2007年11月04日

ジャッジ〜島の裁判官奮闘記〜 第4回

『命』

三沢恭介(西島秀俊)は、島で起きた業務上過失致死傷の交通事故の
裁判を受け持つ。

保育園児を死亡させ、母親に重傷を負わせた新城瞳(ソニン)は、
悪質な事故ではなかったため、逮捕即日に釈放され在宅起訴されていた。
瞳にも幼い保育園児が二人おり、夫とは離婚して一人で育てていた。

恭介は、実刑判決を下した場合に及ぼす被告人の幼い二人の子どもの
養育のことと、悲しみに暮れ、被告人を憎む遺族の心情のこととで、
執行猶予付きの判決にするか実刑の判決かを悩む。

そんなとき、弁護士の畑夏海(浅野温子)が自分の父親も弁護士に
なる前は裁判官だったことを恭介に明かし、裁判官であった父との
思い出を恭介に語る…。

公式HPより=
加害者には会おうとはせず、「息子を返せ!」と思いをぶつける被害者の親。
ドア越しに、何度も何度も謝罪の言葉を繰り返す加害者。

加害者は自分をとても責め、深く反省をしていますが、
幼子を二人抱え、生活していかなければなりません。

一方、被害者の父おいやは、何の罪も無い子どもを突然失い、
妻も重傷。
行き場の無い怒り、悲しみは当然加害者に向けられるでしょう。


証人尋問
被害者の家族・白井宇一(尾美としのり)が証人台に立つ。
「民宿を、妻と二人でやっていました。
 妻は、本当に明るく・・いつも笑顔が絶えない働き者で・・
 その妻も・・・自分の怪我よりも・・
 息子を失ったショックで、まだ退院出来ません。
 ハジメは・・死んだ息子は、来年学校に上がるのを楽しみに
 していました。
 民宿は休業状態です。
 息子と妻は、横断歩道を渡っていただけです!
 裁判なんて何の意味が!!」
そう言い、涙ながらに三沢裁判官に訴える白井。
「ハジメはもう戻って来ない・・・
 被告人が憎い!!許せんちば!!」

白井の言葉を身動きせずに受け止める瞳。

証人・新城久(被告人の兄)が証言台に立つ。
「私は高校を卒業して、島を出てから、大阪で就職しました。
 酒癖が悪く、近所とも度々トラブルが絶えない父を妹に押し付けて、
 家出したようなもんです。
 でも、妹は本当にしっかりしていて、高校を卒業してから、 
 島で働き口を見つけて、地道に堅実に働いていました。
 ・・・ただ、結婚に失敗して。
 東京からダイビングに来た観光客と知り合って結婚したんですが、 
 妹が二人目の子を身ごもっていた頃、その男が浮気をして、 
 東京にもどっていったんです。
 でも、妹は誰にも頼らず、二人の子どもを一人で育てる決心をして、 
 真面目に必死に働いていました。」

被告人質問
「では、被告人は、一昨年離婚し、二人の子どもを引き取って、
 給食センターで調理をやりながら、4歳の長女と3歳の次女を、
 たった一人で、育てているということかい?」と平弁護士。
「はい。」
「被告人のご両親は?」
「母は、私が中学の頃に病気で亡くなり、
 実家には父親一人が暮らしています。」
「実家のお父さんと一緒に暮らして、子どもたちの面倒を見てもらう
 方が、助かるんじゃないのかい?」
「・・・父は、昔から酒癖が悪く、
 それで私も早くから家を出たかったし、
 もうずいぶんと会っていません。
 大事な子どもを、そんな父親と一緒に住ませることなんて出来ません!」
「では、親戚とか、知り合いとか、誰か、子どもたちの世話をしてもらえる
 人はいないのかい?」
「大阪の兄は、来月から海外に赴任することが決まっていますし、
 迷惑がかかりますので・・。」

傍聴席から憎しみの目で被告人を見つめる白井。

三沢家
麗子(戸田菜穂)を大美自然観察会に誘う池田里見(国生さゆり)。

論告・求刑
「いかに被告人に反省の念が深く、その他の諸事情を考慮しても、
 被告人の刑事責任は、極めて重いといわざるを得ない。
 以上を総合考慮し、被告人を、禁固1年6月に処するのが相当と考えます。」

検察官を見つめる瞳。
遺影を抱えて俯く白井。

最終弁論
平弁護士は被告人が非常に反省している点、二人の幼い娘の件を
考慮し、執行猶予付きの判決をと訴える。

「被害者・・御遺族の方には・・
 一生をかけて償っていかなければならないと思っています。
 本当に、申し訳ありません。」
涙ながらに謝罪する瞳。

「それでは、これで閉廷します。」

「この事件の判決言い渡しは、一週間後となりました。」

恭介は、書類を届けにやって来た鈴元書記官(市川実和子)に、
「どう思う?」と聞いてみる。
「単純な過失とはいえ、人を死なせてしまったんです。
 その責任は重いと思います。」
「そうだね。ほんの一瞬の不注意だけど、その注意を怠った責任は重い。
 ただ、被告人の家庭環境を考えると、刑罰が与える制裁の強さを
 考える必要がある。」
「・・・支部長。だから私、刑事事件気が重くなるんです。」
「民事担当に変えてほしいって言ってたね。」
「よろしくお願いします。」

喫茶店で話す平弁護士、瞳、瞳の兄。
妹を心配する兄。
「執行猶予はつく、と言いたいが、御遺族の怒りがあるから、
 五分五分ってとこかいね。
 交通事故ばかりは、裁判官によってかなり、幅があるし・・。」
と平弁護士。

大美島支部
鈴元書記官に、何か言いたそうで言い出せない野見山主任(小野武彦)。

支部長室
過去の例を調べる恭介。

海を見つめて考え込む恭介の元に、畑夏海弁護士(浅野温子)がやって来た。
「難しい判断ですよね。」
「膨張されてましたね。」
「ええ。被告人が加入している自動車保険会社の代理人なんです。」
「そういうことでしたか。」
「父が裁判官だった頃、私はまだ子供だったけど、
 母子家庭のようなものでした。
 裁判官の例に漏れず、父も仕事人間で。
 いつも難しい顔をして、怖いだけだった。
 裁判官はポーカーフェイスで何を考えているのかわからない。
 みんな上級審でひっくり返されないように、無難な判例を丸写しして、
 判決は求刑の八掛け。
 ・・・何ていう批判もある。」
「・・・そんなことはない。心外です。」
「そうよね。そんな裁判官ばかりじゃないわよね。」
「・・・」
「判決の期日には、また傍聴します。」
夏海が去っていく。

恭介が少し怒ったのは、夏海に心の中を見透かされて
しまったから?


居酒屋『里美』で飲む恭介と谷川家裁調査官(的場浩司)。
「実は、今日の被告人の新城さん。
 以前離婚調停で私が担当した人なんですよ。」
「え?そうだったんですか。」
「驚きました。小さな子どもを二人抱えて、頑張ってるなって
 思ってたんですが。」
「誰にも頼らず、一人で頑張っていたそうですね。」
「彼女、子どもの将来のことを考えて、だんなの浮気を許して、
 何とか別れないようにって努力してたんです。
 でもダンナは、その浮気相手とどうしても結婚させてくれって。
 養育費も大目に払うから、そう言ってたのに!」
「・・・」

自宅の風呂に浸かりながら考え込む恭介。
平弁護士の言葉、被害者家族の言葉が頭をよぎる。
「恭介さん?」麗子が声をかける。
「あ・・なに?」
「あんまり長いから、お風呂で寝てるんやないかと思って。」
「寝てないよ。」
「それやったらいいけど・・。」

時間を忘れてしまうほど考え込んでいるんですね。
心配して様子を見に来る妻に愛を感じます。


里美に声をかけてもらった大美自然観察会に出かけた麗子と麻衣子。
シュノーケリングでさんご礁の美しさを楽しむ。
「だからね、さんご礁も、プランクトンも、魚も、
 切っても切れない関係にあるの。
 海の生き物は、みーんな繋がっているのよ。」
大美島自然観察員・新元みづき(遠藤久美子)が子どもたちに説明する。

「その頃夫は、大美島本島から、25キロ離れた
天ノ島に出張していました。
 島の裁判官は、大美島本当の裁判所に来られない小さな島々の人の為に、
 出張裁判に出かけます。
 この日の出張裁判は、とても風変わりな事件でした。
 97歳のおばあちゃんが、突然戸籍の生年月日を訂正してほしいと
 申し立てたのです。
 戸籍の訂正は、裁判所の許可が必要で、審判事件として
 扱われるのです。」


鹿児島県天ノ島・天ノ島公民館
戸籍訂正申立事件
「ウメさんは、戸籍の上では、97歳になっていますが、
 本当は100歳ということなんですね。」
「はい。
 証人がいるいうことやったから、
 同級生の、玄ちゃんと、幼馴染の、トキさん、
 連れてきちゃっと。」
吉行玄と久保トキがウメの隣りで微笑んでいる。
「わんは、97歳で、ウメちゃんと同級生だった。」
「わんはこの通り100歳ど。
 裁判官さま、ウメちゃんは、」
「あの、その前にですね、ウメさん、事情を説明していただけますか?」
「わんは、明治40年の3が生まれで、」

「ウメおばあちゃんは生まれたとき、体が弱く、
 親はちゃんと育つのか半信半疑で、
 出生届けを出さないままでいて、
 3年後の誕生日にやっと届け出たということでした。
 昔は新生児が亡くなることが多く、
 出生直後に届けを出さないことは、よくあったのだと。」


「しかしウメさん、どうして今になって、100歳に訂正したいと
 思われたんですか?」
「最近、小学校で、講演ば、頼まれたりするんだ。
 子どもたちに、昔話を聞かすんじゃ。
 その時、97歳と、100歳では、話の値打ちが違うろか!」
「・・・」
「本当は、わんと同い年ど。100歳にしてくれんかい?」とトキ。
「ウメさん、子供の頃の写真とかありますか?」
「家にあるど。何でじゃ。」
「よかった。一応それを確認させてください。
 そうすれば、ご要望どおりにしてあげられるかもしれません。」

三人に対して、恭介はゆっくり、はっきりと説明します。

元気に歩くウメのあとを必死に付いていく恭介。
「本当にあれで100歳か・・」
「支部長、運動不足じゃないですか。
 島のおばあちゃんは、あれが普通ですよ。」
同行した泉書記官(松尾敏伸)が言う。

ウメの家
クラスの集合写真を見せてもらう恭介。
「なるほど。確かに目だって大きいね。
 ウメさん、100歳ということで、戸籍の訂正を認めますから。」
「こりゃ、ありがとうございます。
 ちょっと、失礼して。」
仏壇の前に移動し、手を合わせるウメ。
仏壇には特攻服姿の息子の写真。
「珍しい花ですね。」
「特攻花ど。」
「特攻花・・」
「特攻隊が植えた花ど。
 わんの息子も特攻隊で・・
 数えで19、満で18才でした。
 花の好きな優しい息子だったど。
 息子の最後の手紙ど。」
手紙を読む恭介。
「お母さん、100歳まで元気で、長生きして下さいって書いてる。
 そこに、塗りつぶしてる字があんろ。
 よう見えんけど、きっと、僕の分までって、書いてあったろや。
 近頃、みーんな、いなくなってしまって、
 わんももうそろそろかなーーっと、思っとったんど。
 でも、あんたらのお陰で、息子との約束、果たせた。
 ほんと、ありがさまで・・。」

特攻花畑に立つ恭介。目の前には滑走路が広がる。
「菊の一種で、正式には、天人菊といいます。
 この島は、特攻隊の中継基地だったんです。
 島の娘たちは、出撃前の特攻隊員たちに、この花を贈ったんだ
 そうです。
 でも特攻隊員たちは、この可憐な花もろとも、
 敵艦に突っ込むのが忍びなくて、
 滑走路に置いていったり、植えていったりした。
 そういう言い伝えが残っています。
 今でもこの飛行場の回りだけ、毎年咲き続けているようです・・。」
泉が花畑に座り込む。
「親にとって、子どもに先立たれるほど、悲しいことはないですよね。」
花を見つめながら泉の言葉を黙って聞く恭介。

ぼーっと庭を見つめる白井。

子どもが遊ぶ姿を見守りながらも、暗い表情で考え込む瞳。

パソコン画面を見つめて考え込む恭介。

大美島支部
相変わらず、鈴元に何か伝えそうで言い出せない野見山。
部下にカラオケに誘われても、そんな気分じゃないと野見山は
乗ってこない。

「あのー、久美ちゃんや。」と野見山。
「あの、前から言おうと思ってたんですけど、」
「はい、」
「苗字で呼んでもらえませんか?」
「あ・・そう。」
「何でしょうか。」
「え・・」
「今私のこと呼びませんでした?」
「わん、久美ちゃんのこと、呼んだ?」
「・・・」
「あー、ごめん。すまんや。」

支部長室
恭介の携帯が鳴る。塚本からだ。
「もしもし。」
「ああ、俺だ。」
「塚本!元気か?」
「今大美島空港だ。」
「え!?」
「さすがに厚いなー。」

電話の相手は、東京地裁判事補の塚本隆史だった。
「塚本!」
実を見つめる塚本。
「いいところだなー。」

「塚本さんは、胃がんとなった自分の代わりに、
 島の裁判官になることを薦めてくれた、
 夫がもっとも信頼する動機の裁判官です。」


「再入院!?」
「ああ。
 俺はもう、おしまいだよ。」
「・・・何言ってんだ。」
「どうだ島の裁判長は。
 こんな自然に囲まれて、自分ひとりの裁量で何でもやれて、
 天国だろ。」
「そんなわけないだろ。これまでのやり方が通用しない。」
「ほう。」
「資財にいた頃は、迅速化、効率化を最優先に考えていた。
 だけど、いつもそれが正しいとは言えないような気がしてきた。」
「事件には一つ一つ違う顔がある。
 早くしなければならない事件もあれば、
 じっくりやらなければならない事件もある。」
「そういうことがわかっただけでも、島に来てよかったと思うよ。」
「じゃあ俺に感謝しろ。」
「そうだな。」
「三沢。俺な、昔・・判決を二つ書いたことがあるんだよ。」
「判決を二つ?」
「ああ。恥をさらすようなんだが、どうしても決められなくてな。
 その時から、裁判をするのが苦痛になった。
 何とか乗り越えようと格闘しているうちに、
 こんな病気にとりつかれちまって・・・。」
「・・・」
「裁判官失格だ。」
「何言ってんだ。誰だって迷う!
 判決を二つかいた時、お前は精一杯悩んだ。
 そうじゃなきゃいけないんだ!
 お前は、裁判官失格なんかじゃない。」
「いや・・・迷って悩むだけじゃだめなんだよ。
 迷って悩んでいるだけじゃダメだ・・。
 それを乗り越えなければ・・・
 乗り越えられるとそう思った矢先・・・
 体が悲鳴を上げちまった・・。」
涙ながらに語る塚本を恭介は見つめ・・・。

三沢家
麗子は帰って来た恭介に、海の自然観察会のことを話す。
「今度ね、森の自然観察会開くっていうから、
 みんなで一緒に行かへん?
 大美島の自然に溶け込んだら、きっと息抜きにも、
 運動不足解消にもなるし。」
「さっきまで、塚本と会ってた。」
「塚本さん?塚本さん島に来てんの?」
「今ホテルに送ってきた。」
「うちに来てくれはったらよかったのに。
 元気だった?」
「・・・再入院するらしい。」
「・・・再入院。
 それって・・がんが再発したってこと?」
「・・・そういうことだろうな。」
顔を覆い泣き出す恭介。
「恭介さん・・。」

裁判所
恭介の携帯が鳴る。
「もしもし。」
「これから東京に帰る。」
「今、どこだ?」
「大美岳だ。
 三沢、ここからの眺めは素晴らしいな。」
「大美岳か。まだ行ったことないな。」
「お前は真面目すぎる。
 もっと遊べ。」
「お前に言われたくないね。」恭介が笑う。
「三沢。忘れるな。
 どんなに悩み迷おうが、俺たちの判断で、裁判の当事者の
 次の人生が始まるんだ。
 お前の顔を見て安心したよ。
 やっぱり来てよかった。」
「・・・」
「・・・」
「塚本。」
「なんだ。」
「・・・ありがとう。」
「三沢、頑張れよ。
 ・・・じゃあな。」

美しい景色を眺める塚本。

窓の外を見つめる恭介。

そして恭介は、机に向かい・・・。

居酒屋『里美』
「支部長、どんな判決書くかなぁ。」と谷川。
「執行猶予はないと思うけど・・」と鈴元。
「どうして?」
「だってお子さんを亡くされた被害者の気持ち、
 考えてみてよ。」
「いや・・ま、結果はかなり重大だけど、
 酒気帯び運転とか、ひき逃げなかのような故意は
 なかったんだからな。」
「故意がなければ何でも許されるの?
 それじゃ被害者はどうなるのよ。」
「何でも許されるなんて言ってないだろ。」
「被告人は、執行猶予でも、公務員だから、
 失職しますよね。
 そうなると、社会的、制裁を受けるし、
 僕も実刑は、少し厳しすぎるような気がするや。」と泉。
「そうだろ。
 それに、子どもの命を奪った罪の意識は、
 同じ子を持つ母親として、この先一生消えないと思うよ。」と谷川。
「遺族の悲しみだって一生消えないっちば。」と鈴元。
「・・・」
「難しい、ですよね。
 それに支部長、それをたった一人で判断しなきゃいけないんです
 もんね。」と瀬戸幸彦(橋爪 遼)。

支部長室
パソコンに文章を打ち込む恭介。

居酒屋の帰り、鈴元は支部長室の電気がついていることに気付く。

三沢家
麻衣子に絵本を読む麗子。
「パパ遅いね。」
「今日遅くなるって言ってたからね。」
「パパ、昔に戻った?」
「昔のパパとは、ちょっと違うんちゃう?」
「どこが?」
「うん、そやね、忙しい時でも、難しい顔してるときでも、
 ちゃんと、麻衣子やママに話してくれるようになったやんか。」
「まあね。」
「それは、大きな違いかもしれんよ。」
微笑みあう二人。

デスクの上の家族写真をふと見つめ、そしてまた仕事を続ける恭介。

第2回公判期日(判決宣告)
「被告人、前に立って下さい。
 それでは、判決を言い渡します。
 主文、被告人を、禁固一年に処する。
 主文は以上です。」
「・・・」

瞳、平弁護士、白井、そして夏海のアップ。

「人を殺しておいてどうしてたった一年かい!
 あんたには子どもがいないのかい!?
 子どもの命を取られた親の気持ちが、
 あんたには・・」
恭介を睨みながら立ち上がる白井を、事務官が止める。
「離せ!!」暴れる白井。
「離してあげて下さい。」と恭介。
「これから判決文を読みますので、聞いて下さい。」
「聴きたくないど、そんなもの!
 ふざけるなっ!!」白井が法廷から出ていく。

判決に泣き出す瞳。
「実刑は・・厳しすぎる・・」兄が呟く。

「・・・それでは、判決文を読みます。
 理由、罪となるべき事実。
 被告人は、平成19年、5月1日、午後5時35分頃、
 普通乗用自動車を運転し、鹿児島県、大美島市、カサイ4丁目、」

支部長室
法廷を終え、たたずむ恭介。
鈴元はそんな恭介の姿に、声をかけることが出来なかった。

海を見つめる恭介。夏海がやって来た。
「裁判官って辛い仕事よね。
 父に聞いたことがあるの。
 なぜ裁判官を辞めて弁護士になったのかって。
 何て答えたと思う?」
「・・・」
「刑事事件の判決を書くとき、痛みを感じなくなったからだって。」
「・・・」
「あなたは、被告人と被害者、両方の痛みを充分感じていた。
 これからもずっと、そういう裁判官でいて欲しい。」
「・・・」
「今は、どちらも納得できないかもしれないけど、
 いつかわかってくれると思う。
 あなたの判断で、次の人生のステップが踏み出せたんだって。」

自宅の前に自転車を停めた恭介は、家の明かりを見つめる。

「ただいま。」
「お帰りなさい!」「パパお帰り!」
麻衣子が恭介に抱きつく。
「お風呂沸いてるけど、先に入る?ご飯にする?」
「麻衣子、久し振りにパパと一緒に入るか?」
「イヤッ!!」
「何で・・」
「絶対イヤっ!」
「嫌われたもんだなー。」
「そんなことないで!」
笑いあう三人。

『交通事故裁判
 法廷で遺族が叫んだ
 判決に被告人・被害者いずれも納得せず』

新聞記事を読む麗子。
恭介が起きてきた。
「おはよう!」
「おはよう。」麗子が新聞を畳む。
新聞を広げる恭介。
夫に背を向け、普通にお茶を入れる麗子。
そんな妻の気遣いに気付き、恭介が微笑む。
「おはよう!」麻衣子が起きてきた。

いつもと変わらぬ家族と過ごす時間。
妻の気遣い、優しい微笑みに、微笑みを返す恭介。
夫婦って、家族って。
いいシーンでした。


支部長室に、野見山がやって来た。
「支部長、ちょっとよろしいですか?」
「はい。」
「判決公判も、終わりましたんで、申し上げますが、
 交通事件の新城瞳さんとは、実は、私、知り合いでありまして。」
「え・・」
「彼女が働いていた給食センターに、女房の親友がいまして。
 そういう関係で。
 立場上、公判について聞くことも出来ませんし。」
「ああ・・最近野見山さんの様子がおかしいってみんなが。」
「彼女、控訴せずに判決に従うようです。
 二人の子どもも、平先生と相談して、
 いい施設を紹介出来ましたし、
 ま、それにお兄さんも、海外赴任を断って、
 姪っ子二人に目をかけていくと。
 そんなわけで。
 失礼いたします。」
「野見山さん!」
「はい。」
「ありがとうございます。」
「いや、とんでもない!
 支部長にお礼を言われるようなことでは。いやいや。
 では。」
野見山が笑顔で挨拶し、部屋を出ていく。

白井家
仏壇に手を合わせる平弁護士。
「彼女も、毎日、息子さんのご冥福をお祈りしております。」
「・・・」
「わんは、おんの、被害者遺族の会の、窓口になってるちば。
 困ったことがあったら、なんでも相談に乗るから、
 いつでも連絡して下さい。」
「・・・」
「では。」
「・・・平さん。
 ・・・これから、どれ位かかるかわからんが、
 もう1度、女房と、二人で前を向いていかなければと・・・」
そう言い、家族写真を見つめる白井。

屋上から海を見つめる恭介。そこへ鈴元がやって来た。
「支部長!
 被告人も検察官も、控訴しないということで
 判決が確定しました!」
「そうですか。」
「あの支部長!
 民事に変えていただきたいと、お願いしていた件なんですが、
 私やっぱり、もう暫く刑事担当で頑張ります。」
「え?」
「支部長を見ていて、私も逃げずに、しっかり仕事をしていきたいと
 思いました。」
「そう。」微笑む恭介。
「あ、支部長、例の貸金訴訟、お二人とも来ていらっしゃいますよ。」
「あ、そっか!」

ラウンドテーブル法廷
お菓子を頬張る島谷マツ(菅井きん)。
「ばあさん、一つくれれ。」と池端忠一(梅津栄)。
池端にそっぽを向き、泉におすそ分けするマツ。

法廷に駆けつけた恭介は、ネクタイを外して部屋に入る。
「こんにちは。お待たせしました。」
「いつもと違うようや!」とマツ。
「ノーネクタイ?」と泉。
「暑いですからね。リラックスしてやりましょう。」
恭介の言葉に微笑むマツと池端。
「ところで池端さん、島谷さんにお金を返す気持は
 ありますよね。」
「戻す気持ちがあるから、こうして、何度も来てるがです!」
「そやたらはよ、戻さんば!」
「・・・200万円は戻さんど!
 そんなに借りとらんど。」
「びた一文まけやせんど!」
「ここはお互い、歩み寄りませんか?」と恭介。
「何でわんが・・
 何で裁判所が取り立ててくれんかい!」とマツ。
「おばあちゃん、だから、証拠になるものが何もないのに、
 裁判所では取り立てられんのですよ。」と泉。
「証拠証拠っち!
 わんが証拠っち何か文句あるがんかい!」

大美島支部
野見山がリゾートホテルのパンフレットを手に、
「これで大美島も活性化する!」と話している。
「こんなリゾートホテル1個で島の経済が活性化しますかぁ?」と鈴元。
「しない?」と野見山。
「するわけないでしょう。」
「え・・そうですか?」と瀬戸。
「でも我が家は活性化してるよ。
 息子中心に。
 ホテルのアトラクションっていうの?このチラシ持ってきて
 家で大興奮しているよ。」と谷川。
「環境破壊だって、反対している人も結構いるらしいですよ。」と鈴元。
「そうなの??」

「このリゾート開発が、島全体を揺るがす訴訟事件に
 発展していったのです。」


「池端さん、ほかに借金は?」恭介が聞く。
「まあ、いくつか。」
「他にも借金してるのか!?」とマツ。
「まあまあ・・冷静に話しましょう!」



戸籍訂正申立事件が、本編とどう繋がるのかと思っていました。
ウメさんが100歳にこだわったのには、そういう訳があったんですね。
本編に繋げるだけでなく、戦争に引き裂かれた親子、恋人たちの
想いまで描かれていました。

息子との最後の約束。
子を先に亡くした親の思い・・・。

判決に悩む恭介は、ウメの、戦争で子どもを失った思いを、
交通事故の被害者の親の気持ちと重ね合わせたのでしょう。

被害者の、親としての思い。
加害者の、親としての思い。

両方の思いに近づけば近づくほど、決断が鈍る。
そんな恭介の元に、親友・塚本が会いにきます。
恭介がこの島に来るきっかけとなった同僚。
塚本は自分を裁判官失格と言い、
「迷って悩んでいるだけじゃダメだ・・。
 それを乗り越えなければ・・」と涙ながらに語ります。
「三沢。忘れるな。
 どんなに悩み迷おうが、俺たちの判断で、裁判の当事者の
 次の人生が始まるんだ。」
塚本のアドバイスは、恭介の心を優しく押してくれたことでしょう。

恭介が出した判決は、禁固一年。
最初は被害者からも、加害者からも恨まれましたが、
控訴はせず、受け入れてもらえました。

このドラマを見るまで、裁判官という仕事をあまり意識したことが
なかったんですが、本当に辛い仕事ですね。
でも、決断は出さなければならない。
塚本が言っていたように、例え辛い判決であっても、
そこから当事者たちの次の人生が始まるんですよね。

夏海の父親が裁判官を辞めた理由にも、考えさせられました。
悩みに悩みぬいて答えを出した恭介。
これからも恭介には、そして裁判官たちには、そういう姿勢でいてほしいです。


それぞれの思いを、あまり言葉にせずに
表情だけで語らせているのが上手いなぁと思いました。
セリフがなくても充分にじわじわと伝わってきます。

島に来てからの恭介は家族の絆をとても大切にしていて、
そこがうれしいです。
麻衣子も、最初は嫌っていた父親の仕事を今は受け入れ、
ゆくゆくは夏海のように、法の道に進んだりするのかもしれませんね。

次回、最終回。
もっとじっくり見たいドラマです。終わってしまうのが勿体無い!



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エンディングテーマ
B000VUSILW種をまく日々中孝介 エピックレコードジャパン 2007-11-14by G-Tools



キャスト

三沢恭介(36歳)…西島秀俊
三沢麗子(33歳)…戸田菜穂
三沢麻衣子(8歳)・・・桝岡明

野見山修(56歳)…小野武彦(大美島支部の主任書記官)
谷川淳一(36歳)…的場浩司 (家裁調査官)
鈴元久美子(28歳)…市川実和子(書記官)

泉 孝之・・・松尾敏伸(書記官)
瀬戸幸彦・・・橋爪 遼

塚本隆史・・・北村有起哉
水谷恵子・・・安 めぐみ(小学校教師)

島谷マツ・・・菅井きん
池端忠一・・・梅津栄

平田  透・・・博多華丸
平田かおり・・・重泉充香
平田  悟・・・堺 翔太
悟の祖母 ・・・路井恵美子

添田 博・・・藤木勇人
添田美那・・・八田麻住
添田翔太・・・土井洋輝

検事・・・村上かず
紬工場社長・・・南条好輝

大阪地裁・裁判長・・・山西 惇
大阪地裁・所長・・・芝本 正

夏海の父(写真)・・・鈴木瑞穂

池田里見(40歳)…国生さゆり(居酒屋『里美』の女将。官舎の町内会長)
池田結・・・坂口あずさ

三沢早苗・・・大山のぶ代

平正明(68歳)…寺田農(島の弁護士)

畑夏海(43歳)…浅野温子(敏腕弁護士)


第二話ゲスト
牧竜一・・・森田直幸
牧芳子・・・千堂あきほ


第三話ゲスト
安田判事・・・利重 剛
坂井判事補・・・野波 麻帆
検事・・・村上かず
大郷信正・・・河原さぶ
本田勝男・・・平井昌一
本田弘樹・・・津田寛治
本田磯子・・・中原ひとみ


第四話ゲスト
新城瞳・・・ソニン
白井宇一・・・尾美としのり

第五話ゲスト
新元みづき・・・遠藤久美子
麓一平・・・岡田浩暉



スタッフ
脚本:中園健司
検出:本木一博
   櫻井 賢
   大原 拓
音楽:羽毛田丈史



西島秀俊さんの主な出演作品



浅野温子さんの主な出演作品
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ちーずさんこんばんは、年齢をなおしたいウメばあちゃん、公演のときに100歳のほうがいいといいましたが特攻で失った息子さんの手紙が本当の理由でした、恭介は少しでも長く生きてもらうために却下するか、そのへんの話をするのかと思っていました!

交通事故の判決も難しいですね〜恭介も一回過去の判例に頼ろうとしました、思いとどまったけど夏海には指摘されてしまいましたね!塚本の言葉やウメさんの息子の件に後押しされて自分の思ったとうりの判決をだしました、被害者も加害者も納得いくものではなくても区切りはつけてあげないといけないのですね!
子供を失った被害者遺族は求刑どうりに1年6月でも納得はいかないかも、何年だったら納得できるか聞いても答えられないでしょうね!加害者も執行猶予がついても、そこから先には進めないかも知れません!やり直す為の区切りをつけてもらったのを受け入れたのかも?

三沢家ももう大丈夫そうですね!新聞の記事の件は良かった〜言葉ではなくお互いを思いやり気遣う笑顔が素敵でした!島に来て言葉はなくても共有できる時間をすごすことで恭介だけではなく麗子も変わったのかな?

来週最終回、終わってしまうのは残念ですが早くみたいです!島を離れることになるのかな?ラウンドテーブル法廷の決着のつけ方も楽しみです!
Posted by けた at 2007年11月04日 19:00
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