2010年01月18日

君たちに明日はない 第1話

『怒る女』

村上真介(坂口憲二)は、リストラ請負会社に勤める面接官。
不景気にあえぐ瀕死の会社に乗り込み、
面接し相手を退職に追い込むプロ。

ある朝、真介は仕事に行く途中、大きなスーツケースを抱えて
困っていたおばあさんを見かける。
手助けしようとしたとき、真介より先に声を掛けた女性がいた。
そんな女性の姿に微笑む真介。

信号が変わり、横断歩道を渡ろうとした真介は、
一人の男に呼び止められ、
「お前のせいだ!」と顔面を殴られてしまう。

『明日への鐘は
 その階段を登る者が
 鳴らすことができる』

「相手はわかってんのか?」
代表取締役・高橋(堺正章)が真介に聞く。
「はい。アケボノ自動車の、自分が担当した人間で。」
「アケボノって随分前だったよんば。」
「完全にリストラが終了したのは、一年前ですね。」
「で?どうする?」
「告訴ですか?」
「ああ。
 村上だけだぞ。いつも泣き寝入りするのは。」
「泣き寝入りってわけじゃ。」
「告訴の費用だって会社の負担なんだから、遠慮することないんだよ。」

会議室
「会議の前に報告がある。
 村上がまた殴られた。」と高橋。
「どうすんだ?真介。告訴は。」と同僚。
「今回も、告訴はしないそうだ。
 改めて言っておくが、こういうことで訴えることは
 恥じゃない。」と高橋。
「でも、告訴、告訴でうちの会社もすっかり有名になっちゃいました。よ。」
「ほら、又載ってますよ、こんなに大きく。」
社員たちが社長に週刊誌を見せる。
『クビ切り集団現る!
 リストラ請負会社に
 血祭りにあげられる企業たち』
「おぉ、見たか、その記事。5ページあるぞ、5ページ。」と社長。
「・・・何でちょっと嬉しそうなんだよ。」真介が呟く。

今回のクライアントは、東証一部上場の建材メーカー・
森松ハウス株式会社。
営業部門での200人のリストラがノルマ。
真介は、どんなに恨まれようと、冷酷な 面接で次々と
“希望退職”に誘導する。

真介が担当する人物の一人・平山課長(村田雄浩)には
特○マーク。
特○とは、絶対に辞めてもらいたい人のこと。

真介が担当する課長代理・芹沢陽子(田中美佐子)。
どこかで見覚えがある、と思う真介だが思い出せない。
実は朝、老婆を手伝っていたのが彼女だった。

森松ハウス
クビ切り集団の記事を部下から見せられた平山は
どこか人事のように構えてイた。

その平山が人事部から呼び出される。

「課長、入ったんじゃないですかね、リストラ候補に。」
「もう、人のことはいいから。」と芹沢。
「そうかー。間違いなくクビでしょうねー。
 こいつらの手に掛かったらイチコロですよ。」
「陰でコソコソそんなこと言って!
 自分が逆の立場でされたら嫌な事、するもんじゃないっしょ!」
「すみません・・。」

ところが今度は、この芹沢陽子に人事部から呼び出しが掛かる。

「私絶対辞めませんから!」と陽子。
「落ち着いて、ね。課長代理。」
「落ち着いてます!
 今のプロジェクトは2年がかりで進めてきたんです!
 責任者の私が途中で辞めるなんてこと、考えられません!」

陽子のマンション
「へー!辞めないって宣言したの!」と妹の泰子(須藤理彩)。
「したした。」
「意外だわー。やるときはやるね、お姉ちゃん!」
「でしょう?
 でもってさ、」

「部長は長年、採用担当の責任者されてましたよね?」
「だから?」
「だからじゃないでしょう!
 今進めようとしているリストラの対象者を採用するって
 決めたのはあんたでしょうが!
 まずはその責任取って、あんたが辞めろ!」

「・・・って言いたかったけど言えなかった。」
「なんじゃそりゃ。」
「それがサラリーマンってもんなのよ。」
「それじゃさ、リストラされそうな傷ついた姉の為に、
 心を込めて歌います。」
「いいから、歌わないで。」
「聞いてください。死んでしまった君へ。」
「死んでない、私まだ死んでないー。」
「ていうかさ、会社勤めなんてバカらしくてやってらんなくない?」
「あんたみたいな人間にはそうかもしれないけど。」
「やめちゃえやめちゃえ!」
「私もさ、ここまで出掛かったんだけどさ、
 結局、」

「とにかく、今のプロジェクトが終わるまでは、
 辞めるつもりはありません!」

「ま、これが現実。」
「どうせ辞めるんだからさ、一発ぶん殴って辞めれば?」
「だからあんたみたいな後先考えずに生きてる人間とは
 違うのよ。」
「私だってちゃんと考えてますー。」
「お金借りに来ててよく言うよ。」
「は?」
「は?じゃないでしょ。
 あんたがうちに来る時は、彼とケンカした時か、
 お金貸してっていう時だけでしょ。」
「私はね、そういうなんていうの?
 親とかに寄生するハラ・・・グライダーだっけ?」
「空飛んでどうするの。」
「パラ・・・パラ・・シュート!」
「ふわふわ浮かんでどうすんの。」
「パラ・・・パラアンテナ!」
「あ、衛星見るんだったら・・って乗らせるんじゃないわよ。」
「パラパラパラ・・・」
「サイト。」
「そう!パラサイト。
 私をね、お金を借りに来てるパラサイトだと思ったら
 大間違いだかんね!」
「じゃ、違うのね。」
「違わない。貸して?」
「何だよ・・」
「絶対返すから!ね!」
「ていうかさ、泰子さ、」
「うん、何ですか?お姉さま。」
「リストラされたらさ、早々お金貸してあげらんないよ。」
「・・・え。」
「この年じゃ転職も厳しいだろうし。」
「お姉ちゃんさ、」
「何。」
「なんとか踏ん張んな、今の会社で。ねーっ!」
「・・・あんた自分のことしか考えてないでしょ!」

この姉妹、いい感じ!
とげのある会話からも愛情が伝わってきます。
演じている須藤さん、田中さんが楽しそう!


日本ヒューマンリアクト
「やっぱどこかで会ったよなー。
 バツイチか。
 (マンション購入)
 こりゃローンがたんまり残ってるなー。
 退職金でまかなえるかどうかだな。
 むなしいねー。」

陽子のマンション
リストラ請負会社の記事を読む陽子。
「このリストラ請負会社は情け容赦ない冷酷な面接で
 人事部が手を焼くような社員もうまく退職に持ち込む
 血も涙もないヤツラだ・・・。 
 ・・・手ごわそうだな・・・。
 負けたくないな・・・。」

日本ヒューマンリアクト
「かわいそうだけど、手加減しませんよー。
 なんつったって、俺らの手に掛かったら・・・」

『君たちに明日はない』

森松ハウス
「ちょっと、面接に行ってくるわ。」と平山課長。
「課長、いきなりですか?」と陽子。
「なんか、全然余裕ですね。」と部下。
「俺には、辞めさせられる云われはない!
 逆にガツンと言ってやる!」
「・・・」

File 1 平山和明
面接室
「どうも。本日はお忙しいところお越しいただき、
 ありがとうございます。」と真介。
「・・・」
「コーヒーか何かお飲みになりますか?」
「いや、とくには。」と平山。
「どうぞ、お楽になさって下さい。」

日本ヒューマンリアクト
「この平山って男、体育会系のラグビー部出身かー。
 この手のヤツは年下に面接されるなんて屈辱だと思うだろう。
 上手くやれよ。」と社長。
「特○、ですいよね。」と真介。
「うん、ぱっと見、特○になるような仕事振りじゃ
 なさそうだけどな。」
「ええ。」

森松ハウス面接室
「ちょっと、いいかな。」と平山。
「何でしょう。」と真介。
「あなたが、面接するんですか?」
「はい。
 まあ正確に言えば、アシスタントの川田と二人です。」
「失礼ですがおいくつですか?」
「私は33で、彼女は、」
「22です。」と川田美代子(吉田桂子)。
「・・・」平山が笑い出す。

日本ヒューマンリアクト
「この平山、バブル崩壊後が悲惨でして。
 業績不振の責任を負わされて、規模の小さい甲府営業所に異動。
 3年後、更に小さい浜松営業所に横滑り。
 その後ようやく、川口支店の支店長として首都圏に戻ってきますが、
 ここが閉鎖寸前の支店でして。」と真介。
「きついな。実質降格人事だろう。」と社長。
「ええ。
 ところが、ここで爆発的に数字を残して本社に帰り咲いたのが
 昨年のことです。」
「でも、この男、特○なんだろ?」

面接室
「それでは早速、本題に入らせて頂きます。
 実を言いますと、平山さんもご存知のとおり、
 御社の販売部門が大幅なスケールダウンすることになりまして。
 営業推進部も統廃合されることになります。」
「私が、用済みだって言いたいのか?」
「・・・これを機に、新たに外の世界でチャレンジされるのも
 一考かと思いますが。
 いかがでしょう。」
「・・・」
「むろんそうなった場合、会社としても出来るだけのことは
 させていただくつもりです。
 勤続25年の平山さんの場合、規定分の退職金、一千万に、
 割増金が、1,500万。
 トータルで、2500万円となります。」
「・・・」
「どうでしょう。決して、悪い条件ではないと思うんですが、
 これを機会に、新しいご自分の可能性を試すべく、
 新たな一歩を踏み出してみませんか?」
「・・・仰る事は、よーく理解出来ました。」
「ありがとうございます。」
「しかし・・なぜ私なんですか?」
「・・・」
「この会社に入って25年、会社の為に、身を粉にして
 働いてきたつもりです。
 売り上げだってそうだ。上からの目標を大きく上回っている。
 この年齢でだよ!爆発的に営業を取ってきたんだよ。
 これまで、こんなに会社を儲けさせてきて、
 家族だって犠牲にしてきた。
 取引先相手に、それこそ、泥水すするような真似だって
 してきたんだよっ!!」
「落ち着いて下さい。」
「落ち着けるわけないだろ?
 人生掛かってんだ、俺の人生が!」
「・・はい。」
「家族だって下手すりゃ、路頭に迷うかもしれないんだよ。
 それをわかってて、軽々しく、新たな一歩とかなんとか言ってんのか!」
真介に掴みかかる平山。
「失礼があったならお詫びします。」
「・・・それに、これはあくまで希望退職なんだよな?」
「基本的にそうですが。」
「なら、私は希望しない!」
「でも平山さんの現在の職種は、今後廃止になるんですよ。」
「それは会社の都合で私の都合じゃない!」
「・・・」

日本ヒューマンリアクト
「恐らく、この手の男は、一度荒れると手が付けられないぞ。」と社長。
「自分の言葉によって、どんどん興奮するタイプ!」と川田。
「そうなると、会社にとことん抵抗するって覚悟を
 決めてくるんでしょうね。」と真介。
「そうなっても、落とせる自信あるのか?」
「・・・」
「最悪俺が担当するぞ。」
「いえ、必ず落とせます。」

面接室
「それでは最後に、もう一つだけお話させていただけますか?」
「話をするのは勝手だが、私の気持ちはもう、一つだからね。」
「ここに、私どもの会社で、独自に調査した資料があります。
 平山さんに関してのものです。」
「・・・何?」
「まず、調査によると、あなたはこれまで、5箇所の支店及び
 営業所の管理をしてこられましたよね?」
「だから?」
「そこに映し出されているのは、管理職ごとの、
 部下の平均離職率です。
 平山さんの場合、失礼ですが、群を抜いて高い数値が出ています。 
 しかも退職したのは、そのほとんどが若手の男性社員です。」
「・・・」
「ご存知のように、新卒社員を育成する為に、会社はそれなりに
 コストを掛けています。
 森松ハウスの場合、一人当たり400万という試算が出ています。
 平山さんの場合、これまで30名の若手が退職しています。
 つまり、1億2千万の損失を会社に与えたということになります。」
「いや・・それは違うでしょう!?
 確かに目標を達成するために、部下に厳しく、接してきたことも
 あった。でもそれは、会社の、営利を上げるためじゃないか!」
「結果1億2千万の損失を会社に与えてもですか?」
「私が稼ぎ出してきた数字はそんなもんじゃないよ!!」
「・・・私が、稼ぎ出してきた。」
「は?」
「今そう仰いましたね。」
「それが何だよ。」
「失礼ですが、あなたの部下だった方からこんなお話を
 お聞きしました。
 営業本部から降りてきた数字の1.5倍の数字を部下に要求し、
 割り増しした分をご自分の営業成績にして本部に報告していた
 らしいですね。」
「え・・それは・・」
「営業に同行したという名目で、ピンハネされたら、
 部下はやる気を失くすでしょうね。」
「いや・・しかし・・実際、私は若い連中にアドバイスもし、
 サジェスチョンを与えたのだから、
 私の成果でもあるだろう・・」
「・・・次に、交際接待費ですが、
 全管理職の平均が、年3百万程度。
 平山さんの場合、530万。
 どう見ても多すぎるので、失礼かと思いましたが、
 本社経理部で領収書の控えを全て閲覧させていただきました。」
「・・・何?」
「甲府ではクラブ新世界。
 浜松では忍。l
 川口では、銀馬車。
 週末になると、必ず決まった飲み屋にお出かけでしたね。」
「・・・」
「ある支店で経理だった女性は、支店長の飲み代の領収書を
 無理やり処理させられるのが、嫌で嫌で仕方がなかった。
 それと、甲府営業所時代に、庶務係の23歳の女の子が
 自己都合退職していますが、これ、不倫の末傷ついて
 会社を辞めたのが真相らしいですね。」
「もうやめてくれ!」
「当時の部下の方々の噂だと、ラブホテルの代金も出勤伝票切って
 経費で落としていたらしいって。」
「もう、勘弁して下さい!」土下座する平山。
「・・・どうでしょう、平山さん。
 先ほども申し上げましたが、これを機に、
 外の世界でもう一度チャンスを探してみませんか?」
「今のこと、全部会社が掴んでるんですか?」
「掴んでいることと、掴んでいないことがあると思います。
 もし、全部を掴んでいたら・・・」
「まさか・・・懲戒解雇!」
「さあ。どうでしょう。
 ただ、退職時の条件は随分悪くなるかもしれませんし、
 その先の再就職に関しても。」
「お願いです!会社には報告しないでいただけませんか・・。」
「・・・参考までに、これから退職に応じられた場合の、
 手続きの方法を説明させていただきます。
 最終的な決断はまだ先でも結構ですが、
 とりあえずは、お聞きいただけますね。」
「・・・わかりました。」
「・・・」

部下の営業成績をピンハネ、経費の私的流用、
不倫、ラブホ代の請求。
平山に同情する価値はないとは思うのですが、
ここまで調べ上げた真介を凄いと褒めるべきなのか、
よくわかりません。


居酒屋で飲む真介。
「ったく何様だよ、俺は!」
「又悩んでるのか?」と友人の山下(北村有起哉)。
「悩んでるっていうか・・」
「面接始まるといつもそうだな、お前。
 あ!それ傷か?またやられた?」
「まあな。」
「ほんと辛い稼業だな。
 真介が恨まれてるってことは会社としては上手くいってるって
 わけだからな。
 ま、元気だせ。今日は俺が出すから。」
「おっ!相変わらず羽振りいいねー。
 インチキ不動産、投資業は。
 何今日は相談って。」
「え?いきなり本題?
 実はよ・・・俺結婚するかもしんねー。」
「え?マジで!?いつからそんな子と付き合ってたんだよ。」
「いやまだ付き合ってねーんだ。」
「ちょっと待った!
 もしかして・・・相手キャバ嬢?」
「おい!職業で人判断するんじゃねーぞ。」
「まだ付き合ってもいないキャバ嬢と結婚を考えるって、
 いい感じでハマってるだけだろ!」
「何だよそうやって自分はいつも恋愛マスターみたいなこと
 言いやがって!」
「隆志よりはよっぽどマシだろ、俺のほうが。」
「お!お前もう2年だよな?あのおばさんと別れてから。」
「おばさんって言うな!」
「まださ、実は好きなんじゃないか?」
「え?」
「あのおばさん。」
「・・・」

帰り道、真介はある貸し店舗前で足を止め、微笑み、
そこに座り込む。

「どうしたの?」
懐かしい声に振り返ると・・・

2年前
順子(麻生祐未)がアンティークショップの戸を開ける。
「順ちゃん、明日誕生日でしょう?」と真介。
「えーー。もう全然嬉しくない、誕生日。」
「ね、店閉めて、前夜祭行かない?」
「もうちょっと片付けてからって思ったんだけど・・・
 ま、いいか。」

タイ料理で食事をする二人。
「パクチ、パクパク食べてる!」と順子は大笑い。
「順ちゃんのお陰で、エスニックが大好きになっちゃった。」
「一番最初なんて入れた途端口から出してたよね。」
「愛情が俺を変えたんだよ。なーんてね。」
「・・・」
「明日の誕生日は何がいい?
 たまには寿司とかにする?」
「・・・ねえ真介。きっとさ、エスニックにはそのうち
 飽きちゃうと思うんだよね。」
「え?・・・明日も、エスニックにしようか。」
「・・・」
「ねえ順ちゃん。」
「うん?」
「付き合った頃からずっと考えてたんだけどさ。
 俺もやっと、なんていうか、それなりにリストラの会社で
 やっていけそうな感じでさ。」
「そう。」
「だから・・・一緒になってほしいなって。」
「・・・嘘。」
「嘘じゃない。」
「だって私・・・」
「年齢は関係ない。」
「・・・」
「結婚しよう。」
「・・・嬉しいな・・。」
順子は涙ぐみながら微笑み・・・。

そして翌朝、姿を消した。
真介の部屋には置手紙があった。

『帰ります
 バイバイ
 順子』

仕事後、順子の店に行ってみると、店の中はガランとしていて・・。
「嘘・・。」
急いで走り出す真介と、陽子がすれ違う。

二人はここでニアミスしていたんですね。

File 2 芹沢陽子
「係長、どうかしました?」
「ううん。」
「でもやっぱり、係長のプランが通れば、
 現場の人間は絶対喜びますよ。」
「あとは役員の説得か。」
「頑張って下さいね、明日。」

翌日のプレゼン
「要するに、これまで曖昧に行われていた取引先からの
 バックマージンを、公式なルールとして明文化するわけです。」
「確かに、画期的なプランだが、それでメーカーサイドが
 納得するのかね?」
「社長!このプランを実現させない限り、我が社の生き残りは
 厳しいかと。」
「・・・わかった。じゃあとにかく、やってみたまえ。」
「はい!」

「仕入れの新しいシステムを実現させるため、
 社内にプロジェクトチームが結成された。
 その、リーダーとなった私は、50社を超える取引先との交渉に
 奔走することになった。」


ある取引先で契約を貰った陽子は、トイレに行った帰りに
そこの社長と自分の部下の会話を聞いてしまう。
「いやあ、芹沢さんは本当に仕事一筋だよね。」
「ええ。バツイチですから。」
「きっと仕事のほかに、何も楽しみないんだろうね。」
「そうですかね・・」
「そうに決まってるよ。」

夜、妹と話す陽子。
「お姉ちゃんさ、仕事にやりがいとか楽しさってないの?」
「まあ、なくはないけど。
 一生懸命やればやるほど、なんかずれてってるって感じ
 なんだよなー。
 あーあ。マンション買おうかなー。」
「嘘!マンション買うの!?
 それはつまり、一人で生きていく覚悟を決めたってこと?」
「あんた、何でちょっと嬉しそうなのよ。」
「いやいや。
 やっぱさ、お姉ちゃんには、愛が足りないんじゃないの?」
「うっざ。やっぱ音楽とかやってる人間は言うことが違うね。」
「だって、今まで会社の為に、それこそ、死ぬほど頑張って
 きたんでしょう?」
「まあね。」
「今やってるプロジェクトだって、すごいことなんでしょ?」
「うん。すごいことなんだよ、ほんと。」
「でも全然幸せそうに見えないよ。」
「・・・」
「これでリストラとか言われちゃったらさー。」
「は?何言ってんの。そんなわけ、」
「わからんでしょう、このご時世。」
「・・・ていうか、泣いちゃうだろうなー、そんなになったら。」
「・・・カルシウムが足りないと、怒りっぽくなるでしょう?
 愛が足りないと、愚痴っぽくなるんだよ。」
妹の言葉に頷く陽子。
「、を歌いまーす。」
「えーっ!?今の歌のタイトル?」
「次の新曲ね。」
二人は大笑い。

2009年
「あれから2年経って、まさか本当にリストラを宣告されるとは
 思ってもみなかった。
 会社が私を辞めさせたいなら辞めさせればいい。
 でも、それは今すぐじゃない。
 私はこのプロジェクトを成功させ、
 その実績を自分のものにしてから、ここを去る。 
 私のことをろくに知りもしない連中に、
 クビだの何だの言われる筋合いはない!」


面接室
「失礼します。」
「芹沢陽子さんですね。」と真介。
「はい。」
「お忙しいところお越しいただき、恐縮です。」
「いいえ。」
「コーヒーか何かお飲みになりますか?」
「結構です。」
「・・・あのー、こんなことお聞きするのは失礼かと思うんですが、」
「何でしょう。」
「どこかでお会いしたことありましたっけ。」
「・・・さあ。」
「そうですよね。すみません。
 それでは、早速ですが。
 本日は、人事部長さんの趣旨で、こちらにいらしたんですよね。」
「そうです。」
「どういった用件か、」
「聞いてませんが、わかってます。」
「あなたの部署が無くなってしまうこともですか?」
「・・・な・・無くなる?」
「はい。」
「無くなるって・・・部署そのものが無くなるってことですか?」
「そうです。」
「・・・そうですか・・・。
 つまり・・・この会社にもう私の居場所はないということですね。」
「・・・大変申し上げにくいんですが、
 これを機会に、新たな可能性を試されるのも、」
「半年、」
「はい?」
「半年は、辞める事は到底考えられません。」
「・・・よくわかりました。」
「・・・は?」
「え?」
「何がよくわかったんですか?」
「ですから、あなたのお考え、」
「私のことなんて、これっぽっちも知らないくせに、
 よくわかったなんて言わないで下さい!」
「・・・申し訳ありません。」
「・・・」
「しかし、あと12社の契約が完了するまでの間、
 会社を辞める気がないという旨は、」
「ちょ・・ちょっと待って。」
「はい。」
「今、12社って言いましたよね。」
「はい。それで、全部契約が完了するんですよね。
 今のペースでいくと、恐らくあと半年ぐらいの期間を要するかと。」
「・・・調べてるんですか?」
「失礼ながら、芹沢さんのプロジェクトについては
 全てリサーチ致しました。」
「・・・」
「この業界では、画期的な仕入れシステムの構築だと伺っております。」
「・・・」
「人事部への、私からの特記事項として、芹沢さんのご希望に
 添える形で、最低半年、会社に残れるようにと申告致します。」
「・・・同情されてるわけ。」
「はい?」
「これ、どういう作戦ですか?」
「・・・」
「あんたら、リストラするための集団で、
 それでこの会社乗り込んできたんでしょう?」
「・・・」
「それで私をリストラする為にここに呼び出してるわけでしょう?」
「・・・」
「情け掛けるような真似して、人のことバカにしてるわけ?」
「バカになんて。」
涙を必死に堪える洋子。
「・・・わかりました。」
「え?」
「今すぐ辞める場合と、半年会社に残った場合の、
 手続きの違いだけ教えて。
 文章にしてあるんでしょ?」
「・・・あります。」
「それじゃあ。」
「あの!」
「何ですか?」
「これだけは最初にお伝えする義務があるがあるんですが。
 退職金の金額面などの条件は、今辞めるのと、半年後では、
 随分変わってくることを、きちんとご理解頂かないと、」
「そんなことはどうでもいいのよ!」
「待ってください!
 改めて、疑問点、質問点が出てきましたら、ご連絡下さい。
 今回の件の担当は私です。
 私が、芹沢さんについては、全て責任を持たなくては
 いけません。」
名刺を差し出す真介。
「・・・」
「不愉快かもしれませんが、これが私の仕事なんです。」
陽子は真介の名刺を引ったくり、部屋から出ていく。

面接室を出た陽子は、トイレの個室に篭り・・・。
「何なのよ・・・私の人生・・何なのよ・・・。」
堪えていた涙を溢れさせる。

面接室
「なんか、今日の村上さんいつもと違いましたよね。」と川田。
「そうかな・・。」
「あれ?もしかして、今の人って、」
「・・ああ。」
真介はそう答え、川田にファイルを見せる。
陽子の評価分類にはGPの文字。
「なるほど!GPだったんですね。」
「苦労するよ、本当に。」
「あの人、これ知ったらどう思うでしょうね。」
「もっと幻滅するんじゃないかな・・・会社に。」

トイレ
鏡を見つめる陽子。
「笑え、陽子。」
そう言い、無理やり微笑んでみる。
「・・・負けねーぞ。」

ヒューマンリアクト
「現時点での結果を報告する。
 即座に退職を申し出た社員、115名、
 定職支援制度で、実質退職しながら再就職先を探す者が、92名、
 合わせて207名。
 早くも、200名の目標を達成した。
 というわけで、今夜あたり、中打ち上げといくか?」と社長。
「お!!」「今回は、寿司でお願いします!」
「バカ。もっといい所連れてってやるよ。」
「おーーっ!!」
社員たちが歓声を上げる中、高橋社長は真介だけ暗い表情で
うつむいていることに気付き・・・。

陽子のマンション
「そういえばお姉ちゃんさ、リストラの話どうなった?」
「ああ・・」
「あれ?聞いちゃまずかった?」
「ううん。それがさ、一回面接して、それ以来、面接の呼び出しが
 なくてさ。」
「え?どういうこと?」
「どういうことだろうね。」
「あれじゃん?リストラの話、無くなったってことだよ!」
「無責任に呑気なこと言わないでくれるかなー。」
「じゃあさ、半年後に退職って方向で話進めてくれてるんじゃない?
 その面接官の人。」
「縁起でもないこと言わないでよ!」
「つーかどっちの結論出しても怒るんじゃんよ。」
「あー。でもホントどっちなんだろう。
 日々働いてても落ち着かないし、
 上司っていうか役員連中の顔見ると、
 不信感は募っていくし。」
「ま、一度死んでくれって言ってきた連中だもんね。」
「やっぱ半年後に退職って方向で話進めて、
 退職状況悪くさせていく作戦とかかな。」
「え!?ダメだよ。どうせ辞めるなら退職金がっぽり貰わないとさ!」
「・・だからあんたは自分のことしか考えてねーんだろうって。」
「違うよ。お姉ちゃんの為じゃんよ。」
「はぁ・・・。」
「ため息つくと幸せ逃げますよー。」
「もうとっくに逃げまくられてる気分だって。」
「愚痴っぽい40オーバーなんて、誰も好きになんないよー。」
「・・・ウジウジしててもしゃーないか。」

高級クラブで盛り上がる高橋と部下たち。
そんな中、真介は相変わらず浮かない顔。
「どうした?」と社長。
「ああ・・」
「今回も、お前がトップの成績だったぞ。
 ほら。」金一封を差し出す社長。
「ありがとうございます。」
「成績上がれば上がるほどむなしいか。」
「・・いえ。」
「リストラは、ネガティブな行為じゃないぞ。」
「・・・」
「俺たちの仕事は、
 仕事とは何かっていうことを突き詰めていくのが、
 仕事だ。」
「・・・はい。」
「じゃあ、仕事って何だ?」
「・・・仕事・・ですか。
 それは・・・」
「その答えが見つかったら、リストラはネガティブじゃないって、
 胸張って言えるようになる。」
「・・・」

真介の携帯が鳴る。
「もしもし。」
「夜分に、すみません。
 村上さんの携帯でよろしいでしょうか。」陽子の声。
「はい。」
「森松ハウスの芹沢陽子と申します。
 リストラの件で、お電話しました。」
「・・はい。」
「どうして、面接が一回で終わってしまったんでしょうか。」
「そのことですか。」
「結局、人事部からも、何の連絡もありません。
 半年後に退職ということで、話は進んでるんでしょうか。」
「・・・もし良かったら、直接会ってお話しませんか?」
「・・え?」
「本当はこれ、規則違反なんですけど。」
「・・・」

噴水の前で待つ真介に歩み寄る陽子。
「あの。」
「・・こんばんは。」
「すみません。わざわざ私の個人的な話の為に。」
「いえ。喫茶店でも入りましょうか。」
「はい。」
「行きましょうか。」

「あ!すみません。ちょっと待ってて下さい。」
陽子はそう言い、階段の方へ走り出す。

「大丈夫ですか?お手伝いしましょうか。」
ベビーカーを抱え困っていた女性に手を貸す陽子。

その姿に、真介は思い出す。陽子が老婦に手を貸していたことを。
「そっかぁ。あの時の!」
陽子の笑顔を見ながら真介の顔にも笑みが浮かんでいた。

「すみません。
 ・・・お待たせしました。行きましょうか。」
「あの、」
「はい。」
「夕飯ってまだですよね?」
「・・え?」
「もし良かったら、喫茶店じゃなくてご飯食べながらにしませんか?
 リストラの話。」
「い、いや・・あの・・」
「行きましょう!いい店知ってるんです。」
「え??いや・・ちょっと・・」
戸惑う陽子に構わず、真介は晴れやかな笑みを浮かべて歩き出し・・・。


真介は、お年寄りに手を貸そうとする優しさを持って
いますが、仕事にはとても厳しい。そしてやり手。
リストラを告げた相手に怒鳴られても、胸倉掴まれても、
少しも動じず、相手の目をじっと見つめて語りかける。
すごくタフな人だと思います。
次週はそんな彼の弱い面も描かれているようで。

しかし、人の一生を左右させる大変な仕事ですね。
恨まれるばかりの仕事・・・。
でも社長は
「リストラは、ネガティブな行為じゃないぞ。」
「俺たちの仕事は、
 仕事とは何かっていうことを突き詰めていくのが、
 仕事だ。」
と言っていました。
じゃあ、仕事とは何だ?
生活していくために必要なこと?
生きがい?

この変の答えを、真介と一緒に探してみたいです。

突然去ってしまった年上の恋人。
彼女は若い恋人の未来を考えて身を引いたんでしょうね。
そこへ現れたのが陽子。
彼女の前向きな姿勢に、真介が惹かれていくようなので
そこにも注目。

GPって何?
特○よりも強い意味を持っているようです。
これを知ったら会社に幻滅する。
どんな意味があるのか気になる!

リストラという重いテーマの中に笑いが上手に
散りばめられて、好感を持ちました。
陽子と泰子、真介と山下の日常の会話に和みます。



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主題歌
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久保田利伸
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原作
4101329710君たちに明日はない (新潮文庫)
新潮社 2007-09-28

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4101329729借金取りの王子―君たちに明日はない〈2〉 (新潮文庫)
新潮社 2009-10-28

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4104750034張り込み姫 君たちに明日はない 3
新潮社 2010-01-15

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B00322P8VO君たちに明日はない (坂口憲二 主演) [DVD]


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キャスト
村上真介:坂口憲二(日本ヒューマンリアクト社員)
芹沢陽子:田中美佐子(森松ハウス、課長代理)
芹沢泰子:須藤理彩
山下隆志:北村有起哉
川田美代子:吉田桂子
順子:麻生祐未
高橋栄一郎: 堺正章(リストラ請負会社・日本ヒューマンリアクト社長)

平山和明:村田雄浩
和久井:小磯勝弥
人事部長:谷本一
部長:須永慶
社長:伊藤延広
得意先社長:田口主将
男:徳井優
重役:石山雄大
老婦:森康子

スタッフ
脚本:宅間孝行
音楽:松本晃彦



坂口憲二さんの主な出演作品




この記事へのコメント
ちーずさんこんばんは、テーマとしては難しく最終回を迎えても答えはでない気がしますが人と人の繋がりを丁寧に描くヒューマンドラマに期待したいです!

トップの成績を収めても自分の仕事に疑問を抱き続ける真介、プロポーズした年上の女性の失踪を引きずり優しさを秘めた陽子に惹かれてプライベートで会う社則違反まで犯してしまう真介の笑顔が良いですね!

リストラを請け負う専門会社があるなんて知らなかったです、個人の情報を徹底的に調べ追い込んでいく姿は見るのが辛い、でもそれをしないと真介は給料も貰えずリストラの対象になってしまう、不義理をした平山を会社に内緒にして退職金を満額受け取れる処理をした真介ですが、それが本当に良かったのか判断出来ませんでした!

陽子姉妹のやり取りも良いですね、難しいドラマの中で一息つけます、これからの真介と陽子の絡み、真介を心配する社長の言葉が楽しみです!
Posted by けた at 2010年01月19日 20:09
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Weblog: あるがまま・・・
Tracked: 2010-01-19 09:30

NHK「君たちに明日はない(新番組)」第1話:怒る女 〜リストラ請負人に初めての強敵現る
Excerpt: 前クールの「外事警察」を思わせる、ハードタッチのビジネスドラマな展開を見せるのかと思ったら、芹沢陽子が登場して雰囲気が一転。村上は、ひと目惚れモード? ガクッ。
Weblog: 伊達でございます!
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垣根 涼介 著 『君たちに明日はない』
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Weblog: 『映画な日々』 cinema-days
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