2008年05月25日

トップセールス 第7回

『バブル』

「1986年、バブル景気が始まった頃、
 日本の自動車メーカーは、次々と海外に工場を建設していました。
 性能のいい日本車は人気が高く、
 アメリカでは、売れる車の5台に1台は、日本車と言われました。
 一方、国内では消費ブームによって、高級輸入車が
 売り上げを伸ばしていました。
 そんな時代に私は、SuB東京に、転職したのです。」


1986年11月
久子はSuBでも成績を伸ばし、ライバルのセールスマン・
末長(金子昇)はそんな久子の一生懸命さに惹かれていく。

ある日の休みの日、久子は劇場と美術館を2件はしごし、
その後、カラーコーディネーターの講習。
車のセールスを1から勉強しようと思ってのことだった。

「転職して半年、目の肥えたお客様と接するには、
 美しいものに触れて自分を磨くこと。
 遠回りでも、それがセールスへの道を開くと、
 私は考えたのです。」
ミヤケ自動車インディアナ工場
「インディアナ工場で作った車の販売網は、ほぼ、計画通りに
 出来上がりました。
 これから、適正な生産台数を維持するために、
 営業と、生産管理の連携を、蜜にしていってください。」と柴田(椎名桔平)。
「わかりました。」と部下の山川(パク・ソヒ)。
「しっかりした販売体制を敷いていただいたお陰で、
 生産計画が立てやすくなりました。
 柴田課長のお陰です。」と工場長。
「いえ。みなさんの努力の成果です。」
「工場を立ち上げた頃は、部品もろくに揃わなくて。
 本当にやっていけるのか、正直不安でした。」
「ここまで来るのに5年か・・。
 山川さん、日本人スタッフは、順次帰国していきます。
 これからは、現地スタッフの力で、頑張って下さい。」
「はい!」

現地スタッフが柴田に花束を持ってきてくれた。
『柴田課長、お世話になりました。
 日本に戻ってもお元気で。』
「Thank you.」
『私達の工場にはすてきなスローガーンができました。』
『すてきなスローガン?』
『柴田さんがいつも口にしていた言葉です。』
『何ですか?』
『クルマは乗る人の未来をつくる』
(A car creates the future for those who ride in.)
『いい言葉を残してくれてありがとう。』
『ありがとう。みんなも元気で。』

アメリカに来たばかりの頃、現地の職を失った人に
暴力を振るわれてしまった柴田でしたが、
5年後、彼は現地の人たちに感謝されていました。


『真理子が日本に帰ると寂しくなるわ。』
『いろいろありがとうございました。
 楽しい5年間でした。』と真理子(石田ひかり)。
『ご主人、日本に帰ったら少しのんびりできるの?
 こっちでは出張続きだったでしょう。』
『帰国しても変わらないと思います。
 仕事が好きな人ですから。』
『香織ちゃんも元気でね。』
「Thank you!」

SuB展示場
赤いスーツに身を包み、クルマの説明する久子。
「こちらの車で、今ごろの箱根を走りますと、
 とっても気持ちがいいんですよ!」
「箱根か。そろそろ紅葉だな。」と客。
「はい!いい音楽をかけながら、箱根の坂を走りますでしょう?
 風景と音楽とスピードがぴったりと調和した時にはもう、
 まるで、車ごと紅葉の中をぱーって飛び込んでいくようなんです。」
「まあ!牧野さんのお洋服、まるで紅葉のような色合いね!」と客の妻。
「どうぞ!お乗りになってみて下さい!」

その様子を見ていた上司と末長。
「自分の世界にお客を巻き込んでいってしまうことにかけちゃ、
 彼女はちょっとした天才だなー。」
「ええ。」
「君もうかうかしていると、抜かれちまうぞ。」
上司にそう言われた末長は、微笑みを浮かべて久子を見つめる。

成績表の前に立つ末長。
トップは末長、久子は一台差の2位。
そこへ久子がやって来た。
「とうとう追いつめたわよ、たった今。
 一台ご契約いただきました。」
「月末までに一気に加速して、引き離しますよ!」
「ターボエンジンじゃあるまいし。
 あー、もしかして、引き出しの中に、注文書、隠し持ってるとか!?」
「そんな卑怯な真似すると思いますか?」

「またやってるよ、あの二人。」
「仲がいいんだか、悪いんだか。」
みんなが笑う。

「洋服の色を武器にするやり方は、男には真似できませんからねー!
 あ、でも、紅葉の葉っぱをイメージさせるのも結構ですが、
 もっと、車の性能や、技術の高さをアピールした方が。」と末長。
「山道を走って心地いいのは、走りが静かで加速が良くて、
 サスペンションやステアリングがしっかりしているから。
 もちろん、エンジンにパワーがあってこそだけど。
 でも、そんなことはカタログに書いてある。
 私は、お客様に走ることの楽しさを、お伝えしたいの。
 Don't think, feel!」
「・・・は?」
「考えるな、感じろ。
 ブルース・リーの名言よ!」
「知ってます!
 よーし、そっちが洋服の色で勝負なら、男はネクタイだ。
 明日から、秋色のネクタイで勝負しますよ!」
「いいんじゃないの?ま、頑張って!
 アチョー!」
立ち去る久子の背中に優しく微笑む末長。

そんな中、久子に大森(山口馬木也)から電話が入る。
「もしもし吾郎?
 この間はありがとう、お客様を紹介してくれて。」
「これからそっちにお客さん回すからよろしくな。」
「あらまた?」
「一番高いの売りつけろよ。金は持ってる人だから。」
「・・・」

「1987年1月、株価は史上初めて2万円を突破。
 勢いに乗った日本企業は、豊かな資金力に物を言わせ、
 海外の不動産や名画を買いあさっていました。
 吾郎のいるミツダ・インターナショナルも、
 莫大な資金の融資を受けて、
 高級リゾートの買収や、ゴルフ場の開発を次々と手がけ、
 急成長を遂げていました。」


ミツダ・インターナショナル社長室
「社長、お呼びでしょうか。」と大森。
村上亮介(風間トオル)は金をアルミケースに移し返すと、
電話中の満田(剣持直明)に挨拶をし、社長室を出ていく。
「大森君。車を回してください。
 小遣いを配りにいきますよ。」と社長。
「かしこまりました。」
「君も一緒にね。あれ持って。」

第1話、第2話に登場した村上が持ってきたお金を、
満田はどこかに配りにいくようです。


「先生には是非うちのゴルフ場の会員になっていただきたいのです。」と満田。
「いやもう軽井沢の方のカントリークラブに入っているからね。」
「先生が会員にお名前を連ねて下さると、うちもハクがつくんですが。
 ゴルフ会員権は1年も持っていれば、5倍や10倍の値が付きますよ。
 私が保証します。」
満田の合図に大森が動く。
「いや、開発許可の件は、私のほうで根回し出来ないこともないが。
 何人かに、頭下げなきゃいかんからね。」
「先生の事務所は殺風景でいかんですな。
 どうです?一つ、いい絵でも飾ってみては。」
「そうね。まあ絵の事はよくわからんのだが。」
政治家の正面にある鏡に、大森がアルミケースから出した金を
机の引き出しに入れているのが映っている。
「親しくしている外商をこちらによこしましょう。
 ゴルフの会員権と絵画は、今買っておかないと後悔しますよ、先生。」

SuBに大森の紹介した客がやって来る。
「やっぱりセダンがいいなー。
 5リッターぐらいの、でかくて、見栄えのいいやつ。」
「・・はい。」
「いくら?」
「お見積もりしましょう。」
「さーっとでいいよ。」
「はい。
 そのクラスですと、1120万円ほどです。
 まず、車のご説明を、」
「説明は、いい。
 オプションで、カーオーディオの高いやつ付けて。
 もちろん、純正品で、見栄えのいいのをね。」
「・・・はい。」

事務所
「サンドイッチです。晩飯まだ食ってないんでしょう?」
末長が差し入れを持ってやってきた。
「ありがとう!
 コーヒー入れるわ。」
「すみません。」
「こんな時間まで外回ってたの?」
「槙野さんには負けられませんからね。
 どうせまだ残業してるだろうなーって思ったら、
 案の定でした。」
「オプションのご希望の多いお客様でね、手間取っちゃったのよ。」
「不動産関係の人ですって?」
「ええ。」
「意外だなー。槙野さんがそういう人脈を掴んでたなんて。」
「友達の紹介。
 ミツダ・インターナショナルに務めてるの。」
「ミツダって、リゾート開発の?
 海外のホテルやゴルフ場を次々と買収して、話題になっている。」
「そう。友達そこの秘書室にいてね。
 社長の側近らしいよ。」
「そりゃすごいな。」
「お客様紹介してくれるのは嬉しいんだけど・・
 説明はいらない、ハクのつく車くれなんて仰られるとね、
 ちょっとがっくりくる。」
「成功の証ですからね、うちの車。
 取り分け、フラッグシップモデルに乗るというのは。」
「お客様のこと、こんな風に言うの嫌なんだけど、
 車に対する思いが、ちっとも感じられないのよね。」
「・・・」
「あ、末長さん、ここに来る前は、製薬会社で働いていたんですって?」
「病院を回って、新薬の説明をしていました。
 その時の医療関係の人脈が、そのまま今のお客さんになっています。」
「ふーん!だからお金持ちのお得意様が多いのね!」
「高額な輸入車を扱うわけですから、やはり、富裕層を狙わないことには。」
「・・・そうかな。
 手ごろな価格のモデルなら、私達みたいな普通の会社員だって、
 頑張れば手が届くでしょう?」
「低価格モデルは利益が薄いですよ。」
「数を売ればいいのよ。
 グレードの高い車を1台売る間に、手ごろなモデルを3台。
 これで釣り合う。」
「確かに。」
「私、うちの車が大好きなの。
 乗れば乗るほど好きになる!
 だからね、特別なお金持ちだけじゃなくて、
 車が好きな、普通の人たちに、SuBで走る楽しさを
 もっともっと伝えたいと思ってる。」
「・・・奇麗事ですね。」
「え?」
「理想論ですよ、それは。」
「そうよ。だって、仕事に理想がなかったらつまらないでしょう!」
「・・・」
「車を売ることは、お客様の未来を一緒に作ること。
 この仕事を始めた時から、私はずっとそう思ってる。」
「・・・」

柴田と久子、遠く離れていても、
二人の中にある信念は今でも一緒です。


通産省 機械情報政策局
「お疲れ様です!」
高村(大沢健)が部署に戻ると、みんなが立ち上がって迎える。
「長かったですね、法令審査委員会。」
「延々12時間だよ。」と高村。
「どうなりました?
 日本の半導体が不当に安いとアメリカが訴えてきた件。」
「実態調査をするそうだ。」
「しかし理不尽な話ですね。 
 要はアメリカの半導体をもっと買えってごり押ししているわけでしょう?」
「ああ。」
「こんな押し売り貿易、国際ルール違反としてガットに訴えるべきですよ!」
「そうですよ!」と部下たち。
「でも問題は・・半導体協定を結んだ時に、日本が挙げた数値目標だ。」
「数値目標ですか?」
「米国製品の日本での視野、20%に増やすと約束しただろう?」
「でもそれはあくまで努力目標と言うことで、」
「そんな甘い考え通じるものか。
 数値目標は公約も同じだ。
 達成するまでは製品をねじ込まれるさ。
 ・・・またも、外圧に屈して市場開放だ。
 これじゃあケンカ官庁の名が泣くぞ!」
「班長・・」
「・・・次に狙われるのは、また自動車かもしれないな。」

ミヤケ自動車本社
浜崎常務(益岡徹)と挨拶する柴田。
「君のアメリカでの販売体制作り、なかなか見事だったそうだね。」
「ありがとうございます!」と柴田。
「購買部への異動は、自分から希望したんだって?」
「ええ。インディアナで部品調達の重要性を、改めて認識しました。」
「そう。」
「1万種類以上の部品が、必要なときに必要なだけ揃う。
 日本にいた時には、それが当たり前だと思っていました。
 しかし、アメリカでは、とてもそうはいかず。」
「ミヤケ系列の部品は、QCD、つまり、
 quality(品質) cost(価格) delivery(輸送)
 3拍子揃った一級品だからな。
 僕も購買部で部品の調達をやった経験があるからよくわかるよ。」
「はい。生産も販売も全てが安定した部品の供給が前提ということに、
 気がつきました。」
「そのとおりだ。
 だがな、これからはQCDも、優先順位がつくぞ。
 コストが最優先だよ。
 なんせこの円高で輸出が大打撃だからね。
 徹底したコストダウンの為に,今後はアジアの安い部品を、
 どんどん買い付けていかなくちゃな。」
「しかし、常務。それじゃあ国内の部品産業は・・
 空洞化するんじゃないでしょうか。」
「メーカーが潰れちゃ空洞化も何もありゃせんじゃないか。
 円高が1円進めば、うちは年間経常利益で60億の損失だ。
 わかるな?」
「はい。」
「下請けには一律5%の値下げを要求している。
 君も、購買部次長として、コスト削減に尽力してくれ。
 絞れるだけ絞れ。頼むぞ、柴田君。」

「株価も、土地の値段も、上がり続けていました。
 バブルの熱気に煽られるように、誰もが派手に遊び、消費を続ける中、
 時代は、昭和から平成へと移っていきました。」


1989年12月、とある豪華レストラン。
「ね・・私達浮いてない?」と久子。
「吾郎の指定だからな、この店。」と高村。
「ヤキトリ屋とか居酒屋でいいのにね。」
「よう!」「ご無沙汰してます!」
柴田と真理子がやって来た。
「お久し振り!」
「吾郎は?」と柴田。
「まだだよ。招集した本人が遅れてる。」と高村。
「この辺りずいぶん変わったのね!
 昔は何もない倉庫街だったのに!」と真理子。
「今はベイエリアって言うのよ。最新スポットなんだから。」と久子。

「大森様の、お連れ様ですね。
 先に、ご注文を承っておくようにと、申し付かっております。
 ワインリストでございます。」

メニューを覗き込んだ4人はその料金に固まる。

「よう!悪いね送れて。」大森がやって来た。
「大森様、いらっしゃいませ。
 お待ち申しあげておりました。」と店員。
「なに?これから注文?
 じゃあワインのいいやつ適当に頼むよ。
 あ、その前に、シャンパンで乾杯だ。
 ピンクはあるよね?」
「ご用意してございます。」
「ちょっと・・」と久子。
「いいからいいからじゃあすぐ持ってきて。」
「かしこまりました。どうぞ、ごゆっくり。」

「ちょっと・・そんな高いお酒・・」と真理子。
「大丈夫。ここはうちのグループの店だから。
 今日の払いは俺が持つ。
 みんな、どんどん好きなもの頼めよ。」
「いいよ、ワリカンで。」と高村。
「バカ言うな、呼びつけておいて金が取れるか。
 遠慮すんなよ、役人の安月給はよく知ってるから。」と大森。
「・・・」
「な、高村。お前課長に昇進したんだって?」
「ああ。貿易振興局の、輸入管理課だ。」
「順調に出世コースを歩んでるってわけだな。
 よ!未来の通産省事務次官!」
「・・・」

「香織ちゃんは?元気?」と久子。
「うん!近頃は家のことも手伝ってくれるし、
 女の子はいいわよ。」
「来年は中学生か。」と大森。
「うん。」
「早いもんだな。」と大森。
「仕事は?どうだ?」柴田が久子に効く。
「うん。今年は記録的な売り上げ。
 吾郎の協力のお陰もあってね。
 お客様、沢山紹介してくれたの。」
「悪いな、柴田。そっちに紹介出来なくて。
 俺の周りさ、外車じゃなきゃ車じゃないっていうやつが
 やたらと多くてさ。」
「・・・槙野はもう、SuB東京のトップセールスの一人なんだろ?」と高村。
「うん、お陰さまで!」
「紹介した客の間でも、お前評判いいぞ。」と大森。
「相変わらず頑張ってんな!」と柴田。
「まあね!」
「チャコ、結婚は?」と真理子。
「え・・」
「自分でしっかり稼いでんだ。
 今更結婚なんてバカらしいんだろ。」と大森。
「そんなことないけど。」
「でも、子ども生むんだったらそろそろ・・ね!」と真理子。
「仕事って、やっただけの手ごたえがあるでしょう?
 つい夢中になっちゃうのよ。
 働いていると毎日があっという間で。」
「・・・」複雑な表情を浮かべる真理子。
「な、柴田。お前ワンルームマンション買う気ないか?」と大森。
「え?」
「ミヤケ自動車はいくら大企業でも、サラリーマンの給料じゃ
 一戸建てにはちょっと手が届かないだろう。」と大森。
「アメリカから帰ってきたらこれだものね。
 向こう行くにおうち買って置いたらよかったね。」と真理子。
「だからワンルームマンションさ。
 うちで扱ってる物件安く仲介してやるよ。
 まだまだ値が上がるぞ。
 今買って、上がりきったところで売れば、
 一戸建てを買う資金た出来る。」
「そういう登記目当ての不動産売買が、値上がりに拍車を
 かけるんだよ。」と高村。
「いまどき登記をやらないのは、目端の利かないバカだけさ。
 一流企業だって、財務担当者はみんな財テクに励んでる。
 そうだよな、柴田。」
「・・・」
「金借りて、金融商品にぶちこんでおけば、働くより儲かるんだ。
 金が金を生むのさ。
 コツコツやるヤツはご苦労さん、ってな。」
「こんな景気・・いつまでも続くわけないだろ。」
「そういうのを高所恐怖症って言うんだよ。」と大森。
「何だよそれ。」と高村。
「高値が続くと不安になる、
 値下がりしたらどうしよう、損したらどうしようってな。
 ビクビクすんなよ。1995年には、株価は8万円にまで上がるぞ。」
「8万円!?」と久子。
「専門家の先生方がそう予測しているんだ。
 確かな話さ。
 ま、どんどん飲めよ。
 帰りのことは心配すんな。ちゃんとタクシー券用意してるから。
 飲んで飲んで。
 いくらすると思ってんだよ。」
「・・・」

4人がいる店に、偶然末長が女性に連れられてやって来る。

「ワインもうないな。
 おい。」追加しようとする大森。
「じゃあ・・俺たちそろそろ。
 香織も待ってるし。」と柴田。
「ああ、そうか。じゃあ、ちょっと待って。
 タクシー券タクシー券。」
「これ、二人分。足りるか?」
「金はいいって言ってんだろ。」
「お前の会社に奢ってもらう理由はないよ。」
「俺に恥かかすなよ。」
「・・なあ吾郎。あんまり無茶すんなよ。
 景気がいいのは結構だが、お前なんだか危なっかしいぞ。」
「ミツダグループについちゃ、良くない噂を耳にしてる。
 気をつけろ。
 政治家も、役人も、金で躍らされる人間ばかりじゃないんだ。」と高村。
「あんまり心配させるな。」と柴田。
「嫉妬か?」と大森。
「え?」
「お前ら俺に嫉妬してるんだろう。」
「吾郎!」と久子。
「何言ってんだよ。」と柴田。
「正直に言えよ。
 上手いことやりやがってって思ってんだろ?」と大森。
「酔ってんのか?」と高村。
「お前らいい友達だよ。
 俺が、お前らより下にいる限りはな。」
「・・・」
「悔しいんだろ。一段も二段も下にいたはずの俺が、
 お前らよりもでっかい金を動かしている。
 何倍も稼いでる。
 こんなはずはない、そう思ってるんだろ。」
「いい加減にしろよ吾郎。」と柴田。
「なあ、俺の何が心配だって言うんだよ。
 お前みたいに大企業でぬくぬくやって来たヤツとはワケが違う。
 這い上がってきたんだよ俺は!”」
「よせ。」高村が止める。
「偉そうだな!通産省!
 お前らが何やってる、アメリカに尻尾振って機嫌とってるだけだろうが!
 親方日の丸小役人のくせに。」
その言葉に高村が大森に掴みかかり、大森が高村を突き飛ばす。
「高村君!」久子が助け起こす。
「よせよ!」柴田が大森を抑える。

店中が4人に注目する。
「槙野さん!」カウンター席に座っていた末長が気づく。

大森のポケベルが鳴る。
「・・・俺は会社戻るわ。
 良かったらお前らゆっくりしていけよ。
 あ、俺さ、今度結婚するから。
 来年の春。
 相手一回りしたの若い女。
 モデル上がりでさ、なかなかいい女なんだよ。
 やっぱり、女も金次第だな。
 結婚式、うちの会社でやってるタヒチのリゾートで挙げるから
 良かったら来てくれよ。
 旅費は俺が持つし。」
「行かないわ。
 私達そんなところにはいかない。」
真理子の言葉に大森は悲しそうな表情を浮かべ・・・。

公園で高村の手当てをする久子。
「大丈夫?」
「吾郎の肘がまともに当たった。」
「いい年してケンカなんて・・。」
「ごめん。ついカっとなって。」
「大丈夫かな吾郎・・あんなこと考えてたんだね。」
「男同士っていうのはしょうがないものだよ。
 誰が一番か、どっちが上か、序列をつけないと気が済まない。
 官僚の世界がいい例さ。
 トップになるのは同期で一人だけ。
 事務次官になるたった一人が決まれば、
 あとは全員役所を出る。
 なんだか猿山みたいだな。」
「・・・」
「正直言うと・・見下してた、吾郎のこと。」
「高村君・・」
「あいつを軽く見てた。
 自分が勝負する相手として、認めていなかった。
 俺な、昔から柴田には、どこかで一歩譲ってしまうところがあるんだ。
 その分、吾郎を見て安心していたのかもしれない。
 あいつには勝てる、そう思ってた。
 20年も友達面して、本音はこんなものだ。」
「・・一緒よ。
 どこかで勝ち負けを考えているもの。私と真理子も。
 比べあって、自分の方が相手よりも勝ってるところを見つけると、
 少しほっとする。
 嫌らしいよね。」
「・・・」
「でもね、心配しているのも本当。
 幸せになってほしいって願っているのも本当。
 面倒なものよ、女同士も。」
「・・・」
「あー、少し腫れてきちゃった。
 大丈夫かな明日仕事。」
「大丈夫だろう。」
「触っちゃダメよ!」

女性と共に店を出て来た末長が、久子の姿に再び気がつく。
「槙野さん!」
「あ!」
末長が高村を見る。
「友達の高村君。」久子が紹介する。
「どうも。」
会釈しあう二人。
「じゃあ、明日会社で。」
「うん。」

「・・・友達の、高村君・・か。
 それ以上を望むのは・・やっぱり無理かな。」
「・・・ごめん。」
「謝るなよ。」

有限会社八代製作所
「柴田さん!わざわざどうmO!
 親父!本社の柴田さんだよ!!」
「ああ、こんな所まで足運んでもらってすみませんね!」
「いいえ。お世話になっていますから。」
「うちみたいな下請けに顔出してくれるのは、柴田さんだけですよ。」
「どうですか、調子は。」
「おかげさまでこの好景気で増産につぐ増産でしょ。
 もう忙しくて忙しくて、なあ親父!」
「悪いね、納期がキツくて。」と柴田。
「とんでもない!
 少しキツくたって仕事が増えれば大歓迎ですよ!
 マシンも一つ増やすことにしたんで。」
「大丈夫?資金の方は。」
「銀行が、借りてくれ借りてくれってうるさいくらいだよ。
 そんな融資してくれるなら、いっそのこと工場も新しく
 しようかな、なんてね。」息子が嬉しそうに笑う。
「夢みたいなこと言いやがって。」と父。
「水差すなよー。俺が事業計画考えてるんだから。
 こういう時に工場を大きくしなくてどうするんだよ。
 ね!柴田さん!」
「ま、あまり無理しないで。」
工場には外国人の労働者たちが働いている。
「就職も売り手史上でしょう?
 うちみたいな下請けの下請けには日本人は来てくれなくて。」
「さ、仕事に戻って。
 忙しいところ、邪魔するといけないから。」と柴田。
「すみません、失礼します。
 言葉通じなくて大変!!」

「二代目、張り切ってますね。」と柴田。
「ちょっと前まで、こんなちっぽけな下請け工場、閉めちゃおうなんて
 言ってたんですけどね。
 さ、一つ、お茶どうぞ。
 円高のあおりで、うちも随分買い叩かれて、厳しかったから。」
「ご苦労をおかけしました。」
「いや、今みたいに注文が多ければ、単価は多少安くても、
 やっていけるんで。」
「しかし、親父さんも、一安心ですね。
 息子さんが工場を継いでくれて。」
「どうだかな。
 こんな、お祭りみたいな景気、いつまで続くんでしょうかね。
 何十年もこの仕事やっていますが、銀行に金貸してくれって
 頭を下げることはあっても、向こうから借りてくれって
 頼んできたことなんか、ありゃしませんでした。
 なんだか、おっかねーような気がしてね。
 ああ、本社の方じゃ、また新しく、工場作るんですって?」
「ええ。」
「息子のヤツ、すごい設備の工場が出来るから、
 きっとまた増産で、下請けも忙しくなるぞなんて。」
「売れてますからね、今。
 それも、値段の高いモデルが、目だっていい売れ行きで。」
「でかい、高い車ばっかり売れるっていうのは、どういうんですかね。
 日本の車、安くて小さいのが自慢だったのに。」
「・・・」
「いやあこんなこと言うと・・親父は夢が無いって息子に笑われるけど。
 細々でいいんですよ。この工場でやっていけりゃ、それで・・。」
「・・・」

SuB東京
「末長君には年明け早々から、世田谷支店に店長として行って貰う
 ことになりました。
 うちの店は厳しくなりますが、みんなで、盛り上げていきましょう!」
「はい!」
「年末まで残りわずかですが、よろしくお願いいたします。」
末長の言葉に拍手を送る社員たち。
久子は寂しそうに末長を見つめていたが、やがて笑顔で拍手を送る。

末長を追いかける久子。
「おい若造!裏でどんな手使った?
 33歳で店長だなんておかしいじゃないか。」
「え!?」
「冗談よ。おめでとう!良かったね!」
「どうも。」
「立派な成績上げてるんだもの。抜擢されて当然よ。
 頑張ってね!応援してるから。」
「ありがとうございます。」
一度車に乗り込んだ末長が降りてきた。
「あなたに負けたくなかったんですよ。
 ここに来た日に、挑戦状を受け取ったでしょう?
 参りましたよ。1年後には、言葉どおり、僕の前年度の記録を
 塗り替えたんですから。」
「でも、末長さんはそれ以上売って、悔しいけど、結局私の負けでした。」
「当たり前です!僕が、そう簡単に破られるわけがない!」
「その鼻っ柱いつかへし折ってやる!」
そう言い笑いあう二人。
「お祝いに、今度奢るね!」

プレゼントにネクタイを購入する久子。
「あ・・槙野さん!」
「村上さん!!」

二人は喫茶店で話をする。
「丁度良かった。一度ショールームに伺おうと思っていました。」
「もしかして、買い替えをお考えなんですか?」
「私達も、そろそろ、SuBの車に乗ってもいい頃かと思いまして。」
「もちろんです!
 村上さん、帝都信用組合城西支店の、支店長に就任された
 そうですね!」
「よく、ご存知ですね。」
「村上さんは、私の一番最初のお客様です!
 あれからずっと、私から車を買ってくださって。」
「次も槙野さんにお願いしようと、家内とも話していたんですが。
 実は、ミツダ・インターナショナルの大森室長にも勧められまして。」
「え・・」
「高校の、同級生だそうですね。」
「どうして村上さんが吾郎・・大森さんを・・」
「帝都信組の理事長が、ミツダ・インターナショナルの
 満田社長なんです。」
「そうでしたか・・。」
「資金不足に陥った時に、有力な預金者を大勢紹介してくれましてね。
 その縁で、3年前に理事長に就任されたんですよ。
 仕事柄、私も社長をお訪ねする機会があって、
 それで、社長室長の大森さんと。
 とにかく、大変なやり手ですよ、満田社長は。」
「アジアのリゾート王と言われているようですね。」
「ええ。
 自家用ジェットで世界中を飛び回っては、
 次々と新しいリゾートの開発をしています。」
「自家用ジェット・・」
「あ、私はそろそろ。」
「ここは私が。
 では、ご都合のよいときに、カタログを持ってご自宅に伺います。」
「お願いします。
 ショールームを覗く時間、なかなかないものですから。」
「金融関係の方はみなさんお忙しくてらっしゃいますから。」
「・・・しかし、大変な時代になったものですよ。
 金の動きが早すぎる。
 何が起きているのか・・私達にも掴みきれません。」
「・・・」

バー
「メシ、ご馳走になったから、ここは僕がおごりますよ。」と末長。
「有り金全部使わせるわよー。」と久子。
「どうぞどうぞ!
 ボーナスもしっかり出ましたし、ビクともしません!」
「ね、今日の東証の大納会、いくらで引けたか聞いた?」
「3万8915円87銭。」
「すごい高値だよね、びっくりしちゃった。」
「ええ。」
「実はね、この間、友達同志が株価の話やなにかで、
 ちょっと揉めてね。
 例の、ミツダ・インターナショナルの人と、
 もう一人は、この間の夜、一緒にいた人。
 彼、高校の同級生で、通産省のお役人なの。
 こんな景気、長くは続かないって通産省は言うんだけど、
 それもそうよね。
 うちの好調な売り上げも、いつまでも続かないのかな。」
「景気がどうであれ、本物を求めるお客様は必ずいます。
 大切なのは、今のうちにお客様とのつながりを、
 深めておくことですよ。」
「そうね!」
「しかし、色気の無い会話だ。」
「え?」
「二人きりで飲んでるのに、話題が日本の景気どうこうですから。」
「・・・」
「俺たち、一応デート中ですよね。」
「・・・」
周りを見渡すとカップルばかり。
「デートなんて100年早い!」と言いながら動揺を隠す久子。
「これだもんなー。」
「あ、そうだ。」
久子がプレゼントを渡そうとする。
その時、末長のポケベルが鳴る。
「すみません、ちょっと電話してきます。」

店を出た二人。
プリンセス・プリンセスの歌を口ずさみながら歩く久子。
「・・・槙野さん。」
「え?」
「この間の人、槙野さんの恋人ですか?」
「誰のこと?」
「公園に一緒にいた、通産省のお役人。
 槙野さん、レストランでもあの人のこと庇ってましたよね。」
「見てたの!?」
「・・・渡したくないなー。あの人には。」
「え?」
「・・・付き合って下さい。僕と。
 お願いします。」
「・・・急に何?からかってるの?」
「いえ、本気で言ってます!」
「ちょっと・・ちょっと待って。
 末長さん、酔ってるのよね。」
「酔ってこんな話はしません。」
「私あなたよりずーっと年上よ。」
「知ってます。」
「だったら、」
「だったら何?」
「・・・」
末長が久子の方に手を置く。
その時末長のポケベルが鳴る。
「あ、ポケベル。」と久子。
「・・・」
「ねえ鳴ってる。」
「いいんです。」
久子を抱き寄せようとする末長。
その手から逃げる久子。
「・・・もう。真面目な顔して。
 本気にするじゃない。」
「え・・」
「彼女からでしょう?今のポケベル。
 この間の夜の人?それとも別の人?
 末長さんモテそうだもんね。」
「槙野さん!僕は本気で、」
「いい加減にしないと怒るわよ。」
「・・・」
「試しに、ちょっと付き合ってみようかなーなんて、
 そんなこと、気軽に出来る年じゃないの。
 末長さんと私が?似合わない全然似合わない。」
「・・・」
「つい乗せられて、真剣になっちゃった。
 危ない危ない!
 引っかからないわよ、そんなドッキリには。」
末長が名刺を差し出す。
『1987年4月1日
 103台』
と書かれた名刺。
「これ・・あの時の・・」と久子。
「お返しします。」
「え?」
「あなたに負けたくなかったのは、僕と言う人間を、
 認めてほしかったからです。」
「・・・」
「認められていると、うぬぼれてもいました。
 笑い飛ばされるとは・・思ってなかった。」
「・・・」
末長は久子の手に名刺を残してその場を去る。
「・・・ずっと持ってたんだ・・。
 末長さん?」
慌てて末長を追うが、久子は若者たちにぶつかり、
持っていたプレゼントは踏みつけられてしまう。
「・・・酷い。何するのよ。
 ・・・渡せないじゃない・・もう・・。」
悲しそうに呟く久子・・。

大晦日
アベベの大掃除をする久子たち。
テーブルが傷だらけなことを気にする久子、
「イスと机、そろそろ買い換えようか。
 思い切ってリフォームする?
 壁と床も張り替えて。」
「あんまり今風にしないでよ。
 俺たちが落ち着かなくなるから。」
「古い店でいいんだよ。どうせ客も古いんだから。」
と常連客たち。
「やってる人間も古くて申し訳ありませんねー。」
首を激しく横に振る二人。

カウンターで酒を飲む久子と光枝。
「今年も二人で、アベベで年越しか。」と久子。
「ハワイでも行こうか。芸能人みたいに。」と光枝。
「知ってる?960万人だって。今年海外に行った人の数。」
「日本人も金持ちになったもんだ。」
「一緒に行こうか、海外旅行。」
「え・・」
「いいでしょ!世間並みに海外旅行ぐらい行ったって。
 ずーっと働いてきたんだし。
 お母さんも、そろそろ骨休みしなきゃね。
 旅費は私が出すから。」
「何よ急に。」
「少しは悪いなーって思ってるの。」
「何が?」
「毎年二人きりの年越しで。
 孫の顔も見せられないし。」
「・・・」
「・・いいかなーっと思った人がいたんだけどね、
 私その人に、酷いこと言っちゃって。」
「・・・見合いでもしますかー。」
「は?」
「探しましょうか?見合いの相手。」
「何で今更見合いなのよー。」
「自力じゃ、ひとりも捕まえられそうにないから。」
「失礼ねー。」
「海の向こうにでも探しに行く?
 あ!あー。それで海外旅行だ!」
「誰がそんな下心で!
 もう何よ。せっかく親孝行しようって気になったのに。」
「何が親孝行だ。
 骨休みしろだなんて、人を隠居みたいに。」
「あーあ、すみませんでした。
 もう二度と旅行には誘いません。」
「世間並みかどうかより、大事なことがあるでしょ?」
「え?」
「あんたはね、自分が一番大切だと思うことを、
 一生懸命やり続ければいいの。」
「・・・」
「あれもこれも上手くやろうとか、世間並みになろうとか、
 そんなこと考えなくていい。
 あんたは不器用なんだから。」
「・・・誰に似たのかなー。」
「お父さんよ・・」
「こんな時だけお父さん持ち出して、」
「しーっ。」
除夜の鐘が聞こえてきた。
「除夜の鐘、毎年聞くけど、煩悩って消えないよねー。」
「消える端から、また生まれてくるのよ。
 だから毎年、鐘つくんじゃないの?」
「なるほどね!」
鐘の音に聞き入る二人。

「翌年、1990年の春、吾郎の結婚を知らせるハガキが届きました。
 景気が陰りを見せ始め、土地の値段を抑えるために
 不動産への融資を規制する政策が取られました。」


ミツダ・インターナショナル
「どういうつもりでしょうね、大蔵省も。
 土地への融資を規制するとは。
 株価が急落している時ですよ。
 今こんなことをされては、景気はいっきに冷え切ってしまいます。」と社長。
「金融機関からの資金調達、これから難しくなりますね。」と大森。
満田が大森に新聞を投げつける。
「難しいどころの話か!!
 金が作れなくなるぞ!
 何のために政治家や役人に小遣いばら撒いてきたと思ってるんだ!
 お前!!
 もっと早く情報をつかめなかったのか!!」
大森に掴みかかる満田。
「・・・申し訳ありません。」
「役立たずが。
 ・・・もういい。財務担当役員を呼べ!!
 まだ打つ手はある。くっそ!潰されてたまるか!!」

「融資の規制は、不動産価格を急落させ、景気は失速していきました。
 バブルが崩壊し、乱脈融資の実態が表面化して、
 金融機関は信用を失っていったのです。」


1991年4月
無担保で180億円ミツダに融資したことで、帝都信組世田谷支店に
マスコミが殺到する。

ミツダ・インターナショナル
「新聞記事は大蔵省が意図的にリークしたものです。
 大蔵と日銀の陰謀ですよ。 
 帝都信組の金を流出させて、うちの資金源を断つ気ですね・・。 
 心配はいりません。まだまだ大丈夫です。
 裏金利を引き上げて大口預金者を繋ぎましょう。
 そうだ。開発を見合わせたゴルフ場の会員権、あれ使おう。
 金はまだまだいくらでも作れますよ。」
そう言い笑う満田社長の言葉を黙って聞く大森。

「満田社長の資金源だった、帝都信用組合は、破綻して、
 金融再生機構の下に、置かれました。」


1991年9月
「ミツダ・インターナショナルは、4千億円もの不良債権を抱えて、
 倒産。
 満田社長は、背任と贈賄の容疑で、逮捕されたのです。」


柴田は大森の家に電話をかけてみる。
「本当にご存知ないんですか?吾郎がどこにいるのか。」
「わからないって言ってるでしょう!?
 実家にでも隠れてるんじゃないの!?」
「実家には戻っていません。
 吾郎が連絡を取るとすれば、あなたのところしか。」
「いい加減にして下さい!
 マンションの前にもマスコミが群がってるし、
 頭が変になりそう!」
「しっかりして下さい、奥さん。
 もし、何か連絡があったら、私に、知らせてもらえませんか?
 電話番号は、」
「もう別れますから。」
「え?」
「このマンションだって債権者にむしりとられるし。
 あの人離婚届に判を押して送ってきたんで。
 私別れます!」
妻はそう言い電話を切ってしまう。

「わからない?吾郎の居場所。」と真理子。
「離婚するって。」
「え!?」
「奥さんパニック状態だ。
 まあまだ若いし、無理もないか。」
「こんな時に見捨てるなんて・・。」
「吾郎が事情聴取されたのがショックだったんだろうな・・。
 新聞にも雑誌にも、書きたてられたから。
 でも大丈夫だ。槙野も高村も、いろいろ当たってるから。」
「どうしてあんなこと言っちゃったんだろう・・。」
真理子は結婚式に誘われた時、
『行かないわ。私達そんなところには行かない。』と言った事を
気にしていた。
「あんな切り捨てるような言い方して・・。
 連絡くれないの、私のせいかもしれない。」
「よせよそんな風に考えるのは。」
「・・・」
「そうだ。昔の記者仲間に当たってみるか。
 経済ジャーナルの時の名刺、まだどっかにあったよな。」
「吾郎はもう帰って来ないのかな・・。
 私達のところには・・。」
「・・・」

喫茶店
「多恵さんは、どうしていらっしゃいますか?」
久子が村上に聞く。
「私より、よほど元気で、パートに出ています。
 やけに張り切っていて。」
「そうですか。」
「パパがやっと家に戻ってきたって・・あいつ・・。」
「ずっとお忙しくていらしたから。」
「忙しい忙しいで走り続けて・・
 結局、信組から切り捨てられました。
 ・・・仕方ありませんよ。
 上からの指示とはいえ、不正に手を貸したんですからね。」
「・・・」
「家内が、言うんですよ。
 あの時、家が流されたと思えばいいって。」
「あの・・台風のときですか?」
「あの時、何もかも失くしたと思って、またはじめればいい。
 そう言うんですよ。
 女の方が、強いですね、こういう時は。
 出直しますよ。家族と一緒に。
 まだまだ、人生長いです〜ね。」
「ええ!」村岡の笑顔に久子も微笑む。

SuB東京
「店長!お客様がお見えになっています。」
「・・・」
「店長!」
「はい!今いきます!」久子が返事をする。

「この年の秋、私はSuB東京中央店を任せられることになりました。
 女性が店長になるのは、初めてのことでした。」


※一部公式HPあらすじを引用しました。


大森、柴田、高村。真理子と久子。
仲のいい5人だからこそ、自分と相手を比べてしまう。
どちらが幸せなのか考えてしまう。

久し振りに会った5人が、久子の仕事の話で盛り上がっている時、
その話の流れをぶった切るように真理子は久子に結婚は?と
問いかけました。
「仕事って、やっただけの手ごたえがあるでしょう?
 つい夢中になっちゃうのよ。
 働いていると毎日があっという間で。」
久子が笑顔でこう答えると、真理子は表情を曇らせました。
自分は久子に持っていない、結婚、家庭という幸せを持っている。
真理子はそう思っていて、
自分には夢中になれる仕事がある、そう久子は思っている。

友達と自分を比較するのは悲しい気がしますが、
でも、わかるような気がします。
みんな、迷いながら生きているから、つい確認したくなって
しまうんですよね。これでいいのかって。
それに、仲がいいからこそ、相手の存在が気になる。

村岡には逞しく支えてくれる妻の存在があって、
全てを失っても彼は笑顔を浮かべることが出来ました。
姿を消してしまった大森は大丈夫なのか!?
若い妻は大森を支えようとは思っていないようです。
次週予告には葬儀のシーンがあるようです・・。

不器用な久子の恋。
多分好意を持っていた末長からの突然の告白に、
久子は動揺しすぎて、茶化してしまった。
末長がもう一押ししてくれれば・・久子も素直に答えられたかも。
仕事は充分過ぎるほど頑張っていて、成果も出している久子。
この時代、仕事も結婚も、と両方望むのは今よりももっと
難しいことだったのかもしれません。

次週、最終回!



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【キャスト】

槙野久子(夏川結衣)
昭和24年生まれ。
10歳のときに、父が借金を背負い失踪。母・光枝に女手一つで
育てられる。高校卒業後、一流企業の興亜化繊のOLとなるが
不文律の定年25歳を前に居場所を失う。
一生懸命働ける場所を求めて、自動車セールスの世界へ。
「女に車が売れるはずがない」という常識を覆して
トップセールスマンに成長する。
のちに外資系の輸入車ディーラーに転職。社長へと上りつめていく。

柴田隆男(椎名桔平)
久子の幼なじみ。
高校時代、久子の気持ちに気づかず、仲間の一人・真理子と
つきあい始め結婚。
大学卒業後、ミヤケ自動車(メーカー)に就職。
ディーラーに出向しているときに久子と同じエリアの担当になる。
メーカーに戻ってからは、アメリカ勤務をへて購買部次長として
部品の購入やコスト管理を担当。
平成7年、日米自動車協議の時には渉外担当として通産省の方針と対立する。

柴田(野沢)真理子(石田ひかり)
久子の高校時代の同級生。
久子と隆男が実は互いに想いをよせていることを知りながら、
久子に隆男との仲をとりもつように頼んだ。
結婚式で久子たち同級生と再会し、再び不安になるが、その想いを
封じ込め幸せな家庭を作るために努力する。
人形づくりにめざめ、次第に生きがいを見いだしていく

大森吾郎(山口馬木也)
高校の同級生。
明るい人柄で仲間の潤滑油的存在だが、マドンナだった真理子に
恋心をいだいていた。
一浪一留して小さな経済関係の出版社に就職。
取材で知り合ったミツダ電子の社長に見込まれ秘書に転職。
ミツダ電子はバブル景気にのって急成長し、のちに贈賄事件と
不正融資事件で転落の道をたどる。

高村雅之(大沢健)
高校の同級生。
東大法学部を卒業し、通産省のキャリア官僚となる。
久子のことをずっと思い続けていて、独り者を通している、
日米自動車協議では、WTOに提訴しようとする対米強硬派の
一翼を担い、メーカーを守ろうとする隆男を対立する。

槙野光枝(十朱幸代)
久子の母。
料理屋の娘だったが、仲買人として店に出入りしていた久子の父・
浩太郎と駆け落ち同然で結婚。
久子が10歳のとき、浩太郎が借金を抱えて失踪してからは行商を
しながら久子を育て上げた。
小さなお好み焼き屋「アベベ」を開き、久子の仲間たちのたまり場に
なっていた。愚痴は言うのも聞くのも大嫌い。久子のよき手本である。

槙野浩太郎(石橋蓮司)
久子の父。
青物の仲買人をしていて、幼い久子をよく市場につれていった。
久子が商売を好むのはその影響。
失踪する前に、車を購入し、最初に久子を乗せる。
そのたった一度のドライブの感動が、久子が車のセールスを始める
きっかけとなる。
久子がトップセールスの表彰をうけた記事を見て、再び久子の前に現れる。

岡野英二(蟹江敬三)
久子が働くミヤケモータース城南営業所の所長。
特攻基地の整備兵として終戦を迎えた。
セールスの現場にいたころは、「一日に一台車を売る男」として
有名だった。
人を見る目は確かで、組織作りにも岡野なりの信念がある。
久子は父のように慕う。

谷口克彦(鈴木一真)
ミヤケモータース城南営業所不動のトップセールスマン。
ひたすら売り上げを上げるべく、信念をもってセールスに励む男。
久子とは営業方法が違い、対立することもあるが、次第に認め合う
間柄になっていく。

藤山邦子(梅沢昌代)
ミヤケモータース城南営業所経理担当。
営業所のことは全て知っている。岡野も邦子には頭があがらない。
戦争未亡人で、働く女性の先輩。
久子には好意的で何かと味方になってくれる。

中野晴美(佐藤仁美)
ミヤケモータース城南営業所の事務担当。
適当な年齢で結婚相手を見つけて主婦になりたいと願っていて、
働きまくる久子を敵視している。谷口を思い続けている。

佐々木義男(塩野谷正幸)
営業所の古参セールスマン。
「すっぽん」どあだ名される粘り腰で、好成績をあげている。

森達郎(櫻井章喜)
営業所のセールスマン。
いつも成績は最低レベルだが、全く気にしないお調子者。

阿部幸雄(塩谷瞬)
久子と同期中途入社の気弱なセールスマン。
ぜんそくを患ってきた母を思い、売りにくい排ガス規制対策車を
売ろうとするがうまくいかない。

営業マネージャー・相川(モロ師岡)

八重(秋野暢子)
浩太郎(石橋蓮司)
幸田留美子(浅見れいな)
部長(磯部勉)
三澤(山本龍ニ)
北川(上田耕一)
笠井(上杉陽一)
細谷(細見大輔)
ヒロ山川(パク・ソヒ)
末長智史(金子昇)
満田恵介(剣持直明)
浜崎常務(益岡徹)


【スタッフ】
作…山本むつみ
音楽…栗山和樹
主題歌…「孤独の向こう」平原綾香
演出…吉村芳之 西谷真一(NHKエンタープライズ)
制作統括…岩谷可奈子(NHKエンタープライズ)



夏川結衣さんの主な出演作品


この記事へのコメント
ちーずさんこんばんは、早足でしたがバブルの仕組みがみえた回でした、自分はバブルの恩恵を受けた記憶がないのが職種や元になる財産や借り入れる勇気もなかったが原因だったのが判りました!一ヶ月で潰した中古外車の高いローンを払っていたときかな?これを買ったのもバブルなのかな〜下取りした中古の軽自動車を3万円で先輩に譲ってもらった頃かな〜こんなところにメスを入れる展開になるとは…

末永の告白を笑うようなかたちで茶化した久子が本気だと知って追いかけるシーンがアラフォーにかぶって見えました!追いついたオンナと追いつかなかったオンナの結末に期待です!先週懸念したユーザー層の違いにも久子なりの勉強で克服する姿がたくましいです、店長になり実力主義の外資系の考え方で支社長に登りつめる久子、岡野の教えを海外でも教訓とする柴田が素晴らしいです、色々な出来事がありましたが人間関係の大切さが上手く描かれた脚本です、久子が真理子とのライバル意識を語るのが女性の本音をみた気がしました!高村の変わらぬ愛もストーカーで片付けるのは嫌かな!

ドラマをほとんど観ない友人もこのドラマは観ているみたいで電話のあと家にきた程ハマッテいるのが嬉しいです!職業訓練校の自動車整備科で知り合った仲なので話はハズみましたがお酒も進んで話の内容を二人とも覚えてないのが残念なやつらですが…
Posted by けた at 2008年05月25日 20:43
今回はバブルに焦点を当てていましたね。
描かれていた1991年がどんな年だったかちょっと検索してみると、ドラマでは「東京ラブストーリー」「もう誰も愛さない」「101回目のプロポーズ」「ヴァンサンカン結婚」あたりが放映された年だったようです。初期のトレンディドラマですよね。でもじつはバブルは崩壊し始めていた時期なんですね。日本が豊かになったらしいことは知っていたけど、実感はしていなかった時代です。完成した都庁を車窓から見ながらバイトに通っていた時代ですわ。なんで自分は豊かさを享受できないのかな〜って思いながら日々を過ごしていましたね。
スカラインとかセリカとかシルヴィアとかユーノスロードスターとか、国産車に熱狂した頃でもあります。でも学生にそんな車を買えるわけもなく、ウソでも時代について行こうと多少必死だったかな?でももうあんな時代は要らない、と偉そうに言ったところで、あれから何年も経つのに相変わらずほんとうの豊かさを知らない自分に愕然とします。
Posted by マンデリン at 2008年05月25日 23:38
けたさん、マンデリンさん、こんにちは。
いつもありがとうございます!

私も自分がバブルの頃何をしていたのか思い返して
みたんですが、学生→社会人→結婚→出産と
めまぐるしく環境が変化していました。
親元から独立する、という時期だったので、
それ程バブルは関係ありませんでしたが、
それでもすんなり就職できたのは景気のお陰なのかな。

マンデリンさんの仰る"ほんとうの豊かさ"という言葉に
考えさせられます。

けたさんの、"残念なやつら"が微笑ましい!
楽しいお酒だったんだろうな〜!
Posted by ちーず at 2008年05月26日 10:19
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