2010年10月25日

フリーター、家を買う。 第1話

『明るかった母さんが壊れた…!』

「俺の人生、いつもそこそこだった。
 二流商社に勤める父親と、千行主婦の母親、
 姉一人というそこそこの家庭で育ち、
 そこそこの高校に入り、一浪してそこそこの大学に入り、
 そしてそこそこの部品会社に入社。
 良くも悪くも、このまま一生そこそこな人生が
 続いていくんだろうなと思っていた。
 この新人研修に参加するまでは。」


新人研修中、電信柱のポーズを取らされていた武誠治(二宮和也)
は、くしゃみをしてしまい、竹刀で叩かれる。
「いいか!社会に出たら不条理なことだらけだ!
 立派な社会人になるために、このことだけは覚えておけ!
 どんなことがあっても、人を責めるな!己を責めろ!」
上司は新入社員たちにそう言うと、カメ、マイケルジャクソン、と
指示を出す。
同期の社員たちの必死な様子に戸惑う誠治。

三ヵ月後、四葉電子
自分なりにアレンジした書類を上司に持っていく誠治だが、
「勝手にやり方を変えてもらっちゃ困る。
 社内には、慣例ってものがある。慣例!」と怒られてしまう。

別の新入社員が同じ上司に
「今までの慣例をちょっとアレンジしてみようと考えてみました。
 是非部長のアドバイスをいただけないでしょうか?」
と持っていくと、その上司は気を良くし、その案を採用。

断れない飲み会。会計のタイミング、方法。
誠治は部長の"慣例"に納得いかず、我慢も出来ず、
会社を辞めてしまった。
 
中堅商社で経理畑ひと筋に働いてきた父・誠一(竹中直人)は、
何故相談もなく勝手に辞めたのか、と誠治を怒鳴りつけた。
「あんな馬鹿げた会社居る意味ないんだよ。
 最初の新人研修の時から意味わかんねーし。」
「楽しくて楽しくて仕方が無い会社なんてどこにある!
 みんな会社にそれぞれ不平不満を抱えて、それでも一生懸命
 働いているんだ。
 お前みたいなやつはな、どんな会社に勤めたって、
 長続きはしない!
 社会人失格だ!」
「決め付けんなよ。」
「寿美子は、誠治が辞める事知ってたのか?」
「知らねーよ。母さんだって今聞いたんだから。」
「辞める前に、誠治に何か変わった様子があったはずだ。
 何も気付かなかったのか?」
「ええ・・。ちょっと、驚いたけど。
 誠治が自分で決めたことなんだから。」と寿美子(浅野温子)。
「それでいいわけないだろ!!」
「ね!これ食べて。すごく良く漬かったの。ね!」
「このご時世、そう簡単に就職先が見つかると思ったら大間違いだ。」
「わかてるよ。」
「お漬物!」
「わかってないから簡単に会社を辞めたりするんだろ!」
「わかってるって言ってんだろ!うるせーな。」
「うるせーって何だ。」
「もういいよ。」
「親に向かって利く口か!?」
「わかったよ!」

しかし、就職活動は思うようにいかなかった。
誠治は次第に焦っていく。
そんな誠治を寿美子は温かく見守っていた。
「誠治?今日は何食べたい?」
「ああ・・別に何でもいい。」
「じゃあ豚のしょうが焼きはどう?」明るく声を掛ける寿美子。
「ああ。」そっけない返事の誠治。
「・・・」

ハローワーク ヤング相談コーナー
「前の会社せめて1年勤めていたら、格好がついたものの。
 3ヶ月じゃねー。単なる根気の無い若者としか思われないですからね。」
と担当者。
「いやいや、根気が無いんじゃなくて、決断力があるって
 思ってくれる会社もあるかもしれないじゃないですか。」
「再就職の当ても無いのに決断力もなにもないでしょう。」
「・・・」
「うーん、ご希望の企画開発の仕事は、新卒じゃないと
 難しいですね。飲食チェーンとかどうです?
 新卒じゃなくても採用してくれるとこ、結構ありますよ。」
「あいや、企画開発って条件を、変えるつもりはないんですよ。」
「まあ・・今日のところは、ご希望の求人ないようですね。」
「・・・」

武家
「これでも誠治が決めたことだから、会社を辞めたって
 構わないって言えるのか!?」と誠一。
「まだまだこれからよ。」明るい声で答える寿美子。
「一日中家に居る寿美子は、社会の厳しさがわからないんだよ。
 仕事なんてな、いくらでもあると思ったら大間違いだ。」
「もうほっとけよ!俺が親父に迷惑掛けたのかよ。」
「家に食費も納めないお前が、偉そうな口叩くな!」
「お代わり。」
「はい。」
「いいか。お前みたいな人間が、ごく潰しって言うんだよ。」
「・・・」
「寿美子も寿美子だよ。
 こうやって甘やかしてきたから、誠治がこんな、
 こらえ性の無い人間になってしまったんだ。」
「・・・」
「おい。ビールがないぞ。」
「はい。」
「俺は、一生懸命働いてきた。
 家族みんなを食べさせて、何一つ不自由させてこなかった。
 しいて言えば、この家が、マイホームじゃないということだ。
 でもな、会社買取の社宅ということで、家賃がたったの
 5万円で済んでる。ご近所さんたちが、建売の住宅ローンの
 返済で苦しんでいる中、家賃5万円の我が家は、生活にゆとりがある。」
「どこに。」
「年に2回、旅行している。」
「国内だろ?」
「海外に行けばいいってもんじゃない。」
「箱根、草津、別府、湯布院。全部親父が行きたいとこじゃねーか。
 母さんの行きたいとこ聞きゃあしないくせに。」
「一主婦が、旅行に連れていってもらえるだけでありがたいという
 ことをお前はわかんないのか!」
「会社で威張れないからって家で威張るなよ。」
「・・・何だと!?」
「図星かよ。」
「何だその態度は!会社にも入れない人間が、偉そうな口利くな!」
食器を片付け始める誠治。
「まだ話は終わってない!」
「もういいや。めんどくさいから俺もう上行くわ。」
「そんなこと言わないでね、一緒に食べよう。」と寿美子。
「話は終わってないんだ。座れ!座れ!!」
二階へ行こうとする誠治。
「誠治。2万円だぞ。、」
「何が?」
「食費だよ。」
「2万なんか入れるかよ。」
「何だと!?」
「3万入れてやるよ!」
誠治はそう言い、自分の部屋に行ってしまう。

誠治の部屋
通帳の残高を確認する誠治。残高、83,559円。
「はぁ・・・。2万にしときゃ良かった・・・。」

朝、家を出ると近所の主婦・西本幸子(坂口良子)が声を掛けてくる。
「誠治君!こんにちは。」
「こんにちは。」
「今日、会社お休み?」
「いや・・あの・・俺辞めちゃったんですよね。」
「四葉電子・・あら!どうして?」
「いや、まあ・・色々・・」
「じゃあ、今無職?」
「いや、でもバイト・・してるんで。」
「ああ、フリーターってやつね。」
「あいや、でも普通に、就職活動・・してるんで。
 なんていうんですか?就職決まるまでの、小遣い稼ぎ、みたいな。」
「うん。早く決まるといいわね。頑張って。」
「はい。じゃあ。」
誠治は幸子に挨拶すると、原付バイクで出かけていく。

コンビニでアルバイトをする誠治。
「いらっしゃっせー。」「っしたー。」
店主が誠治の言葉遣いを注意するが、なかなか直らない。

「俺の人生、いつもそこそこだった。
 すぐにそこそこの会社に再就職するつもりだった。
 しかし、俺のフリーター生活は、ここから始まった。」


一年後。
とりあえずアルバイトを始めた誠治だが、人間関係が上手く
いかないとすぐに辞めてしまい、バイトを転々とする日々を送っていた。

誠治の姉で、開業医のもとに嫁いだ亜矢子(井川遥)は、
自堕落な弟の行く末を案じていた。
それでも寿美子だけは、誠治を信じて見守っていた。

夕食を誠治の部屋に持っていく寿美子。
「さばの塩焼き。」
「お!ありがとう。」
「ねえ・・たまには下で、3人で食べよう。」
「いやだから、親父がいるんだから無理だって。」
「お父さん、ああいう口の利き方しか出来ない人だけど、
 あれでも父さん、いろんな人に誠治の就職の事頼んでくれている
 みたいなのよ。ちょっと相談してみない?」
「・・・」
それを聞いた誠治は一階に駆け下りていく。

「なあお袋に言わすなよ!」
「何のことだ?」
「俺は親父に就職の斡旋頼んだ覚えねーかんな!」
「結局就職先なんか見つからなかったじゃねーか。
 会社やめたこと後悔してんだろ?」
「・・してねーよ。」
「いいか?お前は、あんなわけの分からない、新人研修をする
 変てこな会社、こっちから辞めてやったと思ってるかもしらない
 けどな、お前は、あの会社にふるいに掛けられたんだよ。」
「・・・そんなこと。」
「能力の無いお前は、ふるい落とされたんだよ!」
「うるせーよ!いいか?俺はな、親父の手だけはゼッテー
 借りねーからな!」
「お前を雇うような会社なんて、どこにもないよ!」

寿美子は体を小さく前後に揺らしながら、二人の怒鳴り声を聞いていて・・・。

ハローワーク
「給料は、最低手取り20万円で。」と誠治。
「武さん。結婚相談所で、相手の年収は絶対最低1千万っていう
 女性どう思います?」
「それ、僕が高望みしてるって仰りたいんですか?」
「少し条件を見直せば、選択肢が広がるのではないかと
 申し上げているんです。」
「いや僕は高望みなんかしてませんよ。
 ただ、納得の行く、就職先を見つけたいんです。
 だって、そうじゃないと、結局はまた長続きしないだろうし。」
「就職することが先決でしょう?」
「今はまだ、僕の力を最大限発揮できる職場に、
 ただ出会えてないだけなんじゃないかって思うんすよ。」
「・・・」
「僕のことを認めてくれる上司がいる職場が、
 きっと、あると思うんです!」
「IT関係。初任給手取り23万。」
「あるじゃないですか!
 ちょっと、聞いてみて下さい。」
「時間の無駄ですよ。」

武家
「じゃあ、面接行ってくる。」
「はーい。」
家計簿をつけながら笑顔で答える寿美子。
「・・・あの・・今月の、食費なんだけど・・」
「いいのいいの。お父さんには、ちゃんと入れていることに
 しておくから。」
「あ、でも、バイト代入ったらちゃんと、入れるからさ。」
「これ。今日の電車代。」2千円財布から取り出す寿美子。
「いや・・いいよ、そんな。」
「はい。これ位貰っちゃえばいいの。」
「・・・ごめん。じゃあ、行ってきます。」
「誠治。いつからでも再スタート出来るわ。」
「・・・」
誠治は母の言葉に寂しそうに微笑むと、出かけていく。

家を出ると、幸子が声を掛けてきた。
「誠治君、おはよう。」
「おはようございます。」
「就職決まった?」
「いや・・・まだ。」
「そう。早く決まるといいわね。」
「じゃあ、行ってきます。」

面接会場
試験を受ける誠治。
周りのみんなが物凄いスピードでパソコンを操作していくのに
焦りを覚え・・・。

その日誠治は、カラオケに行こうと友人に誘いのメールを送るが、
みんなそれぞれ忙しく、断られてしまう。

昔の恋人の家を訪ねていくが、インターホンを押さずに帰っていく。
「誠治?」ミチルの声。
「ミチル!・・久しぶり。」
「もしかして、私に会いに来た?」
「あいや・・あの・・普通に近く通った・・だけだから
 そのついでで。」
「なーんだ。私を振ったことでも後悔したのかと思った。」
「・・・仕事の帰り?」
「うん。雑貨屋でバイトしてる。」
「そうか。」
「誠治ってさ、背広似合いそうにないって思ってたけど、
 意外といいじゃん。
 ね、どんな会社に勤めてるの?」
「いやまあ・・・たいした会社じゃねーよ。」
「頑張っているんだね。」
「そりゃあな・・。もう学生の時とは違うんだきあら。」
「そうだね。 
 あ、ごめん。そろそろ、彼来るんだ。」
「え!?・・ああ、そうか。ごめんごめん。」

「ミチル。」

「あ、もう来ちゃった。じゃあね。」
「ああ・・。」
誠治はミチルが恋人と部屋に帰っていくのを見つめ、
そして歩き出す。

ある日、誠治がバイトする量販店に、四葉電子の同期がやって来た。
「あ・・久しぶり。」
「ああ・・。」
「今、ここで?」
「あ・・あ、まああの・・バイト中。」
「ああ・・」
「そっちは?どうよ。」
「ああ、相変わらずだよ。
 部長はバカだし、その部長の機嫌取る俺は、もっとバカっぽいし。
 武は、とっとと辞めて正解だったよ。」
「あ・・まあ・・俺は・・ほら、気楽にやってるよ。」
「ああ・・羨ましいよ。
 あ、仕事中、悪かったな。」
「おぉ。」
「じゃあ。」

その時、誠治は父の言葉を思い出す。

「こっちから辞めてやったと思ってるかもしれないけどな、
 お前は、あの会社で、ふるいに掛けられたんだ。
 能力の無いお前は、ふるい落とされたんだよ!」

「すみません。フルイありますか?」女性客の声。
「え・・」
「フルイって、ほら、小麦粉とかこうやって篩うやつ。」
「・・・」
「フルイよ!ふ・る・い!」
「いやそんな・・何回も言わなくたって聞こえてますから。」
「何よその態度!」
「あ、いや。こっちです。」

その様子を見ていた店長は、誠治を呼び出し注意する。
「お客様には、親切丁寧に接する。これ基本でしょう?
 君一人の印象が悪いと、店全体の印象が悪くなるんです。
 お客様にしてみれば、バイトも社員も関係なく、
 ここの人間なんです。
 ね?所詮バイトと思わず、自覚と責任を持ってやって
 もらわないと困ります。
 わかります?」
「・・・」
「武君、聞いてます?」
「辞めます。」
「はい?」
「今日限りで辞めさせてもらいます。お世話になりました。」

その夜、誠治は一人カラオケボックスで『リンダリンダ』を熱唱し・・・。

誠治が家に帰ると、寿美子が出迎える。
「お帰りなさい。遅かったのね。」
「・・・」
「ご飯は?」
「・・・」
誠治は寿美子を無視して部屋に行ってしまう。

二ヵ月後
「誠治は一体何をやっているんだ。
 就職活動はしない、アルバイトもしない、
 俺と顔も合わせない。
 もう2ヶ月だぞ。何が楽しくてこんな自堕落な生活続けてるんだよ。
 お前が呑気にしてるから、誠治は付け上がって、
 毎日毎日ダラダラ過ごしてんだよ。
 聞こえてんのか!?」
「・・・」

誠治は11時過ぎに目を覚ますと、下に降りていく。
「おはよう!」
朝食の準備を始める寿美子。
「待たなくていいって言ってんじゃん。」
「はいどうぞ。
 お昼何か食べたいものある?」
「今食ったら昼食えんし。」
「そうね。晩御飯は?
 久しぶりに天ぷらはどう?
 お父さん、脂っこいもの控えた方がいいって言われてるから
 最近作ってないけど、誠治たまには食べたくなるんじゃない?」
「・・・」
「揚げ物なら鳥のから揚げの方がいい?
 それとも、お肉よりお魚の方がいい?
 最近、魚屋のおじさんサービスいいのよ!
 食べたいものがあったら何でも言って。
 何食べたい?」
「つーかさ、」
「うん?」
「もういちいち聞かないでもらっていいかな!?
 考えること一杯あるんだわ。
 ・・・こんなことしか考えない、母さんとは違うんだよっ。」
「・・・」

部屋でゲームに夢中になっていた誠治は、既に夜8時になって
いることに気付くと、携帯で家の電話に掛けてみる。
が、母寿美子は電話に出ない。

「飯まだかよ。母さん!?」
下に降りていくと、真っ暗な中、
寿美子は、食品が散乱したキッチンに座り込み、
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
と繰り返していた。
「何やってんだよ・・
 母さん、どうしたんだよ。」
「ごめんなさい。」
「ごめんなさいじゃわかんないよ。
 母さん?」
「ごめんなさい。今日も死ねませんでした。
 ごめんなさい。今日も死ねませんでした。」
「死ねないって・・。」
「ごめんなさい、今日も死ねませんでした、」

自宅の留守電に38件ものメッセージが残っていた亜矢子は
慌てて実家へと車を飛ばす。
メッセージは寿美子からで、「ごめんなさい」と繰り返していた。

武家
誠一が帰ってくる。
「ただいま。・・・どうした?」
「どうしよう・・・。」

「ごめんなさい、今日も死にませんでした・・」

「何の冗談だよ。」
「わかんないよ。」
「わかんねーっておことないだろ!」
「わかんねーもんはわかんねーだろ。」
「寿美子、どうした?寿美子!寿美子しっかりしろ!おい!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、
 今日も死ねませんでした・・」
「何とかしろ。」
「救急車!」
「やめろ。近所の手前がある。」
「こんな時に言ってる場合かよ!じゃあどうすんだよ!」

「何で電話に出ないのよ!」と亜矢子。
「姉ちゃん・・」
「お母さん!?どうしたの?
 ねえ、何があったの?」
「いや・・」
「お前、ずっと家にいたんだろ?」
「いたけど・・」
「急にこんなことなるわけないじゃない。何があったのよ!」
「・・・」
「お母さん?お母さん、しっかりして。」
「ごめんなさい、今日も死ねませんでした。」
「そんなこと言わないで。お母さん。死んじゃなんか絶対にダメ。
 お母さん!死なないで。お母さん。」

病院
「うつ病ですね。症状から見ても、かなり重度の状態ですので、
 入院をされた方がいいと思います。」と医師。
「・・・入院。どうしても入院しなくてはいけませんか・・
 入院はしたくありません・・
 家のこととか色々ありますし・・・。
 お願いです。入院だけは・・・お願いします。」と寿美子。
「わかりました。」と医師。
「お願いします・・」
「大丈夫ですよ。
 ただ、お薬を出しますので、それだけはきちんと飲むって
 約束をしていただけますか?」
「・・はい。」
「じゃああとは、ご家族の方とお話をさせていただきます。」
「ありがとうございました。」
看護師が寿美子を連れていく。

「あの、薬を飲めば良くなるんでしょうか。」と亜矢子。
「改善の見込みは充分にあると思います。
 お薬は、効果が出るまでに時間が掛かり、慣れるまで
 気持ちが悪くなったりするかもしれませんが、
 根気良く飲まなければなりません。
 症状が良くなってくると、勝手にお薬を止めて
 また悪化してしまう患者さんが本当に多いので、
 お薬の管理はご家族の方が、きちんとしてあげて下さい。」
医師の言葉に頷く誠治。
「あの、他に何か気をつけることは?」と亜矢子。
「お母様、家事が負担になっているということはありませんか?」
「どう、だった?」
「は?あ・・いや、普通にやっていたと思います。
 あの、三食ちゃんと、ご飯作ってたし。」
「特に、家事が負担になっていることはないようですが、
 お母様に何かを聞かれたら、はっきり、答えてあげて下さい。」
「何かって?」
「例えば、食事で何を食べたいというふうに聞かれたら、
 何々がいいというように、具体的に返事をしてあげることです。」
「・・・」
「何でもいい、どうでもいいという風に、判断をお母様に
 投げてしまうと、お母様の負担になりますので。」
「・・・」
「それから、病気の原因になっているストレスがあるはずです。
 その原因を取り除いてあげることが大切です。」
「ストレス・・・。」

病院の外
「俺は、無遅刻無欠勤で一生懸命働いて、
 家族みんなを食わしてきた!
 そもそも寿美子に、ストレスなんかあるはずがない!
 もしあるとしたら、いつまでたっても仕事が見つけられない、
 このぐうたらなバカ息子が原因だ。」と誠一。
「うるせー。俺だってそうなりたくてそうなってるわけじゃ
 ないんだからさ。」
「じゃあ何だ。社会が悪い、景気が悪い、
 全部世の中のせいだって言いたいのか!?」
「そういうこと言ってないよ。」
「もう、やめなさいよ。」
「何の能力もないくせに、プライドばかり高いお前に、
 一生仕事なんか見つかるわけない!」
「そんなの親父に言われたくないんだよ!」
「そんな親父に養ってもらってんのはどこのどいつだ!
 あんだけ大見得切った食費も入れずに、母親に嘘つかせてんのは
 どこのどいつだ!」
「うるせーよ。」
「自分の食扶ちも稼げないやつが、ブツブツ言う権利はない!!」
「・・・もううるせー。」
「誠治!」
誠治は先に帰ってしまう。

「これじゃあお母さんのことをお父さんと誠治に任せられないじゃない!」
「薬を飲めば治るんだろ?大袈裟に騒ぐな!」
「はぁ!?人の話聞いてた?
 薬を飲む事以上に、ストレスを取り除く事が大切なの!」
「寿美子があんなザマになったのはな、全部誠治が原因なんだよ!」
「あんなザマ!?」
「もう昼休み終わっちゃうじゃないか!」
「今、あんなザマって言った?言ったよね!」
「うるさい!」
「なっさけない!誠治とどっこいどっこいよ!
 一体うちはどんな家族なわけ!?」

寿美子に心配をかけたことを悔やんだ誠治は、再就職することを決意。
まずは資金作りにと、本屋に置いてあるフリーペーパーでバイト先を
探す。

大悦貞夫(大友康平)が経営する大悦土木に面接に行くと、
大悦は履歴書も見ずに採用を決めてくれた。

武家
「お母さん、私そろそろ帰るけど、金目の煮付けお鍋にあるから
 温めて食べてね。
 それから、薬だけはちゃんと飲んでよ。」
「うん。迷惑掛けてごめんね。」
「何言ってんの。何か心配なことがあったら電話頂戴。
 私すぐに来るから。」
「亜矢子には、亜矢子の家庭があるでしょう?
 妻として、母として、院長婦人として。」
「妻になろうと母になろうと、私はずーっとお母さんの娘よ。
 いつでも頼って。
 男どもは当てにならないし。」
「ありがとう。」
「本当に何か困っていることはない?」
「ないわ。」笑顔で答える寿美子。

玄関
「じゃあ、ちゃんと食べて。
 鍵もちゃんと閉めてよ。」
和らいでいた寿美子の表情が、あるものをみた途端に硬直する。

「こんにちは。亜矢子ちゃん。」幸子の姿だ。
「こんにちは。」
「昨日も来てたでしょう?埼玉からわざわざ来るなんて、
 何か困っていることでもあるの?
 あったら何でも言ってね。」
「はい、ありがとうございます。
 でも何もありませんから。」
「だったらいいんだけど。」
「じゃあ失礼します。」
「気をつけて。」
「はい。
 じゃあお母さんまたね。」
亜矢子は車を走らせる。

亜矢子がいなくなると、幸子はきつい表情で寿美子を見つめる。
寿美子は逃げるように家の中に戻っていく。

大悦土木
適当にラジオ体操をする誠治を見た大悦は誠治を注意する。
「誠治!・・・お前だよ、誠治。
 お前ラジオ体操なめんなよ!」
「・・・」
「俺に怒られるためにやるんじゃないんだよ。
 お前自身の為にやるんだよ。」

現場でコンクリートの袋を持ち上げるのに四苦八苦していると、
その隣りで千葉真奈美(香里奈)が軽々と袋を担ぎ上げる。
「腕だけじゃなくて腰を落として持ち上げるの。
 ラジオ体操ちゃんとやんないと、そうやって体痛めたり、
 怪我しやすいんだから。」

休憩時間
「ああ、さっきは、ありがとう。」
「ううん。」
「珍しいよね、女性がこういうところって。
 あ、ほら、俺がここでバイトしているのはさ、
 あの、ほら、時間に融通が利くからで。
 つーのは俺、就職活動しているんだよね。
 あと、まあ・・母さんが今ちょっと病気で病院に通ってるから
 その、あの、送り迎えとか、しててさ。
 実際、時給も高いし。
 やっぱり、女子も就職難しいんだね。
 いやほら、いざとなったら夜の接客業とかのバイトもあるのに
 こっち系のバイトでやってるなんて、珍しいっていうかその、
 でもまあお互い、頑張れば、」
「誰に言い訳してんの?」
「・・・言い訳?」
「家族の通院の付き添いをしなくちゃいけない、
 就職活動をしなくちゃいけない、
 時間に融通が利いて、時給のいいバイトが必要で、
 やむを得なくてここに来ている。
 俺って本当はこういう仕事をする人間じゃない。」
「いや、別にそんな・・・」
「・・・どっちでもいいけど。」
「・・・」
「ただ、私はこの仕事がしたくて、ここに来ているから。」
「・・・」
 
誠治は、慣れない仕事のせいか、工事現場で思うように
作業をすることができずにいた。
雨が降ってきた。
リヤカーに土を乗せながら、真奈美や父の言葉を思い浮かべる誠治。

「俺の人生、いつもそこそこだった。
 ・・・25年間生きてきて、初めて気付いた。
 いつだって、母さんが、俺を笑顔で見守っていてくれたことに。」


いつからでも再スタート出来る。
母のその言葉を思い浮かべると、誠治は立ち上がり、
また土をリヤカーに乗せていく。



雨に打たれながら母の優しさ、母に守られていたことを
思い出す誠治。
その回想シーンに泣けました。

寿美子の心のSOSを誠一、誠治は気付いてあげられませんでした。
妙に明るく振舞っていたのも、サインの一つだったのでしょう。

寿美子を追い詰めたのは家族というよりも、ご近所?
幸子を見たとき、寿美子の表情が固まりました。
家賃5万円、長女は院長夫人、長男も就職が決まり、
寿美子はご近所に嫉妬され、苛められていたのか・・・。

坂口良子さん、子どもの頃見ていたドラマ『家なき子』の頃から
好きでした。今回はイジワルな役。どんな演技になるか楽しみ。

社員研修にやる気なさそうに参加する誠治。
やっていることは馬鹿らしくても、教えようとしていることは
とても大切なことでした。
再就職活動中、面接官たちは新人研修の内容を聞いて笑って
いましたが、恐らく同じ研修をやっていたはず。

誠治はどこか冷めたところのある、今どきの青年。
でも、上司に自分の意見を言える度胸もあります。
今後彼がどう変わってくれるのか、楽しみにしたいです。



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キャスト
武 誠治(二宮和也)
千葉真奈美(香里奈)
永田亜矢子(井川 遥 )
豊川哲平(丸山隆平)
手島信二(井上正大)
星野あかり(岡本 玲)
西本和彦(横尾 渉)
島田彰子(玄里)
大悦貞夫(大友康平)
永田則子(鷲尾真知子)
山賀亮介(眞島秀和)
北山雅彦(児嶋一哉)
岡野忠志(田中壮太郎)
塚本 学(山本龍二)
真田勝也(嶋 大輔)
西本幸子(坂口良子)
武 誠一(竹中直人)
武 寿美子(浅野温子)

スタッフ
原 作
 有川 浩
 「フリーター、家を買う。」(幻冬舎刊)
脚 本
 橋部敦子
音 楽
 高見優
主題歌
 嵐「果てない空」
挿入歌
 西野カナ「君って」
編成企画
 瀧山麻土香
 水野綾子
プロデュース
 橋本芙美
演 出
 河野圭太
 城宝秀則  
制 作
 フジテレビ
 制作著作
 共同テレビ


二宮和也さんの主な出演作品




浅野温子さんの主な出演作品





この記事へのコメント
ちーずさんこんばんは、ごく身近でおこっている題材、いつ同じ立場になってもおかしくないので浅野さんの辛くて怖くてせつなかったです!

西本家とは何があったのでしょうね?当初ホームコメディーだと思っていたので意外と重いテーマに戸惑っています!
Posted by けた at 2010年10月26日 18:58
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フリーター、家を買う。 #01
Excerpt: 『明るかった母さんが壊れた…!』
Weblog: ぐ〜たらにっき
Tracked: 2010-10-25 19:49

フリーター、家を買う。 (二宮和也さん)
Excerpt: 嵐の二宮和也さんは、フジテレビ系列で毎週火曜よる9時から放送されている連続ドラマ『フリーター、家を買う。』に武誠治 役で出演しています。 昨日は第1話が放送されました。 ●あらすじと感想 武誠治(二宮..
Weblog: yanajun
Tracked: 2010-10-26 01:41
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