2009年08月02日

リミット−刑事の現場2− 第4話

『もう一人の悪魔』

暗い、深い水の中。
光の方を目指して必死に手足を動かして進もうとする・・・。

そんな夢から飛び起きる啓吾(森山未来)。

テーブルの上には、茉莉亜(加藤あい)の置手紙。
『ごめんなさい』
と一言だけ書き残し、茉莉亜は姿を消していた。
電話も通じなかった。

「茉莉亜は俺の事を愛している?
 彼よりも俺の事を愛している?」

茉莉亜に言ってしまった言葉・・。

「自分の彼女のことさえ信じられないヤツが何を言ってるんだよ。
 奇麗事ばっかり言って!」

ストーカー弁護士・植田(甲本雅裕)の言葉。

「世の中、自分しか愛していないのに、
 人を愛していると勘違いしているヤツが、多すぎる。」

梅木(武田鉄矢)の言葉。

啓吾は悲嘆に暮れながら、色んな言葉を思い浮かべ・・・。一方、梅木は18年前に恋人を殺し服役していた黒川(ARATA)の
出所を知り、復讐を実行しようと刑務所の前で待ち伏せていた。

ところが、やって来たのは東野(杉本哲太)。
「・・・どういうことだ。」
「あなたが殺そうとしている男ならここにはいませんよ。」
「何?」
「黒川真治は昨日出所しました。」
「・・・」
「言ったはずですよ。これからはどんな手段を使っても
 あなたを止めるって!」
「ヤツをどこに隠した。」
「もう名古屋には戻ってくるなと言ってあります。
 二度とあなたの目に触れないように。」
梅木は東野に掴みかかる。
「テメー!」
「いい加減に目を覚まして下さい、梅さん!
 あなたは刑事なんですよ!
 あなたを犯罪者なんかにしたくないんです!」
「・・・お前と話している暇はない。
 俺は一人でも探す!」
そう言い立ち去ろうとする梅木あったが、東野の部下に捕まってしまう。

警察署
刑事に両脇を抱えられて連れてこられた梅木に、
啓吾や薫(若村麻由美)は驚きを隠せない。
最後まで抵抗を続ける梅木の腹に太宰(伊武雅刀)が思い切りパンチを
浴びせる。
「何が復讐だ!少しは俺達のことを考えろ!」

取調室
「二度と復讐なんてバカな真似などしないと誓約書を書いて下さい。
 それまで、この部屋から出ることは許さない。」と東野。
紙とペンを振り払う黒木。
「・・俺の言うことなど二度と聞く気はないってことですか?
 どうせ、あなたの婚約者が殺されたのは俺のせいだと思っているんでしょう?」
「・・・」
「確かに18年前、黒川の部屋に事情聴取に行ったとき、
 あなたが彼女を救おうと踏み込もうとしたのを俺は令状を取るべき
 だって止めました。」
「・・・」
「・・正直、今でも考えます。
 もし自分が、あんなことしなかえれば彼女は助かったかもしれないって。
 だから今まで、あなたが色々無茶やってきたのを許してきた。
 周りに色々言われても、何とか庇ってきた。
 いつか、元の・・俺が尊敬していた梅さんに戻ってくれると信じて。」
「・・・」
「でももう・・これ以上無理だ。
 あなたには愛想が尽きた!」
東野はそう言い捨て出ていってしまう。

東野は刑事達に梅木と会うことを禁じるが、
薫は怪我の手当てを理由に取調室を訪れる。
「手当てしようか?」
「・・・」
「はい、座って!」
素直に従う梅木に、香はイチゴジュースを渡すと手当てを始める。
「梅さん・・考えたんだけどさ。
 もし私が、死んだ彼女だったら・・なんていうかなーと思って。」
「・・・」
「本当に・・・復讐なんかしてほしいのかな。」
「・・・」
「私は彼女じゃないからそんなこと、考えてもしょうがないんだけどね!」
「・・・」

薫の気持ちは少しは梅木に届いたのでしょうか。

ロッカールーム
携帯を見つめる啓吾。
「加藤君!」薫が声を掛ける。
「・・はい!」
「これ、梅さんから。」
薫は啓吾に大きな封筒を渡す。
「何ですか?これ。」
「あんたと話がしたいんだって、梅さん。」
「・・・」

取調室前では伊坂(細田よしひこ)が見張っていた。
薫は伊坂が止めるのを聞かずに、取調室隣りのガラス窓の部屋に
啓吾を連れていく。
「大丈夫!伊坂君のせいにはしないから!」

啓吾は電話を使って梅木と話をする。
「加藤です。」
「資料を見たか?」
「見ました。」
「黒川真治を探してくれ。
 そこに書いてある住所のどこかにいるはずだ。」
「・・・」
「おい!聞こえてんのか!?」
「もう復讐なんてどうでもいいじゃないですか。」
「・・・」
「黒川ってやつも、罪はちゃんと反省して、
 模範囚だったみたいじゃないですか。」
「お前の大好きな罪を憎んで人を憎まずってヤツか!ふん。」
「だったら何ですか?」
「そんな悠長なこと言ってる場合じゃないんだよ。
 ヤツは必ずやる!
 だから、探してくれ!」
「・・もう止めてもらえませんか?」
「・・・」
「あなたのせいでこっちがどれだけ迷惑かかっているか
 わかっているんですか?
 茉莉亜だってあんなこと言われなきゃ・・」

「あんたの愛する男を殺した男を、許したのか?」
梅木に問われて戸惑う茉莉亜の顔を思い出す二人。

「彼女と何かあったのか?」
「・・・あなたには関係ないでしょう。
 これ以上俺達を巻き込まないで下さい。」
啓吾はそう言い、受話器を置く。

啓吾が刑事課に戻ると、薫が声を掛ける。
「どうだった?」と薫。
「この黒川って男を捜して欲しいそうです。」
「・・どうするの?」
「・・・」
その時啓吾の携帯が鳴り、啓吾は席を外す。

「もしもし?」
「啓吾?」電話は茉莉亜からだった。
茉莉亜は恋人の墓地にいた。
「ごめん。突然出てったりして。」
「どこにいるんだよ?」
「啓吾、お願いがあるの。」
「何?」
「彼をひき逃げした犯人がどこの刑務所に入っているのか、
 調べてもらえないかな。」
「・・・」
「お願い。」
「ごめん。規則で教えられないことになってるから。
 ごめんね。」
「・・・」
「なあ茉莉亜。帰って来いよ。
 前の彼氏を忘れられないなんて、しょうがないんだし。
 俺は、全然気にしてないから。」
「・・・」
「なあ、頼むよ。」
「ごめん。今は無理なの。」
「なあ・・なあわかってんのか?
 お腹に俺達の子供もいるんだよ!」
「・・・ごめんね啓吾。
 自分でも混乱しているの。
 どうしたらいいのか・・よくわからないの。
 だから・・少し時間をくれないかな。」
「あのさ・・」
電話は切れてしまう。

茉莉亜は恋人の墓地の前でしゃがみ込み・・。
そのすぐ側を、花束を持った男(ARATA)が通りがかる。
「白いチューリップ。
 花言葉は・・確か・・失われた愛。」男が呟く。
「・・・」

刑事課に戻った啓吾は、自ら民家の火災現場を調べにいくと前に出る。
「いいのか?じじいをほっといて。」と太宰。
「あの人のせいで一番迷惑をしているのは、俺なんです。」

取調室
黒木の写真を見つめる梅木。
それは、墓地で茉莉亜に声を掛けた男で・・。

火災現場から遺体が運び出される。

「加藤、お前もやっとまともになったみたいだな。
 これからも自分は中央署の刑事の一員だってことを忘れるな。」と太宰。
「・・・」

刑事課
「被害者は黒川ショウゴ67歳。」と伊坂。
「黒川!?」と啓吾。
「出火当時被害者はかなりの泥酔状態だったと考えられます。」
「焼け跡の状況から見て、火元は、枕元にあった灰皿で
 間違いないだろう。」と太宰。
「今のところ事件性がないと考えるのが妥当だな。」と東野。
「・・すみません、ちょっと待ってください!」
啓吾はそう言い、梅木から預かった書類を調べ始める。

『黒川昭五
 1941年(昭和16年)10月
 現住所 愛知県名古屋市
 黒川真治の実父』

「課長!被害者は黒川真治の父親です!」
「・・・」
「何らかの関連性を疑うべきでは?」
「偶然ってことも考えられる。」
「では念のため、黒川の足取りを洗っておいた方が。」
「やつはもう名古屋にいない。
 事件性を疑うなら、周辺の聞き込みを続けろ。
 以上だ。」
「・・・」
「まだ何か言いたいことがあるか?」
「いえ。わかりました。」

机に戻り資料を読み込む啓吾。

『黒川佳代 
 1946年(昭和21年)12月7日生
 現住所 愛知県名古屋市中央区
 黒川真治の実母』

「探せ!」
梅木の言葉が頭に浮かび・・。

スナック檸檬
閉店後、カウンターで一人酒を飲む佳代。
そこへ、客が入っていく。
「すみません、もう終わりなんだけど。」
「・・・」
「・・・」
「ただいま・・お母さん!」

黒木は母親を2階の居住スペースに追い込む。
「何でそんな顔しているの? 
 18年ぶりに会えたんだから。」
「ごめんね・・真治・・。本当に迎えにいくつもりだったのよ。
 でも・・あの男に・・あの男に騙されて・・
 それからは、自分ひとり、暮らしていくのが必死で・・」
「久しぶりに会えたのに・・そんなことしか言えないのかよ、あんたも。」
「お願い!助けて!」
「助けて?
 ・・・じゃあ何であんたは助けてくれなかったの?」
「・・・」
「親父に冷たい水風呂に付けられた時、
 何で見て見ぬふりしたの?」

黒川は母親を浴室に連れていくと、浴槽に水を張り始める。
「父さんにはもう会ってきたから。
 元気だったよ、相変わらず。
 久々に会ったからさ、嫌って言うほどお酒飲ましてやったのに、
 全然喜んでくれないんだもん。
 昔は、あんなに飲んで暴れてたくせにね!」
「真治聞いて!
 あんたのこと連れていきたかった!」
「・・・そうしてほしかったよ!!
 そうすれば・・俺だって刑務所なんかに入らずに済んだのに・・。」
「・・・」
「18年間・・・あの中で・・毎日、毎日、俺、
 何考えてたと思う?
 楽しかった時のこと、思い出そうとした。
 でも・・俺にはそんな思い出一つもなかった・・。」
涙をこぼしながら笑ってみせる黒川。
「思い出すのは・・親父に殴られた時のことばっかりだ。
 ・・・母さん・・母さん!母さん助けて!
 痛いよ!!痛いよ、助けてよ、母さん!!痛いよーー。
 母さん!母さん!母さん痛いよ、助けて痛いよーー。
 母さん!母さん!!」
号泣し叫んでいた黒川は、突然黙り込み・・・。
「どんなに叫んでも、あんたが助けに来てくれなかったことだけが・・。」
「・・・」

梅木のメモを頼りに、啓吾はスナック檸檬にやって来る。
そこで啓吾が見たものは・・風呂場で溺死している黒川の母だった。

警察署
「黒川の母親も殺されて、本部からかなり嫌味言われているみたいですよ、
 課長。父親の火事も、事件なしの判断が早すぎたんじゃないかって。」
伊坂が啓吾に呟く。

「みんな聞いてくれ。
 今回の殺人事件の容疑者として、黒川真治を指名手配する。
 やつはまだ名古屋にいる。
 どんなことをしても探し出すんだ。」と東野。
「はい!!」

捜査に向かう啓吾を薫が呼び止める。
「加藤君!ちょっと!」
「はい。」
「私の携帯番号知ってたっけ?」
「何でですか?」
「貸して。登録しておいてあげるから。」
「いやでも行かなきゃいけないんで。」
「何?嫌なワケ!?」
「・・・そういうわけじゃないですけど。」
「だったら貸せ!」
しぶしぶ携帯を取り出す啓吾。
「さっき梅さんに、私の携帯こっそり渡しておいたから。
 もっと話聞いておけばよかったと思ってるんでしょ?梅さんから。
 はい。」
薫は啓吾の携帯に自分の番号を登録して返す。
「・・・」

薫の携帯が梅木のポケットの中で着信する。
「もしもし。加藤か?
 黒川は見つかったか?」
「・・いえ。」
「?から話は聞いた。
 黒川の両親が殺されたんだってな。」
「・・はい。」
「この殺しは、まだまだ終わらない。これからも続くぞ!」
「・・どういうことですか?」
「酒癖が悪く虐待をし続けた父親。
 そんなヤツを置いてさっさとよその男の所に逃げ出した母親。
 そういうやつらが自分を犯罪者にしたと思い込んでいる。
 そういうやつらを・・皆殺しにする気だ。」
「・・・次は・・誰なんですか?」

捜査本部
「課長!黒川は自分を裏切った人間に対して復讐を始めたんだと
 思います。」と啓吾。
「何?」
「やつには、一生愛し合うと誓ったのに自分を捨て、別の男に走った
 女がいます。恐らく、次のターゲットは、その女です。」
「・・・」
「課長、梅木さんを捜査に加えるべきだと思います。
 彼は黒川のことを誰よりもわかっています。
 やつを捕まえるために必ず必要になります。」
「・・・」
「課長も、わかっていらっしゃいますよね?」
「わかったようなこと言ってんじゃねーよ!」と太宰。
「これ以上犠牲者を出さないためにも!」
「黒川がその女のところに行くっていう保障はどこにあるんだよ?
 俺達に逆らわないんじゃなかったのか?
 コソコソじじぃと話しやがって!」と太宰。
「ちょっと黙っててもらえますか?」
「何!?」啓吾に掴みかかる太宰。
「やめましょう!そんなことしている場合じゃない!」と東野。

取調室に東野と啓吾がやって来る。
「今回は、捜査に戻る事を特別に許可します。」
東野の言葉に早速部屋を出ていこうとする梅木。
「ただし条件があります。」
「・・・」
「銃の携行は許さない。」
「何?」
「黒川を見つけたらすぐに殺す気なんでしょ?」
「・・・勝手にしろ!」

梅木と啓吾は、黒川の元恋人・富田の住むマンションへ。

「いきなりやってきて、あなたに危険が迫っているって言われても。
 子供が帰ってきたら、塾に連れていかなきゃいけないんですけど。」
「あんたまだ自分の立場がわかっていないようだね。
 あいつは、あんたに裏切られた事を未だに根に持っているんだよ。」
「忘れました、そんなこと。」
「あいつは本気で、あんたを一生愛する気でいたんだよ。」
「・・・」

そこへ、電話が入る。
啓吾に言われて富田はスピーカー越しに電話に出る。
「もしもし。」
「・・やあ、久しぶり。わかる?」
「・・・もしかして、黒川さん?」
「覚えていてくれたんだ。
 あれ?それとももう警察が来てくれた?」
「・・・」
「何?図星か。がっかりだな。
 でもよくわかったね、その刑事さん。
 俺が君と接触するって。
 ちょっと代わってくれる?」

「俺だよ、黒川。」
「もしかして、梅さん?」
「ああ。」
「お久しぶりです!
 出所の時は、会えなくて寂しかったですよ。
 なんか僕の事、殺そうとしたんだって?
 この頃思うんですよ。
 この世で一番僕の事を分かっているのは、梅さん、あんただって。
 だってそうでしょ?
 お互いこの18年間、復讐の事ばっかり考えていきてきた、
 似たもの同志なんだから。」
「・・・」
「ねえ、あなたなら、何で両親殺したのかわかるでしょう?」
「ああ。二人とも、お前を愛してくれなかった、だろう?」
「流石ですね、梅さん。
 俺は、愛してもらった温かい思い出なんて、一つもない。」
「だがな、彼女は今、別の男性と結婚して、別の世界にいるんだ。」
「安心してください。その女には何もしないから。
 だってそんなの殺したって、面白くもなんともないじゃん。
 それより、もっと苦しい目にあってもらう。」
「何だと?」
「自分の命より大切な人間がいるでしょう?その女には。」

「ゆうすけ!ゆうすけに何したの!?」
「さえこちゃん、安心して。まだ死んでないから。可愛いぼうやは。」
「やめて!ゆうすけを返して!」
「さえこちゃん、落ち着いて。」黒川が笑う。

「要求は何だ!」
「は?要求?
 そんなものないですよ。
 俺に愛や希望なんてないって教えてくれたささやかなお礼だよ。」
「なあ。
 殺してないって証拠に、子供の声聞かせろ!」
「それがさ、俺もう一緒じゃないんだよね。」
「子供はどこにいるんだ!」
「それ位自分で捜して下さいよ。
 梅さんならわかるでしょ。」
「・・・」
「じゃあそろそろ切りますよ。逆探されるから。
 子供はとーっても冷たいところにいるから、
 早くしないと凍えちゃうよ。 
 リミットは8時間。
 じゃあね。」

「くそっ!!」
「早く探して!!
 ユウスケが・・ユウスケが死んじゃう!!」
「大丈夫です。必ず助けますから。」

捜査本部
「大変だな、もし子供が見つからなかったら。
 次は俺の後釜狙ってたんだろ?」
本庁の刑事が東野に嫌味を言う。

黒川と関連性のある場所を調べる刑事たち。
「これは、黒川のの復讐だ。
 やつは、家庭では虐待を受け続け、
 学校や職場では、イジメを受け続けていた。
 信じたいと思っている人間には、裏切られ続けてきた。
 そういうヤツラが自分を犯罪者にしたと思い込んでいる。
 やつは、憎しみの塊になっている。
 そういうやつらを、皆殺しにする気だ!」

祐介のランドセルが発見され・・。

そんな中、梅木の携帯に非通知の電話が入る。
「もしもし。」
「まだ見つかってないね、梅さん。
 もうそろそろリミットだよ。」
「いい加減にしろよ。子供に罪はないはずだ!」
「相変わらず人の話聞かないんだね。
 嫌われちゃうよ、みんなから。
 じゃあ条件出すよ。」
「何だ?」
「あんたがそこで死ぬなら、教えてあげてもいいよ、子供のいる所。
 どうする?」

「加藤!加藤!加藤!」
「どうしたんですか?」と啓吾。
「銃貸せ!」
「ちょっと待って!何でですか!?」
「犯人はこの近くで、俺達のことを見ている!」
「・・・」
啓吾の銃を奪う梅木。
「梅木さん!!ちょっと!!」
「いいから、お前は早く被害者の所へ行って、ここにいると言え!」
「梅木さん!いやでも・・」
「いいから行け!早く!」銃を自分の額に当てる梅木。
「梅木さん!」
「いいから行け!早く!行け!」
「お願いしますよ!」
「ああ。」

「よーし、死んでやる。」
「自分の婚約者を殺した男に復讐しないで死んでもいいんだ。」
「じゃあ教えろ!
 なぜ・・なぜ、あの人を殺した?」
「・・・」
「あの人が、お前に何かしたか?」
「したさ。」
「何!?」
「あんたと心から愛し合っている所、俺に見せびらかした。
 心から信じあえる、運命の人と出会った。
 世界一幸せと言いやがった。」
「・・・」
「だから殺したんだよ。
 ぶち壊してやった。
 あんた達を、俺と同じ、不幸のどん底を味わってもらったんだよ。」
「・・やっぱり、お前は殺す!」
「ああ・・嬉しいなぁ。
 18年間、あなたが不幸だったと知って。」涙をこぼす黒川。
「気分いいから、ヒントを上げます。
 子供がいるのは、本当はあったかいのに、とても冷たいところ。」
「何!?」
「早くしないと間に合わないよ。」
電話は切れてしまう。

「おい!黒川!!」
その場に崩れ落ちる梅木。
「大丈夫ですか!?」と啓吾。
「大丈夫だよ。」
「何て言ってたんですか?」
「本当はあったかいのに・・冷たいところだって。」
「何ですかそれ。」
「黒川が言ったんだよ。子供の居場所だよ!」
「でもそれだけじゃ、」
「待ってろ!今考えてるんだから!」
「温かいのに、冷たいところ・・。」
「・・なあ!確か黒川の母親、風呂場で殺されたんだよな?」
「はい。冷水に付けられて。」
「風呂!そうか!」
「でもどこの風呂ですか?」
「いや、やつはこうも言ったよ。
 家の中に何一つあったかい思い出はなかったって。
 そしてこうも言った。
 俺と同じ思いをさせてやるって。」
「それって・・」
「そうだよ!あいつがガキん時に住んでたアパートだよ!!」

アパートを調べる梅木と啓吾。
風呂の蓋を開けてみると、半分くらい水を張った浴槽の中に
祐介が入れられていた。
「祐介君!!
 生きてます!」
「よしっ!!」

捜査本部
「子供を確保!!」
東野の言葉に刑事たちから拍手が沸き起こる。

警察
啓吾は梅木に水の張ったコップを持っていく。
「病院から連絡がありました。
 峠は越したそうです、祐介君。」
「良かった・・。」
「前から気になってたんですけど・・」
グラスにコインを一つ落とす啓吾。
「何ですか?これ。」
「あー。
 いや。昔、トモヨと遊んでた、ゲームだよ。」
「トモヨさんって・・あの・・亡くなった?」
「うん。
 二人で、映画見に行った時、映画の中で、主人公の男達が 
 遊んでたゲームなんだ。
 水が、溢れた方が負け。
 二人でよく、コーヒー代賭けてな、遊んでたんだ。
 いつも、俺が負けてなあ。」
「・・どんな、人だったんですか?」
「うん。
 お前の彼女の、茉莉亜さんに、よく似てたんだ。
 いやいや・・そんな風に・・思えるだけかもしれない。」
「どういうことですか?」
「・・・人は、忘れる。」
「・・・」
「悲しい事や、辛い事は、ありありといつまでも覚えているのに、
 トモヨと過ごした楽しい思い出は、どんどん消えていくんだ。
 今の俺に残っているのは・・トモヨを殺された無念と・・
 黒川への憎しみだけだ。」
梅木はそう言い、グラスにコインを沈めていく。
「こんなことでもやってないと・・
 トモヨのことも、みんな、忘れてしまいそうでな。」
「・・・」

屋上で町の景色を眺める啓吾。
携帯を取り出し、アドレス帳の茉莉亜のページを開く。
その時、丁度茉莉亜からの着信。
「・・・もしもし。」

墓地
恋人の墓に手を合わせる茉莉亜。
「茉莉亜!」啓吾が声を掛ける。
「・・・」
「ほっとした。電話もらえて。」

「彼のご両親のところに行ってきたの。
 何度も何度も頭下げて、やっと教えてもらった。
 彼をひき逃げした犯人が、今何をしているのか。」
「会ったの?その男と。」
「・・もう釈放されたって。
 彼のご両親も知らないんだって。今どこにいるのか。」
「・・・」
「ご両親に言われた。
 もう息子の事は忘れて、新しい人生を送ってほしいって。
 でもそんなの無理なの。」
「・・・」
「ねえ、結婚やめない?」
「・・・何言ってんだよ。」
「私は啓吾のこと幸せに出来ない。」
「・・・子供は、どうするんだよ。」
「私一人で育てる。」
「なあ茉莉亜ちょっと待ってくれよ!」
「こんな気持ちのままじゃ、啓吾と一緒にいられないの!
 どうしても・・心の中で比べちゃうの。彼と啓吾を・・。」
「・・・」
「・・・ごめん、啓吾。」
「・・・」
「ごめん。」
茉莉亜が啓吾の前から走り去る。
その様子を木の陰から黒川が見つめていて・・。

捜査本部
ホワイトボードに貼られた黒川の写真を見つめる梅木。
「黒川見つけたらどうするつもりだ?」太宰が声を掛ける。
「・・・」
「復讐か!?
 警察はちょっとミスすりゃグダグダ言われる中で、
 みんな必死になって自分の仕事を頑張ってんだ!
 その努力を!無駄にする覚悟があんのかテメー!!」
「・・・」

廊下
啓吾と梅木がすれ違う。
「黒川を探しに行くんですか?」
「・・・」
「当てがあるんですか?」
「お前はもう、俺に関わるな。
 俺と一緒にいるということは、お前の為にならん。な!」
「俺も行きます。
 あいつを放っておくわけにはいきません。」


「この埠頭で働いていたんですか?黒川は。」
「ああ。この職場でもヤツはずいぶん酷いイジメに遭ってたらしい。
 その時の同僚が、今ここの責任者になっているけど、
 ま、そいつも、イジメを見て見ぬ振りをした、という人だ。」
その時、啓吾の携帯が鳴る。茉莉亜からの着信だった。
「ちょっとすみません。
 もしもし?」
「・・あんた、茉莉亜さんと付き合っている人?」男の声。
「誰だお前。」
「驚いたよ。彼女と付き合っているのが中央署の刑事で
 しかも!梅さんとこの、」
「答えろ!誰だお前!!」
啓吾の大声に驚いて梅木が駆け寄る。
「振り返ればわかりますよ。」

電話の声に啓吾が振り向く。啓吾に釣られて梅木も振り向く。
少し先に、黒川が立っていた。

「黒川・・」
「おい!何で茉莉亜の携帯を持ってる!
 茉莉亜どこにいるんだよ!!」
「・・・お前さ、彼女の彼を殺した男に会わせてあげなかったんだって?」
「・・・」
「だから俺が代わりに会わせてやるって言ったら
 簡単についてきたよ、彼女。」
「何でそんなことをお前!」
「あんたにも梅さんと同じ苦しみ味わってもらいたくてね。」
「・・・」
「辛いよ・・愛する人が殺されると。
 ね!梅さん!」
「殺す!!殺す!!」銃を手に黒川に迫る啓吾。
そんな啓吾を必死に抑えつける梅木。
「離せ!」
「銃を貸せ!俺が殺す!」

「いいけど。
 俺が死んじゃったら、大切な茉莉亜さんと一生会えなく
 なっちゃうよ。」
「・・・」
「ほっといたら死んじゃうかもしれないけどそれでもいいの?」
「お前を捕まえて、どんな手使ってでも、吐かせてやる!!」と啓吾。
「俺絶対何も言わないよ。
 昔から、拷問みたいの慣れてるから。」
「・・クソーッ!!」
「さあどうするの?お二人さん。」
「・・・」
「ここ。」
自分の額を指差して笑う黒川に、啓吾も梅木も何も出来ず・・。



今回の啓吾の悪夢は、深い水の中、必死に水面を目指す夢。
彼の精神状態が伝わってきます。
啓吾の悪夢が黒川の過去にシンクロしていました。
黒川は、子供の頃から父親に虐待されていた。
子供の頃水の張った風呂に頭を突っ込まれ・・
啓吾の悪夢を体験をしていたのですね・・。

黒川の辛い辛い思い出は、心にずっと突き刺さったまま。
刑務所の中で楽しい思い出を思い浮かべようとしても
一つもなかった、というセリフ。

彼は模範囚を演じながら、自分を虐待した父親、
それを見て見ぬふりをしてきた母親のこと、
そして自分を裏切った恋人のことを、
ずっと恨み続けていたんですね。
ずっと手に入れられなかった「愛」を憎み、
人から愛を奪う事で、憎しみを植えつける。

「悲しい事や、辛い事は、ありありといつまでも覚えているのに、
 トモヨと過ごした楽しい思い出は、どんどん消えていくんだ。」

水の張ったグラスにコインを落とす遊びは、
恋人との楽しい思い出を忘れないためだったんですね。
だから、この遊びをしている時は穏やかな笑みを浮かべていたんだ・・。


黒川とサヤカは恋人の関係だったのだから、
梅木が言っているように、黒川も楽しい思い出は忘れてしまった
のでしょうか。
幸せな感情は段々と色あせてしまい、憎しみだけが強く残されて・・。

サヤカとの恋は学生の頃でしょうか?
学校で苛められていた時の唯一の救いの存在だったのかな。

あの埠頭で働き始めても、黒川はイジメに遭っていた。
その頃に黒川は同じマンションに住むトモヨと出会ったとか?
トモヨには片思いで、トモヨが恋人と幸せだったことが黒川には
許せず、とうとう殺人に走ってしまった。


黒川は誰の墓参りに来ていたのでしょう。
黒川の恋人のトモヨさん?

そこで茉莉亜と出会ってしまった。
茉莉亜は梅木曰く、トモヨと似たタイプ。
黒川も茉莉亜を見て、そう感じたのかな。

そして再び、墓地で茉莉亜を見かけたとき、彼女は啓吾と一緒だった。
この時、黒川は新たな計画を思いついたのでしょうか。

この時にも黒川の手には花束が。
トモヨのお墓参りに来たのだとしたら、
昔愛したサヤカちゃんのエピソードはなかった方が、
トモヨへの愛が引き立った気がします。


梅木と啓吾の前に姿を現す黒川。
二人の心は怒りの感情でいっぱいになり、
自分が殺す!と銃を奪い合う。
でも、黒川は茉莉亜の命を握っているから
今は二人は自分を撃てない、と余裕の表情でした。


黒川と梅木の電話のシーンもまた見事でした。
殺したいほど憎んでいる相手からの電話に、梅木は微笑みながら
答えていました。この微笑がまた怖い!
ところで、黒川は梅木の携帯の番号をどうやって知ったのか?
まさか東野が教えていたとか?


タイトルの『リミット』は、茉莉亜の命のリミットでも
あったんですね!

恋人の命を奪った相手を目の前にしたとき、
茉莉亜も悪魔となってしまうのでしょうか?
そして茉莉亜の危機に啓吾は!?

次週予告、啓吾や梅木の叫びが気になります。

武田さん、森山さんの演技に見入ってしまう!
黒川役のARATAさんの涙にもしびれました。

来週最終回なのがもったいない!もっと見ていたいです。


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公式HP

B002AD9VFUCOME ON!斉藤和義ビクターエンタテインメント 2009-08-05by G-Tools


B001859AR0刑事の現場 DVD-BOX寺尾聰, 森山未來, 石倉三郎, 池脇千鶴POLYDOR(P)(D) 2008-06-25by G-Tools



キャスト
加藤啓吾(28):森山未來
青井茉莉亜(29):加藤あい
東野恵一(44):杉本哲太
伊坂 聡(24):細田よしひこ
細見監察官:本田博太郎
筒井薫(44):若村麻由美
太宰満(55):伊武雅刀
梅木 拳(59):武田鉄矢

黒川真治(38):ARATA

第2話
 森本レオ
 榊英雄

第3話
 甲本雅裕
 黒川芽以


スタッフ

作   
 遊川和彦
音楽
 coba
制作統括  
 磯 智明
演 出 
 渡辺一貴 
 松浦善之助



森山未來さんの主な出演作品



武田鉄矢さんの主な出演作品


この記事へのコメント
ちーずさんこんばんは、黒川は虐待されていたのですね、母親の前で泣き叫ぶ姿に同情はできましたが急に冷静さを取り戻し肉親を残酷に殺害してしまう黒川の性格がみえてきませんね!

元カレの墓前に花を手向ける茉莉亜、その花言葉から何かを感じ取った黒川そしてその墓地は梅木の婚約者が眠っている場所、トモヨの墓参りに来たという事でしょうか?梅木と出会って世界一幸せだと言ったトモヨを殺め一生添い遂げたいと思った女性の裏切りから息子を誘拐する身勝手な犯行は許せませんね!

梅木の事を「梅さん」と呼ぶ黒川、刑事の婚約者が犯罪に巻き込まれたときは捜査から外されると思いますが彼はその以前にも事件を起こし梅木が担当したのでしょうか?独自で黒川を調べていた梅木は彼が出所したときに復讐を始めると読んでいたのは刑事の感、それとも同じ悪魔の心をもった復讐心からでしょうか、トモヨは薫の同期で少年課で黒川の相談にのっていた婦警だったと妄想中〜もちろん薫もバリバリと仕事をこなす梅木に憧れていて…

今回の終わり方は色々な妄想ができて好きです!梅木が刑事としての誇りから踏みとどまるのか、茉莉亜を助け出したときに啓吾たちが選ぶ道はなど、最終回が楽しみです、パート1は保存できなかったので再放送も見逃さないようにしたいです!
Posted by けた at 2009年08月03日 19:47
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