2010年11月08日

フリーター、家を買う。 第3話

『あんなオヤジでもヒーローだった』

「どんなにダメな俺でも、
 どんなに情けない俺でも、
 認めてくれる人がいる。」


ハローワーク
「お久しぶりですよね。」と職員の北山(児嶋一哉)。
「・・はい。」と答える武誠治(二宮和也)。
「何か感じ変わりました?」
「そうですか?」
「少し顔つきがシャープになったような。」
「はあ・・」
「ま、意欲を失っていらっしゃらなくて何よりです。」
「意欲を失う?」
「就職、諦めたのかと思っていました。」
「あいやあの・・ちょっと忙しかったんですよ。」
「仕事もしてないのに忙しかったというのは?」
「あの・・仕事、してたんですよね。バイトなんですけど。」
「なるほど。アルバイトをしていらしたんですか。
 どんな仕事ですか?」
「あの、工事のバイトです。」
「あー、なるほど。お金を得るための手段として割り切って
 やったとしても、きつくて大変だったでしょう。」
「でも、キツイだけじゃありませんから、土木の仕事。」
「え?どういう意味です?」
「続けた人にしかわからない、って言いますか。」
「・・・」
「・・・何か?」
「なんか武さん、得意げなんで。」
「いや、そんなことないですよ。
 俺だってちゃんと、バシっと就職決めて、
 工事のバイト、辞めたいって思っていますから。」

と言いつつも、鼻歌混じりに土木のバイトを張り切る誠治。
誠治は大悦土木でのアルバイトにも慣れ、以前よりも前向きに
仕事に取り組むようになっていた。
「誠治、お前ペース上げすぎだよ。」大悦社長が注意しても、
「大丈夫です。俺コツ掴んだみたいっす。」と得意げな誠治。

だが社長が心配したとおり、誠治は途中でダウン。
「おや?いつから休憩してたのかな?誠治君は。」
「張り切り過ぎたんちゃう?」
「調子こいただけだ。」
「結局作業が遅れる。」
と仲間達に言われ、
「ほんっとすいません・・・。」と謝る誠治。

「いいか誠治。
 お前の体のことは、お前自身よりも、俺のほうがわかってるってこと、
 よく覚えておけよ。」と社長。
「いや、でもただ俺は、ずっと半人前だった自分を、
 早く取り戻したかっただけっていうか。」
「ずっと半人前だった?
 じゃ、まるで今はお前一人前みたいじゃねーか。」
「俺まだ半人前っすか!?」
「自分を一人前って思っているやつに、一人前っていねーんだよ。」
「・・・」誠治、がっくり。

大悦社長は作業員一人一人の状態をちゃんと見ていて、
素晴らしい人ですね。言っていることもカッコイイです。


仕事後、千葉真奈美(香里奈)が誠治に声を掛ける。
「今日張り切り過ぎたんだって?」
「あ?どうせ調子乗ってとか思ってんだろ?」
「うん。」
「え?」
「飲みに行こ。」
「え?」
「行くよ。」
「おい、行くって言ってねーし。
 俺・・・原付だよ・・。」

真奈美は、誠治をとある居酒屋に連れて行く。
すると店には、大悦土木で一緒に働いている豊川哲平(丸山隆平)と
手島信二(井上正大)が先に来ており、誠治たちを待っていた。
「誠治さ、ずっと仕事探してんやろ?」と豊川。
「うん、まあ。」
「決まりそう?」
「今、普通に就職難だしさ。
 ま、俺ほら、そこそこの大学しか出てないから。」
「そこそこの大学で上等や。
 俺らなんか大学も出てへんからな。」
「いやでも、そこそこじゃ意味ないんだよ。出てたって。」
「あるよ。」と手島。
「うん?」
「土木の資格の中には、学科試験のほかに、実務経験が必要なのも
 あって、大卒は1年半の経験でいいのに、高卒は4年半必要だから。
 大卒でも千葉さんみたいに、土木を選考していたら、
 もっと短くて、1年でいいし。」
「テッシは土木施工管理技師の資格を目指してんの。」と真奈美。
「ふーん。」
「俺はアホやから、資格なんか無理やけど、
 土木の仕事は向いてると思う。
 ていうか、この仕事しか出来ひんし。」
「じゃあ、僕そろそろ。」
手島は3千円をテーブルに置き、先に帰っていく。
「ええって言ったのに。
 テッシは出稼ぎで来てて、静岡の実家に仕送りしてるから。」

帰り道、真奈美と歩く誠治。
「若いのにしっかりしてんなー。」
「テッシ?」
「ああ。」
「この世界でずっとやっていくって決めてるみたい。」
「ふーーん。」
「家の事情でこの道選ぶしかなかったんじゃないかな。
 それでも、いずれ現場の管理とかやれるように
 目標持ってすごく頑張ってる。」
「なるほどなー。俺の人生語って聞かせたら、
 テッシ呆れんだろうなー。」
「だろうねー。」
「知ってんのかよ。俺の人生。」
「語りたければ、どうぞ。」
「語るかよ。
 あ、ねえ、大学さ、土木専攻してたってあれホント?」
「うん。」
「ていうことはさ、もう、高校ん時には、この仕事に進みたいって
 思ってたわけだよね?」
「うん。」
「何で?」
「何でだと思う?」
「いや・・・いや、わかんねーけど、
 でも、女の子がやりたいような仕事ではないじゃん。」
「うん。」
「何で?」
「・・・内緒。」
「何もったいぶってんだよー。」
「だって、誰にも話したことないから。」

誠治の携帯が鳴る。
「彼女?」
「さあな。」
「否定しないんだー。見得張っちゃって。」
「うっせーな。
 ・・・はい。」

「誠治?ごめんね。
 薬、飲んだかどうか、わからなくなっちゃった。」
電話は母・寿美子(浅野温子)からだった。
「あ・・じゃああの、帰って確認するからさ。
 あの、もうちょっと待ってて。」
「夕飯後すぐに飲まないといけないのに、
 こんなに、時間経っちゃった。」
「大丈夫。大丈夫だから。
 あの、心配しないで、待ってて。
 すぐ帰る。ね?」

「ごめん。ちょっと、用事出来ちゃって。」
「うん。じゃあ明日。」
「おぅ。」

武家
薬の数を数える誠治。
「うん、大丈夫。薬、ちゃんと飲んでるよ。」
「ごめんなさい。」
「ゴミ・・・随分、溜まってる、みたいだけど。」
「・・・」
「うん?出してないの?」
「ごめんなさい。」
「あいや・・いいんだけど・・。
 あ、じゃあ、俺がちゃんと分別して出しておくからさ。」
「・・・」
「ああそれと、日曜に、姉ちゃんが智也連れて、遊びに来るって、
 さっき連絡があった。」
「・・・うん。」
「お休み。」
「・・おやすみなさい。」

小学校の授業参観
「将来の夢。永田智也。
 僕は、大人になったら、ヒーローになりたいです。
 僕がなりたいヒーローは、ウルトラマン智也です。
 何故かというと、ウルトラマン智也になって、
 僕は、地球を守りたいからです。」
息子・智也の発表に微笑む亜矢子(井川遥)。
そんな亜矢子を則子(鷲尾真知子)は睨みつけ・・・。

永田家
「智也は将来医者になるって決まってるんです!
 亜矢子さん。」
「はい。」
「医者という仕事の尊さを智也に教えるよう、
 言ってあるわよね?」
「あ・・でも、まだ1年生ですし。」
「文也が1年生の時は、将来は立派な医者になりたいと
 作文に書いていたわ!」
「・・・」

武家
「書いたんじゃなくて書かせたんでしょうが!
 誰の為の作文よ!
 智也の為であって、あの人の自己満足じゃないっつーの!
 ・・・ちょっと聞いてる?
誠治相手に愚痴る亜矢子。
「あ?」
「もう!誠治しか話せる人いないんだからー。
 ちゃんと聞いてよー。
 ・・・あれ?あんた体つき変わった?」
「うん?」
「逞しくなったんじゃないの?」誠治の腕を叩く亜矢子。
「やめろよ。」
「筋肉ついたじゃん。」
「なんだよ、もう。」

「お母さん!」智也が誠一(竹中直人)とやって来る。
「うん?」
「おじいちゃんおもちゃ買ってくれないって。」
「うん、残念。」と亜矢子。
「おじいちゃん、おもちゃ買ってくれたら勉強頑張るから。」
「おもちゃ買ってもらうために勉強するんじゃないんだぞ。
 よく覚えておけ。
 ・・・じゃあな。」
「出かけんの?」と亜矢子。
「ああ。」
「どこ行くの?」
「ぶらっとな。」
「ぶらっとってどこよ。
 無趣味で休みの日は家の中でゴロゴロするしかない人が。」
誠一は何も答えずに出かけてしまう。

「逃げたわね。
 お母さんが病気になったから、家にいたくないのよ絶対。」
「まあほら、今日は怖い人もいるしな。」
「まったく一家の大黒柱が何やってんのよ。」
「知らないよ。」
「でもさ、お母さんがうつ病になった理由って、
 あんたの就職が決まらないこととか、
 あんたとお父さんが仲が悪いことだけなのかな。」
「え?他に何かあんの?」
「わかんないけど・・・
 もっと大きな理由がある気がする。」

「ただいま。」寿美子が戻ってきた。
「あ、お帰りなさい。」
「おばあちゃん!」
「智也!
 うわあ、いらっしゃーい!
 授業参観に行けなくてごめんね。」
「僕、ちゃんと作文発表できたから。
 ヒーローになりたいって!」
「そう!」
「ねえ、誠治おじちゃんは1年生の時、何になりたかった?」
「いや・・もう覚えてねーな。」
「あるわよ。誠治の昔の作文。」と寿美子。
「え?」
「どこかにしまってあるはずなんだけど。」
「あーいいよいいよ別に。大丈夫大丈夫。」
「誠治おじちゃん、今は何になりたいの?」
「今?」
「お!いい質問!」と亜矢子。
「うっせー。」
「夢、ないの?」
「うん・・ねー。」
「何で?」
「何でってそりゃ・・大人になっても夢見てるやつってのはな、
 現実から目を逸らしてるってことなんだ。」
「意味不明。」
「意味不明でいいの。
 大人になったら嫌でもわかるんだからさ。
 あ、それから、大人になったら、世の中にヒーローはいない
 ってこともね。」
「・・・」

家を出た誠一は、あるカフェで女性と会っていた。
「いいんですか?日曜日なのに。」と若い女性。
「ああ。
 これ。」
お金の入った封筒を差し出す誠一。
「今頂いている分で充分です。」
「いや、いいうんだ。
 好きに使って。
 服とか、靴とか。
 あまり、高いものは買えないけど。」
「ありがとうございます。」

二人はどういう関係なんでしょうね。
愛人とか、そういう関係ではないような気がします。
誠一がこの女性に何か習っているとか?


亜矢子を見送る寿美子たち。
「じゃあね、お母さん。何かあったら電話してね。」
「うん。」
「じゃあね。」
「おぅ。」
「バイバーイ!」
「バイバイ!」

そんな様子を隣人の西本幸子(坂口良子)は憎しみの表情で見つめていた。
誠治が幸子に気付くと、幸子は笑みを浮かべ、
「こんにちは。」と挨拶する。
「こんにちは。」と誠治。
幸子の声に動揺する寿美子。
「亜矢子ちゃん、また来てたのね。」
「はい、そうなんですよ。」
寿美子は逃げるように家の中へ。

朝、ゴミの分別をする誠治。
「これでよしと。」
完璧に仕分け、ゴミ捨て場にゴミを置く。

「ゴミ、ありがとう。」と寿美子。
「ああ。」
「もしかして、戻ってきちゃうかもしれないけど。」
「大丈夫だよ。俺が何回も確認したから。」
「これ。」
大きな箱を差し出す寿美子。
「ここに、昔の作文入ってるから。」
「・・・ああ。ありがとう。わざわざ探してくれて。」

「今更子供の頃の夢もない。
 いつから、自分の人生を思い描かなくなったんだろう。」


誠治は箱を自分の部屋に置くと、部屋を出ていく。

大悦土木、昼休み
「この仕事ってどれ位で一人前になるんですか?」誠治はみんなに聞いてみる。
「うーん、大体、10年から15年くらいじゃないの?」
「そ・・マジっすか?」
「ね、どっちかな。
 一人前になるのが先か、就職決まるのが先か。」
「そりゃもう、決まってんじゃないですか。」
「それとも、どっちも物にならないか、な。」と大悦。
「そんな・・ひどいっすよー。」

真奈美が木島建設・設計部門の山賀に仕事のことで呼ばれていく。
それを見ていた星野あかり(岡本 玲)は誠治に、
「千葉さん絶対山賀さんに憧れてる。
 千葉さん今は土木部門にいるけど、いずれ、山賀さんがいる
 設計部門に行くみたい。」と話す。
「設計・・・。」

仕事後、誠治は真奈美に聞いてみる。
「ゼネコンにはいるの?憧れている人。」
「私?・・・」
「なんだいるのか。」
「そりゃ、そりゃ仕事の出来る人ってなんかいいじゃん。
 大人の男って感じで。」動揺しながら答える真奈美。
「なんだ。親父好きか。」
「僻まないの。」
「僻んでねーよ。」

豊川はあかりを追いかけ、食事に誘うが
「何回言われても無理だから。」と断るあかり。
「そんなんわからへんやん。」
と断られても諦めない豊川だった。

誠治が帰宅すると、台所に今朝出したはずのゴミ袋があった。
袋の中に、瓶が混ざっていた。
「お帰りなさい。」
「あ、ただいま。
 ね、これ誰かに悪戯されているのかな。」
「今度から、私がやるから。」
「いや。次も、俺が出すわ。」
「でも・・・」
「いや、こういうのは、ちゃんと原因突き止めないとさ。」
「・・・やっぱりいいわ。」
「うん?どうして?」
「原因なんて、わからなくても。」
「良くないよ。こういうのはちゃんとやっておかないと。」
「でも・・・」
「心配しないで。俺に任せて。ね。」
「・・・」

朝、ペットボトルのゴミを出したあと
誠治は部屋の窓からゴミ捨て場を見張っていた。
そして、隣人の西本幸子がこっそりビンを入れているところを
目撃する。

誠治は、母・寿美子にそれを報告しようとした。
「母さん。
 ゴミ・・又戻ってた。」
「・・・」
「やっぱりね、母さんの間違いじゃなかったみたい。」
「いいえ・・・私がいけないの。」
「ううん。見たんだよ、俺。」
「いいえ・・私がいけないの。
 西本さんのせいじゃないわ。」
「西本さんだって・・・わかってたの?」
「・・・」
「ねえ、わかってて、何で母さんが悪いの?」
「・・・」
「どういうこと?
 ねえ、いつからこうなの?」
「ごめんなさい。」
「いや、ねえ、西本さんと何かあったの?」
「ごめんなさい・・ごめんなさい・・」
「ごめん、別にあのさ、責めてるわけじゃないんだから。」
「ごめんなさい・・ごめんなさい・・」
「もう聞かない。ね。もう聞かないから。母さん・・・。」

誠治は姉の亜矢に電話で事情を話す。
「え!?お隣の西本さんが?何で?」
「いやわかんねーよ。」
「いつから?」
「わかんねー。」
「何もわかんないの!?」
「しょうがねーだろ。俺だって精一杯やってんだから。」
「とにかく、私もすぐそっちに向かうから。」
「ああ。じゃあ。」

病院
「お薬はきちんと飲んでいますね?」と主治医の岡野忠志(田中壮太郎)。
「はい。」と寿美子。
「この調子で続けてみましょう。
 同じお薬を出しておきます。」
看護師が寿美子を連れていく。

「あの先生。
 母は、違うって言ってるんですけど・・
 ちょっと、近所の人に、意地悪されているような気がするんですよね。」と誠治。
「意地悪?」

「あ!そうだ!
 そういえば、昔、あれって思ったことがあった。」と亜矢子。
「何?」と誠治。
「あの、町内会費をさ、うちが払ってないっていう噂があるのを
 聞いてね、私お母さんに聞いてみたの。
 そしたら、払いに行くの忘れたってお母さんは言ったんだけど、
 町内会費って払いに行くんじゃなくて集金に来るはずだから、
 おかしいなって、思ったんだよね。」
「え・・」
「それに、クリーニング屋のおばあちゃんが亡くなった時も、
 うちだけに連絡がなかったってこともあったわ。」
「じゃ、それ全部・・西本さんが意地悪したってこと?」
「いや・・意地悪じゃなくて、イジメよ。」
「それ、どれ位前の話?」
「私が高校生の時。」
「じゃあもう、10年も前の話じゃ。
 そんな前から・・母さん苛められてた・・・」
「何でお母さん私に話してくれなかったのかな。
 話せなくて、ずーっと苦しんでたのかな・・・。」
「いや・・俺ももっと、早く気付いていれば・・・。」

「今の環境にストレスの原因があるとしたら、
 環境を変えてあげた方がいいと思います。」と医師。
「それは、引越しってことですか?」と誠治。
「はい。」
「・・・」

誠治と亜矢子は、父・誠一にこの一件を報告し、引っ越しの相談をする。
「引っ越すなんて無理だよ!」と誠一。
「何でだよ。」
「今住んでいる家は、会社買取の社宅で、月5万円の家賃で済んでるんだ。」
「わかってるよ。」
「今と同じような家に住もうと思ったら、その3倍は掛かるんだよ!」
「わかってるって。」
「月10万以上の、無駄金を捨てることになるんだぞ!」
「無駄な金ってどういうことだよ。
 母さんの病気を治すのに必要な金だろ?」
「たかがご近所付き合いが上手くいってないからってな、
 引っ越す必要なんてないんだよ!」
「たかがご近所ってね・・主婦にとっての世界はご近所なの。
 狭い世界で生きててそれが全てなの!
 それがなくなったら、逃げ場もなくて地獄同然なのよ!」と亜矢子。
「10年以上だぞ!
 もう10年も母さんイジメに耐え抜いていたんだから!」
「そもそも寿美子にも何か原因があったわけだろ?」
「病人を責めるような事言うなよ・・。」
「病人、病人ってな、心が弱いだけだよ!」
「うつ病っていうのはな、れっきとした脳の病気なんだよ。」
「今日も死ねなかったとか、大袈裟な事を言って、
 ただ心が弱いだけだ!」
「そうじゃねーよ。薬を毎日飲んでるからあんだけ安定してんだろ。」
「心の弱さを治さない限りな、どこに引っ越したって
 同じことの繰り返しだよ!」
「なあ親父、うつ病理解してくれよ。
 つか、せめてその、理解しようとしてくれよ。」
「ううん。もういい。
 理解してくれなくても何でもいいから、とにかくお金を出して。」と亜矢子。
「お金なんてない。」
「ないわけないでしょ!」
「ないものは、ない!」
「お金は全て、自分の為にしか使いたくないってこと?」
「当たり前だ。俺が稼いだ金だ。
 何に使うか全部俺が決める。
 大体な、嫁いで家を出てった女が、うちのことに口を出すな!」
「じゃあ私が口を出さなくても済むようにちゃんとやってよ。
 やってくれないから、私が口を出さなきゃならないんじゃない!」
「どうしても口を出したいんならな、お前が、お前が金を出せ!」
「は!?」
「情けねー・・。」と誠治。
「何?」
「情けねーよ。」
「何が!」
「親父みたいのが父親だと思うと、情けなくて情けなくて、
 情けなくて仕方ねーよ!」
そう言い立ち去る誠治。
「おい!お前が払えこれ!
 何なんだよあの態度は。」
「・・・」
「何なんだよその顔は!」
「父親を尊敬している顔にでも見える?」
「・・・」

大悦土木
あかりは哲平に聞こえるようにわざと、真奈美に合コンの設定を頼む。
「哲平さん、諦めてくれないから。
 バイトの人とじゃ、結婚とか将来とか考えられない。」
「でも、このまま頑張れば大悦土木の社員って話もあると
 思うし、哲平あかりちゃんとだったら頑張ると思うけど。」と真奈美。
「でも、もし仕事中に事故がおきて怪我でもしたらどうなります?
 この仕事、出来なくなるんですよ。
 まあ、他に何か出来たらいいけど。」
「・・事故なんて、絶対起きちゃいけないことだから。」
「でも、起こるじゃないですか。
 木島建設も2年前にあったじゃないですか、転落事故が。」
「・・・」
「事故の責任はゼネコンにあるっていうけど、
 怪我するのは下請けの作業員で、責任なんか負いきれないですよ。」
「・・・何がわかるの!?」
「・・・」
「・・・ごめん。」

立ち去る真奈美の前に、山賀がやって来る。
「あの事故のことに、いつまでも囚われるな。」
「・・・」
「真奈美。
 五十嵐さんの所にも、まだ行ってるのか?」
「・・・失礼します。」

永田家
「引越し代金が、20万の、15万x12で、180・・・
 はぁ・・。」
通帳を見つめる亜矢子。
そこへ夫が帰ってきた。
「お帰り。」
「ただいま。あー、疲れた。」
「無理しすぎなんじゃない?」
「ううん。」
「ねえ、スタッフは、増やせないよ、ね。」
「うん。人件費は出来るだけ、抑えないと、厳しいよ。」
「うん。」
「先風呂入ってくるわ。」
「うん。」

その夜、原付バイクで埠頭にやってきた誠治は、偶然真奈美に出会う。
「誠治!」
「・・・」
「何してんの?」
「あ?別に何もしてないよ。ただ、普通に通っただけだけど。
 そっちこそ何やってんだよ、こんな所で。」
「こんな所?」
「何ムキになってんだよ。」
「私の好きな場所に向かってなんてこと言うの?」
「え?好きな場所?」
「うん。」
「ああ、夜景が好きなのか。」
「夜景じゃなくて。」
「じゃあ何だよ。」
「あるでしょ!」
「ねーだろ。あと橋ぐらいしか。」
「・・・」微笑む真奈美。
「え?・・・橋好きなの?マジ?」
「うん。」
「だってあれ、ただの橋だろ?」
「あのね!橋って当たり前のようにかかってるけど、
 ものすごい人間業で作られてるのよ!
 例えばあの橋は、斜張橋って呼ばれる構造で出来ていて、
 塔から橋げたやトラス桁を、ケーブルで吊って支えている橋なの。
 ケーブルの張力と、橋げたの構成のバランスを変えれば、
 すごく長い橋を作ることも出来る。
 他にも色んな構造があって、桁橋、つり橋、トラス橋、
 ラーメン橋、エクストラドーズド橋、アーチ橋、
 あ、アーチ橋っていうのは、アンガー橋やローゼ橋があって、
 ・・・。
 別にいいけど。」
「もしかして、土木関係の仕事に就いたのも、橋の設計がしたかったから?」
「うん。」
「いつから橋好きになったの?」
「幼稚園の頃には、普通に好きだったかな。」
「じゃあその時に橋作りたいって思ってたわけ?」
「小学校3年の時に、父に新しい橋を見に連れて行って
 もらったの。」

(回想)
父と一緒に完成したばかりの橋を見に行く真奈美。
「真奈美、橋にはいろんな人の思いが詰っているんだよ。
 行きたいところに行く思いや、
 会いたい人に会う思い。
 橋を一生懸命作った人の思い。」
(回想終わり)

「父のその言葉を聞いて、初めて気付いたの。
 そっか。橋って人が作ってんだ。
 こんなにすごいものを作れるなんて。」
嬉しそうに話す真奈美を見つめる誠治。
「何照れてるんだよ。」
「照れてなんて。」
「照れてんだろ。
 大体、小3で気付くこと自体が遅いんだよ。」
「だって、橋作ってたの見たことないし。
 どうやって出来るかとか考えたことなかったし。
 あー、話して損した。誰にも話したことなかったのに。」
「・・・羨ましいよ。」
「え?」
「いや・・・子供のときから描いてた夢をさ、ひたすら追いかけて。
 で、それが今現実になろうとしているわけじゃん。」
「誠治が思っているほど順調じゃないよ、私だって。」
「何かあんの?」
「・・・ううん。
 誠治にだってこれから、夢、持てるかもしれないし。」
「・・・持てねーよ。
 なーんも持てねー。
 ・・・夢とかいってさ、もうそんな・・
 能天気なこと言ってる場合じゃないんだわ。
 就職決まんねーし。
 だからいつまで経っても再スタートきれなくて。
 それに・・・俺のお袋うつ病だしさ。」
「・・・」
「・・・誰にも言わなかったけど。」
「・・・お母さん、早く良くなるといいね。」
「・・・ああ。」
二人はライトアップされた橋を見つめ・・・。

帰宅した誠治は、小学校時代の作文や絵が入っている箱を見つめる。

「あの頃の俺は、どんな人生を思い描いていたのだろう。」

『ぼくのゆめ』と題された作文を読み始める。

『ぼくのゆめ
 1ねん2くみ たけせいじ
 ぼくは、大きくなったら、けいりしゅにんになりたいです。
 けいりは、かいしゃのなかで、おカネのけいさんをする
 たいせつなしごとです。しゅにんは、はんちょうさんです。
 ぼくは、おとうさんのようなけいりしゅにんになりたいです。』

「あの頃は、あんな親父でも俺のヒーローだった。」
 
『おかあさんは、たのしみにしているね、といいました。
 ぼくは、おかあさんのゆめをききました。
 かぞくみんながげんきでいること。
 げんきでいてくれるだけでいいと、おかあさんはいいました。』

「あの頃は、母さんが俺の手を握ってくれた。」

作文を読んでいるうちに、寿美子の手のぬくもりを思い出した誠治は、
ある決意をする。

翌朝、食事の席。
「母さん。
 ここ引っ越さない?」
「・・・」
「すぐってわけにはいかないけど、引っ越そう。」
「・・・」

誠一は誠治を彼の部屋に連れていく。
「何だよ!」
「何だ今のは。引越しなんか絶対にしないぞ。」
「金は俺が何とかするから。」
「何とか出来るわけないだろう、お前に。
 その、工事のバイトか?そろそろ辞める頃だろ?」
「就職決まるまで、今のバイトも絶対辞めないし。」
「口では何だって言えるんだよ。」
「小さくたって、古くたってどんなんだっていいんだよ。
 俺が家を買うから。」
「バカなこと抜かすな!
 フリーターのお前に、家なんか買える訳ないだろ!」
「・・・買ってやる。
 母さんが元気で暮らせる家を、俺が買う!」
「・・・」
「フリーターでも・・・家を買ってやるよ。」

大悦土木
誠治の働きぶりを見守る大悦。

その日、仕事を終えた真奈美は古いアパートを訪れる。
そして、102号室、五十嵐家の呼び鈴を押す。

そして誠治は、自分の部屋の壁にある紙を画鋲で止める。
目標
 家を買う』

誠治はそれを見つめながら微笑みを浮かべ・・・。



子供の頃、お母さんが自分を守るように握ってくれた手。
不安で震える母の手をしっかり握り締める誠治。

母の手の温もり、そして小学1年生の時の作文。
誠治は大きな目標を見つけることが出来ました。
目標が出来ると人って強くなれるから、
これから誠治はそこに向かって一歩一歩歩いていくのでしょう。

誠一と女性の関係が気になります。
家族に対して冷たいように見えてしまう誠一ですが、
実は家を買うために投資しているとか?

玉の輿を夢見るあかりは、いつか哲平君の思いに
答えるようになるのかな。頑張れ、哲平君!



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公式HP

4344017226フリーター、家を買う。
有川 浩
幻冬舎 2009-08

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B0044KMYGA果てない空(初回限定盤)(DVD付)
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ジェイ・ストーム 2010-11-10

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B0045UADW6フリーター、家を買う。 (二宮和也、香里奈 出演) [DVD]


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キャスト
武 誠治(二宮和也)
千葉真奈美(香里奈)
永田亜矢子(井川 遥 )
豊川哲平(丸山隆平)
手島信二(井上正大)
星野あかり(岡本 玲)
西本和彦(横尾 渉)
島田彰子(玄里)
大悦貞夫(大友康平)
永田則子(鷲尾真知子)
永田文也(七海智哉)
永田智也()
北山 雅彦(児嶋一哉)ハローワーク職員
山賀亮介(眞島秀和)
北山雅彦(児嶋一哉)
岡野忠志(田中壮太郎)
塚本 学(山本龍二)
真田勝也(嶋 大輔)
西本幸子(坂口良子)
武 誠一(竹中直人)
武 寿美子(浅野温子)

スタッフ
原 作
 有川 浩
 「フリーター、家を買う。」(幻冬舎刊)
脚 本
 橋部敦子
音 楽
 高見優
主題歌
 嵐「果てない空」
挿入歌
 西野カナ「君って」
編成企画
 瀧山麻土香
 水野綾子
プロデュース
 橋本芙美
演 出
 河野圭太
 城宝秀則  
制 作
 フジテレビ
 制作著作
 共同テレビ


二宮和也さんの主な出演作品




浅野温子さんの主な出演作品





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フリーター、家を買う。 (浅野温子さん)
Excerpt: 浅野温子さんは、フジテレビ系列で毎週火曜よる9時から放送されている連続ドラマ『フリーター、家を買う。』に武寿美子 役で出演しています。 一昨日は第3話が放送されました。 ●あらすじと感想 ようやく武誠..
Weblog: yanajun
Tracked: 2010-11-08 17:06

フリーター、家を買う。 #03
Excerpt: 『あんなオヤジでもヒーローだった』
Weblog: ぐ〜たらにっき
Tracked: 2010-11-08 19:30
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