2010年12月19日

フリーター、家を買う。 第9話

『再スタート、するはずだったのに』
 
目標にしていた100万円の貯金を達成した武誠治(二宮和也)は、
母・寿美子(浅野温子)のために引っ越したいと誠一(竹中直人)に切り出す。
「やっぱさ、引越しした方がいいんじゃないかな。母さんの為に。
 あいや・・もちろん親父がこの家にこだわってるってのは・・
 知ってるよ。だから、俺がその、引越し費用と、家賃を出すって形でさ。」
「なかなか手ごろな物件はないものだな。」
「え?」
「隣りの駅の周辺を、ちょこちょこっと見てみたんだけどな。」
「探してくれたの!?」
「隣りの駅だけな。
 それと、ちょっと面白いもの見つけたんだ。」
「うん?」
「色々、勉強になることが書いてある。」
誠一は書店の袋を誠治に渡し、部屋を出ていく。
その中に入っていたのは、就職試験の攻略本だった。
誠治が、ある医療機器メーカーの採用試験を受け、
初めて最終面接までこぎつけていたからだ。

誠一も引越しのことを考えていてくれたんですね。
今までのようにぶつかり合うのではなく、お互い歩み寄っている
感じが嬉しいです。


誠治は姉・亜矢子(井川遥)と電話で話す。
「あんたにしてはやるじゃない。100万貯めて引越しだなんて。」
「それ、褒めてんの?けなしてんの?」
「褒めてんのよー。」
「まあ、そういうことだから。」
「うん。じゃあしっかり頼んだわよ。」
「おぉ。」

亜矢子の夫・文也(七海智哉)が帰宅する。
「お袋ともめたんだって?」
「・・・」
「お袋は、親父が立ち上げたこの永田医院を、
 必死に支えてきたんだから。
 医者の家の人間失格だなんて、ちょっと言いすぎだよ。」
「ごめん。
 文也は、智也のことどう思ってるの?」
「え?」
「医者にならせないといけないって思ってる?」
「そりゃ、なってくれたら嬉しいよ。
 でも、今俺が見てやる余裕もないし。
 智也のことは亜矢子に任せるから。」
「・・・」

千葉真奈美(香里奈)は、設計部門に移ることを決意し、
真奈美は、先輩社員の山賀亮介(眞島秀和)にその件を相談する。
「この前、五十嵐さんの所へ行ってきました。」
「まだ行ってんのか?」
「もう行きません。
 五十嵐さんと話をして、気持ちの整理をつけました。」
「そうか。」
「ご心配をお掛けしましたが、もう大丈夫です。
 色々とありがとうございました。」
「良かった。」
「それと・・・設計の方に行く話、まだ大丈夫ですか?」
「来る気になったか!?」
「設計やりたいっていう気持ちは変わらないし。
 山賀さんの下でやらせてください。お願いします。」
「ああ。わかった!」
「ありがとうございます!!」

朝、誠治が出かけようとすると、西本幸子(坂口良子)が声を掛けてきた。
「おはよう、誠治君」
「・・おはようございます。」
「お母さん、最近ちょっと変じゃない?」
「変?」
「ほら。見るからにちょっと・・。」
「あの、具体的に言ってもらっていいっすかね。」
「・・・わからないならいいの。忘れて頂戴。」
「・・・」
「行ってらっしゃい。」

大悦土木
「無駄な経費が一目瞭然なのはいいけど、
 こんなにムダがあったとはな。
 さすがの俺も落ち込むよな。
 もうちょっと早くに気付いてりゃな・・。」と大悦。
「・・・」
「どうした?」
「あいや・・。
 自分も、何でもっと早く気付いてあげられなかったんだろうって。
 あ、お袋が、近所と、上手くいってないこと。」
「でも気付いた。 
 それから、引越しもするじゃないか。」
「はい。」
「それにしてもなー。誠治が100万貯めるとはなー。」
「自分でも、嘘みたいなんですよね。」
「ほんと、嘘みたいだよ。」
「職長〜。」

武家
「この家の外壁を塗り替えるように、会社から言われた。」と落ち込む誠一。
「ヒビ入っているところもあるし、した方がいいんじゃない?」と誠治。
「5,60万掛かるだろう。
 いくつか業者に声を掛けるから。
 見積もりに来るから、寿美子、頼んだぞ。」
「・・はい。」
「引越し前に、予想外の出費だ・・。」
「まあそんな、ケチケチすんなよ。
 こんないい家、5万で住ませてもらってたんだからさ。」
「50万稼ぐのが、どれだけ大変かってことはお前だってわかってんだろ!」
「大声出すなよ。」
二人の話を聞きながら寿美子は思いつめた表情を浮かべ・・・。

一方、亜矢子は、姑の則子(鷲尾真知子)に謝罪する。
亜矢子は、寿美子の病気のことで則子と口論になり、うつ病への
偏見は医者の家の人間として失格だ、と言ってしまったのだ。
「この間は、生意気なことを言ってしまってすみませんでした。」
「・・・いいのよ。
 うつ病に理解がなかったのは本当のことだし。
 医者の家の人間としてちゃんと、うつ病の事を勉強しておくわ。 
 そのことを伝えに来たの。」
「あ・・あの・・本当に、失礼な事を言ってすみませんでした。」
則子は笑顔を浮かべ亜矢子を見つめる。

大悦土木
「誠治。最終面接の日決まった?」
「ああ。」
「緊張してる?」
「そりゃ、するだよ。」
「受かるよ、きっと。」
「本当に受かると思ってんのかよ。」
「・・うん。」
「あ?ああ、じゃあ、絶対合格して、再スタート切ってやる。」
「私も、再スタートする。」
「え?」
「設計部門に行こうと思ってる。」
「あ・・そ、そっか。うん。
 夢、だったもんな。設計部門。」
「うん。」
「・・頑張れよ。」
「うん。誠治も。」
「うん。」

「どれだけ別れが寂しくても、
 どれだけ大切に思っていても、
 なかなか想いは上手く届かない。

 でも、いつだって願っている。
 大切な人が、幸せでいてくれることを。」


お互いのことが少しずつ気になっていた二人。
今はその距離が離れてしまうことが寂しそう・・・。


誠治の部屋に亜矢子がやってくる。
「え!?人間失格って言っちゃったの!?」驚く誠治。
「うん。言っちゃったんだよねー。」
「こわ〜。」
「それがさ、散々嫌味言われると思って覚悟して謝ったら
 お母さん全然でさ。
 うつ病に理解がなかったのは私のほうだから勉強するわだって。
 拍子抜けよー。」
「あー。でも言ってやりてーよ。俺も人間失格とかって。」
「誰に?」
「西本のおばさんに決まってんだろうよ!
 俺言われたんだよ。最近お母さん、見るからに変じゃないって。」
「何それ!あったまくるねー!」
「だろ?だから俺も言い返したくてさ。
 でもま・・そんなことしたら母さんが嫌がるだろうし。」
「でもいつか絶対ガツンと言ってやるんだから。
 あ、私引越しの時来るわ。最後の最後に絶対ガツンと言ってやるんだから。」
「姉ちゃん・・そういう時なんか・・燃えるよな。」
「は?あんたが言えないから私が言ってあげるんじゃないのよ。」
「違うだろ?自分が言いたいだけじゃん。」
「あんた言えないでしょう?」
「言えるよ、別に。」

誠一は、引っ越しするにあたり、会社側から外壁の塗り替えを
するよう指示される。いつくかの業者に見積もりを頼んだ誠一は、
その中の一社に40万円ほどで塗り替えをしてもらうことにする。
そのお金を用意しておくよう言われた寿美子は・・・。
 
武家を訪れた亜矢子は、息子の智也(橋本智哉)が、
寿美子に声を掛けているのを聞いてしまう
「おばあちゃんの病気、うつ病って言うんでしょう?
 うつ病って、すごくつらいんでしょう?
 僕が治してあげる。
 僕ね、大きくなったら病気でつらい人を治してあげる
 お医者さんになるから。」

亜矢子は誠治の部屋で怒りをぶちまける。
「あのクソババカ、何なの!?
 何であの人にあそこまで言われなきゃいけないわけよ!」
「どうしたの?」
「智也を医者になるように丸め込んだのよ!」
「別にいいじゃん。医者になるんだったら。
 医学部のお金だって向こうが出してくれるんだろ?」
「お母さんの病気を利用して丸め込んだのよ!」
「どういうこと?」
「おばあちゃんみたいに病気で苦しんでいる人を助けることは、
 立派だとか何とか言ったに決まってんのよ!!」
「そりゃ、すげー・・。」
「一体何なの!?このどんでん返しは。
 まったくもう!こんなやり方で反撃してくるなんて
 私絶対許さないんだから!!」
「あ・・あのさ、俺に言うんじゃなくて、旦那さんに言ったらどうなの?」
「旦那はね、私の味方もお母さんの味方もしないのよー。」
「何で?」
「もめるのが面倒臭いからに決まってんでしょ!」
「面倒臭いなそれ。」
「面倒臭いよまったく!!」

病院
必死にリハビリに励む哲平。
「なかなか、思うように動かへん・・。」
「焦ったってしょうがないよ。」とあかり。
「・・・」
「どうしたの?」
「元通りに戻るかどうかわからへん。
 別の仕事が見つかるかどうかもわからへんし・・
 稼ぎがなかったらあかりちゃんのこと幸せになんか
 出来へん。
 あかりちゃんが来てくれるの、俺・・・辛いんや。」
「仕事見つからないかもしれないとか、稼ぎが無いとか、
 だから何?」
「・・・」
「私が、仕事するよ。」
「・・・」
「私が、哲平さんのこと幸せにするから。」
「俺なんかのために、そんなことしてどうすんねん。
 俺なんか、アホで、どうもない人間やから・・・」
「本当に、そう思ってるの?
 自分のことそんな風に思ってるなんて、哲平さんにはガッカリだよ!!」
あかりは怒ってその場を立ち去る。

翌日は誠治の最終面接。
大悦貞夫(大友康平)をはじめとする大悦土木の仲間たちも、
最終面接に臨む誠治を応援していた。

誠治は仕事帰り、近所の神社に立ち寄る。
「・・1回?2回?」お参りの方法で悩んでいると、
「二礼、ニ拍手、一礼。」
ハローワークの職員・北山(児嶋一哉)が声を掛ける。

「武さん最近いらっしゃらないじゃないですか。」
「実は、医療機器メーカーの、一時面接、通ったんですよ。」
「え!?」
「そんな驚かなくても・・
 で、明日俺、その面接なんですよね。」
「それで、合格祈願。神頼みってやつですか。」
「はい。
 北山さん何やってるんですか?」
「え?」
「いや、神頼み。」
「何でそんなことあなたに話さなきゃいけないんですか・・。」
「別にここハローワークじゃないんだから。」
「まあ・・そうですけど・・。」
「・・・あ、なんか俺、多分、聞いちゃいけないこと、
 聞いちゃったっすね。」
「私も連敗中なんですよ。」
「え?就職活動?転職するんすか?」
「違いますよ。」
「じゃあ何を?」
「・・見合いです。」
「あーーー。」
「何ですかその、妙に納得されて。あーーって。」
「あー、ごめんなさいごめんなさい。
 何回ぐらい、してるんですか?」
「・・23回。」
「・・・高望み、し過ぎなんじゃないんですかね。」
「・・・」
「あ、すみません。」
「武さんは彼女とかいらっしゃるんですか?」
「いるわけないじゃないですかー。」
「好きな人は?」
「え!?・・・あ・・まあ。」
「どんな人?綺麗な人?」
「まあ、めちゃくちゃ。」
「なんか面食いかよ。」
「違いますよ。ただ、男らしくて頼りになるところもあるし。」
「男なんですか!?」
「いやだから、性格が頼もしいってことですよ。
 なんかこう、いつも一緒にいると、何でも話せるし。
 いつも、勇気付けられるっていうか。」
「どこで知り合ったんですか?」
「バイト先です。
 でも、向こうももうすぐ違う部署に行っちゃうし、
 俺もこの就職決まったら、もう、会わなくなるわけで・・。」
「そうですか。
 まあ今回は、縁が無かったってことですね。」
「え・・。」

背後からの2ショット。
二人の背中が寂しそうに見えます。


そして面接当日、誠治は、寿美子に見送られて面接会場へと向かった。

永田家
「お母さんですよね。」と亜矢子。
「え?」
「智也にもっと勉強して、医者になるように言ったの。」
「・・・」
「しかも智也が母を大好きな気持ちを利用して。」
「・・・智也の将来の為よ。」
「智也は、私の子供です。
 もうこれ以上、」
「智也は、永田家の子供よ。
 それを受け入れられないようじゃ、あなたこそ失格よ。
 永田家の嫁として。
 永田家は、あなたのお家とは違うの。」
「どういう意味ですか?」
「だってめちゃくちゃでしょ。
 お母さんはうつ病になるし、誠治さんは未だに就職も決まらないし、
 あのお父さんだって。
 ちゃんとした父親の背中を見て育った息子なら、
 いい年をしてフラフラしているはずないもの。」
「・・・お母さんにとっては、めちゃくちゃな家族かもしれませんが、
 私にとっては大切な家族なんです!」

誠治が面接会場に到着すると、自宅から電話が入った。
母からだと思い、電話に出る誠治。
「もしもし?母さん。どうした?」
「武、寿美子さんの息子さんですね?」
「あの・・・どちら様ですか?」
「お母様が、大変困った状態になられましてね。」
「どういうことですか?母さん?」
「とにかく、お宅で待たせていただきますから。」
「あなた・・誰なんですか?
 母さんに代わって下さい!」
大きな物音と共に、電話は切れてしまう。
誠治は、面接を受けずに自宅へと急いだ。
 
武家に駆けつけると、セールスマンの相沢(ムロツヨシ)が待っていた。
「母さん、この人は?」
「お母様には商品のご契約をいただきましたが、
 約束の期限になってもお支払いただけませんでしたので、
 伺いました。」
「商品の契約?」
「こちら、契約書です。」
相沢は誠治に合計金額100万円の請求書を見せる。
「お守りなど、お母様にお買い上げいただきました。」
「・・・これだけで100万円って・・どういうことですか?」
「ご承知の上でご契約いただきましたよね?」
「・・・」
「キャンセルして下さい!」
「既にクーリングオフの期間は過ぎています。
 今更、契約を取り消すことは出来ません。」
「そんな・・・。」
「一日も早く都合つけないと、支払が膨らむよ。」
「・・・」
「また伺います。」

「ごめんなさい・・ごめんなさい・・ごめんなさい・・」
寿美子はただそう繰り返し・・・。

誠治の部屋
表札、印鑑、水晶玉、数珠。
それらを見つめながら頭を抱える誠治。

誠一が部屋をノックすると、誠治は慌ててそれらを隠す。
「どうかしたか?」
「いや別に。」
「どうだった?」
「え?」
「面接だよ。最終面接。」
「ああ・・・ダメ・・かな。」
「ダメってお前・・何か、大きなヘマでもやらかしたのか?」
「いや・・あの・・・受けてないんだよね、面接。」
「受けてない?どういうことだ、一体。」
「・・・」
「理由を言え、理由を。」
「あのさ・・あの、絶対怒らないって、約束してくれる?」
「俺が怒るようなことしたのか?」
「いや、俺じゃなくって・・」
「じゃあ何だ。」
「いや・・母さんが・・ちょっとトラブってさ。」
「母さんがトラブった?」
「ああ。だから、絶対怒らないって、」
「早く話せよ!!」
「わかったよ。」
誠治は誠一に表札などを見せる。
「何だこれは。」
「買ったんだって。」
「寿美子がか?」
「ああ。」
「お前・・これが理由で面接受けなかったのか?」
「いや・・まあ・・そうなんだけど。
 でも問題はさ、これ、買っちゃったから払わなきゃいけないんだけど、
 まだ払ってないんだよね。」
「・・・いくらだ。」
「・・・」
「いくらだ!」
「100万。」
「・・・100万ってお前・・騙されたってことか!!」
「だから怒らないでって言ってんじゃん。」
「馬鹿馬鹿しい。こんなの払う必要ない!」
「でも、それを解除出来る期間ももう過ぎてんだよ。
 でも母さんうつ病だからそれを弁護士さんに相談すれば、」
「弁護士に相談するなんて冗談じゃない。」
「何で!」
「こんなインチキに引っかかったってことが世間に知れてみろ!
 恥さらしもいいとこだ!」
「母さんはつけ込まれただけだろ?
 うつ病で不安を抱えてる。
 その不安を取り除くんだったら、こういうのにすがりたくて
 買いたくなるだろう。」
「金を払う必要はない。弁護士に相談する必要も無い。
 この話はもうおしまいだ!」
「ちょっと待ってよ。」
「いいか?お前は、こんなことの為に、
 就職のチャンスをムダにしたんだ。」
「こんなことって・・。」
「このチャンスを逃したら、次はいつになるかわからないって
 ことぐらい、お前にもわかってたはずだろう!」
「もういいよ!」
「いいって何だ!」
「いいって言ってんじゃん!」
「・・それとも何か?面接に自信がなくて、
 寿美子のことを口実に、逃げ出したか!」
「出てけよ!」
「・・ばかやろう!」
「・・・」

あくる日、誠治は、昨日の出来事を真奈美に打ち明けた。
「ここんとこ・・親父と上手くいってたんだけどな・・。
 やっぱダメだ。頼れねーし。がっかりだよ。
 でもさ、何で、最終面接の時なんだよ。
 だって俺正直、面接行かなかったこと・・後悔してるからね。
 ・・・ま、その後悔している自分ってのも、情けねーしさ。」
「・・・カッコイイよ。」
「え?」
「誰かを守るために、目の前のチャンスを捨てるなんてさ、
 カッコイイと思うよ。」
「・・・カッコ良くねーだろ。
 結局、何も守れてねーんだから・・・。」

夜、帰宅した誠治は、そのまま西本家のインターホンを押す。
「あら、誠治君。どうしたの?」
「うつ病です。」
「え?」
「うちのお袋、うつ病です。」
「・・・そうだったの。」
「ストレスが原因だって、お医者さんに言われました。」
「ストレス・・もしかしてお父さん?
 あのお父さんじゃね。」
「手首も切りました。」
「自殺未遂・・・」
「遺書・・書いてたんですよ。
 今までのこと全部。」
「・・・誠治君。ちょっと。」

寿美子がうつ病、自殺未遂と興味津々で聞いていた幸子、
遺書があったと知り、表情を変えました。
遺書に自分がイジメてきたことが書かれていると思ったんですね。


西本家
「それで、遺書って、どういう内容だったの?」
「・・・」
「・・あ、あの、私は別に、印鑑や、お守りだって、
 武さんの、心の支えになるんじゃないかって。」
「それも西本さんの差し金だったんですか?」
「あ・ああ・・」
「何でそんなことするんですか!」
「・・・」
「ゴミ出しても戻したり。」
「ゴミ?」
「とぼけたってムダですよ。俺この目でちゃんと見てるんですから。」
「そ、それは・・」
「それだけじゃないですよね!
 10年以上も前から、嫌がらせし続けていますよね。
 うちだけ、町内会費払ってない噂流したり、
 クリーニング屋のおばちゃんが死んだ時だって、
 うちにだけ知らせなかったり。
 ・・・何でお袋なんですか?」
「・・・」
「お袋の、何が気に食わなかったかは知らないですけど、
 俺にとっては、優しくて、温かくて、いつも見守ってくれて、
 こんな俺でも、認めてくれて。
 一番の母親なんですよ。」
「・・・」
「俺は、生まれた時からずっと守ってもらってたから、
 今度は俺が、守らなきゃって。
 だから、もう何されても、絶対俺が守りますから。」
誠治がそう言い席を立つと、幸子は口を開く。
「羨ましかったの。
 誠治君のお母さんが、羨ましかった。」
「羨ましい?」
「武さん、いつも笑顔で、幸せそうで。
 和彦は、私の思い通りに育ってくれた。
 でも、中学の頃から、笑わなくなって、
 いつの間にか私を軽蔑するようになった。
 母親として、一生懸命やってきたのに!
 私は、自分のことを犠牲にして、和彦の為にやってきたの!」

「嘘をつけ!自分の為だろう?あんたは。
 優秀で立派な息子を持った母親でいたかっただけだろ?
 俺のことは全部あんたが決めた。
 これが和彦の為だからって。
 最低な母親だ。」
郵便物を取りに帰ってたまたまふたりの会話を聞いてしまった
和彦(横尾渉)は、幸子に反発する。
「・・・どうして・・どうして言ってくれなかったの?」
「言えなかったんだよ。
 あんたの言う通りにしてれば、あんたが嬉しそうだったから。」
和彦はそう言い、家を出ていく。
幸子はその場に泣き崩れ・・・。

あくる日、誠治が寿美子にクリームを塗っていると、
インターホンが鳴る。その音に寿美子の表情がこわばる。
訪ねてきたのは相沢だった。
「母さん。心配しなくていいからね。
 もう終わるから。」
誠治は寿美子にそう言うと、リビングのドアを閉めて玄関を開けた。

「都合つけていただけましたか?」
「弁護士さんに相談すれば、支払わなくて済むんですよね。」
「・・・」
「100万円、きっちり入っています。」
「弁護士に相談するんじゃ・・」
「もう、終わらせたいんです。
 1分1秒でも早く、終わらせたいんです。
 母の為に。」
相沢は封筒から金を取り出し、1枚1枚数え始める。

その様子をぼーっと見つめながら、誠治は寿美子に引っ越そうと
約束したこと、雨の中、きつい仕事を頑張ったこと、
大悦で出会った仲間たちと、仕事をやり遂げた達成感、
100万貯まり、引越しできると仲間たちと一緒に喜んだこと、
色んなことを考えていた。

「確かに、100万円。
 こちら、領収書になります。」
「・・・」
「それから、ご契約いただいた商品で、まだお渡ししていなかったものです。
 失礼します。」
相沢は大きな封筒のようなものを置き、帰っていく。

「母さん。終わったよ。」
「・・・」
「もう大丈夫だから。心配しないで。」
誠治はそう言い、寿美子の手にクリームを塗っていく。
「就職・・ごめんなさい。」
「うん?・・次があるよ。」
「・・・」

「大切な人を、どれだけ思っていても、
 なかなか思いは上手く届かない。」


部屋に戻った誠治は、相沢が置いて行った封筒の中身を取り出した。
出てきたのは、誠治の就職合格を祈願したお札だった。

「でも、いつだって願っている。
 大切な人が、幸せでいてくれることを。」

それをじっと見つめていた誠治の目から涙がこぼれ…。


隣の芝生は青い。青く見えてしまう。
幸子はいつも笑顔の寿美子が羨ましかったんですね。

子供を自分の思い通りに育てようとする。
寿美子と則子は同じタイプの人間のようです。
和彦は母親の喜ぶ顔が見たくて、多分自分自身の夢を
持つことを諦めてしまった。
その反動が出てしまっているんですね。
智也もそうなってしまう可能性が。

寿美子に育てられたからなのか、亜矢子は智也自身が望む道を
歩ませたい、と考えている。
誠治の優しさも、あの両親に育てられたからだと思う。
自分の人生を自分で切り開いていけるようにすることが大切。
今の誠治にはその力があると思います。

寿美子は誠治の合格祈願のお札を買っていました。
子供がいくつになっても、たとえ自分が病気を抱えていても、
子供は子供。親は心配してしまうもの。
自分も親になってみて、初めてそんな気持ちに気付きました。

「大切な人を、どれだけ思っていても、
 なかなか思いは上手く届かない。
 でも、いつだって願っている。
 大切な人が、幸せでいてくれることを。」

この言葉が、好きな人(真奈美)だけでなく
家族に向けられたものでもあったことが素敵でした。


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キャスト
武 誠治(二宮和也)
千葉真奈美(香里奈)
永田亜矢子(井川 遥)
豊川哲平(丸山隆平)
手島信二(井上正大)
星野あかり(岡本 玲)
西本和彦(横尾 渉)
島田彰子(玄里)
大悦貞夫(大友康平)
永田則子(鷲尾真知子)
永田文也(七海智哉)
永田智也(橋本智哉)
北山 雅彦(児嶋一哉)ハローワーク職員
山賀亮介(眞島秀和)
北山雅彦(児嶋一哉)
岡野忠志(田中壮太郎)
塚本 学(山本龍二)
真田勝也(嶋 大輔)
西本幸子(坂口良子)
西本和彦(横尾渉)
武 誠一(竹中直人)
武 寿美子(浅野温子)

スタッフ
原 作
 有川 浩
 「フリーター、家を買う。」(幻冬舎刊)
脚 本
 橋部敦子
音 楽
 高見優
主題歌
 嵐「果てない空」
挿入歌
 西野カナ「君って」
編成企画
 瀧山麻土香
 水野綾子
プロデュース
 橋本芙美
演 出
 河野圭太
 城宝秀則  
制 作
 フジテレビ
 制作著作
 共同テレビ


二宮和也さんの主な出演作品




浅野温子さんの主な出演作品





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【フリーター、家を買う。】第9話
Excerpt: どれだけ別れが寂しくても、どれだけ大切に思っていても、思いはなかなか届かない。でもいつだって願ってる。大切な人が幸せで居てくれることを。給料の中から食費を渡し、誠治は引...
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フリーター,家を買う。 (井川遥さん)
Excerpt: 井川遥さんは、フジテレビ系列で毎週火曜よる9時から放送されている連続ドラマ『フリーター、家を買う。』に永田亜矢子 役で出演しています。 一昨日は第9話が放送されました。 ●あらすじと感想 うつ病に偏見..
Weblog: yanajun
Tracked: 2010-12-22 04:53
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