2010年06月10日

Mother 第9話

『引き裂かれる二人』

「継美。継美。起きて。」
奈緒(松雪泰子)に起こされ、にっこり微笑む継美(=怜南・芦田愛菜)。
「どうしたの?」
「夢見たの。お母さんが先生だったときの夢。」
「へー。」
「継美ね、教室にいてね、
 先生がお母さんだったらいいのになって思ったの。
 そしたらね、目覚めてね。」
「お母さんだった。」
「うん!お母さんだった!ウフフフ。」

朝食を食べる3人。
「食べにくいでしょう。歯が抜けたから。」と葉菜(田中裕子)。
「生えてくるかな。」と継美。
「生えてくるよ、また大人の歯が。」と奈緒。
「生えてこなかったらどうしよう。」
「大丈夫。毎日ちゃんとご飯食べてたら生えてくる。」
「うん!」

ランドセルを背負う継美。
「はい。レコーダー。」と奈緒。
「行ってきます!・・・どこだっけ?明日行くの。」
「伊豆よ。」
「伊豆行くの、学校には内緒?」
「うん。内緒。」
「行ってきます!」
「いってらっしゃい!」
「いってらっしゃい。」と葉菜。
「いってきます!」

「じゃあ。」
葉菜の言葉に頷く奈緒。
手帳を広げる葉菜。
「めがね・・」
「あ、ここに。」奈緒がめがねを渡す。
「自分で、書いた癖にね。
 ・・・5月21日、あさって。」
「5月、21日。」奈緒がメモを取る。
「天城、信用金庫、熱川支店。
 普通、口座番号、10337419。
 額面が、580万円。」
「・・・用意・・」
「出来るわ。」
「いつか、かならずお返しします。」
「・・ええ。名義が、有限会社・メンテ企画。
 振込みが済んだらすぐに、市役所に行って、
 戸籍謄本を、申請して。
 望月奈緒と、長女・継美。
 二人の名前になっているか、よく確認して。」
「・・はい。」
「大丈夫。
 きっと上手くいく。
 あさってになれば、あなたと継美ちゃん、
 二人の戸籍を受け取って、
 ごく普通の家族として生きられる。」
葉菜の言葉に頷く奈緒。
「じゃあ私、ちょっと出かけるけど。」
「あ、じゃあ、布団、干しておきます。」

公園
葉菜はから登記済権利証書を受け取る。
「・・・自分の店だと思ったことはありません。
 今もすみれさんにお預かりしているものだと。」と葉菜。
「いやあ、あの店は、家内が、亡くなる前に、
 あんたにあげたものだ。
 好きにしたらいい。」
「・・・お許しください。」
葉菜の瞳から涙が落ちる。

布団を干し、畳みの拭き掃除をする奈緒。

ローン会社(?)
「今日中にお願いしたいんですが。」
「ああ、間に合いますよ。
 ご指定の口座に入金されますので、
 こちらに判子をお願いします。」
「はい。」

すみれ理髪店に、葉菜の主治医の珠美(市川実和子)がやってくる。
「あの、今、ここの人は、留守にしてまして。」と奈緒。
「あなたに会いに来ました。」
「え?」

「あの人は、ずっとお一人でした。
 どんなに大事な話をするときも、いつも一人でいらして。
 ご家族はと聞いても誰もおりませんと仰っていました。」
 ・・望月さんとあなたの間に、何らかの事情があるのは
 承知しています。
 だけど、私、もう見ていられなくて。」
「・・・母です。
 母は、病気なんですか?」
「・・・急性骨髄性白血病です。」
「・・・」

ペットショップ
番のインコを楽しそうに見つめる葉菜。
「そんなに面倒掛からないわよ。」
「そうねー。」

「うっかりさん!ただいま!」
「おかえり、継美ちゃん。」

葉菜の家
「2年前、望月葉菜さんは抗がん剤治療を受けて、
 一命を取り留めました。
 通常その後に、血固め療法という治療を行うのですが、
 望月さんは治療を拒否されて、入院もされませんでした。」
「すごく・・・元気そうに見えます。」
「はい。元気です。
 目の前の死を実感してあんなに元気な人、初めてみました。
 とくに最近は、何か夢中になったように、
 自分の身体のことなど全く考えていません。」
「・・・」
「どうして娘であるあなたに隠し続けているんでしょう。」
「・・・」

手を繋ぎ、歌いながら歩く継美と葉菜。
「お山に雨が降りました
 あとから あとから振ってきて
 ちょろちょろ小川が出来ました
 いたずらクマの子かけてきて♪」

室蘭・警察
刑事が仁美(尾野真千子)に防犯ビデオを確認させる。
「4月1日、17時ごろ、札幌駅東口構内です。
 確認して下さい。わかりますか?」
「鈴原先生です。」と仁美。
「この子は?」
「・・・娘です。怜南です。」

葉菜の家
夕食を食べる3人。
「伊豆に行くのは電車で行くの?バスで行くの?」と継美。
「電車よ。特急踊り子。」と葉菜。
「ふーーん。」
「・・・うん?」無言の奈緒を気遣う葉菜。
「・・・あ、おかず取るときは、ご飯置いて。」
「はい。」
仁美はこういうことも怜南に教えていなかったんですよね。
「この茶碗蒸し美味しいわ。
 お母さん料理上手ね。」と葉菜。
「うん!」

継美が寝たあと荷造りをする奈緒。
「何かすることある?」葉菜が尋ねる
「お風呂、先に入って下さい。」
「じゃ、お言葉に甘えて。」
葉菜が少し咳き込む。
「明日、早めに出かけましょうか。
 ほら、継美ちゃんと海岸にでも行って上げて。
 ・・そんな旅行気分じゃダメかしら。」
「いえ。
 ・・・咳。」
「うん、風邪かしら。」
「病院・・行ったほうが・・」
「そんなたいしたことじゃないのよ。
 あ、ごめんなさいね。
 継美ちゃんにうつさないようにしないとね。」
「・・・」

翌日
店のドアには
『暫くの間お休み致します。
 店主』
という張り紙。

奈緒と継美が2階から降りてくると、
葉菜は静かに、寂しそうに、店を見渡していた。
「うっかりさん、何してるの?」
「継美ちゃん。おやつ持った?」
「うん!持った!」
「じゃ、行きましょうか。」
「行こう!」
「うん!歯生えるかなぁ。」
「大丈夫。ご飯沢山食べたらすぐ生えるから。」
「本当に?」
「本当よ。」

霞ヶ関駅
芽衣(酒井若菜)は通勤途中の圭吾を待っていた。
「圭吾さん。」
「・・・」
「ごめん。」
「忙しかったから・・」
「どうしても、伝えておきたいことがあって。」
「君の気持ちはわかるけど。」
「お腹の子・・あなたの子じゃないの。」
「・・・」
「ごめんなさい。嘘ついてて。」
芽衣はそう言うと、圭吾の手に指輪を乗せ・・・。

鈴原家
「どうしてそんなこと圭吾さんに言ったの!?」と籐子(高畑淳子)。
「私の子だからだよ。
 もう、他の誰の子でもないから。
 すーっとしたよ。」
「何か大変っすね。」と耕平(川村陽介)。
「とりあえず、耕平君の子どもってことにしとこっか。」
「はい!?」
「いいよ。」と果歩(倉科カナ)。
「はい!?」

「パスタでいい?」と籐子。
「うん。
 ・・・奈緒姉に帰ってきてもらったら?
 私はもう、何があっても子供は産むし、
 病気だろうと、育てるし。」
「でも、奈緒に何かあったら。」
「関係なくない?
 世間の目を見るのが母親じゃないじゃん。
 子どもの目を、見るのが母親じゃん。」
「・・・」
「どうしたの?」
「・・・別に。すぐ茹でるから待ってて。」

芽衣はもうお母さんですね。
籐子はそのことに驚き、そしてとても嬉しそうでした。


スミレ理髪店に室蘭から来た刑事が訪ねてくる。
「いないみたいですね。」
「ああ。いねーな。となると?」
「次は、実家です。」
「行こう。」
「はい。」

伊豆
手を繋いで歩く奈緒、継美、葉菜。
「疲れたでしょう?少し、休んだ方が。」葉菜を気遣う奈緒。
「ううん。
 あー!継美ちゃん。海行きますか?」
「行きます!」
「いい?」
「ええ。」
「行こう!お母さんも!」

浜辺を走る継美と葉菜。
「うっかりさん、こっちだよぉ。
 うっかりさーん。」
奈緒はそんな二人を見つめ・・・。

奈緒がアイスクリームを買って戻ると、
継美と葉菜は砂遊びをしていた。
「うわぁ!いいの出来たね。」と奈緒。
「あのね、お家なの!ビルのお家なの!
 お庭でしょ。自転車置くとこでしょ。
 お台所でしょう?テレビみるところでしょう?
 お風呂でしょう?
 お母さんと継美が、寝るお部屋でしょう?」
「素敵ね。」と葉菜。
「じゃあ、ここで、アイス食べようか。」と奈緒。
「お母さん。そこおトイレだよ。アハハ。」
「じゃあ、このお部屋は?」
「そこは、うっかりさんのお部屋!」
「・・・」うつむく葉菜。
「雨が来たら壊れちゃうかな。」
「・・・」

鈴原家
「タマゴ掛けご飯しようかなー。」と芽衣。
「まだ食べるの?」
「いくらでも入りそうな気がする。」
「チャーハンにする?」
「それはさすがに・・いけるかな?」
そこへ、刑事がやってきて・・・。

「もう随分、会ってないんですよ。
 北海道の大学に行ってから、疎遠になってしまって。」と籐子。
「電話は?」と刑事。
「ええ。次女が、結婚式の案内出したんですけど、
 欠席で、返信が来たくらいです。」
刑事の携帯が鳴る。
「はい。先ほどはどうも。
 え!?」
「・・・」

伊豆
防波堤を歩く3人。
「継美。ここ、気に入った?」
「うん!気に入った。」
「住みたい?」
「うん!住みたい。」
「又、小学校の友達に、会えなくなっちゃうけど。」
「お友達はすぐに出来るよ。
 うっかりさんも一緒に住むでしょう?」
「うっかりさんも?」
「おばあちゃんでしょ?
 継美とお母さんとおばあちゃん。
 ずーっと3人で暮らすの。
 3人でね、すみれ理髪店するの。
 お母さん髪を洗う係りでしょ。
 おばあちゃん、髪の毛切る係りでしょ。
 継美はね、髪の毛乾かす係りと、あと、お菓子あげる係り。」
「・・・」
「だめ?お菓子あげる係り。」
「素敵ね。」と葉菜。
「髪の毛洗う係り、イヤ?」
「お母さん、髪の毛洗う係りする。」
「家族のお店だね!」
空を渡り鳥が飛んでいく。
「鳥さーーん!ここだよーーーっ!
 ここにいるよーーーっ!
 鳥さーん、ここだよーーっ!ここにいるよーーーっ!
 鳥さーん、ここだよーーっ!ここにいるよーーーっ!
 鳥さーん、ここだよーーっ!ここにいるよーーーっ!」

鈴原家に果歩から相談を受けた駿輔(山本耕史)がやってくる。
「すみません。
 事情を聞かれただけで、心配し過ぎなのかも
 しれませんけど。」と籐子。
「いえ。警察は誘拐事件として確信していると思います。」

旅館
布団の上でゴロゴロ転がる継美。
「お風呂大きいから、泳げますよ。」と葉菜。
「お風呂で泳いだら、ダメですよ。」と継美。
笑い合う二人。
奈緒の携帯が鳴る。
「継美。タオル。
 先行ってて。」
「うん!」

電話は、駿輔からだった。
「もしもし?」
「・・はい。」
「今、鈴原さんのお宅にいます。」
「え・・」
「昼間、室蘭から警察が来たそうです。
 あんたの行方を参考人として捜してるって。」
「・・・」
「恐らく、道木仁美が通報したんだろう。
 見つかったら、任意同行を求められる。
 あの子が道木怜南だと判明したら・・・
 あんたは未成年者誘拐罪で、逮捕となるだろう。」
「・・・」
「今、どこにいる?」
「・・・」
「もしもし?・・もしもし?」
「母はどうしてますか?
 妹達は?」
「あ、ちょっと待って。」
駿輔が携帯を籐子に渡す。
「・・・奈緒。」籐子のこの一言で涙が・・。
「・・・ごめんなさい。」
「お母さんあなたを誇りに思ってる。」
「・・・」
「あなたを家から出して以来、お母さんずっと後悔してた。
 何よりもまず最初に行ってあげなきゃいけなかった。
 ・・よく継美ちゃん助けてあげたわね。」
「お母さん・・・。」
「世間の誰が何と言おうとお母さん誇りに思ってる。
 娘として誇りに思ってる。」
「・・・」
「奈緒姉ちゃん。」
「果歩・・。」
「私たちは大丈夫だからね。
 継美ちゃんのことだけを考えてあげて。
 継美ちゃんを・・返したりしたらダメだよ。
 絶対諦めちゃダメだよ。」
「・・うん。」
「奈緒姉。」
「芽衣。」
「早く、うちの子と継美ちゃん、遊ばせたいね。
 継美ちゃん、お姉ちゃんだから、面倒見てくれるよね。
 頼むよ。私当てにしてるからさぁ。
 又さ・・すぐに会えるでしょ。
 又、すぐに。」
「うん。」
「楽しみに待ってるから。」
「うん。・・私も。」

「もしもし。自首する気はあるか?」と駿輔。
「ありません。」
「あの子の目の前で逮捕されるかもしれない。
 そうなればあの子は、室蘭に戻される。
 まあ虐待の事実がどう捉えられるかによるが、
 最悪、家に戻され、最善でも児童施設行きだ。」
「・・・継美は絶対に離しません。」
「わかった。いいか?
 未成年者誘拐は親告罪だ。
 道木仁美が告訴しなければ立件されず、
 あんたの逮捕はない。
 俺はこれから室蘭に行って、道木仁美を説得する。」
「どうしてあなたが・・」
「さあ。自分でもわからないよ。
 いいか?少なくとも明日一杯逃げ続けろ。」
「・・・」
「逃げるんだ。」
「・・・」

鈴原家
「もしものことがあった場合、継美ちゃんを家で
 引き取る事は、出来ますか?」と籐子。
「加害者のご家族ですから恐らく、認められないでしょう。
 捕まったらそこで終わりです。あの二人の旅は。
 もう二度と一緒に暮らすことは、出来ないでしょう。
 ・・では、又何かあったら、こっちから連絡します。」
駿輔が帰っていく。

籐子は自分に寄り添う芽衣と果歩の手を握る。
「芽衣・・果歩・・
 お母さん決めたわ。
 奈緒にもしものことがあっても、離縁届は出しません。
 いいわね?」
娘達は母に頷き・・・。

奈緒と継美は旅をしているんですね。
渡り鳥のように・・・。


旅館
「鈴原さんのお宅に、室蘭から警察が!?」と葉菜。
奈緒が頷く。
「今からでもどこかに行ったほうがいいんじゃないかしら。」
「とにかく、明日の朝銀行に行きます。
 まずは戸籍を手に入れて、逃げるのはそのあとで。」
「わかったわ。
 ・・・継美ちゃん、ここでお店をやるなんて。」
「ええ。」
「じゃあ、そろそろ、寝ましょうか。」
「・・・眠れるかな。」
「心配するのはわかるけど、でも、」
「そのことだけじゃありません。
 昨日、あなたの主治医に会いました。」
「・・・」
「あなたの・・・あなたのこと・・」
「あの先生大げさなのよ。
 なーんにもね、大したことないの。
 私はどこも、」
「嘘つき。」
「・・・」
「また私を騙そうとしている。
 また私を騙して・・・私を・・・」
「じゃあ、また騙されて。
 元気よ、私は。」葉菜のこのセリフ。この表情・・・。
「嫌です。
 あなたと再会してから私ずっと、あなたに酷い事を。」
「・・・」
「今だって、こんなに大変な時なのに、心配掛けて。
 こんな所にまで連れてきて。」
「・・・」
「私は許さなかったのに、どうしてこんなにまでして・・。」
「それはあなたも、知ってるでしょう?」
「・・・罪滅ぼしですか?」
「違うわ。
 今が幸せだからよ。」
「・・・」
「幸せって、誰かを大切に思えることでしょう?
 自分の命より、大切な物が他に出来る。
 こんな幸せなこと、ある?」
「・・・」
継美が寝返りを打つ。
「継美の砂の家・・・。」
「素敵だったわね。」
「ええ。」

室蘭の警察
「子どもも一緒に映ってるか?
 わかった。吉井達と合流して当たってくれ。」
電話を切る刑事。
「あ、道木さん。
 鈴原奈緒さんと、怜南さんの行き先がわかりました。」
「・・・」

翌朝
布団を押入れに片付ける奈緒と継美。
「あら?お母さんに抱っこしてもらっていいわね。」と仲居さん。
「いいでしょ!」
「お母さんにそっくり!」
顔を見合わせる継美と奈緒。

「似てきたのかな。」と継美。
「似てきたのかな。」と奈緒。
「目かな。」
「鼻かな。」
「口かな。」
「手かな。」
両手を合わせる二人。
「似ちゃうね。」と奈緒。
「似ちゃうね。」
「・・じゃあ、お母さん、ご用事してくるね。」
「うん!」

葉菜が通帳と印鑑を奈緒に渡す。
「部屋で待っていて下さい。連絡します。」
「はい。」
「お母さん!いってらっしゃい!」
「行ってきます。」

怜南にとって押入れは、浦上に閉じ込められたという
怖い思い出のある場所。
でも今はこんなに楽しそうに布団をしまっていました。
心の傷が癒えた証拠ですね。


室蘭 
駿輔が道木家を訪れる。
「警察に告訴状を出すのはやめてもらえませんか?」
駿輔の言葉を鼻で笑う仁美。
「もう娘のことはいらないって言ってたじゃない。
 どうして今になって通報したりした?」
「嫌いだからですよ、あの女が。」
「今更娘返されても困るでしょ?だったら、」
「残念でした。」
「え?」
「告訴状、さっき出したんで。」
「・・・」

伊豆
銀行へと急ぐ奈緒。
だが、銀行はATMシステムメンテのため、まだ開いていなかった。
奈緒は旅館に電話をする。
「もしもし、椿の間をお願いします。」

自転車に乗った警官が奈緒の側を通り過ぎる。
「先ほど、室蘭から二人来て、合流しました。」

「もしもし?」
「お母さん!」
「継美?うっかりさんに変わってくれる?」
「あのね!さっきね!」
「ごめん。急いでるの。変わって。」
「うーん。うっかりさん、お母さん。」
「はい。
 もしもし?」
「何か、変わったことはありませんか?」
「ないわ。大丈夫よ。」
「信用金庫が開くまで、まだ時間が掛かりそうなんです。
 近くに銀行があるので、そっちに行ってみます。」
「はい。」
「あ、待って。継美ちゃんが代わりたいって。」
「もしもし?お母さん、あのね、」
「ごめん。あとでね。」
「お母さん・・」

「お母さん、何か怒ってた?」
「ううん。怒ってなかったわよ。
 お母さん帰ってきたら、教えてあげよう。」
「うん・・。」
「それまで、折り紙でもしてましょうか。」
「うん!!」

奈緒は、町の人に写真を見せながら質問している警官を見かけ、
慌てて姿を隠す。

別の銀行の前にも刑事がいて、立ち寄る事が出来なかった。

「継美・・・。」
雨が降ってきた。

旅館
不安そうに奈緒の帰りを待つ葉菜。
「あ!うっかりさん、見て見て!
 晴れてるのに雨降ってきたよ。」
「あー、お天気雨?狐の嫁入り。」
「キツネ?」
「うん。
 ほら、お日様が照ってるのに、雨が降っているときは、
 キツネが結婚式してる。」
「へーー!!」

雨の中を走る奈緒。
旅館まであと少し。特に変わった様子もない。
一台の車が奈緒を追い越していく。
その車は旅館の前に泊まり、旅館から出てきた仲居に
何か尋ねようとする。
「あ、お帰りなさいませ!」
仲居が奈緒に気付き、傘を持ってくる。
刑事たちは奈緒の姿に気付き・・・。

奈緒は旅館に背を向け走り出す。

雨を見ながら歌を歌う継美と葉菜。
「お山に雨が降りました
 あとから あとから降ってきて
 ちょろちょろ 小川が出来ました

 いたずら熊の子 かけてきて
 そーっと覗いて見てました
 魚がいるかと見てました

 何にもいないと熊の子は
 お水を一口飲みました
 お手手ですくって飲みました

 それでもどこかにいるようで
 もう一度覗いて見てました
 魚をまじまじ 見てました

 なかなかやまない雨でした
 傘でもかぶっていましょうと
 頭に葉っぱを乗せました」

奈緒は警察に囲まれてしまい・・・
逃げるのを諦める。

「継美とお母さんとおばあちゃんと
 家族3人で暮らすの。」


「継美・・・」
雨を落とす空を見上げ・・・
「つぐみーーーーーーっ!!」
と絶叫する。

旅館
継美が振り返る。
「お母さん?」
「どうしたの?」
「お母さんの声、聞こえなかった?」
「・・帰ってきたのかしら。
 ちょっと見てくるわね。」

葉菜がロビーに行くと、警官が旅館のスタッフに事情を聞いていた。
葉菜は慌てて外に出ていく。
奈緒が警察の車に乗せられようとしていた。
「奈緒っ!!」
「・・・」
「奈緒!奈緒!!奈緒!!」葉菜が奈緒に駆け寄る。
「・・・お母さん。
 ・・・こんなだったかな。」
奈緒の手は葉菜にしっかり握り締められていた。
「・・・少し、小さくなった?」
「あなたが大きくなったのよ。」葉菜の横顔を捉えるカメラ。
葉菜の仁美から涙がぽろっと零れ落ちます。
ついでに私の目からも涙ボロボロです。

「・・・お母さん。病院に行って。
 病院に行って、ちゃんと検査・・・」
「わかった。わかったから・・。わかったから奈緒!」

「望月葉菜さんですね。詳しく事情をお聞きしたいので。」
刑事が二人を引き離す。
「待ってください!
 この子と継美ちゃんは、」
「継美?早く乗せて!」
「待ってください!継美ちゃんとお別れを!
 待ってください!」

「お母さん!!」
「継美ちゃん!!」
奈緒に駆け寄ろうとする継美を、刑事が阻止する。
「道木、怜南ちゃんだね?」
「おかあ、さーん!!」
「この子は話したがってるんです。
 お願いします!お願いします!」と葉菜。
刑事たちが継美を離すと、継美は奈緒に駆け寄る。
「継美・・。」
「どこ行くの・・継美も行く。
 どこ行くの!?継美も行くよ。
 おかあさん!!
 何で黙ってるの!?」泣きながら必死に訴える継美。
「・・・継美。さっき、電話で何言おうとしたの?」
継美の手を握り締めながら奈緒が言う。
「あのね・・歯が生えてきたよ。
 大人の歯が・・生えてきたよ。」
「そう・・。そう・・。良かったね・・。
 継美。」
「お母さん・・。」
「覚えてて。
 お母さんの手だよ。
 お母さんの手。
 ずっと握ってるからね。
 継美の手、ずっと握ってるからね。」
泣きながら頷く継美。
そして二人は抱きしめ合い・・・。
「車動くよ。
 危ないから離れて。」
継美は首を激しく横に振る。
「離れてなさい。」
首を横に振り、奈緒に抱きつこうとする継美。
「お母さん・・。」
奈緒に頼まれ、葉菜も泣きながら、継美を奈緒から離す。
しっかりつながれていた奈緒と継美の手が離れ・・・。

奈緒を乗せた車が走り出す。
「継美・・」
「おかあさーーん!!」
「継美!!」
「おかあさーーん!!」
「継美ーーーーっ!!」
「おかあさーーん!!」
「継美ーーーーっ!!」
「おかあさーーん!!
 おかあさーーん!! 
 おかあさーーん!!
 おかあさーーん!!
 おかあさーーーーーん!!」


このドラマを見るときは、部屋を暗くし、
ものすごく集中して見ています。
今日も泣いた泣いた。どれだけ泣かされてしまうんだろう。

冒頭の朝、目を覚まし、今見ていた夢の話をする継美。
穏やかに迎えられる朝。
朝ご飯の時の会話。
歯が生えてくるかな、ちゃんとご飯を食べていれば
大丈夫。
こんな何気ない会話から幸せがひしひしと伝わってきます。
ほんの少し前まで、こんな温かい食卓があることを
怜南は知らなかったんだろうな。

理髪店は、あの常連客の妻のものだったのですね。
すみれさんはあの店で働き始めた葉菜の人柄に触れ、
店を譲ったのでしょう。

葉菜の病名は、急性骨髄性白血病。
ということは、奈緒がドナーになれれば
もしかして助かる可能性が出てくるのかな。
助かってほしい。

伊豆で、継美は葉菜のことをおばあちゃんと呼びました。
奈緒も葉菜を初めてお母さんと呼びました。
そして葉菜も、奈緒のことを名前で呼びました。

あの砂の家のように、葉菜、継美、奈緒、
そして番のインコと一緒に幸せに暮らして欲しい。
伊豆ですみれ理髪店を、家族3人でやってほしい。

伊豆の空を飛んでいく渡り鳥。
継美は
「鳥さーん、ここだよーーっ!ここにいるよーーーっ!」
と叫んでいました。
室蘭の海では、「怜南も連れてってーっ!」って、
何度も何度も叫んでいた怜南・・・。
自分の居場所を見つけたと、鳥に伝えたかったのでしょう。

「幸せって、誰かを大切に思えることでしょう?
 自分の命より、大切な物が他に出来る。
 こんな幸せなこと、ある?」
葉菜が言っていた言葉。
葉菜や奈緒にとって、この思いが向けられる相手は我が子。

奈緒と鈴原家の人々との電話でのやり取りも泣けました。
久しぶりの母の声。優しい言葉。
奈緒、嬉しかっただろうな。
果歩の優しさも泣けましたが、芽衣にやられた!
芽衣らしいエールの送り方でした。

奈緒は辛い生い立ちでしたが、
今は二人の母緒に心から愛されて、幸せですね。
それに、奈緒には継美もいる。

それと比べると、仁美はいつまでたっても寂しい人。
この人は救われるのだろうか・・・。

奈緒の「つぐみーーーーっ!!」という絶叫。
普段静かなトーンで喋るのは、この時の為だったのか、
と思ってしまった。
子どもが自分から引き離される。
『八日目の蝉』では「その子はまだご飯を食べてないの!」
も母の母性を表したセリフでしたが、
実際は、奈緒のように名前を叫ぶことしか
出来ないかもしれません。

予告を見ると、継美は児童施設で暮らしているようです。
ということは、仁美の虐待が明かされたんですね。
『もものいえ』で一時身を寄せた継美は、
施設でも楽しく過ごせるかな。
あそこで奈緒のことを待つのですね。

裁判になったら、駿輔が隠し撮りしていた写真、
奈緒に抱きしめられ幸せそうに微笑む怜菜の笑顔が
この二人こそ本当の親子なのだと証明してくれるのかも。

葉菜のお金を使わなくても済む方法で
奈緒と継美に親子になってほしいです。


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【すきなもののーと】

『まわるいす
 まがってるさかみち
 おふろででるこえ
 ねことめがあうこと
 すずがひまわりのたねたべるところ
 ゆきをふんづけるおと
 よるのそらのくも
 クリームソーダ
 かさがひらくおと
 クレヨンのしろ
 ワックスがけのひ
 えんとつのはしご
 ころもがえ
 みかんゼリーにうかんでいるみかん
 あめがふったみちのにおい
 じてんしゃの、うしろのおせき
 みみかき
 つめきり
 ふたつむすび
 よしよしされること
 ぎゅっとされること
 せっけんのコマーシャルの、おかあさん』

【メモ】
奈緒:
5歳で野原で置き去りに。
7才まで施設『もものいえ』で育つ。
籐子と出会い、鈴原家の養女に。
現在35歳。

葉南:
20歳で奈緒を出産。25歳の時に奈緒を手放した。
その後すぐ逮捕され、13年栃木の刑務所にいた。
ある日突然鈴原家を訪ねてきたが、
奈緒は高校を卒業し、北海道の大学に進学していて会えず。
その頃から17年、月々1万欠かさず積み立て貯金。

籐子:
27歳の時に施設で奈緒と出会い、引き取った。

2003年冬(室蘭)
 健史、仁美、怜南、幸せそうな3人。
2005年夏
 仁美、シングルマザーに。仏壇には健史の写真
2007年夏
 「ぎゅーっ!」二人でも幸せいっぱい
2008年夏 
 仁美、怜南を置いて浦上と旅行
2009年冬 
 怜南、下着姿で押入れに。
 浦上、マフラーで怜南の首を絞める?
 怜南、仁美に「助けて」
 その夜、怜南を抱いて走る仁美、元夫を目撃。
2010年冬 
 海のポスターを外す

『母性は女性を狂わせる』

ポスト
紙飛行機
すきなものノート
水色のマフラー
サイズの合わない靴=赤いコート(奈緒はすぐに赤い靴を購入)

たんぽぽの咲く野原(奈緒)=貝殻の海岸(怜南)

おやつ:
奈緒は"すきなもののーと"に書いてあったみかんゼリー
仁美は怜南が好きだった棒ナツ

母:
仁美(怜南)奈緒(継美)籐子(奈緒・芽衣・果歩)
葉菜(奈緒)芽衣(妊娠中)




主題歌
B003EW4KO8泣き顔スマイル
hinaco
rhythm zone 2010-06-02

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サウンドトラック
B003COBQVS日本テレビ系水曜ドラマ「mother」 オリジナル・サウンドトラック
TVサントラ
バップ 2010-05-26

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DVD
B003EIJ4I4Mother (松雪泰子 主演) [DVD]


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【キャスト】
鈴原 奈緒 ・・・ 松雪泰子

藤吉 駿輔 ・・・ 山本耕史
鈴原 芽衣 ・・・ 酒井若菜
鈴原 果歩 ・・・ 倉科カナ
道木 怜南 ・・・ 芦田愛菜(子役)

道木 仁美 ・・・ 尾野真千子
木俣 耕平 ・・・ 川村陽介
柚川 珠美 ・・・ 市川実和子
加山 圭吾 ・・・ 音尾琢真
藤吉 健輔 ・・・ 田中 実
浦上 真人 ・・・ 綾野 剛
三浦たかこ(女性教師)
健史(並木幹雄

鈴原 籐子 ・・・ 高畑淳子
望月葉奈 ・・・ 田中裕子

【スタッフ】
脚本 :
 坂元 裕二

音楽 :
 REMEDIOS

主題歌 :
 hinaco

プロデューサー :
 次屋 尚
 千葉 行利(ケイファクトリー)

チーフプロデューサー :
 田中 芳樹

演出 :
 水田 伸生
 長沼 誠

制作協力 :
 ケイファクトリー

製作著作 :
 日本テレビ



松雪泰子さんの主な出演作品



山本耕史さんの主な出演作品




01:57 | CM(3) | TB(0) | Mother | Edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
素直さが無い人は、ごまかしや言い訳の通じない人から図星を言われたり、はっきりと指摘されると異常にその指摘した人に対して嫌悪を剥き出しにする。言い訳の多い人間程そうだ。仁美が怜南をまともに育てていた時も、どこか意固地で無理をしていたし視野が狭く世間知らずに感じた。折れてからの豹変、落ち方を見ると頑張っていたのは意地からか…。責めずに違う角度から仁美に言い訳が出来るように、おだてつつ誉めつつ交渉しないといけない。最初から怜南の食事中の行儀が悪いなと感じていたが奈緒は割としっかりしつけていたように感じる。「友達親子」「誉めて育てる」というのも時と場合がある。仁美に言いたい。誉められなくても為すべき責任というものは存在する。
Posted by ヒロ・マツダ at 2010年06月10日 14:19
ちーずさんこんばんは、自分も冒頭の何気ない三世代の会話に涙が浮かんできます、うるうるした状態での視聴なのに三人の演技やせりふにやられますね〜

検挙された奈緒が初めて葉菜をおかあさんと呼び葉菜が奈緒とさけぶシーンそして継美のおかあさーーんは流石でした!しばらく涙が止まらなかったです、逮捕されるときまでよく我慢したつくりがスタッフの作品にかける意気込みと自信がみえてきます!

あの店は常連のおじいちゃんの奥さんから貰い受けたのですね、葉菜が出所したときの保護司だと思っていたので関係性がわかるエピもよかったです!葉菜の罪状は明かされていませんが、譲り受けるほどの人柄が伝わってきました、今後裁判が行われたときに重要な要因になりそうな気がします!

鈴原家の決断と電話でのエールも泣けました、奈緒を本当の子供として姉妹として心配する家族、強くなった芽衣や藤子のことばも心をつきます!本当に上手い役者さんが揃ったドラマですね〜きっかけを作った仁美が継美に懐いている姿をみて嫉妬する母親、理由はまだ分からないけれど葉菜を心配する医師、インコを飼ってみないかと勧めるおばさんと無駄のない配役ですね!今後奈緒を逮捕した女性刑事も絡みそうですね!

偽の戸籍を買うために店を売ったりした葉菜、奈緒と話した犯罪になるのでは?が生きていました、逮捕された奈緒は戸籍を買うことが出来なくて誘拐の疑惑だけなので法律には詳しくないけれど緊急避難になるのかと思います!第三者が警察に保護を要請したときの対応がこれからの展開やメッセージになるのかもしれませんね!

今期ちーずさんがレビューしていないドラマの中で面白いものもありますが、このドラマはひとつ貫けています、葉菜の病気と継美の行く末ラストは全てのしあわせが待っていると嬉しいですね!

Posted by けた at 2010年06月10日 20:04
毎週 楽しみでもあり
見てると いつかは終わるんだという あたりまえの事に怯えつつ 泣きながら観ています ホントこんな役者さん 揃えたなぁ と感激exclamation×2 継美ちゃんもいーけど 田中裕子さんは やっぱりすごい あのゆったりとした台詞まわし 間の取り方 存在感 まぁ老けはされましたが かわいさと不思議な雰囲気は健在で。最終回が来なければいい 終わっちゃったら すごい寂しさと虚脱感を感じそうで 怖いです
Posted by 私もMOTHERです at 2010年06月17日 00:04
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