
「先生。
 先生は、生徒たちが選ぶ、好きな先生ナンバー1ですよね!」
「・・・」希美は急いで職員室を出ていく。

『部活動試合結果』のメモを画鋲で止める長部。
原稿を書いていると、希美がやって来た。
「・・銚子はどうかな・・長部君。」
「!!」
「先生も手伝っていいかな。」
「はい。」嬉しそうに微笑む長部。
「何手伝えばいい?」希美が嬉しそうに覗き込む。

校庭で一人画鋲を拾い集める耕平。
「画鋲ゲッツ!」
磁石で画鋲を拾ったのは・・・戸板だ!
「戸板先生!
 八幡先生!熊沢先生!!」
「どうよこれ、俺のアイディア。」
戸板が磁石で画鋲を集めていく。
「僕のアイディアです!
 僕達も手伝います。」と八幡。
「運動不足だから、体、動かさないとね。」と熊沢。
「みなさん・・・
 なんか僕、初めて思いました。」
「何をです?」と八幡。
「この学校に来て、良かったなって。
 初めて思いました。」
「それちょっと酷くねーか?」戸板が笑う。
「だって・・・」感激して涙する耕平。
「泣くなよ!おい!」
「泣くより働け。」
「どうぞ。」
熊沢が軍手を、八幡が磁石を耕平に渡す。
「ありがとうございます!」
4人の姿を、校舎の窓から雨木副校長と早紀が見つめていた。
雨木副校長の手には、珠子が配達記録で送った書類のコピーがあった。

理科室。
授業の後、朋美を呼び止める耕平。
「仁科、ちょっといいかな。」
理科室の戸を閉める耕平。
「仁科さ、去年の記録、見せてもらったんだけど、
 1年の2学期、結構休んでいるよな。」
「はい。」
「病欠ということだけど、」
「はい。」
「それって・・本当だったのか?」
「・・・」
「あいや・・その・・・」
そこへ希美がやって来た。
「加地先生!」
「なんですか!?」
「トイレが詰まったんです!早く!」
「はい・・
 悪い、ちょっと待ってて。」
二人が理科室を出ていく。
席につき、教科書をパラパラとめくる朋美。

トイレの詰まりを直す希美、耕平、熊沢。
「一体何が詰まっていたんでしょう!?」
トイレにタバコの吸殻が浮かび上がる。
「まさか・・・」
「生徒が!?」
顔を見合わせる耕平と希美。
「大城先生呼んできます。」希美が行こうとすると、
熊沢はその吸殻を握りつぶし、トイレに流してしまう。
「何するんですか!?」
「隠れてるものを、わざわざ表に出す必要はありません。」
「え!?」
「誰にだって、秘密はある。
 先生にも・・・
 先生にも・・・
 大丈夫。
 私にも、人に言えない、秘密はある。」
熊沢は、希美がキャバクラで働いている姿を見ていた。
そして、耕平のカバンにあった写真にも気付いていたのだ。

耕平が急いで理科室に戻ると、そこにいたのは・・雨木副校長。
「副校長!」
「お疲れ様です・・」
「お疲れ様です。
 あの・・二年の仁科が、ここにいたはずなんですが。」
「用事があるといって、帰りました。」
「・・そうですか。」
「そうろそろ古くなってきていますね。」
「ああ・・備品、ですか?」
「一度、あるもの全てをチェックしていただけますか?
 新規購入も検討しますので。」
「はい、では、近日中に。」
「明日までにお願いします。」
「・はい。」

職員室。
「先生方、よろしかったら、
 これからみんなで食事にでも行きませんか?」
雨木副校長がみんなに言う。
「行きましょう!」盛り上がる教師たち。

理科室で夜遅くまで一人備品を数えていく耕平。

翌日。
「おはようございます!
 ・・・みなさん、今日は早いですね。」と耕平。
教師たちはみな黙っている。
「あれ・・イスがない。 
 八幡先生、僕のイス、知りませんか?」
八幡は無視して席を立つ。
「イス・・・あ、あったあった!
 もう、誰ですか!?
 使ったあとは、ちゃんと元に戻しておいて下さいね。
 あ、そうだ。
 吉越先生!」
吉越が無視して席を立つ。
「・・・あの、」
戸板も、熊沢も、同じ様に耕平を無視。
「・・・」
早紀は呆然と立ち尽くす耕平を見つめ・・。

法律事務所。
「あれ?瀬里先生と、懇親会に行ったんじゃ?」
すれ違った同僚に声をかける珠子。
「そう・・ですね。変更になりました。」
自分の部屋に入ろうとしたとき、珠子は職員がコピーしている
書類に気付く。見覚えのある書類・・・。
「それ何!?」
「瀬里先生のご依頼人がお持ちになったものです。」
「依頼人!?」
その書類を手に歩き出す珠子。
瀬里の部屋に・・・雨木がいた!
珠子は自分が提出した書類のコピーを握り締め・・・。


※一部公式HPあらすじを引用しました。



盛り沢山の第4話でした。

耕平に、朋美とどんな話をしたのかを聞かれた珠子は、
「敵か味方かわからない人には言えない。」
と言いました。
直之に「あの子は?」と聞かれ、珠子は素直に答えました。
珠子は直之を信用しているんですよね。
そんな直之は、珠子の"敵"に・・・。
直之はあの時点で、朋美が都議会議員の娘だと
知っていたのかもしれません。

そして・・・珠子の夫は、若年性認知症だった!
珠子と明日香を置いて突然姿を消した理由、
明日香の死後、登場させる理由に、
こういう病気を持ってくるとは。
この病気だけで別のドラマが出来てしまいそう。
ちょっと詰め込みすぎの気もしましたが、
河原雅彦さんの演技がすごかった!

河原さん、俳優・演出家・脚本家。
妻は女優・ともさかりえさん。

山本學さん、弟は俳優・山本圭さん。

お二人の白熱した演技に見入った4話でした。

記憶を失う病気に犯された謙太郎は、
明日香が生まれた時の感動だけは忘れていなかった。
ほとんど全ての記憶を失った彼が、
明日香が誕生した時の感動だけは残っていて、
明日香の為に、珠子が印鑑を必要としていることを理解し、
タクシーに乗って届けにやって来た。
看護師を看護婦、と呼ぶところにも、この病気の特徴を
表していました。

明日香は珠子だけでなく、父のことも恨むことなく、
ノートを作っていたのですね・・・。
父の事実を、明日香が知らずに死んでしまったことが悲しい。

謙太郎が自分たちの元を去った理由を初めて知った珠子は、
明日香へしてしまった自分の罪を今まで以上後悔し、
7年間謙太郎をひたすら恨んできた自分の時間を打ち消すように、
これから珠子は学校と戦っていくのですね。


残された謎。
校庭に画鋲をばら撒いた犯人は?
夜自転車で登場したり、掲示板に画鋲でメモを止めるアップ。
長部の怪しいシーンも出ていました。
3年間、先生に名前を間違えられた孤独。
あのあと画鋲事件が治まったとすれば、彼という可能性も?

副校長、または彼女を支える早紀かもしれません。
次週予告で、「生徒を守りたい」という雨木の言葉に
嘘はないように感じました。
だとすると、その理由は?

珠子の可能性もあります。
トイレを詰まらせたタバコの吸殻はマルボロのようにも見えました。
珠子が吸うタバコと同じ銘柄です。


雨木副校長の息子を演じるのは、ウルトラマンメビウス役だった
五十嵐隼士さん。
一体どういう形で登場するのか。
雨木副校長が必死に守ろうとしているのは、この息子のこと
なのでしょうか。

副校長の名前を源氏名に使ったのは、希美の小さな反発心
だったのでしょうか。
「誰にでも秘密はある」
熊沢の言葉の裏には、何があるのか。
ますます気になる展開。早く真相が知りたいです。



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第一話
 明日香、転落死

第二話
 八幡、保管庫から指導記録を盗む
 
第三話
 早紀、過去の不倫
 給食費未納、受験優先、体罰

第四話
 希美、キャバクラ勤め。画鋲事件。
 3年間生徒の名前を間違って覚えていた希美
 「誰にでも秘密はある」熊沢の言葉
 トイレを詰まらせたタバコの吸殻



学校とは・・・

【明日香の戸籍】
父・惣次郎
母・俊枝
(長男)
夫 謙太郎 
昭和40年6月11日

父・光男
母、みつ子
(次女)
麻美
昭和49年2月2日

父・藍沢謙太郎
母・空欄
(長女)
明日香
平成5年6月18日






キャスト

積木 珠子(30) ・・ 菅野 美穂
◇◇◇
加地 耕平(24) ・・ 伊藤 淳史
大城 早紀(27) ・・ 真木 よう子 (過去に生徒の父と不倫)
吉越 希美(25) ・・ 酒井 若菜  (キャバクラ)
戸板 篤彦(29) ・・ 大倉 孝二  (借金)
八幡 大輔(25) ・・ 水嶋 ヒロ  (指導記録隠し)
熊沢 茂市(45) ・・ 佐藤 二朗  (家庭問題)
雨木 音也(20) ・・ 五十嵐 隼士
宇田 昌史(30) ・・ 前川 泰之
大桑 久雄(40) ・・ 戸田 昌宏
日野 圭輔(?) ・・ 小市 慢太郎

藍沢謙太郎(河原雅彦)七年前若年性認知症に。
藍沢惣次郎(山本學) 三年前息子のことを知り引き取る

◇◇◇
瀬里 直之(36) ・・ 谷原 章介
◇◇◇
藍沢 明日香(14) ・・志田 未来

雨木 真澄(53) ・・ 風吹 ジュン

【 2年3組 】
仁科 朋美 ・・ 谷村 美月 (明日香の友達?)父親は都議会議員
山田 加寿子 ・・ 鈴木 かすみ (ポー)
須藤 彩佳 ・・ 柳田 衣里佳
山西 麻衣 ・・ 伊藤 沙莉
野部 千春 ・・ 山本 ひかる
兼良 陸 ・・ 冨浦 智嗣
本多 雅樹 ・・ 池田 晃信

山藤拓巳・・登野城佑真(早紀の過去を暴露)


洋食屋『ぶらじる』コック ・・・・ 土田 アシモ
洋食屋『ぶらじる』おばちゃん ・・・・ よしの よしこ



スタッフ

■脚本■
 坂元 裕二
 (『東京ラブストーリー』『愛し君へ』『ラストクリスマス』
  『西遊記』『トップキャスター』ほか)

■音楽■
 岩代 太郎

■主題歌■
 BONNIE PINK 「Water Me」
 (ワーナーミュージックジャパン)

■ディレクター■
 河毛 俊作
 (『抱きしめたい!』『ギフト』『沙粧妙子最後の事件』
  『きらきらひかる』『人間の証明』
  映画「星になった少年」ほか)

 葉山 浩樹


菅野 美穂さんの主な出演作品


この記事へのコメント
ちーずさん、こんにちは。
わたしもですね、作家・長部日出男のことを長年「はせべひでお」と呼んでいたのですよ。「おさべ」なんだと知ったのはだいぶ後になってからです。
憶え間違いをしていた吉越先生はショックだったろうけど、「おさべ」君の笑顔に救われた思いでしょう。
学校が終わるとキャバクラ嬢をしたり、校庭の画鋲を片付けるよう言われると嫌そうな顔をしたり、かなり不真面目でいい加減な先生と思いきや、地味で目立たない生徒に対して「大変なことをしてしまっていた」という心情を、セリフではなく表情で、しかも極めて短いシーンで伝えていた酒井若菜、いい!
あと、學さん。學さんの号泣シーンはもらい泣きしました。
Posted by マンデリン at 2007年05月04日 19:24
ちーずさんこんばんは、思ってもいなかった若年性認知症、「私の事信じられなかったの!」に考えさせられました…謙太郎が惨めになっていく自分の姿を珠子や明日香に見せたくなかった、見栄っ張りな性格と惣次郎も言っていましたが、少なくてもパートナーである珠子に話すべきでは…明日香に対する気持ちや謙太郎に対する恨みが変わっていたのに…

よく理解できなかったのですが、くどきの文句を覚えていた(思い出した)謙太郎ですが珠子と出会った頃には症状がでていたのでしょうか?珠子なら明日香を預けても安心できたとか…

オサベと名前を読んでもらった時の笑顔は画鋲事件の犯人と疑いたくないな〜このドラマとライアーゲムを見ていると過剰な人間不信に陥りそうですね!

雨木の執拗なまでの攻撃、加地への大人のイジメ!他の先生には学校の敵だとでも吹き込んだのですかね?そのことを加地に伝える仲間は誰に?珠子の立場を脅かす先制攻撃、瀬理が珠子の過去に興味が無かったのを思い出します!

雨木の後ろに教育委員会の存在や、加地の前任の先生に対する息子関係の個人的な恨みなど、さまざまなケースが頭をよぎりますね?

今までは序章に過ぎなかったのですね!これから雨木と珠子の本当の戦いが…そして旧作の白い巨塔の山本さんに緊迫した裁判シーンに期待です!

さきほど「生徒諸君」の冒頭で先生不信になったシーンをやっていました今回ちーずさんが見たらキット自分の説明を聞かなかった方がいいと思いコメント自粛でした!「王様の耳はロバの耳」状態!
Posted by けた at 2007年05月04日 22:05
アンケート用紙を抱えるのかー
Posted by BlogPetのぶるーじーん at 2007年05月05日 11:01
ご無沙汰しております。
九十九里のシーンでほろりと泣いて仕舞いました。
菅野さんの目の演技も見逃せませんね。

さて、このたびH☆Cに申し込みをいたしました。
不束者ですが、宜しくお願いいたします。

I appreciate in your usual cooperation. Best Regards,Chablis
Posted by シャブリ at 2007年05月10日 01:19
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