2011年07月10日

それでも、生きてゆく 第1話

『禁断の出逢い・・・』

1996年 夏
「たこ もっと揚がれー。
 もっともっと揚がれー。」
三日月山、湖のそばで『あき』と名前の書かれた白い凧を揚げて遊ぶ亜季。
少女のそばにいた学生服姿の少年は、ポケットからカナヅチを出し・・・。

美容院
「遅くなりました。」と響子(大竹しのぶ)。
「ごめん。急に頼んで。」と店主。
「ううん。」
「文化ホールに杉良太郎が来るんだってよ。」
「アハハ。」
「亜季ちゃん、おうち?一人で大丈夫?」
「うん。上のお兄ちゃん見てくれてるから。」

レンタルショップ
「これ・・・。」友達と一緒にアダルトビデオを借りる洋貴。
「会員証お願いします。」と定員。
「深見洋貴さん?」
「・・はい。」
「ちょっとお待ちくださ〜い。」

パチンコ屋
「いやぁ、近頃の女の子はませてるよ。
 お嬢様みたいな赤い靴が欲しいなんて言っちゃってさ。
 アハハ。」と達彦(柄本明)。

凧上げする亜季にゆっくり近づいていく少年。

美容院
「ね、そういえば寅さん死んじゃったってよ。」と客。
「渥美清!?」と響子。
「うん。」
「嘘!!」

三崎家の前
「おっぱい見てえ。」と洋貴。
「早く見てえ。」と西口。

そこへ、三崎健二の妹・双葉が帰ってくる。
「おい!お兄ちゃんは?」と洋貴。
「・・・」兄の友人たちを無視する双葉。
「なんだ、いねーのか。」と洋貴。
「じゃ、洋貴んちは?」とい西口。
「駄目だよ。うちの妹すぐ部屋入ってくるし。
 お前んちは?」

三日月山
「亜季ちゃん。」
少年が声をかける。

三崎家
「お兄ちゃん?まだ寝てんの?」
双葉は兄の部屋に行ってみるが、部屋に兄・健二はいなかった。
机の上にはトランプで作ったタワー。

少年が少女に殴りかかっているのが湖の水面に映り・・・。
風が吹き荒れ、亜季のタコが地面に落ちていく。

トランプのタワーに触れる双葉。
タワーはバサバサっと崩れ落ち・・・。

湖に浮かぶ亜季のタコ。

夕方、洋貴が帰宅する。
「ただいま。」
「あ、おかえり。」と響子。
「あれ?亜季は?」と達彦。
「知らない。」
「え?遊びに連れてってくれたんじゃないの?」と響子。
首を横に振る洋貴。
「頼んだじゃない。」と響子。
「何だよ〜。せっかく脅かしてやろうと思ったのにねぇ。」
達彦は娘に買ってきた赤い靴を見つめながら残念そうに言う。
「みかちゃんとこかな?
 耕平!まだ。」と響子。

一睡もせずに朝を迎えた深見夫妻。
玄関のチャイムが鳴る。

「静岡県警の者ですが、写真を確認していただけますか?
 お嬢さんのもので・・・間違いありませんか?
 先ほど三日月湖で・・遺体で発見されまして。」
「・・・嘘。嘘!・・・嘘!嘘!嘘!」
響子は悲痛な叫び声をあげ・・・。

2011年 初夏
湖畔の釣り船屋『ふかみ』。
深見洋貴(瑛太)は、ここで父の深見達彦(柄本明)を手伝いながら暮らしている。

「昼からまた3人だ。今のうち。」
チャーハンを作った達彦は、その上のソースをドボっと掛ける。
自分のチャーハンにもソースを掛けられそうになり、阻止する洋貴。
「ああ。明日、亜季の、誕生日だ。」と達彦。
「うん。」
「お父さんな、しばらく、」
洋貴は父の言葉を無視し、外に出ていく。

クーラーボックスに腰掛け、チャーハンを食べながら
洋貴は妹のことを思い出していた。

(回想)
「あのさ、お兄ちゃん。」
「え?」
「フランダースの犬って、何のためにあるの?
 ネロはさ、お父さんもお母さんもいなくて、いじめられたり、
 騙されたりして。最後には死んじゃうのよ。犬も一緒に。
 何のためにこんな悲しいお話があるの?」
「何のためって?」
「ネロは、生まれない方が良かったんじゃない?
 お兄ちゃん、どう思う?」
(回想終わり)

翌日は、15年前に亡くした妹、深見亜季(信太真妃)の誕生日。
洋貴は亜季の顔をはっきりと思い出せなくなっていた。
そんな時、逹彦が倒れてしまう。

遠山双葉(満島ひかり)は恋人から別れを告げられて帰宅。
団地の前に父の姿を見つける。
「お父さん。」
「どうした?」と三崎駿輔(時任三郎)。
「振られた。お父さんは?」
「クビになった。」

双葉の家族は、15年前から名字を三崎から母、遠山隆美(風吹ジュン)の
旧姓に変えていた。
父の駿輔と祖母だけが三崎を名乗っていたためか、家族は執拗な中傷に
追い続けられている。

夕食時
「匿名の電話が会社にかかってきたらしい。」と駿輔。
「双葉の彼も?」と隆美。
「うん。」
「退職金は出ないと思う。」と駿輔。
「うん。
 静岡のお兄ちゃん、来ないかって言ってくれてる。」と隆美。
「私だけここに残ろうかな。」と灯里。
「学校でバレたらいじめられるよ。」と双葉。
「それはお姉ちゃんのときでしょ?
 私はまだ生まれる前のことだし。」
「じゃ試してみたら?生徒だけじゃなくて先生もだからね。」
「駄目よ。引っ越すときはみんな一緒。」と隆美。
「俺とおばあちゃんがいなければ、済むことなのかもしれないな。
 お前たちは籍抜いてるから大丈夫だ。
 お父さんの住民票が原因で見つかってるのかもしれない。」
「離婚届を出した時に約束したでしょ?絶対に離れないって。」
「・・・老人ホームの契約書、どこに置いた?」
「え?あそこは設備が不十分だって。」と双葉。
「これ以上おばあちゃんを連れていくわけにはいかない。」
「・・・」

祖母の介護をする双葉。
「心配しないでね、おばあちゃん。
 私が何とかするから。」
耐え難い現実に、双葉はある決心をしていた。

病院
「聞いたか?
 貯金はないけど、借金もないし。
 ああ。後は・・うまくやってくれ。」と達彦。
「何でほっといた?」と洋貴。
達彦はがん性腹膜炎だった。
「そりゃあ、亜季に会えるからなぁ。」
「・・・」

洋貴が病院から釣り船屋に戻ると見慣れぬ女性、双葉が湖を見つめていた。
「ああ・・。」と洋貴。
「え?」
「車、あれですか?」
「あ、すいません。」
「いや、別に何にも・・あれなんで。」
「・・はぁ。」
「・・・はい?」
「いや・・・。」
「何すか?」
「いや・・・。ここの方ですか?」
「まあ、ちょっ・・・あれなんで、自分。」
「え?」
「・・・いいっすか?」
立ち去ろうとする洋貴。
「あっ!」
「え?」
「いや・・」
「何すか?」
「いや。・・・お腹空いちゃって。」
「・・ああ。」

カップ焼きそばを出す洋貴。
「お幾らですか?」と双葉。
「いいっす。」
「でも・・」
「個人的な食品なんで。
 ああ、店のじゃないってことです。」
「・・・」
御湯を沸かそうと電気ポットを手にコンセントを捜す洋貴、
ふと、自殺志願者に注意というチラシが目に入る。
「東京、からですか?」
「あ・・まあ。」
「一人でですか?」 
「あ!コンセントありました!
 私持ちます。」
「いや、すぐ沸くんで。」
「でも、」
「いや、いいんで。用意して。」

カップめんの上にソースを出す双葉。
「・・・あのう。」
「はい?」
「お湯入れる前にソース入れちゃったら・・・」
「あ!!・・大丈夫です。食べれます。」
「無理です。相当無理だと思います。
 あのう、おにぎりとか、そういうおにぎりのとか買ってきます。」
「いや、ホント、よくて。」
「おかかか、お、梅か、どっちがいいですか?」
「じゃあ、シャケ。」
「あっ、すいませhん。シャケ、気づかなくて。」
「・・・」

そこへ、弟の日垣耕平(田中圭)が達彦を連れて来た。
「タクシーでいきなりうち来たんだよ。」
「病気のこと・・・」
「病気?」
「いや。」
「母さんに会いたいって言ってさ。
 もちろん居留守使ったけど。」
「会ってないんだ?」
「うちにも入れてないよ。
 離婚して10年以上だよ。
 俺あの家じゃ、婿養子だしさ。
 母さんまでお世話になってるし。
 向こうのお父さんに迷惑掛けたくないんだよ。」
「何でいまさら母さんに会いたいなんて。」
「亜季の話がしたいって。」
「・・・」
「今日亜季の誕生日だったんだって?
 バースデーケーキなんか買ってきちゃってさ。
 俺も母さんも、そういうのないことにしてるからさ。
 ほら、起きろよ。」
「俺、やるよ。」
達彦を背負う洋貴。
「気を付けて帰れよ。」
「うん。」

家の中
「お布団敷きますか?」と双葉。
「すいません。」

布団を出した時、ダンボール箱をひっくり返してしまった双葉。
それを片づけていると、アダルトビデオがあった。
「・・・15年延滞したら幾らになんのかな。」

「ああ・・・。」達彦が目を覚ます。
「起きた?」
「うちか。
 うん?」
「あ、お水持ってきます。」と双葉。
「彼女か?」
「自殺志願者。たぶん。」
「え!?どうすんだ!?」
「あんま騒がない方がいい。」
「電話したか?ほら、あの、電話の横の、ほら。」
「・・・何でいまさら母さんのところなんか。」
「・・・」

(回想)
亜季の想い出を燃やす達彦。
「何してるの?何してるよ。何してるの?
 嫌!嫌!嫌!」と響子。
「いつまで泣いたって!亜季は帰ってこないんだ!
 忘れてしまうんだよ!」
「何してんのよ!!」
「また!また子供津くればいいじゃないか!」
「・・・」
「また子供を造ればいいじゃないか。」
「・・・」
(回想終わり)

達彦を落ち着かせた洋貴は、双葉とファミリーレストランへ。
「・・・タンドリーチキン、好きなんですか?」と洋貴。
「はい?」
「タンドリーチキン、よく食べるんですか?」
「え・・あ、タンドリーチキンですか?
 前ここの系列でバイトしてたことあって。」
「へー。
 ・・・
 あ、自分、深見です。」
「あ・・遠山です。」
「・・・遠山さんがバイトしてたところもこれぐらい空いてました?」
「あー、周りに大学とかあったんで、混んでるときは混んでましたけど。」
「ああ。」
「はい。」
「ああいうユニホーム着て?」
「ああいうの好きなんですか?」
「いや、そういうのは。
 ・・・僕のこと、だいぶ気持ち悪いと思ってますよね?」
「え?何でですか?思ってませんよ。」
「まあ、自分・・・、いいや。」
「あれ?言いかけてやめるのやめましょうよ。」
「いや、こんな話しても・・」
「気になるんで。」
「・・・まあ、自分、29で。」
「はい。」
「女の人と付き合ったことないんすよ。」
「・・へー。」
「ヤバくないっすか?」
「結構いるんじゃないですか?」
「さっきのビデオあるじゃないですか。」
「あ、はい。」
「あれ借りてた時、妹が殺されたんです。」
「・・・」
「自分そういうとき、おっぱいのこと考えてたんです。」
「・・・」
「まあ・・それで何ていうか・・・
 あ、引いてます?」
「いや、引くっていうか、何か何でいきなりそんな話するのかなって思って。」
「ああ、ですよね。」
「別に、いいんですけど。深見さんの好きな感じで。」
「・・・遠山さん、地震のときどうしてました?
 自分、ここにいて、そんとき店員さんで、ニコラス・ケイジに似てる
 インド人の人がいて、その人、」
「あのう。」
「はい。」
「何で妹さんは・・その・・」
「殺されたかですか?」
「・・はい。」
ナプキンに地図を書きだす洋貴。
「これ、僕が中学んときまで住んでた家です。」
「あ、はい。」
「駅で、商店街で、川があって。
 中学校で、小学校で
 国道があって、これが、レンタルビデオ屋です。
 当時僕らが、三日月山って呼んでた山があって、
 奥に、湖があります。
 あ、これ、妹が殺されたところです。
 妹、亜季っていうんですけど、その日亜季が、
 お兄ちゃん、たこ揚げしようって言って。」

(回想)
友達に誘われ家を飛び出していく洋貴。
「お兄ちゃん!!」
「ついてきたら、一生遊ばないからな!」
「・・・分かった。」
(回想終わり)

「まあ、そんときが生きてる妹を見た最後っていうか。
 ああ、そもそもなんで、妹が犯人についていったか気になりますよね?」
「はあ。」
「犯人が、中学の僕の友達だったからです。」
「・・・そうですか。」
「で、妹はこの湖でたこ揚げをして、
 で、その犯人に、カナヅチで、頭殴られて殺されました。
 5回か、6回か7回。
 で、動かなくなった亜季の体は、この湖に投げ込まれて、」
「あのう!」
「・・・タンドリーチキンおいしそうじゃないですか。」
「・・・ごちそうさま。」
亜季は食事に手を付けず、お金を置き店を飛び出していく。

亜季を追い、捕まえる洋貴。
「ちょっ、何してるんですか!」
「あ、すいません。」
「何なんですか!?
 あんな話とかした後で、よくご飯とか食べられますよね!」
「・・・」
「普通きつくないっすか!?
 普通もっときつくないっすか!?」
「・・・普通じゃないから。」
「・・・」
「普通じゃないんで。妹殺されんの。」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・思い出せないんすよね、この頃、亜季の顔。」
「・・・」
「うち、写真とか1枚もなくて。
 だんだん。だんだん、何か、亜季の顔、どんなだったか
 分からなくなってきて。
 自分、いっつも亜季に冷たくて。
 冷たくしたのが1000回だとしたら、優しくしたのは1回くらいで。
 それなのに亜季、いっつも、お兄ちゃん、お兄ちゃんって。」
「お兄ちゃんって・・・」
「でも・・・思い出せないんです。」
「・・・何でですか?」
「はい?」
「何で、会ったばかりの私に、そういう話。」
「ああ・・何か、同じようなの感じて。」
「同じ?」
「すいません。何か・・・同じような目に遭ったことあるんじゃないかなって。
 何か、被害者的な。」
「・・・」

その日、双葉は『ふかみ』に泊まることに。
「3号室使ってください。良かったらこれ。」
「・・・あのう。」
「はい。」
「今でも恨んでるんですよね?その・・・犯人のこと。
 犯人の・・・家族のこととか。」
「・・・犯人は、ああ、三崎文哉っていうんですけど。」
「はい。」
「文哉は、何であんなことをしたのかとか、今どうしてるのかとか、
 全然分かんないし。
 どっちかっていうと、妹殺したのは自分だと思ってるし。
 フッ。よく分かんないんで。」
「・・・そうですか。」
「・・・フランダースの犬ってあるじゃないですか。
 あの主人公の男の子って、何もいいことないじゃないですか。
 生まれてこない方が良かったんですかね。」
「妹さんのことですか?」
「・・・」
「妹さんのことそんなふうに思ってるんですか?」
「・・・いや、いいですいいです。おやすみなさい。」
「・・・」

翌朝、双葉は家族に友達と一緒にいると嘘の電話。

洋貴が目覚めると達彦の姿が見えない。
「どうしたんですか?」と双葉。
「朝起きたら、父がまたいなかったんです。」

そこに警察から電話。
刃物を持って東京行きの電車に乗ろうとした達彦が保護されたのだ。

洋貴は双葉とともに迎えに行く。
「父さん。帰るよ。」
「見つけた。」
「え?」
「少年Aのことが分かった。チキショー!
 もうちょっとだったのにな、チキショー。」
「病院行くよ。」
「うちだ。」
「うち帰ったって・・・」
「違う。松見台のうちだ。」
「え?ちょっと・・・」
「連れてけ。」

松見台の空き家
「不思議だな。
 ここに来ると、いつでも、亜季に会えるような気がする。
 この前なんか、亜季とぶどう狩りに行ったとき、」
「分かったよ!もういいだろ!?
 あんただけだよ、そんなこと言ってんの。
 大体さ、自分でしょ?亜季のこと忘れようって言ったのは。」
「でもな・・・でも、無理だったんだ。
 お父さんさ、あの日、亜季が揚げてるたこを見たんだ。
 見たんだよ。夏の空に、白い凧顔飛んでいるのを。
 よく飛んでた。
 ところが、たこが急に落っこって、
 お父さん何だか分からないけど、急に胸騒ぎし始めて。
 見に行こうかなと思ったんだけど、あの日は暑くて。
 暑くてさ・・・。」
「・・・」
「お父さん、亜季、助けられなかった・・・。
 夜になって、亜季が帰ってないことに気づいた。
 それから長い、あの一日が始まった。」
「今さらそんなこと言ったって・・しょうがないだろ?」
「うん。」
「そんなこと言ったら俺だって・・・」
「ううん。すまん。すまん。
 ・・・去年の、今頃、がんの告知を受けた。
 これでやっと亜季のところに行けると思った。
 人生なんてあっという間だよ。
 ただ、その中にあの一日がある。
 人生は短かったけど、あの一日は長かった。
 それももう終わる。」
「・・・勝手なこと。」
「ただな、お父さん一つだけ、やり残したことあった。」

亜季の部屋
「死ぬ前にどうしても、知りたいことがあった。
 少年Aが、今どこで、どうしてるかだ。
 あの子に会って、どうしてそんなことになったのか、
 本当のことを、聞いてみたかった。」
「だって、居場所は絶対教えてもらえないはずじゃ。」
「あの子が入ってた、医療少年院の、看護師さん見つけたんだ。」
「・・・」
「看護師さん、彼が、少年院にいたころのこと、教えてくれた。」
「外に出てんのか?」
「8年前にな。」
「・・・」
「お父さんも、短いなと思った。」
「8年なんて・・・」
「看護師さん、絵、見せてくれた。
 少年Aが、退院する前に描いた絵だ。
 美しい絵だよ。」
財布から絵を取り出す達彦。

湖の上に広がる青空から、火の光が何本も差す絵。
水面に広がる波紋。その中心に浮かぶ人の体。

「亜季・・・。」
「反省してない!
 あの子にとって・・・それは」、美しい想い出に過ぎないんだ。
 何で!!何で秋を殺したやつが生きてるんだ!!
 亜季はもう帰って来ないんだ!
 大人になれないんだ!!
 なのに、何であいつはたった7年で出てくるんだ!
 大人になれるんだ!!
 罪を償ってない!
 反省もしてない!
 前科もない!自由だ!
 どこかの町で、平気な顔して、
 人に紛れて暮らしてるんだ!!
 だけど、だけどこいつ、またやる!
 あいつ、また人を殺す!」
「・・・包丁持って東京行こうとしたのは・・・」
「あいつ、あいつ殺そうと思って。
 あいつの、保護司だった人が、先週亡くなった。
 明日、明日東京で葬式がある。
 東京の、善苑寺っていう葬儀場だ。
 洋貴。お父さん、もう動けないんだ。
 お父さん連れていってくれ。
 そしたら、お父さんあいつ、この手で殺すから!
 悔しいんだ!亜季の仇取らないといけないんだ!
 悔しいんだよ。死んでも死にきれないんだよ!」
「無理だって。」
「死んでも死にきれないんだよ!」
「だって・・・」
「死んでも死にきれない・・・。
 ううっ・・・」
「お父さん・・・父さん!?父さん!!」

2人の話を泣きながら聞いていた双葉は、どこかへと姿を消した。

達彦を病院に戻して『ふかみ』に帰った洋貴は、押入れの中に
赤い靴を見つける。
その他にも、白い靴、ピンクのサンダル、赤いハイヒール。
10足以上の新品の靴がしまってあった。

押入れの奥には、風呂敷に包まれた亜季のランドセルがあった。
洋貴は、その中に亜季が書いた凧揚げの絵を見つけた。

(回想)
「お兄ちゃん!たこ揚げは!?」
「今度でいいだろ。」
「今日がいいの!今日がいいの!」

「フランダースの犬って、何のためにあるの?」
「何の為って?」
「生まれない方が良かったんじゃない?
 お兄ちゃん。どう思う?」
(回想終わり)

その瞬間、長い年月で薄れかけていた幼い亜季の顔が、
洋貴の脳裏に蘇る。

台所には、達彦が買ってきた亜季の誕生日ケーキ。

取り憑かれたように思い出の凧を作り始める洋貴。
亜季と自転車の練習をしたこと。亜季の笑顔。
亜季と風鈴を飾ったこと。一緒にゲームで遊んだこと。

凧を作り終えた洋貴は、湖に向かう。
亜季が揚げていた場所で叫びながらたこを揚げる洋貴。

「わぁ!たこ高いね〜!」
洋貴には隣で微笑む亜季が見えていた。
「お兄ちゃんすごい!」
亜季に微笑む洋貴。
「たこ高いねぇ!」
「あ・・・亜季。
 亜季?
 ・・・亜季。」
洋貴はその場に泣き崩れ・・・。

湖に入り、体を浮かせて空を見つめる洋貴。
「亜季・・・冷たかったか?
 痛かったか?
 待ってろよ・・・亜季。」

遠山家
「おばあちゃん。あの人じゃなかったよ。
 うちの家族のこと密告してたの。
 私何もできなかった。
 ごめんね。ごめんね、おばあちゃん・・・。」
祖母の前で涙する双葉・・・。

ハサミで髪をバサバサ切っていく洋貴。
この時、洋貴にも達彦同様の気持ちが芽生えていた。

チャーハンを作った洋貴は、父のようにソースをどっぷり掛けて食べる。
引出しからナイフを取り出した時、家の電話が鳴る。

喪服に着替えた洋貴は、日垣・野本家に向かう。
ちょうど響子が家から出てきた。
「・・・もう、びっくりさせないでよ。」
「さっき父さんが死にました。」
「・・・」
「あ・・あのう、」
「今、りょうちゃんのミルク買いに行くとこなの。
 由佳さんいるから、中で待ってて。」
「時間ないんで。伝えに来ただけなんで。」
「そう。たまには、ご飯でも食べにいらっしゃい。」
「・・・そんなもんなのかなあ。」
「・・・」
「あの人は・・・あの人は、弱いところもあったけど、
 それはそれで、弱いなりに、家族とか守ろうとしてて。
 それでも駄目で。全然ダメダメで。
 後悔したまま、死んでも死にきれないって言って死んでって。
 それで!?それで、そんなもんなのかなぁ!?」
「・・・」
「少しは・・・少しはあの人のために泣いてやっても、」
「・・・もう涙なんかなくなったわ。
 あれより悲しいことなんて、この世にないもの。
 あれより。」
響子はそう言い、立ち去ろうとする。
「母さん。」
「・・・うん?」
「でも俺は・・・それでも俺は生きてくから。」
洋貴に背を向け買い物に出かけていく響子。
「亜季が生まれてきてもよかったんだって思えるように。」
洋貴がそう呟く。

双葉の祖母が老人ホームに送られていくなか、近所の主婦たちは
15年前の事件の加害者家族だと噂する。
「大丈夫。あなたは精一杯やっている。」と隆美。
「親を老人ホームに入れて、自分の息子を捜そうとも
 しないのにか?」
「今いる家族を守って。」
隆美はそう言い、夫と手をつないだ。

洋貴は、達彦から聞いた、保護司の葬儀場へ。
洋貴が文哉を探していると双葉が現れた。
「深見さん。」
「・・・」
「どうも。」
「・・・昨日急に・・」
「すいません。あの時立ち聞きして。」
「いや・・。あのう、心配してくれんのは嬉しいんですけど。
 遠山さんには全然、関係ないことですし。」
「深見さん、少年Aのこと、殺そうとしてるんですよね?」
「遠山さんには全然関係ないことですから。」
「関係なくないんです。」
「はい?」
「・・・私、私深見さんの妹さんのこと知ってます。
 深見亜季ちゃんのこと知ってます。」
「・・・ちょっと、意味分かんない。」
「深見さんこの間言ってましたよね?
 妹さんに冷たくしてばっかりいたって。
 私思うんです。
 妹って、兄から1000回酷いことされても、1回優しいのがあったら
 なんか、お兄ちゃんって感じするんですよね。
 何か、また遊んでもらいたくなるんですよね。
 優しいとき知ってるから、またって思うから。
 だから、だからそんなに嫌いになんてなれなくて。」
「あんた・・・誰?」
「・・・」

歩道橋に人影。

「・・・誰?」
「・・・私は、」

洋貴が歩道橋に立つ人物に気づく。

「あのう、・・・」
「文哉?」

隠し持っていたナイフを取り出し、洋貴は文哉(風間俊介)のもとへ急ぐ。

「逃げて!お兄ちゃん!!お兄ちゃん、逃げて!!」

双葉が洋貴にしがみつき邪魔をする。
「放せ!!」
「嫌!嫌!」
「放せ!!」
双葉を足で振り払い、歩道橋を駆け上がる洋貴。
だが文哉は双葉の声に気づき、タクシーで立ち去ってしまった。

文哉がいた場所には果実が落いてあった。
愕然とする洋貴。

「・・・私が、少年Aの妹です。
 三崎文哉の妹、双葉です。」
「・・・」

草間ファーム
「今戻りました。」と健二(=三崎文哉)。
「おぉ。ちゃんとお礼言ってきたか?」と草間五郎(小野武彦)。
「はい。」

「健ちゃんおかえり!」と娘の草間真岐(佐藤江梨子)。
「お前そんな恰好でうろうろすんな。」と五郎。
「出戻りはスカートもはいちゃいけませんか?」

「健ちゃん!たこが上手に飛ばないの!」
真岐の娘・悠里がやってくる。
健二は悠里の頭を撫で・・・。

「昨日、健ちゃんがくれた絵本、悠里に読んであげたの。」
「フランダースの犬?」
「うん。救いようがないお話だよね。
 悠里が聞くの。
 どうしてこんな悲しいお話があるの?って。
 何でかな。」
「多分・・・」
「多分、何?」
「人間って、悲しい生き物だから。」
湖の絵を描きながら、健二はそう答え・・・。

文哉はこの果樹園で、雨宮健二と名を変えて働いている。


15年前の悲劇。
事件当時、母は美容院で手伝い、兄はレンタルショップでアダルトビデオ選び、
そして父はパチンコ。

被害者の家族は、バラバラになり、壊れてしまっていた。
加害者の家族は離婚はしてもそれは家族の身を守るため。
決して離れずに暮らしている。

加害者家族の双葉は、自分たちを執拗に追い詰めている密告者が
被害者家族だと思い、洋貴に接触。

妹が殺されたことを淡々と話す洋貴。
そこに感情が篭ってないことで、余計に傷の深さを感じさせました。

事件に巻き込まれて命を落としてしまった妹。
そのことで犯人よりも自分のことを責め続け、
妹は生まれてこない方が幸せだったとまで思っていた。

達彦は達彦で、凧が落ちたことに胸騒ぎを感じたのに
暑さに負けて見に行かなかったことをずっと責めていた。
誕生日に、毎年靴を買い続けていた。

洋貴に接触した双葉は、彼や彼の家族の心の傷の深さを知った。
そして、密告者は彼らじゃなかったことも。

亜季の顔を思い出した洋貴。
髪をハサミで切る時の表情は、今までとは全く違っていました。
このまま復讐の鬼となってしまうのでしょうか。

夫が死んだと聞かされても涙の一粒もこぼさない響子。
「・・・もう涙なんかなくなったわ。
 あれより悲しいことなんて、この世にないもの。
 あれより。」
娘を失った母の悲しみが伝わってきました。
響子は、夫に「また子供を作ればいい」と言われたことが
許せないんじゃないかな。亜季は亜季でしかないのだから。

三崎文哉は雨宮健二と名前を変えて、ファームにいました。
健二に懐いている悠里という少女が、次の被害者になってしまうのか!?
何故文哉は亜季を殺したのか。
ハンマーで何回も頭を叩き、湖に投げ捨てる。
『アイシテル−海容(かいよう)−』も、被害者家族、加害者家族の葛藤を
描いていましたが、今度は事故では済まされません。
明らかに殺意がある。余程の憎しみか、それとも病んでいるのか・・・。

『フランダースの犬』に鍵があるようです。
亜季は『フランダースの犬』のことを
「フランダースの犬って、何のためにあるの?
 ネロはさ、お父さんもお母さんもいなくて、いじめられたり、
 騙されたりして。最後には死んじゃうのよ。犬も一緒に。
 何のためにこんな悲しいお話があるの?」
「何のためって?」
「ネロは、生まれない方が良かったんじゃない?
 お兄ちゃん、どう思う?」

亜季は同じことを文哉にも言ってしまったのかな。
そして文哉はネロを自分に重ねてしまい・・・。


被害者家族と加害者家族。
被害者の兄と加害者の妹。
兄を思う心、妹を思う心。
妹を殺した犯人に復讐を誓う兄。
人を殺した兄を守ろうとする妹。

達彦のチャーハンにソースと、双葉の焼きそばにソース。
犯人が描いた絵、亜季が描いた絵。

映画のように美しい映像と小田さんの歌声。

私の中ではこの作品も名作になりそうな予感。

三崎家を執拗に追い詰めているのは、響子なのかもしれない。





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主題歌
小田和正「東京の空」


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気になるセリフ:
第一話の回想シーン
「フランダースの犬って、何のためにあるの?
 ネロはさ、お父さんもお母さんもいなくて、いじめられたり、
 騙されたりして。最後には死んじゃうのよ。犬も一緒に。
 何のためにこんな悲しいお話があるの?」
「何のためって?」
「ネロは、生まれない方が良かったんじゃない?
 お兄ちゃん、どう思う?」



キャスト

深見 洋貴(瑛太)
遠山(三崎)双葉(満島ひかり)
雨宮 健二(風間俊介)※三崎文哉
日垣(深見)耕平(田中圭)
草間 真岐(佐藤江梨子)
遠山(三崎)灯里(福田麻由子)
日垣 由佳(村川絵梨)
藤村 五月(倉科カナ)
臼井 紗歩(安藤サクラ)

深見 達彦(柄本明)

日垣 誠次(段田安則)
草間 五郎(小野武彦)

遠山(三崎)隆美(風吹ジュン)
三崎 駿輔(時任三郎)
野本(深見)響子(大竹しのぶ)



スタッフ

脚本
坂元裕二
音楽
辻井伸行
主題歌
小田和正「東京の空」
プロデュース
石井浩二
演出
永山耕三
宮本理江子
並木道子
制作
フジテレビドラマ制作センター

公式HP



瑛太さんの主な出演作品




満島ひかりさんの主な出演作品





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