2011年08月07日

それでも、生きてゆく 第5話

『居場所を求めて…』

深見洋貴(瑛太)は釣り船屋『ふかみ』で、藤村五月(倉科カナ)に
医療少年院で三崎文哉=雨宮健二(風間俊介)の担当看護師だった
東雪恵(酒井若菜)が行方不明になっていることを話す。
「本気でその犯人を探しているんですか?」と五月。
「・・・まあ。」
「私も手伝っていいですか?
 私の母を殺した犯人は、自殺したんですよ。」
「・・・」
「私も父も、なんか、気持ちの持っていく場所がなくて。」
「・・・」
「だから、少しでも役に立てたらと、」

「どうも!」
そこに遠山(三崎)双葉(満島ひかり)が現れる。
自分と文哉の出生の秘密を知ってしまった双葉は、行き場所を失って
やって来たのだ。
五月が来ていたことに慌てる双葉。
「あ・・しまった。ごめんなさい。」
「こんばんは。」と五月。
「こんばんは。」

その頃、文哉は自分の過去を知る臼井紗歩(安藤サクラ)を
車で連れ出していた。
ひたすら森の闇に車を走らせる文哉に紗歩は恐怖をつのらせる。
「もう勘弁してよ。明日だって朝早いんだから。」
「明日が来ると思っているんですか?」
「・・・」
「どうして明日が来るって分かるんですか?」
「・・・あんたやっぱり人殺しだ!」
「僕の名前は?
 僕の名前を言ってみてください。」
「・・・雨宮・・健二。」
「そうです。忘れないでください。
 もし忘れたら、夜のところに置いていくから。」
「・・・」
「分かりましたか?」
腰を抜かしてしまう紗歩・・・。

『ふかみ』
そーめんを食べながら話す3人。
「じゃあ、お言葉に甘えて二人で止まらせていただきましょうか。」と五月。
「あ、はい。」と双葉。
「遠山さん、深見さんと長いんですか?」
「ああ・・・。」と双葉。
「あ、はい。あ・・。結構、子供の頃から。」と洋貴。
「ああ、幼なじみ。
 じゃあ、何でも知ってる感じですか?」
「・・・そうですね。」と洋貴。
「あ・・ですね。」と双葉。
「じゃあ、犯人のことも?」
「・・・」
「同級生だったんですよね?」
「遠山さん、まだ小学生だったし。」
「小学生です。」と双葉。
「ホント言うと、お二人付き合ってるんですか?」
そーめんが詰まりそうになる二人。
「大丈夫ですか?」
「全然そんなの。」と洋貴。
「全然ないです。」と双葉。

部屋
父にメールをする双葉。
『心配しないで。
 元気です。明日帰ります。』
「遠山さん。」と五月。
「はい。」
「多分もう、私の気持ち気づいてると思うんですけど。」
「・・・消しますか?」
「遠山さんも私と同じ気持ちですよね?」
「・・消しますね。」

片付け物を終えた洋貴は、ふと、入り口の靴に気づく。
五月の白いサンダルはきちんと揃えられていて、
双葉の汚れたスニーカーは脱ぎっぱなし。
洋貴は微笑み、双葉のスニーカーをきちんと揃える。

このシーンがお気に入り。

ファーム
考え事をしながらパンをかじる紗歩。
「紗歩ちゃん、ゆうべ、健ちゃんと出かけてた?」と真岐(佐藤江梨子)。
「ああ・・。パチンコ連れてってもらいました。」
「健ちゃんパチンコすんだ!」
「前にいた奴がよく行ってたからな。」と五郎(小野武彦)。
「健二さんは?」と紗歩。
「東京配達行った。」と五郎。
「あ・・そうですか。」紗歩がほっとする。

『ふかみ』
洋貴は、朝早く帰った五月のネックレスを見つけ、電話をする。
「ええ。洗面所に忘れてあって。
 あ、来週東京行く時、持っていきます。
 はい、どうも。お気をつけて。」

「お気をつけて。」洋貴の真似をする双葉。
「はい?」
「いえ。私も今度東京行ってみよっかな。」
「・・・もう10時ですよ。」
「すいません。昨日なかなか寝れなくて。」
「昨日、何であんな時間に?」
「・・・ごちそうさまでした。」

双葉が帰ろうとすると、スーツを着た三崎駿輔(時任三郎)が迎えに来る。
「・・・」

洋貴は駿輔を、深見達彦(柄本明)の部屋へ通した。
「お母様に、お会いできませんか?
 15年前に出来なかった謝罪を、させてください。」と駿輔。
「・・・文哉は?」
「文哉は必ず見つけます。」
「どうやって?」
「・・・前の、私たちの家に、日向夏が。」
「ああ、はい。」
「以前見かけた時にも、配達してました。
 日向夏を栽培している農家を、しらみ潰しに当たってみます。
 見つけ次第うちに連れて帰って、必ず、償わせます。」
「・・・」
洋貴は少し迷ったあと、引き出しから絵を取り出す。
「父が見つけた、文哉の描いた絵です。」
「・・・よろしいですか?」
洋貴の許可を得て絵を手に取る駿輔。
それは、あの湖の絵だった。
「事件のすぐ後じゃありません。
 少年院を出る直前に描いた絵ですって。
 文哉は反省してません。」
「・・・」

二人が二階で話す間、双葉はテーブルに突っ伏しうたた寝をしていた。
「双葉。」と駿輔。
「昨日寝てないみたいで。
 ・・・何かあったんすか?」と洋貴。
「あ・・いや。」
洋貴は駿輔のために椅子を出し、ゴミを出しに出ていく。

「お父さん。」と双葉。
「何だ。起きてたのか?」
「うん。うとうとしてた。」
「・・・帰ろう。」
「うん。」
「双葉、、ごめんな。
 でもお前のお母さんは、あのお母さんだけだから。」
「いつから?」
「・・・お前が、1歳の時。」
「再婚?」
「ああ。」
「そっか。1歳の時じゃ覚えてないか。」
「うん。」
「お兄ちゃんは5歳の時か。
 お兄ちゃん覚えてるのかな?お母さん変わった時のこと。」
「・・・覚えてた。」
「そっか。何か言ってた?」
「・・・でもお母さんは、お前のことも、文哉のことも
 本当の子供として、」
「1個だけ聞いていい?」
「うん?」
「・・・私とお兄ちゃん産んだ人・・今、生きてる?死んでる?」
「・・・死んだ。」
「・・・写真ある?」
「ない。」
「何かある?」
「・・・お前が、成人式の時に着た、振袖。」
「ああ。あれそうだったんだ。」
「お母さんが、取っといてくれたんだ。」

洋貴は二人の話を聞いてしまい・・・。

遠山(三崎)家
「お母さん!お姉ちゃん帰ってきた!」と灯里(福田麻由子)。
「お帰り。」と隆美(風吹ジュン)。
「ただいま。」と双葉。
「ご飯できてるよ。手、洗って。」
「うん。」

日垣・野本家
その夜、洋貴は日垣家に。
「店は順調?」と日垣(段田安則)。
「いや、全然順調じゃないでしょう。
 今のシーズンであれじゃ。」と耕平(田中圭)。
「洋貴には、客商売向いてないのよ。」と響子(大竹しのぶ)。
「じゃあ何が向いてんの?」と耕平。
「粘土とか、得意だったよね。」と響子。
「あ!陶芸!いいじゃないですか。
 今度教えて下さい。」と由佳(村川絵梨)。
「ちょっと、話があるんだけど。」洋貴が響子に言う。
「何?」と耕平。
「お兄さんお母さんに話があるんだよ。」と由佳。
「分かってるよ。だから何って。」と耕平。
「・・・」

響子の部屋
「ねえちょっと・・肩揉んでくんない?」と響子。
「肩?」
「うん。」
躊躇いながらも肩を揉む洋貴。
「あ・・マッサージ師も無理ね。」
「はい。」
「あー、この辺。この変。あー、そうそうそう。
 ・・・で?」
「・・・三崎さんが母さんに会いたがってる。」
「うーん、もうちょっと左。
 そう、そうそう。」
「会って謝罪したいって。」
「・・ウフフ。やればできるじゃない。」
「聞いてる?」
「うん。ごめん。聞いてなかった。」
「・・三崎さんが、」
「会いたくないわ。」
「・・・ああ、そう。じゃあ、断っとく。」
「うん・・・。」
「・・・」
「あれ?もう疲れた?」
「ごめん。やっぱり会ってみたらどうかな?」
「・・・」
「会ってみたら?」
「どうして?」
「言いたいことがあるなら言ったほうがいいと思うし、
 もし殴りたいなら殴ったほうがいいと思うし。」
「・・・」
「会って話せば、何かきっかけになるかもしんないし。」
「・・何のきっかけ?」
「何ていうか・・もう1回、母さんの時間を動かす、
 何ていうかその・・」
「・・・殺したいほど、憎い人なのよ。」
「分かってる。分かってるけど・・・
 僕は母さんに幸せになってほしいから。」

「母さん。風呂。」と耕平。
「あ・・お母さんあとでいいわ。」
「今日さ、入浴剤買ってきたでしょ?あれ、」
「今!・・今話してるから。」と洋貴。
「・・・バカにすんな!」洋貴をど突く耕平。
「耕平?」と響子。
「母さんは幸せなんだよ!
 俺も、嫁さんもいて孫もいて、
 みんなここで幸せに暮らしてんだよ!
 俺がつくったんだ。
 俺がつくったんだよ。壊さないでくれるかな!」
「いいのいいの。
 いいのよ。母さんお風呂入るから。」と響子。
「早く入んなよ。箱根の湯、買ってきたんでしょ?
 温まりそうだねって言ってたじゃん。」
「うん、あっそうね。うん。」
響子が部屋を出ていく。

遠山(三崎)家
文哉が描いた絵を思い出しながら考えこむ駿輔。
「双葉のこと?」隆美が声をかける。
「・・・」
「文哉のこと?」
「・・・俺たち、やっぱり離れたほうが、いいのかもしれないな。」
「・・・」
「いや。もっと早くそうしてれば、せめて、お前と灯里だけは
 別の人生を。」
「・・・ずるいなぁ。
 私は自分の人生を、一度も疑ったことないのに。」
「・・・」
「あなたと結婚したことも、双葉や、文哉のお母さんになるって
 決めたことも、後悔してない。」
「・・・」
「今でも覚えてるわ。
 初めて、双葉の手を握った時のこと。
 あの子・・ぎゅーって、握り返してくれたの。
 どうしてだろう。どうしてこんな小さな赤ん坊にこんな力が
 あるんだろうって思った。
 ・・・きっと、一人じゃ生きられないんだろうなって思ったの。
 私が、守ってあげなきゃいけないんだと思ったの。」
「・・・」
「・・・でもね・・・文哉だけは・・・
 あの子だけは、最後まで私の手を握ってくれなかった。」
「・・・」

次の日、洋貴と五月は文哉の担当看護師を知る元同僚・薩川と
喫茶店で会う。
「私が医療少年院に勤務し始めたのが、彼が退院する直前
 だったんで、ほとんど顔合わせたことなかったんですよ。
 この絵も、掃除してる時に見つけて、記念に取っていただけで。」と薩川。
「記念?」と洋貴。
「彼、人気あったんですよ。
 あ、あなたにもちょっと雰囲気似てる。フフフ。」
「その、この間電話でお聞きした、東雪絵さん。」と五月。
「噂ですよ。二人は、付き合ってたんじゃないかって。」
「あのう、そういうことって院内で可能なんですか?」と五月。
「わかんないけど、男と女ですからねぇ。」
「・・・」
「噂ですよ。」と薩川。
「あ、犯人が退院したと同時に行方不明になったって。」と五月。
「部屋の鍵も掛けないで、ちょっとごみ出しに行くみたいな感じで
 消えちゃったんですよ。
 8年前だから、東さんも今頃は、30ぐらいになったかなぁ。」

街を歩く五月と洋貴。
「私、東さんのご家族に連絡して、お会いできるかどうか
 聞いてみます。」
「あ、すいません、いつも。」
「あと、訴訟のことも考えましょう。」
「訴訟?」
「加害者家族にです。」
「・・・それは。」
「どうして?
 加害者の家族にだって責任はあるんだし。」
「いいんです。」
「・・・あのう!
 これ。」
封筒を差し出す五月。その中には事件当時の週刊誌の記事が
入っていた。目は隠されているが、隆美、双葉の写真が。
「遠山さんですよね?
 どうして、妹さんを殺した犯人の家族なんかと一緒にいるんですか?」
「・・・」

夜、『ふかみ』に双葉が来た。
テーブルでうたたねする洋貴を起こさぬよう、
持ってきたビールをそっと置く。
洋貴の指にそっと触れてみる。
「・・何?」洋貴が目を覚ます。
「ああ、すいません。寝ててくださいそのまま、そのまま。」
「あ・・ああ。今、何時っすか?」
「あ・・10時とか10時15分とか。」
「・・・電話!!」
「あ、ど、どうぞしてください。」
「いいっすよもう、遅いんで。」
「いや、した方が、いいんじゃないですか?
 10時だったらそんなに遅くないと思いますよ。」
「お風呂入ってる時間かもしれないし。」
「そんな、いやらしい想像しなくても、普通に。」
「いやらしい想像なんかしてないっすよ。」
「いやでも、照れてる感じで。」
「いや、今はあれだけど。
 言ったときはしてないっすよ。」
「今はしてたんですか?」
「はぁ・・。お風呂想像するのはいやらしいことなんですか?
 人間誰でも入るじゃ、
 あれっすか?
 遠山さん、お風呂入んないんすか?」
「え?深見さん、私がお風呂入るところ、」
「してません!」
五月の封筒をてに部屋を出ていこうとする洋貴。
「何で逃げるんですか?」
「晩飯作るんですよ。」
双葉が微笑む。

調理場のゴミ箱に封筒を捨てると、双葉のいる方を見て
洋貴も微笑む。

洋貴が作ったラーメンを食べる二人。
「いつもこういうのですか?」
「まあ。」
「ああ、こういう時間でよければ、お店のとか持ってきますよ。」
「お店って?」
「バイトしてるんです、居酒屋で。」
「バイト?時給幾らっすか?」
「900円です。」
「結構いい方じゃないっすか。」
「ラッキーだったんです。」
「何か買うんすか?」
「ああ、何か買おうかな。」
「服買ったほうがいいんじゃないですか?」
「え?私、何か変・・変な服着てますか?」
「っていうか、」
「変ですか?」
「今日東京行ったんですけど。」
「はい。」
「結構みんな、お洒落、でしたよ。
 こういう感じの人達、あんまいなかったっすよ。」
「うーん。私はまあ、こういうので十分です。」
「僕もまあ、こういうので十分っすけど。
 ああ、じゃあ、ちょっとだけ、自分変えられるとしたら、
 どこ変えますか?」
「え?どこかな。え、どうしよう。
 フフ。ちょっと、会話弾んじゃう感じですね。」
「何興奮してるんすか。」洋貴も笑う。
「じゃあ、深見さんからどうぞ。」
「僕ですか?」
「はい。」
「僕は・・・小さいことでいいんですよね?」
「決まりましたか?」
「・・・カラオケ行かない?」
「・・・」
「とか、人に言ってみたいです。」
「・・・ちょっと、何か、小さすぎません?」
「小さくないっすよ。」
「私のは、だいぶ大きいですよ。
 ちょっと、びっくりしますよ。」
「どうぞ。」
「・・・スプーン曲げられるようになりたいです。」
「・・・」
「すごくないですか?」
「大きい小さいの問題じゃないっすよ。」
「でもちょっとびっくりしましたよね?」
「無理っすよ。」
「へへへ。え?何でラーメン食べてるんすか?」
「伸びちゃいますよ。」
「いや、あの人が夢の話とかしてる時に、ラーメン伸びる伸びないとか
 言ってる人はモテないですよ。」
「別にモテたいとか思わないんで。」
「へ〜。」
「・・・そのうち、上手くいきますよ。」
「・・・」
「さすがにスプーンは無理だと思いますけど。」
「フフフ。」
「つらいこと・・・色々あると思うけど。」
「・・・」
「そのうち、うまくいきますよ。」
「・・・あれ・・・。
 母の話とかの、聞いてました?」
「・・・」
「ああ・・・。何か、今日は優しいなーと思ったら、そうか。
 ・・・何か、ラーメン久し振りに食べるから・・。」涙ぐむ双葉。
「いつもこれぐらいっすよ。」
「いつもこれぐらいだったらいいな。」
「じゃあ、いつも・・・これぐらいの感じにしますよ。」
「・・・あのう、もう1回だけ言ってもらってもいいですか?
 ラーメン食べながらでいいんで。
 今の、もう1回だけお願いします。」
「・・・」
洋貴は箸を置き、双葉の手に自分の手を重ねようとする。
だが・・・思いとどまり・・・。
「・・・うまくいきますよ。遠山さん。」
「・・・」
「頑張ってるから。」
「・・・恐縮っす。」双葉が泣きながら答える。
「いえ。」
「フフ。」

食器を洗う双葉。
「あ、この間の部屋でいいっすか?」と洋貴。
「いいんですか?」
「3回目だし。」
「すいません。」
「・・・布団敷いてきます。」
「はい。」

洋貴が立ち去ったあと、双葉はゴミ箱に捨ててある封筒に気づく。
双葉はそれを手に取り・・・。

客間に布団を敷きながら、洋貴は五月に何故加害者の家族と
一緒にいるのかと問われたことを考え・・・。

洋貴が1階に戻ると、双葉はいなかった。
テーブルには、五月に渡された封筒と、メモが置いてあった。

『ありがとうございました。
 わたしは
 もう じゅうぶんです。』

遠山(三崎)家
灯里の携帯が鳴る。
「お姉ちゃん!何してんの!?
 お父さん今捜しに行ったよ。お母さんも。
 お姉ちゃん今どこにいるの?」
「うん、友達んち。
 ホントホント。心配しないでって言っといて。」
駅前にいた双葉は家族を安心させようと嘘をつく。
「分かった。
 あ、ちょっ、ちょっと待って。
 お姉ちゃんあの、あのさ。」
「うん?」
「今度、ディズニーランド行かない?」
「ディズニーランド?」
「うちって行ったことないじゃん。
 ほら、そういうのはあれだしっていって。」
「そうだね。」
「・・ごめん。私去年友達とこっそり行っちゃった。」
「そうなんだ。」
「お姉ちゃんといつか一緒に行こうと思ってたのに。
 友達と行っちゃった。」
「いいよいいよ。何?気にしてんの?」
「みんなで行きたいね。」
「そうだね。」
「行こうね。」
「うん、行こうね。
 ・・・じゃあ切るね。」
「お姉ちゃん!」
「うん?」
「・・・ううん。呼んでみただけ。」
「灯。」
「何?」
「呼んでみただけ。
 おやすみ。」
姉を思う灯里の優しさに、双葉は涙してしまう。

洋貴が仕事をしていると耕平から響子がいなくなったと連絡が入る。

特別養護老人ホーム 海寿園
「おばあちゃん。双葉だよ。
 双葉来たよ。分かる?」
「・・・」
テーブルには折り紙で作った金魚が3つ。
「ハハ。金魚!すごい!
 おばあちゃんこれ折ったの?
 ここの人が折ってくれた?」
「・・」
「・・・ねえ、今日さ、久しぶりにおばあちゃんち泊まっていい?
 ・・・双葉なんか疲れちゃったよ。」

日垣(深見)家
「大丈夫よ。お母さんしっかりされてるから。」と由佳。
「母さんに何かあったらどう責任取る気?」
耕平が洋貴を責める。
「・・・」
「動揺させるようなことわざわざ言いに来てさ。
 この15年間、母さんがどんな思いで生きてきたか分かってたら、
 あんなこと簡単に言えないでしょ!
 そっとして、前向きに、生きれるように応援するべきでしょ!!」
「耕平君。」と日垣。
「すいません。
 ・・・何とか言えよ。」
「・・・」
「何で黙ってんだよ!なあ!」
「お兄さんに言っても仕方ない。」と日垣。
「・・・すいません。」
「警察に連絡しよう。」と日垣。
「はい。
 もう帰って。」
耕平が洋貴にそう言った時、響子が帰ってきた。

「・・・ただいま。」
「どこ行ってたの!?」と耕平。
「あ・・ごめん。
 ・・・お話したいことがあります。」
「ああ。何でしょう?」と日垣。
「ねえ何?ねえ何!?話って。
 みんなどんだけ心配したと思ってんの?
 もう少しで捜索願出すとこだったんだよ!
 どこ行ってたの!」と耕平。
「・・・亜季のところよ。」
「・・・」
「・・・亜季が、死んだところに行ってきました。」
「・・・」
「亜季が、殺されたところに行ってきました。」

「15年ぶりに、家に帰りました。
 私たち、家族が、暮らしてた、家です。
 12時半になるのを待って、出発しました。
 あの日の亜季と、同じ時間に、同じ道、行くことにしました。
 小学校の、チャイムの音が聞こえてきました。
 亜季の友達は、みんなどうしてるのかな?
 もう亜季のこと忘れちゃったかな。
 怖い思い出なのかな?
 そんなこと思いながら、橋渡ると、
 角にクリーニング屋さんがあって、道が・・2つに分かれてます。
 あの日亜季が行こうとしていた公園はそのどっちからでも行けて。
 もともと亜季はお地蔵さんのある道を、通っていたんですけど・・
 あの日は郵便ポストの道を・・行きました。
 お地蔵さんの道は車が多いから、郵便ポストの道を通りなさいって
 私が・・私が教えたからです。
 亜季はその道の途中で・・・金槌を持った少年に会いました。
 大きな、モクレンの木が立っていて、
 ヒグラシが鳴いていました。
 ・・・そこに、私の何か。何か・・・
 何か、人生の・・・大きな、落とし穴が見えました。
 あれから、15年経って、今の私は、人から見たら、
 ずいぶんと落ち着いているように見えるかもしれません。
 でも・・・本当は違うんです。
 私・・・みんな・・・
 私と同じ目に遭えばいいのにと思って、
 ずっと、生きてきました。
 優しくされると、あなたに何が分かるの?って思いました。
 子供連れた母親見ると、疎ましく思いました。
 ・・・前向きに生きようって言われると、
 死にたくなりました。
 ごめんなさい。私はずっと、そういう人間です。
 あー、駄目だ駄目だ。人を愛そう。前向きに、なろう。
 そう思った5分後に、みんな死ねばいいのにと思ってました。
 ごめんなさい。
 ・・・母親から子供取ったら、母親じゃなくなるんじゃなくて・・・
 人じゃなくなるのかもしれません。
 森の中歩きながら、今日渡しはこのまま死ぬんだろうって、
 人事みたいに思っていました。
 森の向こうで、地面が、青く光ってるのが見えて・・・
 ああ!あれか。あれか、あそこで・・・
 あそこで亜季はって思ったら、私走りだしてました。
 あー、ごめんね亜季。ごめんね亜季。
 ずっと来なくて、ごめんね。
 待ってたね、ずっと、たくさん待ってたねって。
 そこで、亜季の夢見たら・・・消えていこうって思いました。
 でも・・・夢に出てきたのは・・・
 あの少年でした。
 私、亜季が何したの?亜季がね、亜季がどんな悪いことしたの?って
 聞いたけど、少年は何も、答えてくれなくて、
 ただ私を見返してました。
 そのとき、気づきました。 
 あぁ!この子・・・この子と私、同じ人間だって。
 人やめてしまった人だって。
 ああ、目覚まさなくちゃって思いました。
 このまま死んだら亜季が悲しむ。亜季に嫌われる。
 そう思えたら・・・初めて・・生きようかなって思いました。
 亜季の分まで・・生きようかなって。
 ・・・目覚ますと、湖の水で何度も何度も、顔洗いました。
 ・・・昔、亜季が・・殺された時、いろんな人が、いろんな事、
 言いました。
 時代のこととか、教育のこととか、何か、少年の、心の闇だとか、
 少年法だとか。
 理由を、解明すべきだとかいって、いろんな事を、言いました。
 何を言っても今更時間は戻らないって言いました。
 私、何言ってるか、分かりませんでした。
 分からないから。何だかよく分からないから、
 私が、私がほっといたから亜季は・・ 
 亜季は死んだんだって思うようにしました。
 私が道変えたから、私がスカートはかせたから、
 亜季は死んだんだって。
 そうやって・・・少年のことは、考えずに・・きました。
 だけど・・・だけど・・
 そうじゃないの。
 そうじゃないの。
 私は誰かじゃないから。
 私は・・・私は新聞の記者の人じゃないから。
 私は、偉い、大学の、先生じゃないから。
 私は・・ただの母親だから、理由なんかどうでもいいの。
 私は、私はただのお母さんだから、
 私が言いたいことは、一つしかないの。
 私が言いたいことは、ずーっと、一つしかないの。ないの。
 ・・・あ・・・亜季を返してって。
 亜季を返してって。
 亜季を返せって。
 ・・・私が、言いたいことは・・一つしかなかったの。」
「・・・」
「私・・・あの少年に会いに行きます。
 会って、亜季、返してもらいます。」
「返してもらうってさ・・。」と耕平。
「耕平。今までありがとう。
 お母さんのことずっと、心配してくれてホント・・ありがとう。」
「・・・」
「お世話になりました。
 今日まで・・今日まで良くしてくださったこと本当に、
 何てお礼を言っていいか。」
「響子さん、待って。
 ここを出ていくんですか?」と日垣。
「これ以上、ご迷惑を掛けてしまいます。」
「迷惑って。あなた何をしようとしてんですか?」
「由佳さん。本当に、ありがとう。
 涼太君、元気に育ててあげて。」
「お母さん・・・。」
「ねえ何?ねえ何!?意味分かんないよ!」と耕平。
「本当に、本当にありがとうございました。
 洋貴、行こうか。」
洋貴が頷く。
「・・・お世話になりました。
 僕が母と暮らします。」
洋貴は日垣家の人々にそう言い、頭を深く下げた。

『ふかみ』
「お父さん嫌がるかな。何を今更って。」
明るい声で話す響子。
「いいんじゃない?」と洋貴。
「何だか、かび臭いね。」
「今から掃除するよ。」
「食事は、交代制にしよっか。」
「作ってくれるんじゃないの?」
「いい年して何言ってんのよ。」
「え!?そのために引き取ったんですけど。」
「へへ。」
「何?」
「照れるね。」
「バカじゃないの?」
笑いあう二人。

洋貴と響子が荷物を整理していると誰かが来た。
応対に出た洋貴母子の前に立っていたのは隆美…。

介護施設
いつの間にか眠ってしまった双葉。
と、誰かが部屋に入って来た。
眠りから覚めようとする双葉の前に、文哉が…。
「・・・お兄ちゃん?」
「うん。双葉。」
「・・・お兄ちゃん!!」
「双葉。お兄ちゃんと一緒に行こうか。」
「・・・」


響子が洋貴に肩もみさせたのは、まだ現実と向き合うのが怖かったから。
でも洋貴に背中を押され、悲しい過去に向きあった響子は、
本当の気持ちを家族に話し始めました。

「優しくされると、あなたに何が分かるの?って思いました。」
これは日垣のこと。
「子供連れた母親見ると、疎ましく思いました。」
これは由佳のこと。
「前向きに生きようって言われると、死にたくなりました。」
これは耕平のこと。

同じ屋根の下、響子のことを気遣いながら一緒に暮らしてきた優しい人たち。
でも響子の苦しみは深まるばかりだった。

ずっと母のそばにいて母を支えてきた耕平。
一緒に暮らし、嫁もいて、孫もいて。
自分がつくってきた幸せを響子に否定されてしまい
きっと悲しかったでしょうね。
彼は立ち直れるのだろうか・・・。

「母親から子供取ったら、母親じゃなくなるんじゃなくて・・・
 人じゃなくなるのかもしれません」
人じゃない状態だった響子は、今の自分は殺人犯と一緒だと気づき、
戻ってきました。
響子は、洋貴や深見達彦と同じように、文哉を殺す覚悟をしているのでしょう。
憎しみの感情がどう変化していくのか、見ごたえありそう。

大竹しのぶさんはやっぱり素晴らしい女優さんです。
声の出し方、あふれ出る涙、表情に見入ってしまった。

響子の話を聞きながら涙する洋貴。
この時の瑛太さんも素晴らしかったです。


一生懸命家族を守ってきたのは隆美も同じ。
赤ん坊だった双葉にぎゅーっと手を握り返された時、母性に目覚め
家族を愛してきた。でも文哉は一度も隆美の手を握らなかった。
それは、実の母親への思いからなのか・・・。

隆美も被害者と向き合おうと、大きく一歩踏み出しました。
『ふかみ』にやってきた隆美の表情に何だか胸が痛くなりました。


なぜ文哉は亜季を殺してしまったのか。
亜季が殺されたのは、公園に行く途中?
回想では凧揚げをしている亜季に、金槌を隠し持った少年が
近づくようなシーンがあったけれど。

文哉が紗歩を脅した時のセリフ、
「そうです。忘れないでください。
 もし忘れたら、夜のところに置いていくから。」
夜のところ、という表現が気になります。
第4話の回想シーンでは
「お兄ちゃんと双葉は、同じだよ。
 夜を見たんだ。」
「夜?」
「同じ夜を見たんだ。」
というシーンがありました。
夜は何を意味するのでしょう。
死・・・心の闇・・・孤独・・・。


東雪絵は双葉、文哉の実の母ではと想像していましたが、
公式HPによると、雪絵役を演じるのは酒井若菜さん。
文哉、29歳。双葉、25歳。雪絵は30歳ぐらい。
施設で人気があったという文哉。
東雪絵はそんな文哉を愛し、支えているのでしょうか。


五月はずいぶん積極的に洋貴に近づいています。
ネックレスを忘れたのもわざとのような気がします。
洋貴に恋をした、本当にそれが理由なのか?

五月の母親を殺した犯人は自殺。
それが文哉・双葉の母親だとしたら?

双葉と五月は同い年なので、二人が1歳の時、双葉たちの母親が
五月の母親を殺して自殺、とか。
湖に人が浮かぶあの絵は、もしかしたら亜季ではなく母親なのかも。
そう考えると、駿輔が双葉に実の母親は死んだと答えた時、
少し戸惑ったのにも納得できる。

・・・と色々妄想しています。


きちんと揃えられた五月の白いサンダル、脱ぎっぱなしの双葉のスニーカー。
五月の登場で、双葉が何を諦めて生きてきたのがはっきりわかります。
双葉のスニーカーを微笑みながら揃える洋貴。
セリフがないこういうシーンが素敵です。

双葉のスニーカーのアップは別のシーンでもありました。
洋貴の父親は亡くなった亜季のために、毎年靴を買っていた。
いつか洋貴は双葉に靴をプレゼントするのかな。



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気になるセリフ:
第一話の回想シーン
「フランダースの犬って、何のためにあるの?
 ネロはさ、お父さんもお母さんもいなくて、いじめられたり、
 騙されたりして。最後には死んじゃうのよ。犬も一緒に。
 何のためにこんな悲しいお話があるの?」
「何のためって?」
「ネロは、生まれない方が良かったんじゃない?
 お兄ちゃん、どう思う?」

第4話(響子と洋貴)
「あのご主人、町で、誘致した時計工場の課長さんだったから、
 どこでも目立ってて。」
「エリートっぽい?」
「うん。感じだったから。
 お父さんの気安いのが、嫌だったみたい。
 大学は?とか、 年収は?とか。
 お父さんの、スナックの、開店1周年記念の、
 安物の腕時計見て、がんばってくださいよって、肩叩いて。
 お父さんヘラヘラ笑ってたけどね。」
「・・・」
「あの時、あの子もそういう顔してた。」
「・・・はっ。文哉?」
「・・・」
「何でだろう。自分の父親に。」

第4話(回想シーン)
「お兄ちゃんと双葉は、同じだよ。
 夜を見たんだ。」
「夜?」
「同じ夜を見たんだ。」
「・・・」

第5話(五月)
「私も手伝っていいですか?
 私の母を殺した犯人は、自殺したんですよ。
 私も父も、なんか、気持ちの持っていきようがなくて。」

第5話(文哉)
「そうです。忘れないでください。
 もし忘れたら、夜のところに置いていくから。」


キャスト

深見 洋貴(瑛太)
遠山(三崎)双葉(満島ひかり)
雨宮 健二(風間俊介)※三崎文哉
日垣(深見)耕平(田中圭)
草間 真岐(佐藤江梨子)
遠山(三崎)灯里(福田麻由子)
日垣 由佳(村川絵梨)
藤村 五月(倉科カナ)
臼井 紗歩(安藤サクラ)

深見 達彦(柄本明)

日垣 誠次(段田安則)
草間 五郎(小野武彦)

遠山(三崎)隆美(風吹ジュン)
三崎 駿輔(時任三郎)
野本(深見)響子(大竹しのぶ)



スタッフ

脚本
坂元裕二
音楽
辻井伸行
主題歌
小田和正「東京の空」
プロデュース
石井浩二
演出
永山耕三
宮本理江子
並木道子
制作
フジテレビドラマ制作センター

公式HP



瑛太さんの主な出演作品




満島ひかりさんの主な出演作品




この記事へのコメント
いつもお世話になっております

JINに引き続きこのドラマもレビュー拝見させて頂いております

私には二人の子供がいます…
娘と息子一人ずつなので、なんといいますか… どちらにも感情移入してしまいます
が!!!やはり被害者目線が圧倒的に強いですがf^_^;

今後もとても楽しみですね♪

今回コメントさせて頂いたのは、ちーずさんの感想部分ですが(毎回これが楽しみで☆)ひとつ気付いたのは、五月の母親殺害犯人が〜の下りですが3話で「私も5年前に母を殺されました。
犯人の通り魔は、19歳の少年で、今も民事裁判の最中なんです。
そうでもしなければ、調書だって見れませんからね。
おかしいですよ。加害者の人権なんて。」と発言しています
これを踏まえての予想でしょうか?
そうは言っても実は違って… と予想されてらしたら、検討違いなコメントで申し訳ございませんm(__)m
Posted by さぼさぼ at 2011年08月08日 02:01
さぼさぼさん、おはようございます。
コメントありがとうございます!

五月の母親を殺害したのは5年前、19歳の少年。
すっかり抜け落ちていました。
となると、やはり純粋に洋貴に惹かれているのと、
あとは未成年の犯罪者を許せない、という気持ちが
強いのかもしれませんね。

また何か気づかれましたらコメントお待ちしていますね!
よろしくお願いします♪
Posted by ちーず at 2011年08月08日 08:41
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