2010年01月25日

君たちに明日はない 第2話

『去り行く者』

高橋(堺正章)は、音楽事務所社長大西(伊武雅刀)から、
創業以来事務所を支えてきた2人の大物プロデューサー
黒川(中村育二)と石井(田中哲司)、
どちらか一方の首を切りたいと依頼される。

高橋は、あえて真介にこの難題を一任する。

職業観の全く異なる対照的な2人。
どちらも否定できず追い詰められる真介。

一方、陽子は、リストラは免れたが、会社への不信は、
もはや拭えないものになっていた。

(ゲスト:伊武雅刀 中村育二 田中哲司)


第2話の冒頭シーンは、ベトナム料理のお店で
食事をしながら大笑いする陽子と真介。
どうしちゃったの?というくらい、楽しそう。
真介、まだエスニックを卒業出来ないんですね。
朗らかに笑う陽子に惹かれているのかな?


「あの・・そろそろ。」陽子が切り出す。
「本題、ですよね。」
「・・・はい。」

まだ本題始める前に、
よくこんな和やかな雰囲気に。(笑)
真介、陽子の人柄なのか?


「今日の話は、御社には絶対内緒でお願い出来ますか?」
「はあ。」
「今現在芹沢さんは、条件交渉中31名の中に分離されています。
 残る、断固拒否の方を含めても、現在の時点で、
 森松ハウスが希望された、退職者人数の最低ラインは
 クリアされました。」
「・・・」
「ですが、我々は、これからも継続して、
 退職者の数を増やしていく方針です。」
「・・そうなんですか。それじゃあ・・・
 面接がないのは・・・。」
「ここからのお話は、本当の企業秘密ですからね。」
「はい。」
陽子の隣に席を移る真介。
「候補者リストを森松ハウスさんから頂いた時点で、
 実は、分類がなされてまして。」
「絶対に辞めさせたい人を特○と呼ぶとか、
 そういうのですか?」
「週刊誌、ご覧になりましたか。」
「はい。」
「実は、それ以外にも、GP、逆金、というのがありまして。
 GPというのは、Gray Position。
 どちらかというと辞めさせなくてもいい、
 まさに、グレーの立場の人。
 逆金というのは、逆金星の略で、
 絶対に辞めてもらったら困る人。
 私たちが面接で上手く誘導できずに、
 退社の意志を固めてしまったら、
 金星を採り損ねたということになる、
 という意味で、逆金。」
「はぁ。」
「で・・・芹沢さん、今回は・・・
 実は・・・GPだったんです。」
「・・・」
「人事部長さんの話によると、現在退社の意志のないGPの方は、
 候補者リストから外すとのことです。
 一週間ほどで正式な通達がいくはずです。」
「・・・そうでしたか。」
「良かったですね。
 これで、心置きなく、プロジェクトを進められるんじゃ
 ないんですか?」
「ええ・・・。」

店を出た二人。
「ちょっと!村上さん、まずいです!
 ここは私が払います!」
「いえ、ここは自分が誘いましたから。」
「私個人の話の為にお願いして時間を割いてもらった
 わけですし。」
「今回のお話は、本来してはいけないことですので、
 口止め料ということで。」
「でも・・・」
「GPの芹沢さんが考えた末に、ここに来て退社の意志を
 固められたらまずいって、
 実は、僕のほうも焦ってたんです。」
「それで会って直接話をしたいって。」
「そうなんです。すみません。」
エレベーターに乗り込む二人。
「じゃあ、今夜の分は今度何かでお返しさせて下さい。」
「・・・お返しですか。
 じゃあ。」
真介が陽子にキスをする。
「・・・え・・どういうつもり・・」
「お返し・・・ということで。」
「・・・ちょっと待ちなさいよ!」
陽子、真介の頬に思い切りパンチ!
「イタッ!」
「リストラ面接官がナンボのもんよ!
 立場利用したつもりかもしれないけど、
 こっちはそんなの、屁でもないのよ!!」

『明日への鐘は
 その階段を登る者が
 鳴らすことができる』

まさかそこでキスするとは!
陽子の動揺と、その後のキレっぷりに大笑い!


陽子のマンション
「冗談じゃないわよっ!!」怒り心頭の陽子。
「でも良かったじゃん。リストラされなくて。」妹の泰子(須藤理彩)。
「あんたはね、お金借りれるから嬉しいんでしょ!」
「それもあるけど、そうじゃないって。」
「ほんっとむかつく!!
 安っぽい女だと思ってんのよ!!」
「その親父、息臭かったの?」
「親父じゃないよ。泰子と同じくらいじゃないの?」
「え?そんなに若いの?
 じゃー何それ。
 すんげー不細工とか?」
「別に、不細工じゃないけど。」
「何だよそれ。
 もしかして、いい感じにカッコイイの?イケメン?」
「まあ、世間一般的に言えばそうかもね。」
「じゃ、うちのダーリンと比べたら?」
「・・・ミッキーとは比べ物になんない位イケメンかも。」
「・・・すいません、妹、チョークスリーパーかまします!」
「何すんのよ!」
「何すんのよじゃないわよ!
 若いイケメンにチューされて怒るオバフォーが
 どこにいんのよ。」
「オバフォーって何?」
「オーバーフォーティー。
 アラフォーとかでごまかさないで認めなさいよ!
 アラウンドじゃなくて、オーバーなの!
 越えてんの!
 その辺りじゃなくて越えてんの!
 それにある意味、おばさんのオバも掛けてみたのよ。」
「なに興奮してんの?」
「独り者長くて、誰も寄り付かないと思ってたら、
 よろしくやってんじゃないよ。
 あーあ、心配して損した!」
「あ、もしかして又ミッキーとケンカした?」
「・・・」
「そうなんだ。何があった?」
「・・・」
「まあ言いたくなければ言わなくてもいいけど。」
「聞いてー。」
「えーーー。」
「お願い、聞いてー。ていうか話すね!
 今日ね、ファイトミュージックっていう、音楽系の
 プロダクションに行ったのよ、ミッキーと。」
「何しに?」
「オーディションよ、オーディション。」

実はそのプロダクションの社長と、真介が勤める会社の
社長・高橋は大学時代の友人で、次の依頼人でもあった。

泰子とミッキーはオーディションで聞いても貰えず。

社長室
大西社長は監視カメラでオーディションの様子を見ていた。
「気になるのは、あの二人の仕事っぷりってわけか。」と高橋。
「この二人は創業以来、私の手となり足となって、
 ここまで会社を大きくするのに、本当に頑張ってくれた
 功労者なんだ。」
「業界的には、二人はかなりの有名人らしい。」
「村上さんは最近、CDが売れなくなっているって話
 聞いた事あります?」と大西。
「ネットでダウンロードできるからとか、 
 そういうことですか?」と真介。
「まあ、そんなこんなも含めて、色々大変なご時世でして。
 でまあ、その生き残りをかけた組織改善を来年に控えてまして。
 この二人の不仲というか、やり方の違いが原因で、
 改善のアウトラインも決まらない状況で。」
つかみ合いになる二人。
「ちょっと・・大丈夫ですか?これ。」真介が心配する。
「外部の人間の前でもこれですから。」と大西。
「仕事できる二人といえ、さすがにまずいんじゃないか?
 これは。」と高橋。
「断腸の思いなんですが・・・
 二人のうちいずれか一人、辞めてもらおうと思っています。」
「そしてそれを判断するのを、お前に任せようと思ってる。」
「え!?自分がですか!?」

「ファイトミュージックは資本金一億5千万。
 従業員数56名。
 代表は大西進。
 現時点で抱えているアーティストは、
 ソロ、グループあわせて22組。
 音楽プロダクションの規模としては中堅らしいが、
 有名どころのドル箱も結構抱えている。
 現在8名いるプロデューサーの中からトップの二人、
 10代から、バンドのドラマーとして活躍していた黒川明彦と、
 (黒川は8年前に離婚、養育費+扶養費で月30万円)
 大学で経営学を学び、税理士の資格を持つ、石井正人、
 (妻と子供二人。家のローン返済に月15万円)
 どちらか一人、クビを宣告する。」


真介は陽子に電話をしてみるが、、陽子は無視。

森松ハウス
退職の準備に追われる平山課長にお茶を持っていく陽子。
「課長、本当に、お疲れ様でした。」
「うん。
 課長職はとりあえず、芹沢が引き継ぐんだよな?」
「・・はい。」
「確かお前も、リストラ候補だったよな?」
「現場では、回避したいたいです。」
「あ・・そっか。」
「すみません。」
「いや、謝る事はないよ。
 ・・・頑張れ。
 ま、頑張っても、むなしいだけかもしれないけどな。」
「本当に・・送別会とかいいんですか?」
「惨めになるだけじゃねーか。
 ・・・じゃ。」
私物をダンボールに移し変え、平山が社を出ていく。

「決めた!」と陽子。
「何を、決めたんですか?」と部下の和久井。
「全力で仕事に生きる、私は。」
「え?」

そんな陽子に、真介から宅配便が届く。

『前略、昨日はどうも失礼いたしました。
 村上です。
 お詫びといっては何ですが、レアなチケット、
 入手しました。
 もう一枚は僕が持っています。
 もし、お気に召さなければ、捨てるなり、
 金券ショップに持っていくなり、
 ご自由になさって下さい。
 僕からは、これ以上お誘いはしないつもりです。
 当日、来て頂けたら嬉しいです。』
真介はファイトミュージックの社長が手に入れてくれた
久保田利伸のコンサートチケットを同封していた。

「どういうつもりよ。
 何なの?あの男。
 私はそんなに安っぽい女じゃないっつーの。」

友人・山下と居酒屋で飲む真介。
「今度のお姉さんおいくつ?」
「40半ば。」
「随分、年いったお姉さんだな。
 つーか相変わらずいくねー。前よりちょっと若いけど。」
「性格も全然違うんだけどね。」
「でも良かったじゃんよ。真介が本気になる人見つかってよ。」
「まだ全然本気とかじゃなくて。」
「でも好きなんだろ?」
「どうなんだろ。」
「俺ら二人そろってめでたくゴールインといくか!」
「おいおい、まだ諦めてないの?キャバ嬢。」
「今度紹介するよ。」
「え?いつからそんな中に発展した!」
「紹介するのはキャバクラで。」
「あのな!
 友達連れてきてーとか言われてんだろ。
 ほんと完璧に向こうの思う壺だな。」
「魔性の女だよ、あいつは。」
「お前が間抜けなだけだっつーの。」
「40代のオバサンに恋して悩んでるお前に言われたくねー
 っつんだよ。」
「悩んでねーって。
 つか、そもそも上手くいく気しねーし。」
「上手くいきたくて俺に相談してんだろ?」
「ああ、そうじゃないんだよ。相談したかったのは。」
「仕事関係?」
「全然自信ねーっつーか。」
「アハハハハ。今まで散々やってきて何言ってんだよ。」
「今度のはさ、二人のうちの一人を、
 俺が選ぶわけ。
 リストラする方を。」
「真介の判断で?マジで?」
「そう。」
「・・・それキツいな。
 でもさ、そうやって人と向きあう仕事ってなかなかないかもな。
 言うなりゃ、他人の人生と向きあう仕事っての?」
「他人の人生と向きあう。」
「みんな誰しも自分の人生とは向き合っているけどさ、
 他人の人生までは向き合えないもんな。」
「他人の人生に向きあうのに必要な物って何だろう。」
「他人の人生と向きあう職業ってのは何がある?
 教師だろ。」
「医者とか?」
「あと・・・結構ねーな。」
「あ!」
「どうした?」」
「そっか!そうだよな。」
「何一人で納得してんだよ。」
「ごめん、俺、ちょっと会社戻るわ。」
「え?ちょっとまだ話途中だぞ。
 てか、お前が呼び出したんだぞ!」
「今度連絡します!」
「・・・あり得ねー。」

会社に戻った真介は、徹夜で資料を作り上げる。

真介が作ったのは、無記名アンケート。
「これを、所属するアーティストの皆さんに
 お配りしたいんですが。」
真介が大西社長にアンケートを見せる。
「もちろん、アンケートは無記名で、
 この封筒をお使いいただきます。
 青いのは石井さんのアーティスト用。
 緑のは黒川さんのと、識別出来るようになっていて、
 直接私宛に送っていただけます。
 内容の記入も、基本的にはパソコンやワープロを
 お使いいただきます。」
「アーティスト側の匿名性は完璧にする。」と大西。
「人を評価するデリケートな件ですから。」
「この、最後の質問は?」
「実は、その質問の答えが、今回のアンケートの
 一番の目的で。
 それまでの質問は、最終的にそこへ導くための布石です。」
その言葉に社長が微笑む。

帰り道、真介は山下に電話をする。
「隆志のアドバイスのおかげで、上手くいきそうだよ。
 ありがとな。」

その直後、立ちくらみがし、座り込む真介。
別れた恋人の声が聞こえたような気がし、振り返る。

4年前。
「人をクビにするのにさ、
 死に物狂いで働いてるんだね。」と順子(麻生祐未)。
「そういう言い方されるとなー。」
「でもそういうことでしょ?」
「酷い仕事ですよね。」
「仕事には、酷いも偉いもないんじゃない?」
「だけど・・そう思ってるんですよね?」
「そう思ってたら、デートになんか付き合わないわよ。
 何だかんだ心配してたけど、何とかやってけそうじゃない?
 クビ切りの仕事。」
「クビ切りって・・。
 そう言われると微妙に落ちるなー。」
「だって実際そういう会社でしょ?」
「順子さんとのデートを生きがいに頑張ってるんですけど。」
「ちっちゃい生きがいだなー。
 ね、もうちょっと離れて歩こうよ。」

ベトナム料理
「いい食べっぷりだねー!」
「若いから。」
「ごめんね、若くなくて。」
「若いって、順子さんは。」
「ありがと。」
「ね、順子さん。」
「うん?」
「順ちゃんって呼んでいいですか?」
「他人だからダメ。」
「こうなったら付き合ってくれるって言うまで
 引き下がりませんよ。」
「もう一年だよ。いい加減諦めなって。
 このままずっとこういう、たまにご飯食べる仲良しでいよう。」
「はぁ。俺の本気はどうやったら伝わるんだろう。」

「割り勘にしようって。」
「いいのいいの。ボーナス出たから。」
「約束したでしょ。毎回割り勘にするって。」
「たまにはいいでしょ。」
「・・・じゃあ、次は私がご馳走する。」

エレベーターに乗り込む二人。
「・・・順子さん。」
「うん?」
「俺、毎回きちんと支払うぐらい、給料貰ってるし。
 そんなに子供じゃないからさ。」
「わかってるよ。」
「わかってないよ。」
「え?」
「付き合ってほしいっていうの、今日で最後にする。」
「・・・じゃあ、今日で、」
真介が順子にキスをする。
「ちょっと・・・」
「すみません。
 でも・・・
 そんなに俺信用出来ないかな。」
「すぐに嫌になっちゃうと思うよ。」
「ならないって!」
エレベーターが開く。
「しょうがないなぁ・・。
 じゃあ、試しに・・・順ちゃんって呼んでもいいよ。」
「待って!順ちゃん!順ちゃん!」

この時、黒川とすれ違ったことに真介は気付かなかった。

路上で歌い終えたアーティストを食事に連れていく黒川。
「どうだった?今日の手ごたえは。」
「イマイチだったっす。」「人も少なかったしな。」
「バカ! わかってねーよお前らは。
 人が少ないからちょっとモチベーションが落ちたんだろ。
 そういうのが聞いているほうに伝わるんだよ。」
「でも、デビューしたら何ていうかもっと・・
 いい感じだと思ったのに。」
「デビューしてからの方が大変なんだよ。 
 お前らみたいに甘い考え持っているやつらはな、
 たとえ1曲売れてもすぐ消えちまうんだって。」

社長室
「・・・自分らもう、音楽、やめます。」
「お世話に、なりました。」
「どうして。だってまだデビューしたばっかだろ。」と社長。
「甘くないってわかったんで。」
「黒川と何かあったか?」
「・・・」

そこへ、石井が呼ばれてやってくる。
アーティストが部屋を出ていくと、社長は石井に言う。
「辞めたいそうだ、音楽を。」
「チャットはリスクが多すぎますからね。
 問題ないと思います。」
「・・・そうか。
 それで?どうした?」
「向こう5年間の事業計画を見込んで、
 新曲を出した場合のプロモーション費用と、
 それに対する売り上げ見込みから、
 力を入れるべきアーティストを、何組かに厳選しました。」
「なるほど。」
「今風向きが来ているアーティストに重点的に力を入れて、
 新人や、売り上げが落ち目のアーテイストに掛かる費用を
 極力抑えないと、経営的にまずいことになります。」
「そうかもしれんな・・・。」

2009年

「そしてついに、決断をしなくてはならない日がやって来た。」

「今日は、なんだか心臓が、トクトクいってます。」
と真介のアシスタント・川田美代子(吉田桂子)。

「それは、俺も同じだった。
 今回はいつものように、希望退職者を募ったり、
 そちらに誘導していくのではない。
 面接の結果でどちらか一人の、
 首を切るのだ。」


目を閉じ、ふーっと息を吐き出す真介。

面接室に石井がやって来る。
自己紹介後、面接が始まる。
「何か、お飲みになりますか?」
「じゃあ、ホットをブラックでお願いします。」
「今回、一応確認させていただきたいのですが。」
「大丈夫ですよ。あなたが決定した結論に従います。」
「恐縮です。
 では、早速、色々お尋ねします。」
「はい。」
部屋の様子はビデオカメラで撮影されていた。
「少々失礼な物言いもあるかもしれませんが。」
「構わないです。
 こういう業界ですから、杓子定規じゃないほうが、普通です。」

社長室
「冷静だねー、石井は。
 村上さんたちに気遣う余裕もありますし。」

面接室
「まず、あなたが担当しているアーティストは、
 ほとんどがベテランで、
 売り上げもコンスタントに5万枚以上確保していますが、
 逆に、新人のミュージシャンとなりますと、
 数も少ないですし、売り上げも、極端に少ないですね。」
「基本的に新人発掘は、一切行っていません。
 回されてきて担当する新人は、いるにはいますが。」
「新人を発掘、育成する能力がご自分にはない、
 とお考えですか?」
「統計上、デビュー曲で当たっても、
 5年後に生き残っているのは数%です。
 その範囲内であれば、決して自分が他より劣るとは思いません。」
「確立から言って、商売としての旨みがないから
 冒険はしない、いや、したくない。
 ということですか?」
「そうです。」
「でも、クリエィテイブに関わる人間として、
 才能に度肝を抜かれた新人さんはいらっしゃらなかったんですか?」
「もちろんいました。
 しかし、どんなに才能があっても、必ず売れるとは限りません。
 自分だけの感性じゃなく、誰もが売れると確信しても、
 時代やタイミング、競合するアーティストなど、
 様々な理由で売れなかったりする。
 逆に、そういう才能に惚れこんだ、アーティストに
 なればなるほど、売り出すためにお金をかけます。
 メガヒットを想定しますから、
 並みのミュージシャンの失敗よりも、
 ビジネスとしては大打撃を食います。」
「なるほど。」
「ところが、これはダメだと思っていたのが結果、
 大スターになるケースもある。
 売れるか売れないか。
 これはもう、神のみぞ知る領域です。
 そこに私は敢えて足を踏み入れて、
 博打を打とうとは思わない。
 それは、会社の経営のためです。
 スターになるやつは何をしてもしなくても、
 最終的にはスターになるんです。」
「では、あなたが担当した、業界からフェイドアウトした
 新人さんたちは、その後どういう人生を送っていますか?」
「・・・それは・・・
 正直、私が関知することではありません。
 彼らの人生に責任を負えるのは、彼らだけで、
 本人以外最終的に、自分の人生に責任を持つことなんて
 できないと思います。」
「ごもっともかもしれません。」
「彼らにとっては冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、
 20年前、社長の大西と会社を立ち上げた数年は、
 無我夢中でした。
 新人しかいませんでしたし、
 それこそ、頭をペコペコ下げ続け、
 屈辱以外味わったことのない毎日でした。
 その何年かで、骨身に染みて学んだんです。
 確実な見通しは絶対に必要だと。
 だから、安定したコンテンツ、つまり、
 コンスタントに売り上げを上げてくれるアーティストを
 揃えることが、何よりも重要だと。」
「それである時期から、他社よりの引き抜きも
 積極的に行ってきたんですか。」
「そうです。
 会社から給料を貰っている以上、
 慈善事業ではありません。
 エンターテイメントビジネスなんです。
 会社に、より利潤をもたらすことが仕事なんです。
 夢を追ってばくち打ちをする会社に、
 お金を貸す銀行がありますか?
 それで経営計画が立てられますか?
 第一、アーティストに、印税だって支払えなくなるかも
 しれない。
 そうなったらもうおしまいです。
 理想論をいくら言ったところで、元も子もない。」

社長室
「黒川への牽制ですね。」
「うーん・・・。」と社長。

石井との面談を終え、ふーっと息を吐く真介。
「こういう業界だからやり手の人っていっても、
 もうハチャメチャなのかと思ってました。」と美代子。
「次に来るよ。ハチャメチャなのが。
 心しておいてね。」

そこへ、黒川がやって来た。
「おいおい、お兄ちゃんいくつだ?」
「33です。村上真介と申します。」
「いらねいらね。
 お嬢さんいくつ?」
「22です。」
「普段どんな曲聴いてんの?」
勝手にコーヒーを入れ始める黒川。
「えーっと・・」
「好きなミュージシャンは?」
「・・・」

「すみません、黒川さん、今日はあなたの面接なんで。」
「勘弁してくれよ。
 タダでさえ石井の野郎と比べられて、
 胸糞悪いっていうのによ。
 俺の人生左右するのがこんな若いあんちゃんって。
 ま、社長はどっかで見てんだろう。
 勘弁してくれよ社長。
 社長の言うことなら何でも聞くって約束したんだから、
 ・・・ほら!見っけた。」
隠したカメラを発見する黒川。
「社長。こんな盗撮みたいな真似やめてさ、
 話聞きたいんだったらこの部屋おいで、ね!
 俺は別にこんなことしなくたって、
 全部本音で喋るから。
 社長!」

社長室
「参りましたね。どうします?」
「・・・そもそも、村上君に全て託すって決めたんだ。」

面接室
「早速ですが、それぞれのアーティストの売り上げに、
 かなりのばらつきがありますが。」
「当たり前だろ!
 全員ヒットさせることなんて無理なんだよ。」
「いや、ヒットしている人より、売れてない人の赤字幅が
 大きすぎます。」
「それは、トータルで赤字出している人に言うセリフだろ。
 ほら見ろこれ。
 ちゃんと最終的には年度末で数字の辻褄合わせてるだろ?
 コケもある分大ヒットだってあるんだからよ。」
「年度計画などの、経営的な見通しは立て辛いですね。」
「お前ここどこだと思ってんの?
 お役所じゃねーんだからよ。」
「でも、新人に掛けられている宣伝費や接待料を削って、」
「石井みたいにやれってか?」
「そうすれば、社内での信頼性も上がると思いますけど。」
「社内?
 俺はあいつらと仕事してんだよ!」
「・・・結果、上手くいかず、赤字が続く可能性があるのなら、
 堅実な路線を探る方法も。」
「おい兄ちゃん。」
「はい。」
「俺たちは、何を売ってるかわかってるか?」
「ミュージシャンであり、彼らの作った歌です。」
「そうじゃねーよ。
 俺たちは、感動を売ってるんだよ。」
「感動、ですか?」
「客は歌を聞き、感動するから金払ってくれるんだ。
 感動しないもんには金払わねーんだよ!
 じゃあよ、その感動ってのは、何があったら生み出されるか
 知ってるか?」
「わかりません。」
「溢れるような才能と、血の滲むような努力と、
 聞いてくれるお客さんに対する愛だ!」
「・・・才能と、努力と、愛、ですか?」
「石井には愛がねーんだよ。
 だから当たり障りねー情熱のやつらと、
 当たり障りねー作品作って、
 当たり障りねー売り上げしか上げられねー。
 デビューしたての新人なんていうのはよ、
 例えてみれば赤ん坊みてーなもんだよ。
 育てようによっちゃ物凄い光を放つかもしれない。
 そりゃ確かに、100に一つかもしれないよ。
 でもよ、大事な時期にきちっと栄養を与えてやれねーで、
 歩き方教えてやらねーで、
 話しかけてもやらねーで、
 まともな子供に育つか?
 何もしなくても出てくるやつは出てくるなんてのは
 戯言なんだよ!」
「・・・」
「才能ってのはな、商品じゃねーんだよ。
 そいつの人間そのものなんだよ。
 その人間と向き合いもしねーで、
 才能が開く開かないなんて話は出来ねーんだよ。
 だから俺は向きあうんだよ!
 とことん向きあうよ!
 ベテランだろうが新人だろうが、
 とことん向き合って愛注ぐよ!」
「・・・」
「それでもよ・・・それでもダメだったら・・
 それはそれでしょうがねーじゃねーか。
 相手だって納得して諦められる。
 そして又笑って音楽と向き合える。」
「・・・」
「俺のこと、とんだ浪花節野郎だと思うか?」
「いえ。」
「ほんとかよ。」
「本当です。」
「俺がそうやって手を掛けてブレイクしたヤツラは、
 この会社の財産だ。
 言ってる意味わかるか?」
「よくわかります。」
「俺が言いたかったのはそれだけだ。
 あんたらの質問に答える気はない。
 以上!
 じゃ、レコーディングの時間だから。」
「ちょっと黒川さん!」
黒川は出ていってしまう。

「何なの・・今の・・。」
「・・・」
「どうぞ。」美代子が真介にコーヒーを渡す。
「美代ちゃんならどうする?」
「・・難しいですね。」
「難しいね。」
「でも・・・無責任に言っていいですか?」
「いいよ。」
「私は・・・こっちです。」
「・・・なるほどね。
 でも・・・本当にこれでいいのかな。」

洗面所で顔を洗う真介。

「俺の決断で、一人の人間の人生が、決まる。」

その重圧に耐えられず、吐き気に催し、
真介はトイレの個室に駆け込み・・・。

社長室
「お待たせしました。」
「いやぁ、お疲れ様でした。
 結論は?」
「出ました。私なりの結論です。
 結局、悩んだ末、アンケートの結果が私の答えとなりました。」
「例の最後の質問ですか?」
「そうです。
 あなたはもし、今のプロデューサーが同業他社に移籍したら、
 契約条件が今と同等なら、彼についていきますか?」
真介はそう言い、書類を社長に差し出す。
そこには、石井の名前が書かれていた。

「切るのは・・・石井ですか?」と社長。
「石井さんの担当22名のうち、
 ついていくと答えた方は、2名。
 黒川さんの担当20名のうち、
 ついていくと答えた方は、なんと全員です。」
「そんな・・・
 黒川が辞めてよそに移ったら、
 やつの担当は全員、移籍するってことですか?」
「アンケートはあくまでアンケートです。
 実際にその場面になってみないと、彼らがどう動くかは
 わかりませんが。」
「・・・それにしても、こんなにはっきり結果が出るなんて。」
「音楽プロダクションの一番の財産が、アーティストだとすれば、
 この考え方に異存がなければですが、
 アーティストたちの心を掴んでいるのは、
 間違いなく黒川さんです。」
「・・・」
「対する石井さんは、アーティストたちをあくまで数字として
 見ています。
 恐らく、この先経営は安定しても、人材という財産は、
 流動的であり続けるでしょう。」
「参ったな・・・。
 石井のほうが、はるかにこの会社のことを考えてくれて
 いるのに。」
「正直最後まで悩みました。
 面接官が私じゃなければ、石井さんを残すと
 選択したかもしれません。」
「・・・」
「これは、お二人の仕事が、他人の人生と向きあうことだと
 思った私の、私なりの結論です。」
「・・・」
「・・・それでは、失礼します。」
「どうも、ありがとうございました。」

音楽スタジオ
会社からの連絡を受けた黒川は、スタッフ達にそれを告げる。
「残れるってよ。」
「やったーーーっ!!」
アーティスト、スタッフたちは大喜び。

そして石井は・・・
「そうですか・・・。残念です。」
「すまん。」社長が頭を下げる。
「頭を上げてください。
 自分は・・自分は社長の決定に従うまでです。」
「・・・すまん。」
「今まで、本当にお世話になりました。
 ありがとうございました。」
「・・・ありがとうな。」
二人は泣きながら感謝の気持ちを伝え合い・・・。

ヒューマンリアクト
「なんとか、ならなかったんでしょうか。
 どちらも、素晴らしい社員だと思いました。
 それでもリストラされなきゃいけない。」と真介。
「リストラされた人間には、会社を離れるべき、
 それなりの理由があった。
 ただ、それだけのことだ。」と社長。
「・・・でもきっと石井さんは、今の会社を辞めても、
 きちんと新しい人生を歩んでいける人だと思います。」
「リストラされたのに?」
「むしろ、もっといい人生が待っているかもしれない。
 いや・・・そう信じたいです。」
「じゃあ、リストラされて最高じゃないか、その彼は。」
「いや・・・。」
「まだまだ、わかった気で仕事をするなよ。」
「・・・」

居酒屋
「悪いな、隆志。
 隆志だけだよ、俺の心の叫びを聞いてくれるのはさ。」と真介。
「何だよ、今日の相談は、仕事か?女か?」
「仕事に決まっ・・・あ!あ、あ!!」
「どうした。」
「今日だった・・久保田・・」
「まさか、また呼び出しておいて、」
真介が店を飛び出していく。
「おーーーいっ。」

久保田利伸スーパーライブ会場でノリノリな陽子。
「舐めてんのかよあの男!イエィイェイ!」
陽子の隣りは空席のまま。

コンサート会場へと猛ダッシュする真介。
「ヤバイ・・・ヤバイ・・・ヤバイ!!」


他人の人生に向きあう。
友人との会話にヒントを得た真介。

「彼らの人生に責任を負えるのは、彼らだけで、
 本人以外最終的に、自分の人生に責任を持つことなんて
 できないと思います。」と石井。

「才能ってのはな、商品じゃねーんだよ。
 そいつの人間そのものなんだよ。
 その人間と向き合いもしねーで、
 才能が開く開かないなんて話は出来ねーんだよ。
 だから俺は向きあうんだよ!
 とことん向きあうよ!」と黒川。

どちらの意見も正しいのだと思います。
でも、人を育てる仕事だからこそ、この違いが大きかった。

アーティストをあくまでも数字として評価してきた石井は、
最後は数字で黒川に負けてしまいました。

でも、これは勝ち負けではないんですよね。
石井をリストラすることを泣きながら詫びる社長、
泣きながら感謝の言葉を伝える石井。

きっと石井なら、次の会社でも実力を発揮出来るはず。

人の一生を左右するという仕事、真介はとても苦しんで
いるようです。本当に大変な仕事。胃に穴が開きそう。
そんな真介が、リストラしてもらって良かったと
感謝されるような日は来ないのかな。
なんだか恨まれるばかりで、真介の気持ちになるとしんどいです。

そんなドラマですが、陽子と真介、陽子と泰子の会話が
楽しくて、重苦しくなり過ぎずに助かっています。

ところで、陽子へのキスは、順子と同じようなシチュエーション。
真介はまだ順子のことを吹っ切ってないのでしょうね。
一度ちゃんとさよならをしなければ、
次の恋に進めないのかな。



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主題歌
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原作
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キャスト
村上真介:坂口憲二(日本ヒューマンリアクト社員)
芹沢陽子:田中美佐子(森松ハウス、課長代理)
芹沢泰子:須藤理彩
山下隆志:北村有起哉
川田美代子:吉田桂子
順子:麻生祐未
高橋栄一郎: 堺正章(リストラ請負会社・日本ヒューマンリアクト社長)

平山和明:村田雄浩
和久井:小磯勝弥
人事部長:谷本一
部長:須永慶
社長:伊藤延広
得意先社長:田口主将
男:徳井優
重役:石山雄大
老婦:森康子

スタッフ
脚本:宅間孝行
音楽:松本晃彦



坂口憲二さんの主な出演作品




この記事へのコメント
 既に訂正されているかもしれませんが
「黒川への形勢ですね。」⇒「黒川への牽制ですね。」

 既に掲載されているかもしれませんが
垣根 涼介の第3弾『張り込み姫 君たちに明日はない 3』
Posted by sigma2 at 2010年01月25日 23:03
ちーずさんこんばんは、やっと再放送をゲット遅れましたがコメントを!

真介と陽子のキスは同じシチュエーションだったのですね!順子は真介の真意に気づき受け入れ陽子は軽い女と思われるのが嫌で拒否しビンタをする陽子が良かったです!真介はマザコンなのですかね?

今回は二人の重役の一人をリストラするストーリー、黒田と石井を退社しなければいけないストーリーでしたが石井の会社のため尽力黒田の発掘能力や育て方に結論がでませんでした!石井を経営側にして黒田を現場に置いとけば上手くいくケースだと思いました!

真介と陽子、真介と順子の関係性、陽子と付き合った後に表れる順子がツボになりそうです!
Posted by けた at 2010年01月30日 21:08
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