2007年09月19日

ファースト・キス 最終話

『天国から来た手紙』

手術を受けることが怖くなった美緒(井上真央)は、秋生(平岡祐太)に
その思いをぶつける。
美緒は、この夏、和樹(伊藤英明)たちと楽しい時間を過ごし、
秋生に恋をして幸せを感じるようになった途端に、成功率50%
といわれる手術を受けることが怖くなってしまったのだ。
秋生は、そんな美緒の思いを受け止め、彼女を抱きしめた。

「ごめん・・今更こんなこと・・。」美緒が泣きながら言う。
「ううん。」
「でも・・お兄ちゃんにも言えなくて・・・
 どうしていいかわかんない・・。
 怖いよ・・すごい怖いんだよ・・。」

同じころ、和樹は、白鷺大学附属病院を訪れ、蓮子(松雪泰子)に
会っていた。蓮子が秋生の代わりに函館医大に行くことを知った和樹は、
どうして美緒と秋生のことで左遷されなければならないのか、
と苛立ちを顕にする。
「組織にはよくあることなのよ。」と蓮子。
「俺その、偉い教授に話しに行きますよ。
 美緒と結城先生は決して不真面目じゃないって言います!」
「今回のことは、美緒さんと結城のことだけが原因じゃありません。
 私と教授の間にある考え方の違いが根底にあるんです。」
「美緒の兄貴として言ってるんじゃないよ!」
「・・・」
「・・・俺が・・俺が行って欲しくないんだ。
 先生が、悲しい思いをするのは、俺は嫌なんだ。」
「ありがとう・・。でも・・私は函館に行きます。
 医者を続けたいから。
 それに、新しい場所で、自分を試したいから。」
「・・・
 先生、俺・・・」
見詰め合う二人。
その時、蓮子の電話が鳴る。
「もしもし。
 え?美緒さんが?」

蓮子と和樹が診察室に戻ると、美緒と秋生がいた。
「美緒・・」
「お兄ちゃん・・」
「今になって、どうしたんだ美緒。
 何かあったか?」
「・・・今日は、すごく楽しい一日だった。
 日本に帰ってきて良かったって、本当にそう思った。」
「なら何で?」
「私があなたでも、きっと逃げ出したいくらい怖いと思う。
 ゆっくり考えましょう。」と蓮子。
「・・いいの?」
「もしどうしても納得できないんだったら、
 手術が延期できるかどうか、聞いてみましょう。」
蓮子の言葉に頷く美緒。
「待って下さい!
 もし、手術を受けなかったら・・・」と秋生。
「知ってるよ、先生。
 心臓動かなくなるんでしょ。」
「でも手術が成功すれば、3年後も10年後も、
 いや、30年だって50年だって生きられる!」
「でも失敗したら・・死んじゃうかもしれない!」
「じゃあ手術をやめたら怖くないのか?
 ずっと不安を抱えていなきゃならない。
 だったら、治る可能性に賭けるべきじゃないか?」
「・・・」
「結城先生、手術を無理に勧めてはいけないわ。」
「でも・・」
「本人がそのつもりで望んでこそ、成功するものよ。」
「僕は彼女に、一日でも長く生きて欲しいんです!」
「先生は何もわかってない。
 私は・・・何十年生きることより・・
 今の方が大事なんだよ!」
「・・・」
美緒は診察室を出ていってしまう。

美緒のあとを追いかけた和樹は、病院前の道で彼女に背中を向けて
しゃがむ。
「何!?」
「・・・」
兄におんぶされてきた自分を思い起こす美緒。
「・・・しょうがないな。」

美緒を背負って歩く和樹。
「・・・そうだよな。」
「え?」
「何十年後より、今の方が大事だよな。」
「・・・」
「いいよ。美緒が決めたらいい。」
「・・・」
「でもな、美緒。
 わかってると思うけど、結城先生は、お前のことが好きだから、
 ああ言ったんだぞ。」
「・・・」
「結城先生も怖いんだよ、きっと。
 それに、お兄ちゃんも怖いぞ。」
「お兄ちゃんが?」
「ああ。
 美緒の手術も怖いし、仕事で、先が見えないのも怖い。
 でも俺、勝負するよ。いつか必ず、プロの写真家になって、
 そんで、びっくりするようないい写真、いっぱい発表する。
 カッコイイ写真集だって、本当に出すさ!」
「何年先だか。」兄の決意に嬉しそうに微笑む美緒。
「わかんねー。
 すげー先だよ、きっと。
 でもサインして、一番に、お前にプレゼントしてやるよ。
 Photo by Kazuki Kanoって、どうよ!?」
「ださっ。」美緒が、和樹が笑う。
「かっこいいサイン練習するからさ!
 英語1だったけど。
 サインならバレないだろ?」
「・・・わかったよ。お兄ちゃん。
 私待ってるよ。その果てしない未来を。」
「美緒・・」
「手術・・受けるよ。」
「・・・」
「その代わりお願いがある。」
「きたな!久し振りに。」
「あのね、」

美緒の最初で最後のわがまま。
それは、もう一度、和樹に写真を撮ってもらいたい、というものだった。
「ロスに帰る前に、もう一回写真を撮って。
 写真家・加納和樹の最高傑作になる写真を。」
美緒の言葉に悩む和樹。
「最高傑作なんて言葉のあやだよ。
 ちゃんと撮ってやれば、満足するよ。」と勝(阿部サダヲ)。
「大体さ、一番だ、最高だなんて、証明しようがないんだから。
 適当なこと言えばいいんだよ。
 あ、これ最高傑作だって。」と一流(劇団ひとり)。
「普通はそうだよ。
 だけどさ、俺と美緒にとって、写真は特別なんだよ・・。
 美緒は多分、本気で最高傑作撮れって言ってるんだよ。
 だから俺も、本気で、考えないといけないな・・。」

病院。蓮子の診察を受ける美緒。
「少し、血圧が下がっているみたいね。
 心配はないでしょうけど、今日で日本の診察は最後だから、
 ロスの病院には報告しておくわね。
 手術が迫ってきているから、充分気をつけてね。」
「はい。」
「本当に、いいの?
 まだ迷っているようだったら、何度でも話すけど?」「もう大丈夫!
 私、こっちに来て、毎日がすっごく楽しくて、面白くて、
 絶対死にたくないって思った。
 だから怖かったんです。 
 でも今は、怖けりゃ怖い分だけ、頑張るぞって思えます。」
「手術が無事に成功するように、遠くから祈っているわ。」
蓮子の言葉に頷く美緒。
「先生、最後に聞いていいですか?」
「どうぞ。何でも。」
「お兄ちゃんのことどう思ってます?」
「・・・」
「あ、なんか、お兄ちゃん、先生を意識しているみたいなので・・」
「何言うの・・」
「もう、遠慮せず、すっぱり、振ってやって下さい!
 女性に対して無鉄砲なところがあるんで、
 ご迷惑かけるかもしれません。」
「そういうのもたまにはいいかもね。」
「嘘!?」
「冗談。」
「ですよね!」笑いあう二人。
「・・・じゃあ。」
美緒が蓮子にお辞儀をする。
「頑張ってね。」
「はい!」
美緒が診察室を出て行くと、蓮子は少し俯き・・・。
 
番場のスタジオに、和樹がやって来た。
「番場先生!」
「・・・今更何の用だ。」
「先日は、餞別を、ありがとうございました。」
「気に入ったか?」
「辞めろって言われたお陰で、一人で頑張る覚悟が出来ました。」
「ふーん。どんな風に?」
「まだ、これからですけど。」
「いつまでたっても詰めの甘いヤロウだな、お前は!
 頑張るなんて言葉はな、誰にでも言えるんだよ。
 もっと具体的に考えろ!」
「はい!頑張ります!」
「最後まで目障りな野郎だったな。」
「先生!先生の中の、最高傑作って何ですか!?」
「バカヤロウ。全部が最高傑作だよ。」
「じゃあ、最高傑作の中の、最高傑作です!」
「・・・パリのおばあちゃんだよ。」
「パリ!?」
「高校中退して、17の時に一人でパリに行ったんだよ。
 食いものもない、日本人のバカなガキにな、
 目のクリっとしたおばあちゃんが、パンくれたんだよ。
 お礼の代わりに、写真を撮った。
 その写真には俺の夢が詰まってる。
 後にも先にも、それが俺の最高傑作だ。」
「・・・」
「カズ。大切なことはな、自分が撮りたいと思った写真を
 撮ることだ。」
番場はそう言い仕事に戻っていく。
和樹が番場に一礼し、立ち去ろうとすると、諸畑(蕨野 友也)が
やって来た。
「カズさん!」
「おぅ。」
「俺ら作品で勝負する世界にいるわけだから、
 口先で何を言ってもダメなんですよね。
 離れても、勝負しましょう!」
「・・・」
「どっちの名前が先に出るか。」
わかった、と言うように諸畑の方を叩く和樹。
スタジオを見渡し、もう1度深くお辞儀をし、スタジオを出ていった。

なるほど。番場先生は、和樹が今撮りたいものが何なのか、
ちゃんと見抜き、それでクビにしたんですね。
番場先生の最高傑作は、意外なことに、自分が撮った写真ではなく
フランスのおばあちゃんが自分を撮った写真・・・。


病院。
「ごめん。この間は・・あんなこと言って。」と美緒。
「いや・・こっちも、つい熱くなっちゃって。」と秋生。
笑いあう二人。
「そうだよ。怖がってるのにオペしなきゃ死んじゃうぞなんて
 無神経だよ。相当傷ついたよ。」
「こっちだって、相当ショックだったよ。
 俺には何もわからないなんて。」
「あれは・・売り言葉に買い言葉っていうか・・」
「俺、何度も考えたよ。君がどんな気持ちで手術を受けるのか。」
「・・・」
「なのにあんな風に言われるとは思ってなかったな。」
「だって・・本当にはわからないでしょ。人の気持ちなんて。」
「・・・」
「私だってわかんないよ。先生の気持ち。」
「わからなくても、わかろうとすることが付き合うってこと
 なんじゃないの?」
「何ムキになってるの?医者のくせに。」
「結局そうやって自分で壁作るんだな。」
「・・ええ!ひねくれてますから!」
「わかってるならもっと素直になれよ!」
「なれません!
 ・・これが私なんです。
 ・・・」
そう言い立ち去る美緒。

夜。
進藤家にはるな(酒井若菜)がやって来る。
「で?カズが撮りたい美緒ってどんなの!?」
「笑うなよ。」
「笑わないよ!早く!」
「結婚式だよ。美緒の、ウェディングドレス姿。
 それ、前からずっと撮りてーなって思っててさ。
 ま・・無理だろうけどさ。」
「撮ればいいじゃん。」
「どうやって。
 美緒がロスに帰るまであとちょっとしかないんだぞ。
 不可能だよ。」
「別に結婚しなくたっていいじゃない。
 ここにはスタイリストとヘアメイクの天才がいるんだよ! 
 ウェディングドレス借りてきて写真撮るなんてさ、
 簡単でしょ!」
「でも・・」
「いいのよ、本当じゃなくって。
 美緒だって喜ぶよ。」
「俺なら、ウェディングドレス位借りてきてやってもいいぜ。」と勝。
「俺も、メーク位だったらやってもいいよ!」と一流。
「やろうよカズ!面白そうじゃん。
 どうせならさ、派手にお別れパーティーやって、
 そこで着せてやろうよ!」
「それいいじゃない!」と勝。
「・・・ありがとう!
 お前ら・・意外といいヤツだったな、本当に・・」
隣に座っていた勝に抱きつき押し倒す和樹。
そこへ美緒が戻ってきた。
「どうしたの!?集まって。」
「いや・・あの・・別に。
 あ、お前デートだったのか?」
「別に。」
「まったまたー!
 先生と会ってたんだろ!?
 この間の、仲直りしたのか?」
「ほっといて。」
「してないのか!?」
「もういいの!あんなヤツ!!」
美緒はそう言い部屋に篭ってしまう。

部屋のカレンダーを見つめる美緒。
ロスに帰国する20日は、もうすぐだ・・。
切ない表情を浮かべながら、ベッドに横になる美緒。

病院。
美緒の検査データを調べる結城と蓮子。
「血小板が、減少してる!?」
「予想以上にITPが進んでいるみたいね。
 オペに影響が出るかもしれないわ。
 術式にも関わるかもしれないから、データを作成して
 ロスに送っておくわね。」
「はい!」

病院の窓から外を見つめる秋生。
「先生は何もわかってない!
 今の方が大事なんだよ!」
美緒が言っていたことを考える。
そこへ、和樹から電話が入る。
「もしもし、あいつ、また意地張ってるみたいで、すみません。」
「いえ・・僕も同じですから。」
「あの、出発する前の日に、お別れパーティーしようと思って
 いるんですけど、その時に、ウェディングドレスを用意して、
 あいつに着せてやろうって思っているんです。
 もちろん、本当の結婚式じゃありません。
 迷惑はかけませんから、相手役を、してやってもらえませんか?」
「・・・」

美緒は、手紙を書き始める。

星空を見上げる和樹。
 
美緒の帰国前日。
和樹たちは海辺のレストランを貸切、美緒のお別れパーティー兼
撮影会を開いた。
用意されたウエディングドレスに驚く美緒。
「結城君も誘っておいたんだ。」と和樹。
「・・・来ないよ。」
「来るさ!
 本当の、結婚指揮の予行練習として、
 出てくれるって。」
「・・・嘘。」
美緒の笑顔が輝く。

勝は美緒にウエディングドレスを着せながら、
真剣に独立することを考えていると告げる。
「どうして急に本気になったの?」と美緒。
「理由なんかねーよ。
 ま・・しいて言うなら・・」
「しいて言うなら?」
「今年の夏が、暑かったから。」

美緒の髪をセットする一流。
「ねえ一流。
 もし私が、本当にウエディング着ることがあったら、
 一流にメイク頼んでいい?」
「・・・」
「私、一流にメイクしてもらうとなんか元気出るんだよねー。
 何でも上手くいきそうな気がするの!」
「・・・俺嬉しいよ。
 俺、誰にも言ってないけど、メイクって、女の人を幸せに
 出来るものだって思ってる。
 だから、俺、美緒を幸せにする。俺の腕で。」
「・・・うん!」

美緒たちを待つはるなと和樹。
「仕事も無くして美緒もロスに帰っちゃって、
 抜け殻みたいになんないでよ。」
「うん?」
「私いいよ。」
「・・・いいよって?」
「決まってんでしょ!一緒に暮らしてもいいってこと。」
「・・ごめん!俺・・はるなとは・・そういう・・」
「もしかして・・あの、高木・・先生?
 付き合ってんの?」
「違うよ!」
「何で私じゃダメなの・・」
「・・・それは、」

そこへ、美緒たちが登場する。
「いかが?お兄ちゃん。」
美緒の美しさに息を飲む和樹。

「美緒、行くぞ。最高傑作。」
「うん、OK!」
和樹が美緒にカメラを向ける。

写真を撮っていると、秋生から電話が入る。
「ごめん!急なオペが入って遅れそうなんだ。」
「・・・そう。」
「必ず行くから!」
「うん。・・わかった。」

電話を切ると、美緒は兄に微笑む。

2時間経っても秋生は来ない。
美緒は、パーティーを始めるようレストランの従業員に頼む。

「みなさん、今日は、我が妹、美緒の為に、ありがとうございます。
 2ヶ月という短い時間ではありましたが、
 まるで、何年もいたような強烈さで、
 皆さんにご迷惑をかけた美緒も、
 明日、ロスへ帰ります。
 帰ったら、手術という大チャレンジがありますが、
 きっと、悪魔みたいな妹のことですから、
 無事に、乗り切ってくれることと思います。
 迷惑かけついでにお願いです。
 どうか皆さんも、成功を、祈ってやって下さい。
 それでは・・・美緒と、みなさんの成功を祈って、乾杯!
 ・・・と言いたいところですが、
 ここでもう一つ、ご報告があります。
 私、加納和樹は、パリに行くことにしました。」
「え!?パリ行きの話ダメになったんじゃないの!?」と美緒。
「その通り。ダメになりました。
 だから何のコネもない。
 でもとにかく、行ってみようと思う。」
「無茶だろ、お前それ・・」と勝。
「金はどうするんだよ。」と一流。
「俺・・今まで甘えすぎてたよな。
 番場先生に甘え、一流に甘え、勝に甘え、
 はるなに甘え・・・。
 こんな俺が、何かになるためには、
 誰も知っている人のいない所へ行くしかないと思う。」
「いいんじゃない?ね!」と美緒。
「うん!
 ・・私もこれで、心置きなく他の男探せるわ。」とはるな。
「・・・」俯く和樹。
「えーみなさん!
 こんなどうしようもない男ですが、
 兄の成功を、祈ってやって下さい。
 ついでに、私からも一言。
 この2ヶ月、楽しかったです。
 最初は、成長ない兄貴に、ダサいルームメイト、
 うっとおしいガールフレンドで、最悪って思ったけど、
 今はなんか、クセになっちゃって・・
 本当に・・・皆さんと別れたくないです。」
「そ・・そういうのやめようよ。」と一流。
「また会えたら・・・
 一緒にバカ話して下さい!」
涙ぐむ一同。
「以上!お待たせしました。
 乾杯!」
「乾杯!!」
「よし、みんなで記念写真しよう!」
「え!?今?」と一流。
「プロのカメラマンに撮ってもらうんだ。
 早く並べ!」
和樹の言葉に、みんなが並ぶ。
新婦・美緒の隣の席が空いている。
「あれ?
 ・・やっぱそこ空いてるの変だな・・
 はるな、座れ。」
「私じゃないでしょう!」
「え?」
「お兄ちゃん、座んなよ。」と勝。
「え・・俺はいいよ。
 だって誰が撮るんだよ。」
「俺が撮るよ。」と勝。戸惑う和樹。
「おい新郎!観念しろ。」と美緒。
「・・はい!」
和樹と腕を組む美緒。
「私ね、小さい頃お兄ちゃんのお嫁さんになりたかったんだよ。」
「うぉーー。」
「最悪のファーストキスで一気に冷めちゃったけどね!」
「え!?和樹が美緒ちゃんのファーストキスを!?」と勝。
「そ!無理やり奪われたの!」
「なんてヤツ!!」と一流。
「いや・・ガキん時だよ!」
「年は関係ないよ。かわいそうー!」
「でしょう!?」
「かわいそー!」勝と一流が口をそろえる。
「うるさいよ、もう!
 お前、結城先生と早くキスしろよ!」
「責任逃れするな!
 あの最悪なファーストキスがある以上、
 お兄ちゃんは一生私の奴隷なの!」
そしてみんなは、楽しそうにカメラに微笑んだ。
 
あくる日、和樹は、美緒を見送りに成田に向かった。
「・・気をつけてな。」
「お兄ちゃんこそ。」
「・・ごめんな、美緒。」
「何が?」
「・・結城先生、来られなくて。」
「お兄ちゃんが謝ることじゃないじゃん。」
「・・・どうしたんだろうな。来るって言ってたのに。」
「しょうがないよ。医者だもん。」
「でも・・」
「・・・そうだ。お兄ちゃんに渡すものがあったんだー。」
「俺に!?」
「はい。」
美緒が手紙を渡す。
「読んでいい?」
「ダメ!」
「え?」
「これは・・・もし、私が死んじゃったら読んで。」
「・・・」深いため息をつく和樹。
「死んだらとか、そういうこと言うなよ・・。」
「そんな顔しないで!そういう可能性があるのは事実なんだから。」
「・・・」
「いい?私が死んだらだよ。
 それまで絶対、開けちゃダメだよ!」
「・・・わかった。」
「うん。
 ・・・じゃあ・・・行くよ、お兄ちゃん。」
「・・・」
「・・・又ね・・。」
「・・・ああ。」
美緒の頭に手を置く和樹。
「・・又な・・。」
頭をくっつける二人。

と、そこに、秋生が駆けつける。
「美緒!!」
「結城先生!」
「昨日は、すみません。オペが長引いて、朝までかかって。」
「遅すぎ。」
「でも・・間に合っただろ。」
秋生は美緒の手に何かを置く。
ハートのネックレスだ。
美緒の笑顔が輝く。
「美緒。お兄ちゃん、行くわ。
 先生に送って貰え。」
「・・・」
「頼んだよ、先生。」
和樹は二人を残し、その場を去る。

引越しの準備をする蓮子。
そこへ、和樹から電話が入る。
「もしもし、今、美緒旅立つところです。」
「そうですか。私も間もなく出発します。」
「俺も、パリへ行くことに決めました。」
「え?」
「先生が、新しい場所で自分を試したいって言ったの、
 スゲーカッコよくて、
 俺もって思いました。」
「そう。
 お気をつけて。」
「・・・美緒の手術が成功して、俺が一人前になったら、
 もう1度会ってくれませんか?」
「・・・」
「・・・やっぱ無理か。
 すみません、忘れて下さい。」
「・・もう聞いてしまいました。」
「え?」
「前向きに、検討させていただきます。」
「本当ですか!?」
蓮子が微笑む。

美緒にネックレスをつける秋生。
「・・・行かなきゃ。」と美緒。
「・・うん。」
「また・・会えるよね。」
「当たり前だろ。」
「だって・・」
「絶対会えるから。」
「・・どうしてわかるの?」
「好きだから。」
「・・・私も好き。」
美緒の涙を拭う秋生。
「俺、お兄さんに勝てるかな。」
「どうだろう。」そう言い微笑む美緒。
笑ったあと、また泣き顔になる美緒に、
秋生はそっとキスをし、抱きしめた。

「お兄ちゃんへ。
 この手紙をお兄ちゃんが読むときは、
 私はこの世からいなくなったとき。
 だから、もちろん読まれない手紙だと思って書いているよ。
 どうせ読まれないんだから、正直に書くね。
 短い間だったけど、本当にありがとう。
 この夏は、私の人生の中で最高傑作の夏だったよ。
 この2ヶ月で私は変わったよ。
 だってこんな手紙書くくらい、少しセンチメンタルな性格に
 なっちゃったかも。
 今までは手紙とか残るもの嫌いだったし、
 思い出なんかくだらないって思ってた。
 そんなものは今をちゃんと生きてないいい訳だって思ってたから。
 でも、お兄ちゃんにあって、勝や一流、高木先生、はるな、
 そして、結城先生。
 沢山の人に出会って、もっと、もっともっともっと生きたいって、
 思えるようになった。
 そして何よりも、人を好きになって胸の痛みを知った。
 心臓じゃない、私の心の場所を知ったの。
 恋はスゲー、素晴らしいもんだって、
 お兄ちゃんが言った言葉。
 嘘じゃないって実感しているよ。」


手術当日。
母・りえ子(夏木マリ)にニトロケースを預ける美緒。
「いい顔してる。
 大丈夫よ。
 あ、そうだ。届いてたわよ。カズから。」
封筒を開けると、あの日撮った写真だった。
楽しそうに写真を見る二人。

美緒の手術が始まる。

「お兄ちゃん。泣かないで。
 私がいなくなっても、いつでも笑ってて。
 その笑顔でみんなに幸せを振りまくお兄ちゃんを、
 私は天国からずっと、見守っているからね。
 ありがとう。
 さようなら。
 お兄ちゃん、大好きだよ。」


1ヵ月後。
バイトをしてお金を貯めた和樹は、パリに渡り、
フランス人写真家の面接を受ける。
カタコトのフランス語と、身振り手振りと、そして日本語で、
写真への思いを必死に伝える和樹。
「これ、見て下さい。
 これ、僕の、全てです!」
和樹が、美緒を撮った自分の作品を見せる。
美緒のニトロケースを握り締める和樹。
その時、、美緒の手紙が落ちた。
その手紙の封は切られていなかった。

「美緒、元気か?
 お兄ちゃんは、頑張っているぞ。
 まだカメラマンとして契約してくれるところは見つからないし、
 フランス語もほとんどわかんないけど、
 見るもの見るもの初めてで、
 毎日があっという間だよ。
 俺が一人前になるか、お前が、リハビリを終えて日本に帰るか、
 どっちが早いか、競争だな。」

 
無事手術を終えた美緒は、りえ子と一緒にロスの浜辺にいた。
車イスから立ち上がった美緒は、青空の下、思い切り伸びをする。

「そりゃ私でしょ。
 何たって、恋はスゲーんだから。」

美緒の胸には、ニトロケースではなく、秋生から貰った
ハートのネックレスが輝いていた。


※一部公式HPあらすじを引用しました。



幸せを手にした美緒は、今の幸せを失いたくないと、
手術を拒みました。
そんな美緒の考えを変えたのは、恋人でも医者でもなく、
兄・和樹。
美緒は、何年かかっても自分の夢を叶えてみせると語る兄の言葉に、
将来、兄からサイン入り写真集をプレゼントされる自分の姿を
想像することが出来たのかな。
兄の為にも、生きなければ、と思えるようになったのでしょう。

美緒にとっては、この夏こそが最高傑作。

美緒の手紙の朗読に、美緒は死んでしまったのかと思わせておいて、
ハッピーエンドでした。

フランスへ行った和樹は、以前レストランでの撮影で
英語も日本語も通じないフランス人に、伝えようと一生懸命
話す美緒から学んだように、自分の熱意を一生懸命伝えようと
した。
第4話のストーリーが最終回に繋がっていたのは嬉しかったです。

このドラマで一番心に残ったのは、主題歌と井上さんの表情の豊かさ。
毎回、小田さんの心地よい歌声がブチっと切れるのが残念でした。



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キャスト

福永美緒(20)  ……  井上 真央
加納和樹(28)  ……  伊藤 英明
結城秋生(26)  ……  平岡 祐太
斉藤はるな(27) ……  酒井 若菜
諸畑健夫(22)  ……  蕨野 友也

我修院達也
マリエ
・ ・ ・
番場 大(50)  ……  竹中 直人
福永りえ子(50)  …… 夏木 マリ
・ ・ ・
進藤一流(28)  ……  劇団ひとり
二階堂勝(30)  ……  阿部サダヲ
高木蓮子(33)  ……  松雪 泰子
ほか


スタッフ

脚   本 : 井上由美子
音   楽 : 本間勇輔
主 題 歌 : 小田和正「こころ」
(BMG JAPAN)
プロデュース : 若松央樹
鹿内 植
演   出 : 武内英樹
川村泰祐
木健太郎
放 送 日 : 7月9日スタート毎週月曜日
21:00〜21:54 
制   作 : フジテレビドラマ
制作センター
制 作 著 作 : フジテレビ


井上真央さんの主な出演作品



伊藤英明さんの主な出演作品


この記事へのコメント
こんにちは
いつも楽しく拝見させて頂いてます。
本当にありがとうございます。

活字でゆっくり読めるドラマも
とても良いなぁといつも感動です!

ところで、今回1つ気になったのは
番場先生の最高傑作作品のことです。
「俺の代わりに」おばあちゃんが撮った、
私は
「お礼の代わりに」おばあちゃんを撮った
だと思っていました〜
番場先生が和樹に自分の事を話してくれたのは
初めだと思ったので印象深いシーンでした。

結城秋生先生。かっこよかったです。
秋に生きると書いて秋生。
名前から美緒は必ず夏を超えて生きると
確信しておりました。

次のクールも楽しみにしてます♪
無理なさらず更新されてくださいね。
Posted by 豆 at 2007年09月19日 09:48
ちーずさんこんばんは、結構あっさりとしたラストでしたね、もう一波乱あるのかと思っていましたが…

美緒の容態が急変して蓮子と秋生が手術するとか和樹の写真が認められるとか!でも井上由美子さんの脚本はやっぱり良いです!和樹のことを本当に好きな妹が手術を受けるまえに兄に合いに来た感と初めて男性を好きになり胸が痛くなることを知った感の良く出た空港でのわかれのシーンはすてきでした!

美緒と和樹にとって本当に貴重な2ヶ月、恋も知らないまま手術をうけていたかも知れません、本気で写真家を目指すことも無かったかもしれませんね!サンプルで持っていった花火のときの美緒の涙の写真は目立ちます、今回のウエディング姿も秋生が来れないと知った時の切ない顔も撮っておけばよかったのに!

はるなは振られてしまいましたね!美緒が日本に来たときは友達やお姉さんとして接してくれそう!蓮子の前向きに検討はオーケーなのかな?単純な和樹ですが蓮子の気持ちを和らげる力はあったから!

豆さんと同じでお礼の代わりに撮った写真が正解だと思います!確かにオレイのイは聞こえなかったです、俺の代わりにも少し納得、竹中さんの低いトーンだとそう聞こえるかも?フィルムの中のおばあさんが撮った一枚が最高傑作とか粋なアドリブで言いそうですものね!
Posted by けた at 2007年09月19日 19:55
 いつも拝見しています。
 新聞に出たタイトル「天国からの手紙」、美緒の手紙の朗読。そして手術の場面“出血が止まりません…”
 最後の最後まで引っ張ってましたが、この手術の場面は、その前の結城先生が来れなくなった緊急手術のシーンと重なっていましたね。
 同じように「出血が止まりません!」のあと、院長先生が手術の助っ人にお出ましになり(結局、いい先生だった)、手術は成功! これが、ちょっとした伏線で、美緒の手術の成功を仄かに暗示していましたね。
Posted by sigma2 at 2007年09月19日 20:11
こんにちは。コメントありがとうございます!

★豆さん★
あぁ!なるほど!
「俺の代わりに」ではなく「お礼の代わりに」でしたか!
最高傑作が、人が撮った写真というのも変だなーと思いつつ、
無理やり納得してしまっていました。
訂正ありがとうございます!

★けたさん★
訂正ありがとうございます!
心臓の痛みと胸の痛み。
脚本も、演じている井上さんも上手かった!

★sigma2さん★
院長先生も、結局は、患者さんの命第一に考える
立派な医者でした。
美緒の手術の成功の暗示に私はあまり気付かず、
和樹がニトロケースを持っているのは形見としてなのかとか、
最後まで惑わされていました。(笑)
封が空いてない事を確認できたときは嬉しかったです。
また遊びにいらして下さい!
Posted by ちーず at 2007年09月23日 15:19
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