2007年11月11日

ジャッジ〜島の裁判官奮闘記〜 最終回

『島人』

「最近仕事中毒に戻りかけた夫を、島の自然観察会に連れ出しました。」

巨大な熱帯植物・カゲヘゴや、天然記念物の美しい鳥。
自然を満喫する三沢恭介(西島秀俊)たち。
以前は小学校の校長をしていた自然観察指導員・麓幸吉(山本学)は
今では大美島の生き字引と呼ばれている。
途中、マングースバスターズの一行とすれ違う。
「マングースは昔、ハブ退治の為に人間が森に話したんじゃが、
 どんどん増えてしまって、大美島にしかにない希少動物まで
 食い荒らしていることがわかってや。
 ハブ退治どころか、マングースを退治することになったわけや。
 人間のやることは、まったくてげてげじゃー。」
麓が語る。
「麓先生のお話のように、この森には、世界的にも貴重な
 動植物がいっぱいいるの。
 それで、世界指定遺産の登録候補にもなっています。」
観察員の新元みづき(遠藤久美子)の説明に、「へー!」と大きな声で
感心する恭介。「この若い女性が、のどかな大美島に、大騒動を巻き起こすなんて、
 誰も想像もしていませんでした。」


ある日大美島支部に、観察員の新元みづきが民事訴訟を起こしたいと
やって来る。
みづきが作成した訴状の原告の欄を見て驚く瀬戸幸彦(橋爪 遼)。
『オオミノシマウサギ
 オオミウミガメ
 オオミカブトムシ
 オオミカケス』
「この島の、動物たちです!
 今、計画されている、東京エコリゾート興産のホテル建設を、
 即刻、中止してもらいたいんです。
 原生林のすぐ側なんです!
 あんなリゾートホテルが建ったら、大美島の自然が、 
 めちゃくちゃになります!」とみづき。
そこへ偶然居合わせた平弁護士(寺田農)は、無償で手伝いを申し出る。

平先生、いいとこありますね〜!

みづきが裁判を起こそうとしていることを知った恭介は、
妻・麗子に、当分自然観察会は控えた方がいいと話す。
「そっか・・。裁判の当事者になるかもしれんもんね。」
「君も麻衣子も、楽しみにしていたのにな。」申し訳なさそうな恭介。
「仕方ないよ。そういう仕事やもん。」

裁判官はもちろん、その家族も、仕事と離れたプライベートにも
こういった規制が出てきてしまうんですね。
本当に大変な職業です。


「数日後、平弁護士の強力で、みづきさんの訴状が提出されました。
 動物の名前は削られ、みづきさんと、建設予定地の近くで暮らす
 住民数名が、原告となりました。」


一方、畑夏海(浅野温子)は、東京の弁護士事務所から、
そのリゾート開発を進める会社に力を貸すよう依頼される。

大美島支部の職員たちの間でも、リゾート計画賛成派、反対派がいた。
居酒屋『里美』で昼食をとりながら意見を交わす。
賛成派の泉書記官(松尾敏伸)は、
「郷土愛あればこそですよ。
 島の未来はお先真っ暗。
 仕事が無いから若者はみんな都会へ出ていってしまう。」と語る。
「でも、リゾート施設が1個出来たくらいで、島の経済が
 明るくなるの?」と鈴元久美子(市川実和子)。
「そうだよ。一部の人間は潤うかもしれないけどさ。」と谷川淳一(的場浩司)。
「大都会から来た、谷川さんにはわからんちば。
 建設作業員、ホテルの従業員、周辺の観光業者、
 ほんの少しでも雇用が増えれば、その小さな一歩が
 もしかしたら大きな発展に繋がるかもしれない。
 そんな、ささやかな、希望にすがって、生きている一対tの
 気持ちなんか・・」と泉。
「でも、それが自然環境破壊するって、
 その建設会社が提訴されたんでしょ?」と久美子。
「でも、開発プロジェクトの責任者は、大美島出身だそうです。
 島への恩返しの為に、環境に優しいリゾート施設を作るって、
 立派な島人ですよ!」と泉。
「甘いのよ、泉さんは。
 はいこれ。大美の大自然が育んだ、とびんにゃ。
 ホテルが建ったらこれ食べれなくなるかもしれんだよ。」
料理を運びに来た里見(国生さゆり)が言う。

ラジオから、みづきのインタビューが流れる。
「私は、高校を卒業して、東京の短大に入り、東京で就職した。
 でも、結局都会には馴染めなくて。
 島にいたころは、それが当たり前だと思っていた。
 でも、島に戻ってきて、大美島の自然の素晴らしさに、
 改めて感動したっちば。
 でも、あのリゾートホテル建設は、この島の自然に、
 島の生き物たちにとって、大きな脅威ちば。
 外来種の昆虫を集めて、放し飼いにする昆虫大国。
 もし、ここから強い外国の昆虫が逃げ出したら、
 大美島の固有の島たちは、どうなるかい。
 ホテルがプライベートビーチにしようとしている砂浜には、
 絶滅危惧種の大美ウミガメが、産卵に来ているのを
 見た人がいるっちょ。
 そして、建設予定地の隣に広がる原生林には、
 天然記念物の、オオミノシマウサギや、オオミカブトムシが
 いるちば!
 この島の自然を、めちゃくちゃにしてしまうようなリゾート施設なんか、
 絶対に、反対ちば!」

三沢家の食卓
麗子から、里見が原告団に入るかもしれないと聞いた恭介は、
「それじゃ里見にも行けなくなるよ・・。」とガッカリ。
娘の麻衣子は、クラスメートのリカとエミが、ホテルのことでケンカを
してしまったと心配する。
「小学生まで・・」と呟く麗子。

リゾートホテルの開発を担当する麓一平(岡田浩暉)が
夏海に挨拶しに来た。
「実は私、大美島出身なんです。
 それもあって、今回のプロジェクトに、抜擢されました。
 地元への恩返しが出来る、チャンスだと思っています!
 畑先生も大美島出身だそうですね。」
「いえ、父が。
 私は東京で生まれて育ちました。」
「そうでしたか。
 でもお父さんが島人でしたら、島人ですよ!」
「はぁ・・」
「わが社は、自然環境には充分配慮しているのに、
 建設さし止め請求だなんて・・。」
「大丈夫です。この手の訴訟ではまず間違いなく請求企画を
 勝ち取れますから、ご安心下さい。」と夏海の後輩・上杉弁護士。
「よろしくお願いします!」
夏海は少し不安そうに麓を見つめる。

麓、ということは、元校長先生の家族?

小学校のブランコに乗るみづき。
そこへ一平がやって来た。
「みづき!久し振り。」
「・・・」
「原告に、みづきの名前を見てびっくりしたよ。」
「私も。開発会社の責任者が、まさか一平兄だなんて。」
「島の為を思ってやったことど!
 わんが島の自然壊すようなことするか!」
「・・・」
「信じてくれんのかい?」
「校長先生は、なんのおじいさんは知ってるの!?」
「もちろん知ってるっちば。」
「何て!?」
「頑張れよって、言ってくれたんだ。」
「・・・」
一平に背を向けるみづき。

麓元校長は、自然を愛する思いと、家族への思いの板ばさみになっているんですね。

リゾートホテル建設差止請求事件
第1回口頭弁論

「原生林は島の宝です。
 本件、リゾートホテル建設によって、山ろくの木々が伐採され、
 また、リゾート施設の営業が始まりますと、 
 車の通行による排気ガスによって、原生林の生態系を含む、
 自然環境が、破壊される恐れがあります。
 そして何より、本件私有地には希少生物が生息している可能性があり、
 本件、リゾートホテルの建設差止を請求するものであります。」

平弁護士の言葉に、ほっとしたように微笑む上杉弁護士。
複雑な表情を浮かべる夏海。

「原告は、環境権に基づく差止請求ということのようですが、
 その他に主張は無いということで、よろしいんですね。」と恭介。
夏海が顔を上げる。
「は・・・ 
 えー、か、環境権は・・認められるべき権利だと、
 私は考えております。」と平。
「そうですか。
 それでは、被告代理人、答弁書の通り、陳述されますね。」
「はい。
 本件、リゾートホテル施設は、環境保護に充分配慮したものであり、
 建設予定地に希少生物が生息するという報告はなく、
 行政上の基準も満たしています。
 また、原告側の個人的な被害ではなく、環境そのものの保全を求める、
 環境権に基づく建設差止は、現行法上認められていません。
 請求の棄却を求めます!」

支部長室
「いい自然環境を守る権利か・・。
 気持はわかるんですけど、環境権は法律的には弱い主張ですよね。
 周辺住民の、生活や財産が直接脅かされるわけでもないし。
 被告の方が、圧倒的に有利ですよね。」と泉。
「うん・・」
「でも、支部長が4ヶ月間にも渡る、審理計画を考えていらしたのは
 意外でした!」
「島に取っては、とても大事な選択だろうから、
 みんなが納得出来る様に、じっくりやった方がいいでしょう。」と恭介。

山道を歩く恭介一家。
友達のケンカに心を痛める麻衣子は、恭介にどうしたらいいか相談する。
「二人とも、島が好きやってことに気付いてくれたらな。」と麗子。
「そうだな。」と恭介。
三人は麓元校長の姿に気づく。

「なぁ先生、ホテルって建てたらあかんの?」と麻衣子。
「麻衣子!」恭介が止める。
「リカちゃんとエミちゃんのケンカ、やめさせたいの。」
「ケンカかぁ。
 この島の自然をなんとしても守りたい子もおれば、
 この島をなんとか豊かにしたいと必死な子もおる。
 どっちもいい子じゃ。
 わしにも、正直言ってどうしていいのかようわからん。
 ずーっと考えておるんじゃが・・やっぱりわからん。」
そう言い、島の景色を見渡す麓元校長。
「水や山んおかげ
 山や水んおかげ

 島のことわざじゃ。
 水は、山に木があるから山に蓄えられる。
 大雨になっても、大洪水にもならなければ田畑も荒らされん。
 山の木が日照り続きでも青々としているのは、地下水のお陰ど。
 持ちつ持たれつのお陰さま。
 人間も、同じど。
 自分ひとりの力で生きているわけじゃないど。」
麓の言葉にうなづく麻衣子。
「水は山のお陰。山は水のお陰。」恭介が繰り返す。

支部長室
書類を調べていた恭介は、被告側が提出した証拠書類のなかで、
建設による原生林の地下水への影響について"ほぼない"という
あいまいな表現であることに目をつける。

第1回弁論準備手続
恭介は原告と被告の双方に地下水への影響の調査を命じる。
その言葉に顔を輝かせる平弁護士。
顔を曇らせる夏海の上杉弁護士。
「裁判所は原告側へ釈明を求めすぎではないでしょうか。
 不公平ではないですか!」
不満を口にする弁護士に、
「原告も被告も、主張の中で地下水について
 全く触れていないわけではありません。
 狭い島での紛争ですから、この点も、解決しておいた方が
 いいのではないでしょうか。
 被告は、調査するつもりはありませんか?」と恭介。
「わかりました。
 次回期日までに詳細な捜査結果を報告いたします。」と夏海。

「その後、原告、被告、双方が独自に捜査を行い、
 一月後の法廷で、両社の意見は真っ向から対立しました。」


第2回弁論準備手続
「地元専門家の意見によると、島では場所によっては
 地下水脈が地層の浅いところにある可能性があります。
 その場合、5階建ての中層マンションなどでも、
 地下水に影響がないとは言えないのであります。」と平弁護士。
「原告の主張はあいまいすぎます!
 我々が依頼した調査会社の結果では、明確に影響なしです!」
と上杉弁護士。
「そうですね・・。」資料を読む恭介。
「我々原告は、地下水に影響の可能性ありとし、
 リゾートホテル建設は、周辺住民の生活を直接脅かすものとして、
 人格権に基づく建設差止の主張を、追加いたします。」
と平弁護士。
「建設予定地の周りで暮らす人たちは、地下水と切っても切れない
 生活をしています。
 ぜひ、その生活を、見ていただきたいんです。
 お願いします。」とみづき。
「わかりました。
 事実上の検証ということで、現地に行くというので、
 被告はいかがですか?」
「結構です。私共も同行いたします。」と夏海。

現地視察する一行。
「研究家の意見書によると、あの山から、こちら地域まで、
 地下水脈が通っているとされているちば。
 この水脈は、地表からかなり近い所まで通っている場所がある、と
 されています。」とみづき。

島の牛は山の水を飲んでいるから良く育つ、と酪農家。

タロイモを地下水を使って育てている、と農家の人。
農家の人たちが配るスイカに手を付けないのは、裁判官としての
姿勢でしょうか。


そこへ、麓元校長がハブにかまれたと連絡が入る。
慌てて病院に駆けつける一平とみづき。
幸い、命に別状はなく、ほっとする二人。
「めんぼくないなー。
 やーのやってる仕事が気になって、建設予定地を歩いてたら、
 オオミカブトムシを捕獲している男がいてや。
 注意しようとしたら、急に逃げ出すもんじゃから、
 藪の中を追いかけたんじゃ。」
「どうしてそんな危ないことしたんですか!」とみづき。
「だってその人がハブに噛まれたら大変じゃろ。
 なんとか止めようと走ったが、このザマじゃ。」
「・・・先生。」
「なあ、やんきゃは兄妹同然じゃろ。
 なんで、兄と妹がいがみ合う。
 なんとか、仲直りの道を探さんか。」
「・・・」

麓元校長は麻衣子と同じ。
二人のいがみ合いに心を痛めていたんですね。


数日後
里見の店で、娘の結の友達の就職祝いが開かれる。
結の進学を恭介に聞かれ、鹿児島の高校を目指している、と里見。
「春になったら結ちゃん、鹿児島に行っちゃうのか。
 里見さん、寂しくなりますね。」と泉。
「合格すればですよ。
 島にいればいいのに、どこの家も同じちば。」
里見が寂しそうに笑う。

結たちが島唄『行きゅんにゃ加那節』を歌いだす。
「行ってしまうんですか、加那。
 私のことなど忘れて、行ってしまうんですか。
 いいえ、あなたのことを思うと、行きたくはないんですけど
 っていう、
 別れの島唄です。」
そう言うと、店の奥でそっと涙を拭う里見。

そんな里見の姿に、
「泉君。私に島の言葉を教えてくれませんか。」と頼む恭介。

「裁判は、年をまたぐことになりました。
 夫はなんとか正月休暇を取ることが出来たのですが。」


東京 駒込
実家でもんじゃ焼きを食べる恭介たち。
「リゾートホテルだかなんだか知らないけど、
 昔から無理が通れば道理が引っ込むって言うけど、
 今のご時世、ごり押しする連中ばっかりが儲ける。
 そんな連中に儲けさせたりしないように、
 しっかり道理通して、
 声の小さい人が損しない様にする。
 それがお前の仕事だよ。」
母・早苗(大山のぶ代)が恭介に言う。

「その頃、島では新年早々大問題が起こっていました。」

一平が夏海の事務所にやって来る。
「一体これは何ですか!!
 地下水脈の調査、別の報告書もあるじゃないですか!!」
夏海が慌てて駆け寄る。
「この調査には、建設予定地が、地層の浅いところを地下水脈が
 走ってて、地下水に影響を与える可能性が高いと書いてある!!
 なぜ隠してたんですか!?」
「いや・・隠してたんじゃなくて・・
 それはかなり詳しい調査で、
 前回の弁論期日に間に合わなかったんです。」と上杉弁護士。
「ごまかさないで下さい!
 これじゃ俺は・・嘘つきだ!!
 こんな計画は、もう中止だ!!」
模型を泣きながら拳で叩く一平。

エレベーターの中
夏海はロケットを開き、自分と父の写真を見つめ・・。

東京エコリゾート興産本社会議室
「こんなもの出せるわけないだろう!」と専務。
「確かにこれを提出すれば、形勢は不利に動くでしょう。
 今後の進行次第では、こちら側の一部敗訴の可能性も出てきます。」
「敗訴だと!?冗談じゃない!
 大美島のリゾート計画はここだけじゃないんだ!
 第二・第三の計画が進行中で、これまでどれだけつぎ込んでいると
 思ってるんだ。」
「専務、アセスメントでは、希少生物はいないって説明していたのに、
 オオミカブトムシが生息していました。」と一平。
「何カブトムシ?それがどうした。」と専務。
「・・・オオミカブトムシは、希少生物です。」と一平。
「だから、それがどうした。」
「我々は、自然環境に配慮していると、今まで散々・・」
「行政の許可は下りているんだ!
 麓君、今更君は何言ってるんだ。
 地元出身だから大抜擢してやったのに。」
「・・・」
「いえ、もしそれが事実なら、原告に、行政訴訟を提起される
 可能性があります。」と夏海。
「行政訴訟?」
「更に怖いのは、開発許可を出した監督官庁から、
 いい加減なアセスメントで信頼関係を破壊したと思われ兼ねない。」
「一体君たちは、どっちの味方なんだ!
 今更計画変更は出来んぞ!」
「この報告書を出さなければこっちが有利です。
 この裁判には勝てます。」と上杉弁護士。
「上杉君。目先の訴訟に勝っても、
 それで本当に依頼者の利益を守ったことになるのかしら。」と夏海。
「どういう意味ですか?」
「畑君、少し控えなさい。」と上司。
「事実を隠して、このまま開発を進めるのは、
 企業として相当のリスクを孕んでいる。
 そう申し上げているんです。
 大美島のようなところでは、地元住民の信頼と強力を得られなければ、
 事業の展開はおぼつかないのではないですか?」と夏海。
「・・・」
「この報告書を提出すれば、裁判所は恐らく、
 和解を勧告してくると思います。
 ここは、計画を変更しても、和解の方向で解決した方が、
 御社にとって、メリットは大きいのではないでしょうか。」
「内容次第だな。」と専務。
「しかし原告が和解に応じるか。
 双方が納得できる和解内容に調整するには、
 裁判官にも相当の力量がいる。
 島の裁判官なんかに、それが出来るのか?」と夏海の上司。
「・・・大丈夫です。きっと。」

島と依頼者の両方を守ろうと考えた夏海は、
恭介に賭けたのですね。


「数日後、報告書は、夫の元に届けられました。」

和解勧告
「先日、被告側から、地下水に影響を与える可能性が高いという
 新たな調査報告書が提出されました。
 この段階で、話し合いによる解決が可能か、双方のご意見を
 伺いたいと思います。」
「被告は、内容次第で和解に応じてもいいと考えております。」と夏海。
「原告は、和解に応じるつもりはありません。」と平。
「わかりました。
 原告側と話してみますので。」
被告側が退席する。

恭介は被告側は嘘をついていたと憤慨する被告側に、
「もし、希少生物の生息が確認出来たとしても、
 それは、建設差止の根拠にはなり得ないんです。
 その場合、アセスメントの手続きが不十分だったとして、
 行政訴訟で別に訴えることは考えられます。
 ただそれは、この裁判の他に、原告がもう一つ別の裁判を
 抱えていくということになります。」
「もう一つの裁判・・・」とみづき。
「しかし、地下水に影響の出る可能性が高いという調査結果は
 出たわけでしょ。」と平弁護士。
「そうですね。
 それは確かに、重要な証拠です。
 ただそれは、あくまで調査結果の一つなんです。
 地下水への影響だけを根拠に、原告の訴えどおり、
 リゾート計画を全て差止に出来るかどうか、
 今後の審議しだいです。
 判決が出るまで、争い続けますか?」
「・・・」
「もし仮に、被告がリゾート建設を諦め、撤退したとしましょう。
 跡地が売り渡され、そのあと、環境への配慮など全く考えない
 会社に買い取られたら。」
「それも・・まずい。」
「どうでしょう。
 そんなリスクを避けて、今ある計画を、地下水への影響がない計画に、
 希少生物への影響もない計画に、確実に変更してもらった方が、
 いいのではないでしょうか。」
「・・・先生。発言したいんですが。」とみづき。
「どうぞ。」と恭介。
「被告が、今ある計画を、変更をするとはとても思えません。」
「それは、今後の和解の話し合い次第だと思います。
 被告側は、自分たちに極めて不利である調査報告書を、
 敢えて出してきました。
 説得できるかもしれません。」
「・・・」
「私は、この島に来て、まだ一年にもなりませんが、
 やっとこの島のことがわかりかけてきました。
 この島の自然は、本当に素晴らしいです。
 しかし、島民が生活する以上、産業や経済も無視は出来ない。
 それは、原告も充分ご承知と思います。
 島の自然を、島を愛する心を、次の世代に伝えていくには
 どうしたらいいのか、慎重に考えてみませんか?
 みんなで一緒に、知恵を絞ってみませんか?」

「夫の説得に、みづきさん達原告側も応じてくれました。
 和解への扉が開かれたのです。
 夫はそれから猛勉強を始めました。
 和解案の為に集めた、山のような資料に夜中まで没頭し、
 休日には、島の人たちの暮らしを訪ね歩いて。
 第1回の、和解期日を迎えました。」


和解期日
「このエリアが、被告所有地です。
 ここに、このように、地下水脈が浅く通っているとされています。
 この付近に、建物を建てるのは避けましょう。
 それから、原生林の、この奥のエリアには、オオミノシマウサギが
 生息している可能性がありますので、この丘を削って建設予定地に
 するのは避け、影響の少ない、このエリアを、建設予定地として
 整備することにしましょう。
 それから、当初の計画にあった、リゾートのシンボルである、
 昆虫王国は、外来種が逃げ出す危険がありますので、
 建設を中止しましょう。」
「中止・・ですか。」と一平。
「そうです。
 全体は、こういう配置で、出来るだけ低く、
 二階建てまでの建物にして、
 あ、それから、ウミガメが来る可能性のある海岸は、
 それを保護して、観光資源にしましょう。
 ウミガメが来る村なんて、行ってみたいですよ。」
「ほー!」喜ぶ原告団。夏海も感心したように恭介を見つめる。
「今、ローカルな文化を体験するというリゾートのあり方が、
 注目されているようです。
 コンセプトは、かつて、自然と動物と人間が共存していたような、
 島の暮らしを体験できるようなリゾート施設というのはどうでしょう。」
「本当に、そういう施設に変更できるんですか?」とみづき。
「もちろん、これはあくまで素人が考えたイメージです。
 ですが、当初プランの三分の二の主用人数は、確保できているはずです。
 これがビジネスとして成立するか、計画の変更は可能か、
 被告側の検討をお願いしなければなりません。
 いかがでしょう。」
「・・・」

パソコンに何かを打ち込む麗子。
「ママ!リカちゃんとエミちゃんが遊びに来るって!」
「二人、仲直りしたの?」
「うん!」
「良かったなぁ!」
「でも、ほんま大変やわ。裁判官は。」
娘の一言に吹き出す麗子。

『こうして夫の若い案は、原告、被告、双方の人たちから
 真剣に検討されました。
 そして、和解案をどうのように具体化できるのか、
 建設計画の修正が繰り返されました。
 何度かの和解期日が重ねられ・・・』

「よろしいんじゃ、ないでしょうか。」と平弁護士。
「これで、結構です。」と夏海。
「それではこれで、和解が成立しました。
 和解条項は、判決と同様の効力がありますので、
 双方とも、しっかり守るようにして下さい。」
「ご尽力、感謝します。」と平。
「こちらこそ。」と夏海。

恭介は、原告側、被告側が笑顔で挨拶を交わしている姿に足を止める。

「民事裁判で、双方が納得して和解が成立した時ほど、
 充実感を感じることはない、と夫は言ったことがあります。
 争いを終えた人たちには、新しい明日が来るのです。」


出来上がったパンフレットを楽しそうに見つめる大美島支部の職員たち。
「今、田舎暮らしはブームだが、実際に引っ越して暮らすのは
 やっぱ大変ど。
 でもここなら、移住してきた気分でのんびり家族と過ごせそうじゃ。」
と野見山(小野武彦)。
「都会の人にとって、南の島にちょっとしたふるさとが出来たって
 感じになるといいやね。」と久美子。
「ま、これはこれで、いいんだけどや。」と野見山。
「なんですか?」
「一年以上の未済事件ゼロに目指すって、支部長、鼻息荒かったけど、
 まだ半分は残ってんぞ。」
「半分も減った、でしょ!」と久美子。
「でもや。」
「事件には、一つ一つ違う顔があるんです。
 早くやるべき事件もあれば、
 じっくりやるべき事件もあるんですよ。」と瀬戸。
「・・・それもしかして、支部長の受け売り!」

里見がシーカヤック大会のチラシを配る。
「前の支部長は結局一度も参加せずに、転勤しちゃったな。」と野見山。
「三沢支部長はきっと参加されますよ。」と瀬戸。

支部長室
泉に島言葉の指導を受ける恭介。

商店街で買物をしていた三沢一家。
麻衣子は翔太(土井洋輝)に気付き声をかける。
添田 博(藤木勇人)も一緒だった。
島に来て、一番最初に取り扱った事件・・・。
博が恭介に近づいてくる。
家族を守るように前に歩み出る恭介。
「・・・お陰さまで、仮出所しました。」
「おめでとうございます。」
「初めて塀の中に入って、堪えたです。
 もう、二度と入りたくないと、心底そう思ったんです。」
「そうですか。」ほっとする恭介。
「女房子どもと、一緒にいられることが、こんなに幸せだなんて、
 初めて、身に染みました。
 本当に、ありがとうございました。」
添田の妻も恭平に会釈をし、翔太も笑顔を浮かべて見つめている。
「添田さん・・・すっとこれ。」
恭介の言葉に微笑む添田。
「覚えたての島言葉です。」
添田はもう1度深くお辞儀をし、家族の元へと戻っていった。

「翔太君良かったね。」と麻衣子。
「そうやね。」と麗子。
恭介は、幸せそうな三人の後姿をしばらく見つめ・・・。

海岸で島言葉を勉強する恭介。
そこへ夏海がやって来た。
「変な裁判官!」
「そうですか?」
「今日、東京の法律事務所に退職願出してきたの。」
「それじゃあ・・」
「このまま島に残って、父の事務所を引き継ぐことに決めたわ。」
「そうですか。」
「人を守る仕事だと思って弁護士になったけど、
 ずるくて強欲な依頼者もいるし、
 お金の為に、白を黒だって平気で主張する弁護士もいるし。
 正直・・・うんざりしてた。
 父が亡くなったとき、島に私を呼んでくれたような気がした。
 島に来て、暫く休めって。
 そしたら、不器用で変な裁判官に出会った。」
「私のことですか?」
「この島に裁判官は一人でしょ。」
「・・・」
「その裁判官は、一生懸命だからこそ不器用なんだってわかった。
 人の心の痛みをわかろうとして、もがいているように見えた。」
「それはあなただって・・
 畑先生がいなかったら、今回の和解はなかったかもしれません。 
 ありがとうございました。」
頭を下げる恭介に、夏海が笑い出す。
「弁護士にお礼を言う裁判官なんていないわよ。
 やっぱり変な裁判官!」
夏海が去っていく姿を見つめながら微笑を浮かべる恭介。

貸金請求事件
「池端さん、毎月貰う年金の中で、月いくらぐらいなら
 島谷さんに返せそうですか?」と恭介。
「まあ、1万円ぐらいやったらなんとか。」
年金手帳を見ながら池端が答える。
「月に一万!?200万戻すには何年かかるか!
 やーは戻す気はないちば!」と島谷。
「そんなことないちば!」
「まーまー、二人とも小さい頃からの幼馴染でしょう!
 これからもずっと、お付き合いされていくんですから、
 お互い、相手の立場になって考えませんか?
 ちゅーてーねいがるーてーねい。
 人助けが自分助けじゃないですか。」
「ほっげー!」と島谷。
「裁判長、島言葉を覚えたんかい?」と池端。
「今、泉さんに特訓受けているんです。」
「ほっげー!難しいだろ?」
「難しいや。」
「わしで良かったら、いつでも教えるど!」
「ありがとうございます。
 続けましょうか。」

「こうして、池端さんが、月々の年金から1万円を返済。
 10年がかりで、120万円を返すということで、
 和解が成立したのでした。
 10年後には、島谷おばあちゃんは90歳になるのですが、
 島の人は、長生きなのです。」


『これでもう、ここへ来なくて良くなったのかぁ・・・』
『「楽しみ」がなくなったよ・・・』
『そうだ!!またあんたにお金を貸そうか!?』
『ああ!そうだね!!
 また「楽しみ」ができたね!』
島言葉で楽しそうに会話する二人。

庭で伸びをする恭介。麗子がコーヒーを持ってきた。
「ありがとう。」
「お疲れ様。」
「はい。
 最近いっつも何か書いてるね。」
「ちょっとね。」
「何書いているの?」
「島に来てからのこと。
 島に来るまでの事。
 私達家族のこと。」
「ふーん。」
「私ね、別居した時、あなたに対する、不満ばっかりやった。
 でもよう考えてみたら、その半分は、自分に対する苛立ちだったような
 気がして。
 ごめんなさい。」
「・・・いや。俺も、自分の仕事のことしか考えてなかったから。」
「でも、今は、私や麻衣子に、ちゃんと向き合って話してくれる。
 ありがとう。」
「・・・」
「早いね。島に来て、もう一年か。」
「いろいろいあったけど、あっという間だったな。」
「あと一年あるわよ!」
「そうだな。すっとごれだ。」
「?」
「島言葉でね、歯を食いしばれ、なにくそ頑張るぞって意味らしい。」
「すっとごれ!」
「すっとごれー!」

※一部公式HPあらすじを引用しました。



ラストはオールキャストで参加のシーカヤック大会。

麗子の語りは、麗子がパソコンに綴っていたんですね。
島に来て、夫と、夫の仕事を見つめているうちに、
自分の心に湧いてきた思いを、書き留めてみたくなったのでしょう。

人間と自然の共存。
自然を出来るだけ今のままの形に残し、島をも潤わせる。
今、実際に島が抱える問題ですよね。

恭介は時間をじっくりとかけて考え、そして今の島にとって
一番の答えを出しました。
スピーディーをモットーとしていた頃の恭介からは考えられない。
島が、彼を変えた。そして彼が島を救った。

添田ファミリーのその後も描かれていて大満足。
あの時の判決に一時は恭介を恨んだ添田ファミリーでしたが、
刑務所に入ったことで、添田は幸せの意味を再確認することが
出来ました。

島の美しい映像と、切ないメロディーの音楽。
島の人々や三沢ファミリーに癒されるドラマでした。
裁判官という仕事についても考えさせられました。
いいドラマだった〜!


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4043871015ジャッジ―島の裁判官奮闘記 (角川文庫 ん 26-1)中園 健司 角川書店 2007-10by G-Tools



エンディングテーマ
B000VUSILW種をまく日々中孝介 エピックレコードジャパン 2007-11-14by G-Tools



キャスト

三沢恭介(36歳)…西島秀俊
三沢麗子(33歳)…戸田菜穂
三沢麻衣子(8歳)・・・桝岡明

野見山修(56歳)…小野武彦(大美島支部の主任書記官)
谷川淳一(36歳)…的場浩司 (家裁調査官)
鈴元久美子(28歳)…市川実和子(書記官)

泉 孝之・・・松尾敏伸(書記官)
瀬戸幸彦・・・橋爪 遼

塚本隆史・・・北村有起哉
水谷恵子・・・安 めぐみ(小学校教師)

島谷マツ・・・菅井きん
池端忠一・・・梅津栄

平田  透・・・博多華丸
平田かおり・・・重泉充香
平田  悟・・・堺 翔太
悟の祖母 ・・・路井恵美子

添田 博・・・藤木勇人
添田美那・・・八田麻住
添田翔太・・・土井洋輝

検事・・・村上かず
紬工場社長・・・南条好輝

大阪地裁・裁判長・・・山西 惇
大阪地裁・所長・・・芝本 正

夏海の父(写真)・・・鈴木瑞穂

池田里見(40歳)…国生さゆり(居酒屋『里美』の女将。官舎の町内会長)
池田結・・・坂口あずさ

三沢早苗・・・大山のぶ代

平正明(68歳)…寺田農(島の弁護士)

畑夏海(43歳)…浅野温子(敏腕弁護士)


第二話ゲスト
牧竜一・・・森田直幸
牧芳子・・・千堂あきほ


第三話ゲスト
安田判事・・・利重 剛
坂井判事補・・・野波 麻帆
検事・・・村上かず
大郷信正・・・河原さぶ
本田勝男・・・平井昌一
本田弘樹・・・津田寛治
本田磯子・・・中原ひとみ


第四話ゲスト
新城瞳・・・ソニン
白井宇一・・・尾美としのり

第五話ゲスト
麓元校長・・・
新元みづき・・・遠藤久美子
麓一平・・・岡田浩暉
上杉弁護士


スタッフ
脚本:中園健司
検出:本木一博
   櫻井 賢
   大原 拓
音楽:羽毛田丈史



西島秀俊さんの主な出演作品



浅野温子さんの主な出演作品
この記事へのコメント
最終回、とても盛りだくさんでしたね。
最初から見ていたのですが、全五回ではもったいないくらいとてもいいドラマでした。
裁判官という仕事の大変さが少しだけ分かった気がします。

最後の夏海のセリフ「東京の弁護士事務所を辞めた」
これには驚きましたが、この終わり方はすごく良かったです!

ノベライズ本も出ているのですが、とてもいいのでぜひお読みになってください。
Posted by anriko at 2007年11月11日 20:51
ちーずさんこんばんは、凄く良いドラマにめぐり合えました!派手な演出もないし凝った作りでもないけど暖まりました〜弁護士や検事の正義感や被告の感情のドラマは色々観て来ましたが裁判官を掘り下げたドラマに家族愛が絡まるのは初めてかも!鶴太郎さんの「家裁の人」も好きで観ていましたが少し裁判官として上から見守る感じだったかな?島に馴染む努力をした恭介が好印象でした!

今回の事件も恭介の大岡裁判が見事でした!きっと昔の恭介は得意分野だったのでしょうね?それでも自分で歩いて情報を得たり仕事人間に戻って色々な勉強をして和解案を模索する姿に驚嘆しました、本当に大変な仕事なのですね!現実社会でもこのような方がいるのを望みます!

麗子の語りは島に渡ってからの手記だったのですね!自分で書いていて自分の傲慢さに気づいたのでしょうか?この設定がなかったら軸がぶれたかも?麻衣子も友達の喧嘩に一役かったのかな?

夏海と恭介のアイコンタクトも信頼関係が出来ていて良かった〜夏海の企業に対する利益、不利益を語るのは本当に皆が考えていく問題ですね!

添田さんが近づくなか麻衣子と麗子を守る姿が本当のあり方なのでしょうね!判決に怨みを残さない添田親子に感動!この島にはそんな事はすぐ忘れられる暖かさがありますね!

しかし婆ちゃん爺ちゃんは暇つぶしだったのか〜恭介を休ませてやれ〜ラストのカヤックや水の湧き出るカットにいやされました!
Posted by けた at 2007年11月11日 21:00
こんにちは、ちーずさん。
ほんといいドラマでした。裁判物は大好きなジャンルなのですが、裁判官からの視点というのは初めてです。

西島さん、素敵な役者さんですね。正直、アンフェアのときは無口な変人という感じで
さっぱり良さがわからなかったのですが、今回ははまり役ですよね。

リゾート開発で犠牲になった例として、沖縄西表島のとある海岸を思い出しました。
ホテル建設の影響で、海亀の産卵地でもあった美しい浜は、今や見る影もない
さびれた海岸となっています。
地元の一部の店では、ホテルの宿泊客を入店拒否するなど、環境破壊だけでなく、
地元住民とホテルの間に今も禍根を残すこととなっています。
西表にも恭介のような裁判官や夏海のような弁護士がいれば今のようにならなかったかもしれないと思うと胸が痛みます。

このドラマはこうした前向な解決の可能性もあるのだと、希望をくれました。
利権だけでない、皆で地域や地球を大切にしようという世の中になってほしいです!
Posted by つき at 2007年11月12日 09:12
ちーずさん、忙しい中ご苦労様でした。
土曜ドラマのシリーズの中でも、白眉のドラマだったように思います。西島さんの持ち味が、生きていました。
エリートコースを歩んできた裁判官が、小さな南の島に来て、そこにいる人たちを見下すのでなく、理解して尊重しようとする姿に、本当にうれしくなりました。現実には、あまりに逆のことが多いと思うので、ドラマにはぜひこんな風に、「夢」を描いてもらいたいです。

このごろ、少々南の島が多すぎるような気がします。できたら、普通の山の中の田舎の村とかも、舞台にしてほしいのですが、青い海…とかないと映えないのかなぁ。
Posted by やすこ at 2007年11月15日 21:46
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・「ジャッジ・島の裁判官奮闘記」第5話(最終回)(1/2)
Excerpt: <br />2007年11月10日(土)21時から、NHKで、「ジャッジ・島の裁判官奮闘記」第5話最終回(「島人」(シマッチュ))が、放送されました。(ドラマは、全5回です)<br />ドラマ終わってしまいました。。。まだま..
Weblog: たまちゃんのドラマページ
Tracked: 2007-11-13 23:23