2010年02月01日

君たちに明日はない 第3話

『二億円の女』
 
次なるクライアントは、未曾有の不況に苦しむ大手百貨店。
特に個人向けの外商部門は、構造的な業績不振に陥っていた。

倉橋なぎさ(内山理名)は、そんな外商部で1年2億円の
ノルマをこなす超優秀なセールスレディ。
前年度実績10%増しのノルマが課される営業現場で、
毎年目標をクリアしてきた辞める必要のない人材だ。

ところが、彼女は、退職したいと言い出す。

真介は大いに戸惑い、辞めないよう必死に説得する。

(ゲスト:内山理名 袴田吉彦)

「ヤバイ・・・ヤバイ・・・ヤバイ!!」
コンサート会場に駆けつける真介。
丁度ホールから出てきた陽子に、真介は必死に謝るが
陽子は完全に無視。
「久保田利伸、そんなに嫌いですかぁ!?」
「・・・バッカじゃないの!?
 大好きよ!
 大好きな上に、初めて生で彼の歌聴いて、
 鳥肌立って、
 そしたら何だか怒りも収まってきて、
 ふと気付いたらあなたにすっぽかされたことなんて、
 もう堂でも良くなっている自分にはたと気が付いて、
 ・・・そしたら今度は、無性に腹が立って!」
「久保田さんに会えたら!」
「・・え?」
「久保田さんに会えたら、遅れてきたこと水に流して
 くれますか?」
「・・・久保田さんって・・・久保田利伸のこと、
 言ってんの?」
「当たり前じゃないですか。久保田利伸!本人!」
「・・・え?し、知り合いなの?」
「いいえ全く。」
「ぶっ飛ばすわよあんた!」
「でも、受付で親戚です、とか言えば、
 楽屋に連れてってもらえないですかね?」
「・・・ほんっと死んで。」
「俺本気なんです!本気で芹沢さんのこと!」
「あのさ!」
「はい。」
「2回だけだよ、私たち会ったの。」
「はい。」
「そりゃ、リストラすんのに、私の人生洗いざらい調べたかも
 しれないけど、」
「・・・」
「でもあなたは、私の本当は何も知らないでしょう?」
「あなたが優しい人だってことは知っています。」
「・・は?何それ?」
「もうライブって気分じゃないならそれは諦めます。
 でもご飯行きませんか?お店予約してあるんです。」
「・・・今夜私がここに来るってこと、確信があったわけ?」
「・・・正直、なかったです。
 でも、もし、もし万が一来てくれたら・・・
 あれ?」視界がぼやけていく。
「何?」
「いや・・・きちんと・・・交際を・・・」
「交際を、何?」
真介は倒れてしまい・・・。

『明日への鐘は
 その階段を登る者が
 鳴らすことができる』

病院
真介は過労とストレスで倒れたようだった。
「多少は気を使ってあげないと、奥さんも。」
医師にそういわれ戸惑う陽子。

早朝、真介はやっと目を覚ます。
ベッドに突っ伏し眠る陽子の手を握り締める真介。
陽子も目を覚ます。
「あ。起きた?大丈夫?」
「俺・・」
「いきなり倒れて救急車呼んで。
 過労だって。
 点滴したから目が覚めたら帰っていいって。
 あれ?」手を離そうとする陽子。
「ずっと、付き添ってくれてたんですか?」
「しょうがないじゃない。成り行き上見捨てるわけにいかないし。」
「いや、優しい。
 どうもありがとう。」
「・・・私、これで失礼するわ。お大事に。」
「今度、きちんとお詫びさせてください。
 このままじゃ俺・・・」
「・・・考えとく。」

陽子がマンションに帰宅すると、妹と恋人が待っていた。
「ちょっと!びっくりさせないでよ。
 来てたの?」
「来てたよぉぉ。」と泰子。
「来るなら来るって連絡しなさいよ。」
「しました何度も。」
「え?」
「しても着留守だし、家に電話しても誰も出ないし、
 何かあったんじゃないかと思ってめちゃめちゃ心配
 したんだからね!」
「ごめんごめん。
 ていうかなぜにそんな子ども扱い?」
「更年期でぶっ倒れちゃう人だっているんだからー。」
「冗談やめてよ。まだそんな年じゃないし。」
「男っすか?」と泰子の恋人・ミッキー。
「男だな。」と泰子。
「ていうか普通に朝帰りってことでしょう?」とミッキー。
「・・・お、ヤベーヤベー。こんな時間だ。」
「お姉さんさー、幸せならいいよ。
 妹何も言わないよ。
 むしろ喜びの歌歌っちゃうよ!
 でもさ、変な男にとっ捕まんないようにしないと!」
「何よ変な男って。」
「いきなりチューされた男と一緒だったんでしょ。」
「・・・」
「オバフォーに近づいてくる30過ぎのイケメンなんて
 どう考えたって詐欺だよ、詐欺!」
「・・・」
「気をつけなよ。
 お金貸してとか言い出すに決まってんだから!」
「・・・言い出すかな。」
「えぇ・・・。」

この姉妹のやり取りが本当に楽しい。
もっと長く見ていたいです。


次のクライアントは満天百貨店。
真介は早速百貨店に向かう。

廊下ですれ違う真介となぎこ。
なぎこは思わず真介に見とれてしまう。

なぎこは年間ノルマ2億のエリートセールスマン。
リストラの対象ではないが、他の社員の手前、
なぎこや鳴沢(袴田吉彦)らエリートセールスマンとも
面接することになる。
彼らは絶対に辞めさせてはならない、逆金だった。

森本ハウス
陽子は社長特賞を受賞する。
「これも、皆さんの協力のお陰です。
 貰った金一封で、今晩ぱーっと、行きますか!」

陽子らが手がけたプロジェクトは色んなところで大評判。
陽子の評判は関東のみならず、関西まで届くほど。
だが陽子のいる部署は夏に管理部本体に吸収される予定で、
その後、陽子たちがどうなるかは決まっていなかった。

陽子に電話をする真介。
電話は留守電に切り替わり、諦めていると、
折り返し陽子から電話があった。
「うっそ!
 はい、村上です。」
「声でか。」
「すみません。」
「で?何でしょう?」
「仕事中ですよね。大丈夫ですか?」
「手短にお願いします。」
「あ、あの、先日のお詫びに、ご飯ご馳走したいなって。」
「気にしなくていいのにー。」
「週末、どこか時間ありませんか?
 今週無理なら来週でも、いや、再来週でも!
 どこでも合わせます。」
「逃げ道作ってくれないんだ。」陽子が笑う。

夜、隆志(北村有起哉)と歩く真介。
「やったじゃんよ。」
「うん。」
「おばちゃんついに落ちたか。」
「落ちてはないって。まだ会う約束しただけだし。」
「俺な、真介がなんでおばちゃん好きになるのか
 考えてたんだけどさ。」
「あのさ、」
「おばちゃんだけが持ってるものって何かって考えると、」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って。」
「何だよ。」
「おばちゃんって言い方やめない?
 なんか物凄く庶民的っていうかさ。
 おばちゃんって言われるとさ、なんか色気も何もないし。」
「おばちゃま?じゃあ。」
「それってもっとおばちゃんチックだろ?」
「だって実際オバハンなわけだろ?そのおばちゃん。」
「年上の人とかって言い方出来ないのかね。」

居酒屋
「要するにさ、お前仕事柄、神経かなりすり減らして
 いるわけだろ?
 体力的には全くキツくないかもしれんけど。」
「まあね。」
「他人の人生と向き合って、
 そこで審判下すなんて、
 どんだけ偉そうなんだって、自分でそう思ってるだろ?」
「うん。」
「ある意味他人の人生の、終止符を打って、
 絶望を与えて、
 どん底に突き落として、
 それでお前は金を貰って生きている。」
「・・・」
「そういう仕事を、でもそれでもいいんだよーって
 優しく言ってくれんのは心から言ってくれんのは、
 多分・・・母親だけなんだよな。」
「マザコンってこと?」
「そうじゃなくてさ。
 ギリギリの一杯一杯の線のところで、何とかやってっから、
 無条件に甘えさせてくれるような人を、
 心のどこかで求めてる、的な。」
「俺やっぱ、この仕事向いてねーのかな。」

真介の部屋
ソファーに腰を下ろし、考え込む真介。
「大丈夫?」
順子(麻生祐未)の声が聞こえたような気がした。

3年前
ソファーの同じ位置に座る真介。
胸には黒いネクタイ。
順子が静かに隣に座る。
「大変だったね。」
「結局・・・焼香させてもらえなかった。」
「・・・そう。」
「小学校3年生の女の子と、
 1年生の男の子がいるんだけどさ。
 外まで聞こえてきた。
 あの子たちの・・・声が・・・。
 耳に、こびりついて・・・ 
 頭から・・離れない・・・。」
真介を抱きしめる順子。
「死んだらダメなんだよ。
 どんなことがあっても、
 死んだらダメ。」
「・・・」
「それから・・・
 このことは、真介が責任感じることじゃないんだから。」
「・・・」
「ね!」
「・・・うん。」震えながら涙を流す真介。
「・・・よし!
 じゃあ、美味しいもの食べに行こう!」
「え・・」
「ほら、早く!」

夜道を歩く順子と真介。
「やっぱ腕組むの恥ずかしいな。」
「順ちゃんが一緒にいてくれて良かった。」
「え?」
「本当に良かった。
 最高にいい女だよ、順ちゃんは。」
「アハハ。何怖いなぁ。褒めても何も出てこないよ。」

デパートのエスカレーター
「順ちゃん、欲しがってたネックレスあったよね。」
「プレゼントしてくれるの?」
「うん!」
「・・・いいいい!いらないよ!いらないよぉ!」
「いいじゃん。」

反対側のエスカレーター、客を案内するなぎさがいた。

File 5 倉橋なぎさ

その日なぎさは、大学時代に絵画を勉強していた女性客に、
絵画を400万で購入させた。

夜遅く、カップ麺を食べながら残業するなぎさ。
「おぉなぎさ。相変わらずがんばるねー。」と鳴沢。
「うん、お帰りなさい。」
「誕生日カード?」
「うん。今月多いんだよねー。」
「ふーん。
 そういえばなぎさ彼氏と別れたんだって?」
「やだ、誰に聞いたの?」
「みんな知ってるよ。」
「はーあ。半年持たなかった。
 もうやんなっちゃうよー。」
「これすぐ片付くから、飲みにでも行くか?」
「彼女に悪いっすよ。」

バーで飲む二人。
「鳴沢君、今年どう?ノルマ。」
「正直キツいわ。何とも言えねーやこっちは。」
「どこまでノルマって上がっていくのかな。」
「クリアすればクリアしただけ上がっていくだろ。」
「今の半分位の時までは、仕事が楽しくて楽しくて
 仕方がなかったのになー。」
「ノルマきつくなって仕事仕事になって、
 彼氏と会う時間も作れないんじゃなー。」
「もう彼氏が出来る気全くしない。
 もうすぐ29だよ?どうしよう。
 30までに結婚とか絶対無理な気がしてきた。」
「なあ、入社してから何人の男と付き合った?」
「聞くかなー、そういうこと。」
「入社してからの6年で彼氏がいた期間トータルで?」
「私を落ち込ませるために飲みに誘ったの?」
「いやなぎささ、普通にしてりゃ結構可愛いんだから、
 もったいないなーと思ってさ。」
「ふーーん。」

なぎさの携帯が鳴る。
「あ、お客様だ。」
「何だって?」
「今から来てくれって。」
「どうせたいした用事じゃないんだろ?」
「この前400万の絵を買ってくれたお客様なんだよね。」
「おっとっと、行って来い行って来い!ほら。」
「ごめんね、せっかく気使ってくれたのに。」
「気にするな。頑張れよ!」

「頑張ってるよね、私。
 お誕生会ではスタッフを買って出てるのに・・
 嫌味を言われる事も少なくない。
 営業目標会議では、誰もがノルマが増えるのを、
 何とか逃れようとする。
 でも、一番年下の私は、いつも言われるがままで。」


上司たちはなぎさにノルマを押し付けようとする。
「2億までいけば、1千万の上乗せぐらい、
 なーんてことないでしょう?
 なぎさちゃんはエリア世田谷だし、行けるでしょ?
 今まで一回もノルマクリア出来なかったことないし。 
 チャレンジしてみたら?さらに上。」
「・・・」
「毎年毎年同じようなこと言って。
 いい加減にしろよ!」鳴沢がキレる。
「何?」
「なぎさが今の目標をクリアするのに、
 どれだけ苦労してるか、知らないわけじゃないだろ?」
「おい、落ち着け、鳴沢。」
「鳴沢、それが上司に向かって言う言葉か!」
「上司なら上司らしく部下に負担掛けないようにしてみろ!」
上司に掴みかかる鳴沢。
「お前なんかさっさと仕事やめちまえよ!
 どうせ仕事がいやでサボってばっかなんだろうが!」
「この野郎!」

「やめてーっ!!
 ・・・やめて下さい。
 お願いですから・・・。」

「結局、私に1千万の上積みはされなかった。
 その代わり鳴沢君が500万、
 他のおじさんたち5人が、100万ずつ引き取ってくれた。
 それ以来私のノルマは、2億円。
 でも、29の時も、30の時も、
 わずかながら、ノルマを達成出来なかった。
 でも、ノルマが減る事はない。
 だから、がんばる。
 クリスマスも一人で、がんばる。」


客あてのクリスマスカードの準備をするなぎさ。
そこへ、鳴沢が戻ってきた。
「ほらこれ、やるよ。」
「え?」
「クリスマスプレゼント。」
「どうしたの?」
「頑張ってるなぎさへのご褒美だよ。」
「あ、これ、お客様からの海外土産とかじゃないの?」
「正解。」
「アハハ。開けていい?」
「もちろん。」
それは、ブランド物の白いバッグ。
「うわー、これ、高いよ?いいの?本当に。」
「ああ、遠慮するな。」
「ありがと!」
「・・・それから、ちょっと報告。」
「うん?どうした?」
「ついにっていうかさ、結婚することになった。」
「え?」
「いや・・できちゃってさ。」
「あ・・あーー。そう。
 でも、良かったじゃん。
 へーーー。おめでとーー。
 絶対披露宴呼んでね。」
「ああ。」
「へーーー。お父さんかー、鳴沢君。
 ふーーん。」

「別に、鳴沢君に恋してたわけじゃない。
 そんなこと思ったこと一度もない。
 でも・・・なんだか・・・」


なぎさの部屋
コンビニで買ったサラダを食べるなぎさ。
食べながら、なぜか涙が溢れてくる。
「なんで・・・。
 なんでだよ・・・。」

「私はもう・・・疲れた。」

2010年

「出口の見えない、こんな毎日の繰り返しだけど、
 生活の全てを仕事のためにと、頑張って、頑張って、
 頑張ってきた。
 そんな私に会社が用意した答え。
 リストラ。」


面接室のドアをノックするなぎさ。
「失礼します。」
「どうぞ。」
「・・・え。」
「面接を担当します、村上真介と申します。」

「何なのこの追い討ちは。
 最近ちょっとときめいた人が面接官だなんて。」


「惨めすぎだよ・・・。」
「はい?」
「・・・」
「どうぞ。」
「何か、お飲み物は?」と美代子(吉田桂子)。
なぎさは首を横に振る。
「では、早速ですが、本題に入らせていただきます。」
「はい。」
「倉橋さんもご存知のことだとは思いますが、
 現在、御社の外商部では、大幅な人員削減計画が
 進んでおりまして。
 約3割の人間を削減する予定です。
 早期退職に応じられる方には、出来る限りの好条件で
 送り出すことを約束されています。」

沖縄料理のレストラン
「なーんかその辺りから、どうも話を聞いてないみたいで。」
と真介。
「その彼女、相当仕事が出来るんだよね?」と陽子。
「物凄くできます。」
「営業だよね?」
「営業です。」
「正直疲れきってんじゃない?」
「確かにそんな感じでした。」
「辞めさせたくないリストに入ってるって彼女自身は?」
「もちろん知りません。」
「それってさ、私もそうだったんだけど、
 少なくてもあの面接は、希望退職をするっていう名目だけど、
 実際は、辞めてくれって会社が言ってますよって
 告げられてるわけ。
 あなたは必要の無い人ですって。
 だから、彼女みたいに本当に仕事が出来る人にとっちゃ、
 今までの頑張りは何なんだったって、
 会社に愛想を付かすわけ。」

面接会場
「もう説明はいいです。」となぎさ。
「え?でも・・」
「誰かが辞めなきゃならないなら、私辞めます。」
「・・・」
「じゃあもういいです。」
「いや、ちょっと、待って!
 辞めるとか、辞めないとか、えっと・・そうではなくて、
 何ていうか・・
 慌てて、答えを出す必要のない問題ですから、これは。」
「・・・」
「今後の、あなたの人生も考えてあげて・・えー・・
 あなたにとっても、会社にとっても、一番、
 いい結論を・・・理想的な関係を、二人で、考えましょう。」
「でも、会社の削減計画は進んでいるんですよね?」
「・・はい、一応その・・・」
「だったら、その希望に沿って退職を申し出ている私は、
 お互いにとって理想的な関係ではないですか?」
「・・・」
「・・・」
「・・・同僚の方々は、みなあなたが優秀な社員だと
 認めています。
 事実、営業成績だって抜群です。
 そういった意味でも、会社にとって、あなたが辞めることは、
 本当に理想でしょうか?」
「これって、希望退職者を募るための面接ですよね?」
「え・・いや・・まあ・・そうですけど。」
「あなたはクビ切りのプロでしょう?」
「確かにですね、これを機会に辞めたいと仰るのなら、
 本来お引止めする立場ではないのですが・・」
「だったら、引き止めていただかなくて結構です。」
「え・・いや、ちょっと待って・・」
「失礼します。」

「待ってください。
 あと少しだけ話、聞いて下さい。」
「・・・」
「あなたの人生に多少は関わり、
 向きあうことになった一人の人間として、
 あなたと話がしたいんです。」
「・・・」

デパートの屋上
「お好きなほうをどうぞ。」
飲み物を差し出す真介。
「いただきます。」
「・・・本当に、辞めますか?」
「はい。」
「10年にわたって築いてこられた実績があるのに、
 今この場で、簡単に結論を出すのはどうかと思うんです。
 せめて、今のキャリアを生かせる仕事への転職の
 道筋が出来てからでも、いいと思うんです。
 辞めるという結論を出すのは。」
「でも、退職金やら何やら、早く辞めたなら辞めただけ
 条件はいいんですよね?」
「・・・確かに、そうですけど。
 ・・・
 この仕事を選び、この仕事に生きがいを見出していた時も
 あったんですよね?」
「・・・」
「多分倉橋さんは、どこに行かれてもきちんと結果を
 出される方だと思います。
 だからこそ、よく考えてほしいんです。
 自分にとって、仕事って何なのかって。」
「・・・」
「その上で会社を辞めるのも、また、残るのも、
 一つの勇気だと思うんです。」
「・・・」

レストラン
「辞めるも残るも、勇気、か。」と陽子。
「でも、何とかその場で辞めるという結論は撤回して
 くれたんですよね。」
「でもさ、出来る人ほど、潔いものなんだね。」
「どうにかなるってビジョンがあるんでしょうね、
 そういう人たちは。」
「どうにかなるビジョンね・・。」
「え?」
「・・あ、いや。
 それで?その彼女、結局どうなったの?」
「それが・・・」

人事部長に退職届を出すなぎさ。
「倉橋さんは、百貨店に勤めることが嫌になったんですか?」
「・・・」
「それとも、仕事が、嫌になったんですか?」
「仕事です。
 数字に追われることに、疲れました。」
「そうですか。
 では今、あなたの希望通りの部署への異動を約束しても、
 それでも、会社辞めたいですか?」
「どういうことですか?」

レストラン
「それで、結局それを受け入れたの?彼女。」
「わかりません。
 でも、辞めるにせよ、続けるにせよ、
 どこかで、その人がきちんと納得してくれたらなって。」
「・・・」微笑む陽子。
「あの、本題入ってもいいですか?」
「え?本題?」
「この前の、お詫びというかお礼というか。」
「そんないいのに、気使わなくて。」
「貰ってください。」
「あまり高いものだったら受け取りませんよ。」
「そんなに高くありません。」
箱を開けると、ネックレスだった。
「おっとー。」
「気に入ってもらえると嬉しいんですけど。」
「・・・お礼で、ネックレス。重いな、ちょっと・・。」
「他人だからですか?」
「・・そう。他人だから。」
「じゃあ!じゃあ、他人じゃなくなるっていうのは
 どうですか?」
「おばちゃん口説いてんの?」
「おばちゃんじゃないでしょ。」
「もう立派なおばちゃま。」
「俺にとっては、素敵な女性です。」
「・・・したいだけ?」
「違います。」
「したくないの?」
「したいです。」
「やっぱり!」
「したくない方がいいですか?」
「そんなわけない・・・」
「ていうか、真剣なんですけど。」
「・・・お金ないよ、そんなに。」
「何ですか?それ・・」
「・・・とにかく、今その答えを出せというなら、」
「待ちます!答えを。」
「待たなくても、」
「待ちます。okもらえるまで。」
「逃げ道無くしてるつもり?」
「いや・・いつまででも待つ覚悟ですけど、
 たまに、こうしてご飯食べたりとか飲みに行ったりとか、
 したいです。」
「まずはお友達として。」
「いやいや、恋人候補として、でお願いします。」
「じゃあ、やっぱりこれは、まずはやめよう。」
笑いながらプレゼントを返す陽子。
「そしたら、これは返品します。
 それで、代わりのものを、プレゼントしますので、
 それに付き合ってもらえますか?陽子さん。」
「わかった。」

満天百貨店
ネックレスを返品する真介。
「あれ?陽子さん?」
アクセサリーを選ぶ陽子の相手をしているのは、なぎさだった。
「素敵ねー、これ。」
「お勧めです。今年の新作でございます。」
なぎさが真介に気付く。
「いらっしゃいませ。」
微笑む真介。
「あ、ごめんね。返品した?」陽子が真介に聞く。
「ああ。
 どれが欲しいの?陽子さん。」
「他人からはもらえません、こんな高価な物。」
「だから、他人じゃなくなりましょ。」
二人のやり取りに微笑むなぎさ。
「また、改めて来ますね。」
「お待ち申し上げております。」
「ちょっと、陽子さん。」
「素敵な方、ですね。」となぎさ。
「でしょ?相手にしてくれないんですよ。」
「へーー。もったいないなー。」
「え?」
「え?いえいえ。」
「会社に残られたんですね。」
「あの、ちょっといいですか?」
「ええ。」

「私、そもそもデパートで働きたくて、ここに就職したんです。」
「はい。」
「小さい頃デパートに連れて来てもらうのが大好きで。
 何だかわくわくするじゃないですか、デパートって。
 念願叶ってデパートで働き始めてみると、
 お買物してくれる嬉しそうなお客様の笑顔が、
 とっても嬉しくて。
 その笑顔をもっともっと見たくて頑張って。
 それがいつしか、数字に追われる毎日になってて。」
「・・・」
「本気で辞めるつもりだったけど、
 リストラされそうになって、改めて自分と向き合って。
 生きていくのに大事な事って何だろう、
 仕事って、自分にとって何だろうって、
 真剣に考えたりして。
 それで、やっぱり自分はデパートが好きって、
 思い出したんです。」
なぎさは素敵な笑顔でそう語る。

「何やってんの?」陽子の声。
「え・・いや・・」
「ちょ・・ちょ・・ちょっかい出してんの!?
 すみません。
 ほら、早く行くよ!」

「頑張って下さい!」
「倉橋さんも、頑張って下さい。」
「ありがとうございます。」

「ふーーっ。」大きく息を吐くなぎさ、
「よしっ!」と笑顔で職場に戻っていく。

陽子のマンション
「で?何?結局買ってもらったのがこれ?」
泰子の手には『俺たちに明日はない』のDVD。
「こんなしょうもないもんもらって!もう!」
「何で!?大好きなんだけど、この映画。」
「貴金属でも何でも貰っておけば良かったのにー。」
「私はホステスじゃないっつーの。」
「でもさ、いざという時に役に立つよ、貴金属は。」
「何?いざっていう時って。」
「いつ又リストラされるかわかんないんだから。」
「フッ。まあね。」
「何で笑ってんの?」
「フフフフ。」
「やーね。
 若い男にチヤホヤされて、腑抜けてる女って。」
「腑抜けてなんかいないって。」
「でもさ、なんかほっとしたわ。」
「何が?」
「ここ何年ずーっと疲れた顔してたけど、
 最近いい顔してるから。」
「そう?」
「やっぱ恋の力ってすごいねー。」
「だから、そうじゃないんだって。」
「じゃあ何よ。
 何がそんなに美容にいい影響与えてるわけよ?」
「んふふふ。実はね、」

森松フーズ
「辞める!?」
「マジっすか!?」
「ちょっと待ってくれ。どうしたんだよ、いきなり。
 ていうか、慌てるなよ、芹沢。」
「慌ててんの部長ですけど。」と陽子。

日本ヒューマンリアクト
窓ガラスに書かれた"死ね≠フ文字を掃除する真介。
そこへ社長がやって来た。
「あー、またか。
 悪いな。」
「たまに早く出てくればこれですよ。」
「あー、そういえば、満天百貨店の逆金の女、
 部署異動したらしいな。」
「はい。」
「首を繋げるのもなかなか大変だったろう。」
「はい。」
「首を切るのも仕事、首を繋げるのも仕事。」
「・・・」
「この仕事、もしかしたら、その人間にとって
 相応しい人生に誘導している、ようにも感じないか?」
「・・・たとえ、そうれがきっかけで死を選んでも・・・
 ですか?」
「そうだ。」
「・・・」
「俺たちの仕事は、奇麗事では片付けられない。
 それはもちろん、笑顔で新しい人生に踏み出してくれたら、
 言うことはないけどな。」
「・・・」

森松フーズ 会議室
「はっきり、仰って下さい。人事部長。」
「いや・・実は、こっちにも色々考えがあってね。
 営業推進部が統廃合されたら、君には、希望する部署への
 異動を考えていてね。」
「・・・どっかで聞いたな、それ。」
「え?」
「あ、お話それだけでしたら、失礼します。」
「ちょっと待て!おい!」

陽子は真介の留守電にメッセージを残す。
「芹沢です。
 ちょっと、ご報告したいことがありまして。
 とりあえず、会ってお話できたらとい思います。」

待ち合わせ場所に真介を発見する陽子。
真介の下に急ごうとした時、元課長が真介の側にいることに気付く。
「え?平山さん?」

「おい。」平山が真介に声を掛ける。
「あ!」
「よくも騙してくれたな。」
「騙した?」
「冗談じゃねーぞ!」
平山は真介を投げ飛ばし、馬乗りになる。
「人の人生何だと思ってんだ!え?
 人の人生何だと思ってんだよ!
 適当なことを言って、よくも騙してくれたな!え!?
 絶対許さないからな!
 一生許さねーから!
 何とか言えよ!」
「・・・」
「何とか言えーっ!!」
平山は泣きながら叫び続け・・・。


リストラされそうになったなぎさは、
自分と向き合い、生きること、仕事をするということを
改めて考え、見つめなおし、
そして、自分が本当にやりたかったことを取り戻しました。
最後の笑顔が素敵だった。

自分の仕事に疑問を持っていたなぎさにとっては
今回のリストラが、良い結果へと繋がったのかもしせん。
それでも、良いことよりは悪いこと、辛い事の方が多く、
真介はとてもつらそうです。

そんな真介にとって順子の存在はとても大きかったようです。
リストラに遭い、今の職場に移り、
辛い思いをしている時に支えてくれたのが順子だった。
あと、親友の存在も大きいかな。

真介が陽子に選んだプレゼントはネックレス。
順子もネックレスを欲しがっていました。
だからそれを選んだ?
それを知ったら陽子はショックだろうなー。

今は陽子に惹かれているようですが、
もし順子が戻ってきたら、真介はどちらを選ぶのでしょう。



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公式HP

主題歌
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原作
4101329710君たちに明日はない (新潮文庫)
新潮社 2007-09-28

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B00322P8VO君たちに明日はない (坂口憲二 主演) [DVD]


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キャスト
村上真介:坂口憲二(日本ヒューマンリアクト社員)
芹沢陽子:田中美佐子(森松ハウス、課長代理)
芹沢泰子:須藤理彩
山下隆志:北村有起哉
川田美代子:吉田桂子
順子:麻生祐未
高橋栄一郎: 堺正章(リストラ請負会社・日本ヒューマンリアクト社長)

平山和明:村田雄浩
和久井:小磯勝弥
人事部長:谷本一
部長:須永慶
社長:伊藤延広
得意先社長:田口主将
男:徳井優
重役:石山雄大
老婦:森康子

スタッフ
脚本:宅間孝行
音楽:松本晃彦



坂口憲二さんの主な出演作品




この記事へのコメント
ちーずさんこんばんは、自分がリストラした事で家庭が崩壊し子供たちの悲痛な声が残ってしまった真介、そんな真介を包み込むように力づける順子を陽子に重ねての恋、陽子と出会いリストラという仕事に不安をもつ真介はマザコンというより意見を持った女性の安心感に惹かれるのでしょうね!

陽子の時は会社は必要だと考えていることを話、なぎさの時は言わなかったですね、ノルマや仕事に疑問をもつなぎさが自ら辞めると言ったときの真介の慌てようも面白かったです!2億円の売り上げならかなりの給料だと思いますが、なぎさの負ったストレスは給料が下がっても好きなデパートで働けるほうが良いのかな?

陽子と泰子のやり取りも面白いですね!泰子の言葉に真介にお金ないわよと言う陽子、退職を希望しどんな生活をしていくのか?平山の怒りは何なのか?次週が楽しみです!

先日ブルーレイのデータが全て無くなった話を書きましたが、担当の方が消えた分を同僚や友人に聞いてくれて集めてくれました、無理だと思っていたので感謝 感謝!明後日あたりに送って貰えるらしいので観てない部分のストレスは晴れました!ネットでcprmの解除を検索したらDVD-RWからHDDに書き戻せる方法があったので最終話が終わってもう一度観たいドラマもDVDに保存できそうです!まぁ個人的に楽しむためなので許して欲しいかな?
Posted by けた at 2010年02月01日 20:33
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君たちに明日はない 第3話:二億円の女
Excerpt: 真介も大変だなぁ…┐( ̄ヘ ̄)┌ フゥゥ〜 仕事とは言え、リストラした相手が死んだり、因縁つけて来たり・・・ そりゃ疲労で倒れもするわ{/hiyo_shock2/}焼香を断られた際の憔悴っぷりが哀れで..
Weblog: あるがまま・・・
Tracked: 2010-02-06 11:11
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