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2010年02月22日

君たちに明日はない 第5話

『オモチャの男』

ラーメン屋で働く平山に気付き、慌てて店から逃げ出す真介と陽子。

「びっくりしましたね・・。」と真介。
「うん・・。」
「ラーメン屋で、独立目指してるんですかね・・。」
「傷ついたよね、平山さん・・。
 どう思っただろう、私とあなたが一緒にいて・・。」

陽子のマンション
険悪ムードな泰子と恋人のミッチーの心配をする陽子。
「あんた達、もめてるの?」
「もめてるっていうか・・俺、結婚したいんです。」

喫茶店で会う真介と隆志。
「結婚??マジで?」と隆志。
「マジで。」
「え?つーか、でもまだそのオバサンとは・・」
「付き合ってない。」
「おいおいおい。まだ付き合ってもないのに結婚って。
 あ!実はそのおばちゃんキャバ嬢!?」
「は?お前と一緒にすんな。」
「絶対やめた方がいい!
 そんな勢いで結婚口走るなんて真介らしくもないし。」
「実家に帰っちゃうかもしんないんだって。」
「だからって。どこよ?」
「鹿児島。」
「・・・まさかお前・・ついて行こうとか考えてる?」
「・・・」
「おい・・おい、ダメダメ!!」
「今俺は、自分の人生ときっちり向き合おうと思っててさ。」

『明日への鐘は
 その階段を登る者が
 鳴らすことができる』

いつも登場するこのフレーズ、
今回はコーヒーに浮き上がる形でユラユラ。
前回は星空と合わせてありましたっけ。


真介は社長に相談したいことがある、と予定を尋ねる。
「辞めたいなら、相談したいだ何だかんだ四の五の言わずに
 さっさと辞めろ!
 時間の無駄だ。」と社長。
「・・・」
「もし、迷ってるんだとしたら、
 お前がこの会社に席を置いて、仕事をしている限りは、
 迷いを表に出すな。」
「・・はい。」
「で?今週からの新しいクライアント、どうする?」
「・・・やります!」
「そう言ったからには、きっちり覚悟を決めてやれよ。」
「はい。」

今度のクライアントは、老舗のおもちゃメーカー、
東証二部上場、株式会社DONDO。
創業は1954年。従業員数は267人。
社歴、会社の規模ともに、業界では中堅どころ。
ヒーローものやアニメなどのグッズ商品は当たったが、
80年代にコンピューターゲームに手を出さなかった為、
完全に乗り遅れ、業績的には他社に比べこじんまりしている。
DONDOは既に人員削減計画を行っていて、今年で既に5年目。
DONDO人事部からの報告によると、
泣き落としは序の口、しぶといだんまり、居直って脅しまでする、
会社に残る為なら手段を選ばないらしい。

そのことを真介から聞いた美代子、
「なんでそんな人たちが、リストラされるんだろう。」
と呟くと、資料を熱心に読み出す。
「どうしたの?」
「派遣とはいえ、人の人生の節目に立ち会うわけですから。
 いい加減にこなしてる場合じゃないな、と思って。」
「・・・」

陽子は平山がいたラーメン屋を訪ねていくが、
平山は辞めてしまったあとだった。
以前の部下に聞いてみると、独立して自分の店を持つと
張り切っていたらしい。

夜、エスニックレストランで食事をする真介と陽子。
「羽田までは送っていきます。」
「え?だってその日、新しいクライアントの初日面接でしょ?」
「大丈夫です。時間通りに終われば、初日は楽なスケジュールに
 なっていますから。」
「今回はちょっとした帰省だし。」
「わかってますよ。
 でも、そのまま暫く鹿児島にってこともなくはないでしょ?」
「・・まあね。思いのほか居心地いいかもしれないしね。」
「・・・東京は、住みづらい町なんですかね。」
「どうだろ。
 ・・・平山さんのことを思ったら、明日はわが身っていうか。
 なんだかね。」
「ほら。
 だから、ちゃんと送りに行きます。
 まずは、きちんと帰ってきてもらいたいし。
 ここでまず、後ろ髪引っ張らないと。」
「まああなたも仕事に熱中すると、周りが見えなくなること
 あるから。約束はしないでいいよ。」
「僕も、今回の仕事が終わったら、一つの答え、出そうと思ってるんで。
 だから、何かわからないけど、今回、陽子さんをきちんと
 羽田に送るのは、絶対の使命って気がして。」
「・・・ほんと?よくわかんないけど、ありがとう。」

面接の日。
真介が担当する緒方紀夫(山崎樹範)は、約束の時間を
30分過ぎても面接室に来ない。
人事部に連絡しようと思ったとき、やっとやってきた。
「すみませーーん。」
「緒方さん、何をしていらしたんですか?」
「えーっと、このジュース欲しかったんですけど、
 いつものとこが売り切れててもうまいっちゃいましたよぉ。」
「・・・」
「でもね、でもね、隣りの駅の自動販売機で売ってるの
 思い出して!」
「あの、それでは、面接を始めてもよろしいでしょうか。」
「えーっと、何のお話でしょう。
 実験の途中なんで、早めに終わらせてもらいたいなと。」
「それなら、ジュースを買いに行って30分も遅刻しないで
 下さい。」
「だって、今日の運勢に、このドリンクがラッキーアイテムって、
 書いてあったんですよ!!仕方ないでしょう!?」
「・・・それでは、とにかく本題に、」
「ちょっと待って下さい!」
ポケットからたまごっちのような携帯ゲームを取り出す緒方。
「ご飯の時間だ!」
「え・・ちょっと・・」
緒方は部屋を出ていってしまった。

「すごい・・強烈ですね・・」と美代子。
「勘弁してよ・・もうどうしよう!絶対間に合わないよ!」
「約束入れたんですか?」
「そろそろ終わっていい時間なのに・・」
「だから言ったじゃないですか。てこずるかもって。」

緒方紀夫、37歳。特○。
研究者として、29歳の時にミニマスコット『オナラくん』を発表し
大ヒット。
その後、32歳の時、『与作とウメ』という貧乏キャラの
じいさん、ばあさんペアフィギュアで、これまた大ヒット。
その後はヒットに恵まれず、現在に至る。
私生活では31歳の時にコスプレパーティーで知り合った
18歳の女性と結婚、しかし1年足らずで離婚。
別れ際、妻に
「あんたみたいなマニアックな人にはついていけない」と
罵られたらしい。
変態か、天才か。
美代子や高橋社長は、この人物はてこずるだろうと予想していた。

「すいませーーーん。」緒方が笑顔で戻ってきた。
「終わりましたか?実験は。」
「あ、まだ途中ですが、あんまりお二人を待たせても
 悪いーと思って。」
「もう2時間ですけど。
 緒方さんが時間に戻ると言って出て行かれてから。」
「だから、これ以上は申し訳ないなということで、
 無事に、帰還しました!」
「・・・それではいいですか?単刀直入にお話させていただきます。」
「はい。お待たせして、かたじけなかったでごあす!」
「・・・緒方さんの属する開発二課の商品ですが、」
「ええ。」
「ここ数年赤字続きで、それに伴い去年、
 研究員が5人から3人体制に縮小されました。」
「そう!」
「数年後には開発一課と統合し、開発部という単体の部に
 なることはご存知ですね。」
「もちろん!」
「つまり、緒方さんのポジションはなくなってしまうんです。」
「びっくりですよねー!
 でも、僕、めげてませんから。
 新しい部署で、一から頑張っていきますから!」
「いや、緒方さんね、」
「ウェー、これもうまずくて飲めないなー。
 新しいの買ってきていいですか?」
「いやいやいや!」
「あの、ここのコーヒーか紅茶でいかがでしょうか。」と美代子。
「えーー。だって、コーヒーも紅茶も、舌が、ザラザラするでしょ。」
「買ってきます!私、買ってきますから!」美代子が部屋を出ていく。
「可愛いのに気が効く人ですね。」
「緒方さん!
 あなたのおかれている立場を、きちんと認識して下さい!」
「え??」

その頃、鹿児島空港に到着した陽子の携帯に、
関東建材業協会の石綿事務局長(前田吟)から電話が入る。
陽子が鹿児島に帰ったことを陽子の元部下・和久井から聞き、
心配して電話してきたのだ。
「ちゃんと送別会するからさ、そういうの一言俺にも
 報告してよ。」
「嬉しいです、事務局長にそう言ってもらえて。」
「俺は、森松ハウスって会社と仕事していたわけじゃない。
 あんたって個人と仕事していたつもりだよ。」
「ありがとうございます。」

株式会社DONDO
「だって・・・去年も一昨年も、面接で言ったんですよ?
 仕事さえ出来れば、ぜんっぜん平気だって!
 ペーペーでも、給料安くても、もう何でもいいって!
 そしたら、人事部長も納得して、
 緒方さんには、このまま、今の仕事頑張ってって・・」
「去年までの話はこちらとしては一切、関知しておりません。」
「・・・嘘だ・・。」
「いや、嘘ではありません。」
「そんなの・・そんなの嘘だぁぁぁ!!」泣き叫ぶオ型。
「あの、落ち着いて。」
「部長が言ったのにぃぃ。
 去年、僕と約束したのにぃぃ!!」
「緒方さん!」
「部長に確認して、」
「それはご勘弁下さい!」
「なんで!!」
「この面接業務を請け負っているのはあくまでも私なので。
 今回の交渉も一任されている立場です。」
「・・・じゃあ、あなたに、辞めさせないでって頼んだら
 いいってこと?」
「いや、それは、そういうことでは・・」
「そうだ!ちょっと待ってて!」
「人事部に掛けあっても一緒ですよ。」
「そうじゃなくって!お願いだからちょっと待ってて!!」
「・・・」
緒方は真介が止めるのを諦めると、また部屋を飛び出していく。

鹿児島
実家に到着した陽子は、母(加賀まりこ)と父(山本學)と
久しぶりに会う。

緒方が戻ってくる間、面接室に飾られたおもちゃを
楽しそうに見て回る真介。
そこへ、ジュースを買いに行った美代子が戻ってくる。
「あれ?緒方さんは?」
「なんだか又出てったきり戻ってこなくて。」
「今度はどうしたんですか?」
「さあ。自分がリストラの対象だって認識した途端、
 わーって騒いで、ちょっと待っててーって言って、
 飛び出していっちゃった。」

「すいませーーーん。これ、見てください!」
「あの・・」
「これ、今開発中の新製品です。
 これ発売したら、大ヒット間違いなしです!
 ね、見てください!
 センサーが、ゴミを察知して、勝手に汚いところを
 掃除してくれるんです!」
「へー!」と美代子。
「ね!よく出来た子でしょう?
 ゴミの量や、それに応じた動きによって、
 ここ(頭)の部分が、何パターンか色が変わるのね!
 一生懸命の時は、赤!
 ちょっとだるーい動きの時は、青。
 緑に発光している時はマイナスイオンが出てー、
 これがピンクの光になると!
 甘〜い香が出てきてー。ウフフー。ちょっとやらしいですねー!
 でね!でね!これが黄色になるとなんとなんと!
 臭いにおいが出ます!アハハ!!」
「緒方さん・・」
「これ、リストラ君って名づけようかなーって思って。」
「え?」
「声も出るんですよー。
 おい、頑張ってるか?」
『がんばってるでー。』
「リストラされんなよ。」
『リストラなんかされるかい。
 一生懸命働いてんねんで。』
「何で!?不思議!
 てか、関西弁最高ですね!」と美代子。
「でしょ?でしょ?
 発売品には、お笑い芸人さんに声頼もうかなーって思って。
 サボってないか?」
『勘弁してーな。そんなにリストラしたいんか。』
「これ、セクシーボイスバージョンもありますけど聞きたい?」
「・・・」

「で?結局その人には何も告げられないまま?」
陽子が電話で聞く。
「そうなんです。」と真介。
「そっかー。」
「もう・・本当に、羽田まで送っていけなくて・・ごめんなさい。」
「それは全くいいんだけどさ。」
ため息をつく陽子。
「どうしました?実家で何かありました?」
「・・いや。うちのお父さんさ、そもそも頑固なんだけどさ。」

父との会話を思い出す陽子。
「仕事っちゅうもんは、つまりは我慢することじゃ。
 楽しかことなんぞ、なくて当たり前。
 そいが、金を貰うちゅうことがろ?」
「でもそいじゃ、あまりに寂しすぎるがね、人生。」
「寂しいか?俺はそげんして生きてきたどん。
 俺の人生は寂しすぎっとか。」
「・・・そうじゃないよ。
 だから、私も、こっちに戻ろうかなって考えてて。」
「そうなのね?」と母。
「お前にこっちの暮らしは無理に決まっちょる!」と父。
「何ね?東京を離れるとかこっちは無理とか。
 どうすればいいのね?私は。」
「ここを人生の逃げ道にするなっ言うちょっとじゃ!」
「何それ!」
「言葉のまんまじゃ。」
「せっかく里帰りしたっていうのに文句ばっかり言わんでよ。
 こっちだって、この年になっていろいろあるんだから!」
「・・・」

「てまあ、いつものことなんだけど。
 こんな感じでさ。
 気に入らないのよ、女の私が会社勤めでがんばるのも、
 離婚するのも。
 今回啖呵切って会社辞めちゃうみたいなことも。」
「でも、まずは元気でよかったじゃないですか。」
「そうだよね。
 でも・・実際これで二人が病気になったら、
 結局こっちに引っ込まなきゃいけなくなっちゃうのかな。」
「・・陽子さん。」
「うん?」
「俺もさ。」
「待った!・・・軽々しく人生語るなよ。」
「別に・・軽々しくなんて。」
「今の仕事、一段落してからでいいんじゃない?
 それまでは、きちんと仕事と向きあうべきだよ。」
「・・・はい。ですね。」

翌日、陽子は学生時代の友達と集まる。
友だちは、畑を猪に荒らされたという話で盛り上がり・・。

夜、泰子と電話で話す陽子。
「みんなが笑っている話に一切興味持てなくてさ。」
「やっぱり、一度こっち来ると、そう簡単には、
 戻れないって。」
「あ、そうだ。ゴミちゃんと出しておいてよ。」
「大丈夫。ミッキーその辺几帳面だから。
 それより、お父さんの機嫌損ねないように
 気をつけておいてよ。」
「え・・ああ・・。」

日本ヒューマンリアクト
「緒方、そんなに梃子摺ってんのか?」と高橋。
「すみません。」と真介。
「モチベーションが落ちて手抜いてんのか?」
「そんなんじゃありません。」
「いいか!?何としても辞めさせろ!
 それが俺たちの仕事なんだ。
 徹底的にリサーチして、やめざるを得ない尻尾を掴み、
 きっちりと追い込め!」
「・・・」

居酒屋
「まるでさ、昔務めてた代理店時代の上司みたいな口ぶりでさ。」
「お前がぐずぐずしてっから悪いんだろ。」と隆志。
「俺はこうだって言われてもさ、自分が納得出来ねーと
 ストレスしか溜まらないってーのにさ。」
「ノルマだと思ってやんなきゃいけねー時はやるしかねーだろうが。」
「何だよ。」
「何だよっ。」
「・・やっぱ俺も転職すっかなー。」
「出た。」
「つーか社長にこれだけ目付けられてるし。
 ノルマ達成できなかったらもうクビだな。」
グラスを倒してしまった真介は、7年前を思い出す。

その時も、真介はグラスを倒してしまい、
その時隣に偶然座っていたのが順子だった。
「すみません、大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫ですよ。」と順子。
「クリーニング代出しますから。」
「そんな気にしないでいいですよ。」
「でも、染みになっちゃいますよね、これ。」
「ほんと、気にしないで。安物の服ですから。」
「そしたら、あの、ここのお代、僕持ちますんで。」
「ほんと、いいですって。」
「でもそれじゃ、」
「じゃあ・・こぼした分の生一杯、奢ってもらえます?」
「いいんですか?」
順子が笑顔で頷く。
「じゃあ、もし、クリーニング代結構いっちゃったりしたら、
 連絡下さい。
 きちんとお支払しますから。」
真介が名刺を差し出す。
「そんないいのに・・。
 あれ?広告代理店にお勤めなんですか?」
「あ、はい。小さい会社ですが。」
「ふーーん。今度私ね、リサイクル雑貨のお店を
 高円寺で開くんですけど。」
「え?何でもご相談に乗りますよ。」

高円寺、順子の店。
「まあ、この程度の、こじんまりしたお店なんですけど。」
「ネットで、広告展開とかしてみます?」
「どれ位掛かるんでしょうかね。」
「社に帰ったらすぐに見積もりFAXしますけど、
 そんなにはしないかと。」
「村上さんこのあとすぐ会社に戻ります?」
「はい。」
「神田でしたよね?会社。」

神田を歩く二人。
「この辺りだと、問屋とかに用事ですか?」
「そう。いい問屋さんの知り合いいます?」
「いますよ!紹介しましょうか?」
「本当!?助かります!お願いします!」

二人は緒方とすれ違ったことに気付かない。

File 7 緒方紀夫

「おじさん、これ下さい!」
「・・こんなのどうするんだい?」
「今度の新製品のヒントにするんです!」

がらくたのようなものをヒントに、
緒方は新製品を開発。

完成したおもちゃを近所の子供にプレゼントする緒方。
「持っていってクラスのみんなに自慢しなよ。」
「開けてもいい?」
「いいよ。その名も、オナラくん!」
「何それ。」少年が笑う。
「お腹んとこ押して見て。」
ぷーっ。
「何これ!」少年は大喜び。

2010年
真介はその少年にインタビューに行く。
カメラの前で、高校生になったその子が笑顔で語りだす。
「僕は、両親がいなくて、祖母のアパートに預けられてたんですけど、
 隣に住んでいたのが緒方さんでした。
 新製品が出来るたびに、いつも僕のところに持ってきてくれて。
 このオナラ君は、小学校の時に大ブームになりました。
 PTAでは大分問題になったようですけど、
 どこに行っても手に入らないのに、
 緒方さんは全種類僕にくれたんです。
 そんな感じだったんで、僕はいつもクラスの人気者でした。
 これは多分ご存知だと思うんですけど、
 与作とウメ。
 これも大ヒットしましたよね。」
「何でヒットしたんだろう。」と真介。
「え?ヒットした原因?」
「そう。」
「野暮ったさですかね。
 でも、このフィギュアに、何ていうか、緒方さんのその、
 人柄みたいのが表れていると思います。
 この二つくらいですかね、緒方さんが作ったヒット商品は。
 でも、少なくても僕は、緒方さんのお陰で、沢山励まされて、
 寂しい思いを紛らわせることが出来ました。
 あの人は本当に優しい人です。
 僕以外にも、親のいない子供とかに、
 おもちゃやお菓子を配っていたと聞きました。
 多分今も、やっていると思います。 
 緒方さんは、子供たちの喜ぶ顔が何よりも好きで、
 おもちゃを作っているんだと思います。」

日本ヒューマンリアクト
「もしかして、緒方さんって・・」と美代子。
「どうやら、彼にも両親がいないらしくて。」と真介。
「緒方さんは、自分の為じゃなく、子供たちの笑顔の為に、
 仕事をしてきたのかもしれないですね。」
「・・・」

夜、真介は陽子に電話をする。
「俺、彼をリストラ出来ないよ。」
「そうだね。大変だね、そっちも。」
「どうしたらいいんだろう。」
「私は答え出す立場じゃないから何も言えない。」
「そういうドライなところが陽子さんの素敵なところなんだよな。」
「あんたって、そういうやや、Mなとこあるよね。」
「それより陽子さん、いつこっちに帰ってくるんですか?」
「明日帰る。」
「え?じゃあ結局東京で仕事探すことにしたんですか?」
「そうだねー。」

「陽子、起きてるかね?」母の声。
「あ、どうしたの?
 あ、東京帰ったら電話する。じゃあ。」
電話を切り、部屋の戸を開ける陽子。
「電話中に、ごめんね。」
「ううん、どうしたの?」
「これをね、東京に、持っていきなさい。」
「あ!着物!」
「これはね、やっちゃんの分。これはね、あんたの分。」
「え?いいの?こんなに!」
「いつか、こっちに帰ってくると思って置いておいて、
 そのまんまになってたもんだから。」
「ごめん。」
「あ、そげな意味じゃないから、気にせんでね。」
「お母さん・・」
「でもま、たまには、お父さんの顔を見に、
 帰ってきなさい。
 お父さんね、本当は、あんた達のこと、気にしてんだよ。」
「またー。」
「お父さんあれでね、相当な親ばかなんだよ。
 森松ハウスが、どっかで二世帯住宅建ててるって聞いたら、
 すぐに飛んでいって。」
「え?」
「別に陽子が建ててるっちゅうわけでもないのにね。
 そいで、工事の人に言うわけよ。
 これは、うちの娘の会社なんですって。」
「・・・」
「森松ハウスっち、若葉銀行がメインバンクなんだって?」
「え?」
「それを聞いてから、うちの預金、ぜーんぶ、若葉銀行に
 したんだよ。」
「・・全然、意味ないっていうか・・関係ないのに・・。」
「そうそう。やっちゃんが、前にちょこーっちテレビに出てたの、
 覚えてる?」
「ああ、泰子が、クラブでピアノ弾いてたやつ。」
「あれね、深夜に、こっそり見てたよ、一人で。
 でもね、もう、・・擦り切れちゃったのよ、ビデオテープ。」
「やだもう・・お父さん・・」泣き出す陽子。
「お父さんが、我慢して仕事してきたのは、
 家族の為なんだからね。」
「・・・」
「あんた達の、未来の幸せの為、
 素敵な人生送れるようにっち、頑張って耐えてきたの。 
 だからあんた達が、今私は幸せだよって、
 笑顔で里帰りしてくれたら、
 お父さんの人生は、寂しくも、なーんとも、
 なくなるんだからね。」
陽子は母の言葉に泣きながら頷き・・・。

翌朝
「お母さん、行って来ます。
 お父さん。」
「おぉ、帰っとか。」
「うん。
 あのさ、」
「うん。」
「例えばさ、私がもう一回結婚するとか言ったら、
 腰抜かす?」
「はぁ?何を言うとか突然!」
「冗談冗談。」
「ほんのこて、冗談じゃなくなってほしかな。」
「そうだ。森松ハウスより給料がいいとこ就職できたら、
 旅行に連れてってあげようと思ってるんだけど、どこがいい?」
「そげな。無理に決まっちょるやろう。」父が笑う。
「ヘッヘッヘ。楽しみにしててね。」
「ああ。
 気をつけて、帰れよ。」
「じゃあ。」
「ああ。」
「行って来ます。」
「ああ。」
母は陽子にピースサインを送っていた。

DONDO、二度目の面接。
「お久しぶりでした、緒方さん。」
「・・・」
「その後、進退については、お考えいただけました?」
「・・・聞いて・・いいですか?」
「・・何でしょう。」
「今回、この面接を受けている人間の・・
 僕達に・・明日はない・・んですか?」
「・・・」

日本ヒューマンリアクト
「緒方さん、あなたは会社に残るべき人間だ。
 そう言ったそうだな。」
「言いました。」
「何を考えてるんだ。」
「リサーチの結果、やめさせるべき人間じゃなくても、
 リストラするべきですか?」
「それは、お前の立場で口にすることか?」
「・・・」
「お前は経営者じゃないんだぞ。勘違いするな。」
「でも、」
「思いあがるんじゃない。
 お前の思うとおりにリストラしたら、
 必ず企業の業績は上向くのか?」
「・・・」
「俺たちが任されているのは企業の再生だ!
 個人の再生じゃない。」
「でも、企業というのは個人の集合体ですよね?
 人間が集まって会社になってるんですよね? 
 そこにいるのは、血の通った人間たちじゃないですか。
 緒方さんの子供に対する愛や、おもちゃに掛ける情熱を知ったら、
 リストラできませんでした。」
「その通りだよな。」
「・・・」
「だが、うちの会社にいるのがお前の様な、
 真っ当な正論な持ち主ばかりだとしたら、
 うちの会社の業績はどうなる?
 辞めさせて欲しいと頼まれている人間を辞めさせられない
 リストラ請負会社なんて、いずれ倒産だ!
 経営者の俺は、どうすればいい?
 リストラ請負会社としては、どうすればいい?」
「・・・」

陽子と会う真介。
「本当に辞めるの!?」
「もう、その選択しか。」
「退職願出したの?」
「まだ、ですけど。」
「精神的なプレッシャー大きいし、
 やっぱ、大変な仕事だもんね。」
「・・・」
「ま、これは、あくまで、人生の一先輩としての意見だから、
 聞かなくて全然いいからね。」
「辞めないほうがいいですかね。」
「そう思ってる自分もいるんだ。」
「いや。高校時代からの親友に、」

「バカ!このご時世に何かっこつけてんだよ、お前!!
 そこそこ給料貰ってんだろう!?
 楽しいだけの仕事なんかねーっつーんだよ!」

「なかなか修羅場くぐってんじゃない、その友だち。」
「そうですよね。」
「まああなたの場合まだ若いし、
 私とは比べ物にならないくらい条件いいだろうけど、
 それでも、就職活動は大変だと思うよ。」
「ですよね。
 あーもう、何で昔みたいにドライに仕事出来なく
 なっちゃったんだろう。
 そう出来りゃ、むちゃくちゃ楽なのに。」
「・・楽じゃなくていいんじゃない?」
「え?」
「切られる立場からしたら、
 切るほうは、それ位、真剣に向き合っててくれないと
 やってられないし。」
「・・・」
「今のあなたのような人が担当なら、
 辛いけど、最終的には、納得するかもしれないよね。
 だってさ、一緒になって、泣いてくれそうだもんね。」
「・・・」
「実はさ、もしかしたら、あなたにとってこの仕事、
 転職かもしれないよ。」
「・・・」

「私、鹿児島に戻ろうかと思って。」
「え?」
「中途半端に東京にしがみつくより、
 親孝行した方がいいかなーって。」
「本気ですか?」
「それ聞いて、鹿児島に追っかけてくるような
 軽い男とは、鹿児島で会っても口利かないからね。」
「・・・いつですか?」
「うん?」
「戻るとしたら。」
「そうだなー。春になったら。」
「恋人候補はほったらかしですか?」
「残念だったね、恋人に昇格できなくて。」
「・・・」
「あ、勘違いしないでよ。
 私、別に、落ち込んでないから。
 前向きな選択っていうか。
 親への感謝の気持ちが、今回の帰省で、芽生えちゃってさ。」
「・・・」

陽子のマンション
「本気で言ってんの!?」と泰子。
「本気よ。あんたもちょっとほっとしたでしょ?」
「ここは?このマンション!」
「売る。」
「マジで!?」
「ごめんなー、二人とも。
 たかる相手がいなくなって大変だろうけど、
 でっかい夢に向かって頑張りな。」
「・・・」
「なーによ。夢の為なら多少の苦労は我慢しなさいよ。
 鹿児島で応援してるから。」
「どうする?やっちゃん!」とミッキー。
「何よ!どうするも何も頑張りなって!」
「違うんだって。
 お姉ちゃんが鹿児島に帰る前、言ったよね。」
それは、二人の結婚話。
「あれ?マジだったの!?」
「マジじゃなかったら何なのよ!」と泰子。
「今度のCDのタイトルかと思った。」
「そんなまだろっこしいタイトルの曲考えるバカが
 どこにいるんですか、お姉さん!」
「あんたらそんなのばっかじゃん。」
「まーまー、とにかく。
 うちら、本気で結婚考えてて。」
「それで、二人で、三日三晩じっくりちゃーんと話し合った結果、」
「音楽、やめることにしました。」
「嘘!!」
「本当ー!!」
「やめて、どうすんの?」
「真面目に、働きます。」とミッキー。
「実はそれで、鹿児島帰って、ラモス的な、」
「ロハス的な、」とミッキー。
「スローバイク。」
「スローライフ。」
「全然違うじゃん。意味全然わかってないべ?」と陽子。
「まーまーまー。」
「ていうか・・自給自足すんの?」
「ま、そんな生活を送りながら、
 お父さんとお母さんの面倒を見るのもいいのかなと思ってさ。」
「今俺ら的に鹿児島はファンキーすっから。」
「本気で言ってんの!?」

日本ヒューマンリアクト
「辞める、か。」と高橋社長。
「いえ。まだ、腹が決まりません。」と真介。
「じゃ、これだけは言っておこう。
 さくっと辞めて、今まで苦しんだ分をチャラにするか、 
 辞めないで苦しんだ事を糧に前に進むか。
 仕事をする人間として、気力があるのはどっちだろうな。」

公園のベンチに座った真介は、楽しそうに遊ぶ子供たち、
仲良くウォーキングする老夫婦を眺めていた。
ふと、ホームレスの姿に気付く。
そのホームレスが一瞬平山に見え、焦る真介。
だが、別人だった。
ホームレスは捨てられた雑誌を紐で括っている。

「あの人だって、仕事はしたいんだ。
 だとすれば、首を切ってきた俺がやるべきことは・・」


真介は、いつか陽子が言っていたことを思い出す。
首切り会社の人間が、就職の世話まで世話をする。
そのひらめきに、歩き出す真介だが、
今度は本当にゴミ箱に手を突っ込む平山を見てしまう。
平山は捨ててあった食べ物を拾うと、紙袋二つを手にその場を去る。

「もしもし、陽子さんですか?
 今日、会えませんか?」
「ごめんね、今日、予定が入ってて。
 森松ハウス時代にお世話になった、関東建材料協会の
 事務局長さんが、送別会してくれるって。」

料亭
「失礼します。」と陽子。
「どうぞ、そちらへ。」
「芹沢さん、この人に、見覚えないかい?」
「えっと・・・あ!!」

真介は、高橋社長のいるすし屋へ。
「社長。」
「おぅ、なんだ。」
「お食事中に、すみません。」
「どうした。」
「社長に・・お願いがあります!」

(ゲスト:山崎樹範 加賀まりこ 山本學)



契約更新の時期を控え、今の仕事は自分に合っていないとか、
自分には他にやりたいことがあるとか。
そんな風に少し迷っている自分にとって、
今回は胸に響くセリフがいくつもありました。

「もし、迷ってるんだとしたら、
 お前がこの会社に席を置いて、仕事をしている限りは、
 迷いを表に出すな。」(高橋社長)

「仕事っちゅうもんは、つまりは我慢することじゃ。
 楽しかことなんぞ、なくて当たり前。
 そいが、金を貰うちゅうことがろ?」(陽子の父親)

「さくっと辞めて、今まで苦しんだ分をチャラにするか、 
 辞めないで苦しんだ事を糧に前に進むか。
 仕事をする人間として、気力があるのはどっちだろうな。」
(高橋社長)

社員である以上は、前向きに、一生懸命仕事をしなければ。
なんだか気が引き締まりました。

さて、今回のリストラ候補は、子供の為におもちゃを
開発し続ける緒方。
ドラマのタイトル『君たちに明日はない』。
今回緒方が言っていました。
「僕達に・・明日はない・・んですか?」
憔悴しきった彼の様子に、胸が苦しくなりました。

強烈なキャラに圧倒されましたが、とても純粋な人なんですね。
仕事への情熱は物凄く持っているのに、
結果が出せないから切られてしまう。
特○の彼は、本当に会社に必要ない人なのか?

陽子の両親が素敵な人たちでした。
お父さんは頑固で不器用。
でも家族の幸せの為に辛い事を耐えて仕事をしてきた。
娘達が笑顔で里帰りしてくれることで、
自分の人生は間違ってなかったと思えるんですよね。

次週最終回。
陽子と真介はそれぞれ、仕事と恋の結果を出すことが
出来るのか?
順子さんは登場するのか?

陽子&泰子姉妹、真介と隆志の本音トークが見られなく
なると思うと寂しいです。



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主題歌
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原作
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B00322P8VO君たちに明日はない (坂口憲二 主演) [DVD]


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キャスト
村上真介:坂口憲二(日本ヒューマンリアクト社員)
芹沢陽子:田中美佐子(森松ハウス、課長代理)
芹沢泰子:須藤理彩
山下隆志:北村有起哉
川田美代子:吉田桂子
順子:麻生祐未
高橋栄一郎: 堺正章(リストラ請負会社・日本ヒューマンリアクト社長)

平山和明:村田雄浩
和久井:小磯勝弥
人事部長:谷本一
部長:須永慶
社長:伊藤延広
得意先社長:田口主将
男:徳井優
重役:石山雄大
老婦:森康子

スタッフ
脚本:宅間孝行
音楽:松本晃彦



坂口憲二さんの主な出演作品




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posted by ちーず at 00:42 | 君たちに明日はない

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