2012年01月14日

最後から二番目の恋 第1話

『寂しくない大人なんていない』

「いつか、穏やかで心に余裕があるような、
 素敵なおとなになりたいと思っていた。
 でも、年はとっくに大人になっているはずなのに、
 思っていたのとは全然違っていて。

 大人になれば、寂しく思ったりすることなんて、
 なくなると思っていたのに、
 全くそんなことはなかった。

 でもそれは、私だけではなく、
 みんな同じなんだと思う。
 不安だし、寂しいけれど、
 それを口にはせず、明るく笑い飛ばそうとしていた。
 それが、大人になるということなのかもしれない。
 
 でも・・・
 
 寂しくない、大人なんているだろうか?
 
 不幸せだから寂しいのではなく、
 寂しいから、不幸せなわけでもない。

 人は一人で生まれてきて、
 やがて一人で死んでいく。」


「寂しくない大人なんていないよ。」
仕事を終え、買い物を済ませ、ふと呟く和平。

「つまり、人生ってやつは、
 もともと寂しいものなのかもしれない。」


吉野千明(小泉今日子)は、JMTテレビでドラマのプロデュースを
手がける45歳の独身女性。
千明は、がむしゃらに仕事をしていくつかのドラマを世に送り出し、
プライベートでは人並み以上に恋愛もしてきた。
しかし最近、いつまでも現場にいられると思うな、と上司から釘を刺され、
今度作るドラマが最後の作品になりそうだった。
恋愛も随分ご無沙汰で、いまや女友だちとの話題は、専ら健康や老後のことばかりだった。

長倉和平(中井貴一)は、鎌倉市役所の観光推進課で課長を務める50歳の独身男性。
和平は、両親を早くに亡くしたため、4人の弟妹の親代わりを務めてきた。
現在は、双子の弟妹、真平(坂口憲二)と万理子(内田有紀)、
死別した妻との間に生まれた11歳になる娘・えりな(白本彩奈)と暮らしている。

真平は、自宅の1階を改装したカフェの店長。
万理子は、繊細な心の持ち主ゆえ、何をやっても長続きしないフリーターだ。
長女の典子(飯島直子)は、高校時代の体育教師・水谷広行(浅野和之)と
結婚して家を出たものの、毎日のように実家に入り浸っていた。

千明は、美人脚本家として人気の栗山ハルカ(益若つばさ)と組んで
連続ドラマを作るよう命じられる。
だが、締め切りを守らない上に全く面白くない本を書いてきたハルカを呼び出す。
「まずあの・・お疲れ様でした。」
「ありがとうございます!」とハルカ。
「え〜。とりあえず全体的な感想から言わせてもらっていいかな。」
「はい!お願いします♪」
「えっと・・・全体的によくかけてるっていうか、テンポがいいっていうか。
 ・・・うん。そんな感じがしました。」
「・・・」
「・・・ごめん。やっぱ調子出ないな。自分流にやらせてもらうね。」
「はい。」
「うん。えっとね、まったく笑えないし、まったく泣けなかった。
 何にもない!」
「・・・」
「それとさ、これ基本的なことなんだけど、原稿待たせすぎ!
 中にはね、遅いのがカッコイイ伝説みたいになってる先輩がいてさ
 そういうのいいなって思ってるかもしれないけど
 遅くていいことなんて一つもないわけ!
 多くの人が無駄な時間を使うし、効率は悪くなるし、
 準備期間は短くなるしでさ。
 何一つとしていいことなんてないわけ!遅くて!」
「・・・」
「でもね、遅くてもさあ、いやいや参りましたよっていうのが来ればさ、
 そりゃ許すよ。許しちゃうよ。
 だって結局のところ私たち、ドラマ作るのが好きでやってるんだから
 いい台本が来たらそりゃ許すわけ。
 でもね、遅くてつまんないのなんてホントに最低!!
 まだ早くてつまんない方がいいよ。考える時間があるからね。みんなで。
 これはね、ホントに、最低の台本なんです!
 職業的雰囲気だけ、脚本家になんないでね、先に!
 分かる!?・・・分かんないか!
 私はさ・・私はホントにね、ドラマが好きでやってるわけ”!
 誇り持ってるしさ、テレビドラマに!
 それをね、恋愛ドラマなんてこんなもんでしょみたいな本が来るとさ、
 もうホントに腹が立つわけ!
 命削って書いてんのかって話よ!ホントに!!
 悔しかったらさ!!
 ・・・悔しかったらさ・・・
 ううっ!!」

激しくダメ出しをしているうちに、めまいや吐き気など、
病院に運ばれてしまう。
妊娠ではなく、更年期特有の症状との診断。

同い年の独身仲間、荒木啓子(森口博子)と水野祥子(渡辺真起子)は、
そんな千明をねぎらう。
「私さ、よく覚えてないんだけどさ、その脚本家に向かって吐いたらしいからね。」
「それ、嫌がらせ?」と啓子。
「いやいやいや。そんなことないけど。
 あ、でもひょっとしたらね。無意識にね。
 もうホント腹立ってたからな、あの女。」
「でもわかるね。何かさ、自分が部屋入ってくと、空気変わる感じ?」と祥子。
「でしょう?」
「しょうがないんじゃない?
 だって私達だって若いころさ、45ぐらいの先輩イヤだったもん。」と啓子。
「死ね、ばばぁ。古いんだよてめえ、みたいなね。
 言ってたよね、裏でね。」と千明。
「言った。」「言ったね、うん。」
「言われてるんだろうね、私達。」
「・・・」
「・・・」
「で、仕事は?どうなのよ、その後。」と祥子。
「進んでますよ。私抜きで順調みたいですよ。
 映研みたいなノリで楽しく台本作ってまーすって若い子が報告してきやがった。」
「ああ。」
「私なんか、いなくていいわけ?
 ていうか、いない方がいいわけ?私なんか。」
「ごめん。あまりにも自分に返ってくるものが多いからさ、
 答えたくない。」と啓子。
「私も。」と祥子。
「そうだな。じゃあさ、違う話しようよ。
 違う話ね。
 えっとさ・・・」
「あ、あの話はやめようね。昔話。
 あの時こうだった、ああだったとか、あれ虚しいからさ。」と啓子。
「分かった。」
「あ、あの話もなしね。
 ここのお店のタカシ君がイケてるとか。もうそういうのなし!」と啓子。
「えー。いいじゃん別に。ねえ。」
「後でね、虚しくなるよ。
 どぼじでどぼじで。だいちゃんの涙。」
「古っ!」
「昭和の話もやめましょうね、古いから。」
「そうね。」と祥子。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「私さ、思ったんだよね。」と千明。
「うん?」
「倒れてさ、病院に運ばれて、病室で、思ったんだよね。」
「何を?」
「私って、家族いないんだなって。
 田舎にはさ、親もきょうだいもいるけどさ。
 家族つくらなかったんだなー私って。
 そうつくづく思ったんだよね。」
「何で連絡してこなかったのよ。」と啓子。
「そうだよ。」と祥子。
「だってほら、病気じゃないしさ。
 でね、思ったわけ。」
「うん?」
「鎌倉の古民家で、、3人で暮らすっていう話。」
「あー。」
「調べたんだけどさ、私暇だったから。
 ああいう古民家ってさ、割と安く手に入るみたいよ。」
「へ〜。」
「それにほら、私達、昭和の人間じゃない?
 だから落ち着くんだって。
 昔住んでた家を思い出すみたいな感じで。」
「あー、なるほどね〜!」
「でもでも、いい物件っていうのはすぐなくなっちゃうって書いてあったのね。
 だから私さ、見てくる!」
「え?」
「だってほら、いいのがあったらさ、先に住んじゃってもいいわけじゃない。
 だって鎌倉からなんか全然通えるでしょ?
 だからさ、ね!見てくる見てくる。
 ね!そうする、そうする。
 うん。そうしよ、そうしよ。うん。」
「・・・」
「何よ。どうかした?」
「やけに積極的だね、千明。」と啓子。
「そうだね。
 大体、一番現役オーラ出してたのにね。」と祥子。
「まあさ。ちょっとこう、人生考えちゃったりしてるわけですよ、
 ここんとこね。」
「へ〜。あんたが?」と祥子。
「何かあった?」と啓子。
「あのさ、まあ、分かんないんですけどね。」
「うん?」
「何が分かんないの?」
「いやぁ・・あのさ・・あの・・ね。」
「うん?」
「あのう・・ないんだよね。」
「何が?」
「ないわけ。」
「何がよ。」
「生理!?」と啓子。
「え!?・・・終わったってこと!?
 え!?閉経!?」と祥子。
「しーーっ!」と啓子。
「閉じたの!?」
「閉じたとかいう言い方やめてよ。
 まだ分かんないんだから。分かんないんだよ。
 だけど、そうかもしんない。
 分かんないの。分かんないの。」
「・・・あ、私まだ。」と祥子。
「私もある。」と啓子。
「まだ分かんないって言ってんじゃん!
 分かんないんだから、まだ!
 分かんないんだって・・・。」泣き出す千明。
「ごめんごめん。」
「鎌倉行ってくるから。」
「あ、行こう!」
「うん、行ってこい行ってこい!」
「だって3人で生きてくって・・・」

「失礼しまーす。 
 ・・・失礼しました。」
空気を読み立ち去るタカシ。

「タカシ君のバカーーっ!!」
「分かった分かった。3人で生きていこうね〜!」

あくる日、千明は、事前に調べておいた情報をもとに、鎌倉を訪れる。

その頃、和平は、クレーマー・一条(織本順吉)の対応をしていた。
今度のクレームは、勝手に他人の家を覗いたり写真を撮ったりしている
女がいる、というものだった。

和平は、撮影の自粛を呼びかける立て看板を作って一条の家を訪れた。
そのとき一条は、携帯電話のカメラで撮影したという証拠写真を和平に見せた。
そこに映っていたのは、千明!
一条はお礼にと、グラビア誌を和平に渡した。

写真を撮ったりしながら散策を楽しみ、目的の古民家にたどりついた千明は、
売りに出されているその家の隣家が古民家を改装したカフェだと知る。
そこは、真平が店長をしている店『ながくら』だった。

「すいません。」
「いらっしゃい。」と真平。
「やってます?」
「はい。あ、看板!
 ごめんなさい。どうぞ。好きなとこ座ってください。」
「はい。」

「外でいいんですか?」
「ええ、はい。」
「何にします?」
「えっと。ソイラテなんてあったりします?」
「あったりします。」
「じゃあそれで。」
「ちょっと待ってくださいね。」
「はい。」

「春んち行ってくる。」とえりな。
「おう。気をつけてね。」と真平。
「うん!」

「美少女ですね。お子さんですか?」
「え?ああ、いやいや。兄貴の子ですよ。
 俺は、まだ独身。
 この世界の女性たちを、もっとたくさん幸せにしなくちゃならないんで。」
「へー、そうなんだ。」
「そうなんです。
 何かもし俺に出来ることあったらしますよ、何でも。」
「何でも〜?」
「うん。何でも。」
「ウフフ。」
「名前は?」
「吉野です。」
「いやいや、下の名前。」
「あ、千明、です。」
「何でも言って。千明。」
「フフフ。」

千明の携帯がなる。
「もしもし?」
「ねえ、決めるって何?あれ本気だったの?
 ウソ!無理無理無理!
 だって私マンション更新したばっかりだもん。」と啓子。
「ちょっと何それ。何それ!」
「ごめん。打ち合わせ入るから。
 またご飯行こうね!じゃあね!」
「ちょっと待っ、・・・」
電話は切れてしまう。
「信じらんない!」

続いて、祥子からの電話。
「もしもし。祥子ちゃん?」
「ごめん。あれ本気だったんだ〜。
 いや、この間はさ、言い出しにくかったんだけど、
 今ちょっと、男と一緒に暮らすかな、みたいになってて。」
電話を切る千明。
「サイテー!」

「お待たせしました。」
「お待たせされました〜。」
「ハハハ。面白いね、千明。」
「ウフフ。」
「いいね!可愛くて面白いなんて。
 はい。」
「・・・いやいやいや・・あのう、あれですね。
 素敵なお店ですね。」
「でしょ?」
「どうですか?住み心地は。」
「え?ああ、ここの?」
「うん。あのう、古民家。」
「ああ、俺は、生まれた時からここに住んでるからね。
 古民家っていうか、住んでる家が古くなっただけみたいな話で。」
「そっか・・そっか、そうだよね。へえー。」
「あ、隣!見に来たんだ。住むの?」
「まだそこまではあれなんだけど、
 でもちょっと素敵だなと思ったりしてて。」
「何だ。おいでよ千明。お隣さんになろうよ。楽しいじゃん。ね!」
「ウフ。そうですかね。」
「俺、千明が喜んでくれることなら何でもするから。」
「・・・でもあのう、一緒に住もうって言ってた友達に
 裏切られちゃって、ちょっとトホホって感じなんですよ。」
「何だ。そうなんだ。」

さわやかで自由奔放な雰囲気を持つ真平にときめきながら『ながくら』を
後にした千明は、海岸に立ち寄る。
そこで千明は、部下たちと海岸を掃除していた和平と出会う。

「わぁ、綺麗!さくら貝だ。カワイイ!」
「それ、どかしたら出てきたんです。」と和平。
「ああ、そうなんですか。」
「はい。」
「へ〜!綺麗ですね。
 私、今東京なんですけど、生まれが長野なので、
 こういう綺麗な貝拾うみたいの憧れちゃうんですよね。」
「そうですか。」
「はい。」
「結構綺麗なのありますよ。」
「へ〜!
 あ、ほんとだ。あった!」
「ありました?」
「はい。」
「良かった。」
「ふーん。いいところですね、鎌倉。」
「ああ、ありがとうございます!」
「市役所の方なんですか?」
「ああ!ええ。そうです。」
「へ〜。こんなこともなさるんですね。」
「何でも屋です。もう、鎌倉のためになることなら何でも。」
「大変なお仕事ですね。」
「いや、結構好きでやってます。ハハ。」
「こういう、ポスター作ったりも?」
「ああ、それあのう、苦情いただいて作ったんですけどね。
 最近多いんですよ。何て言うんですかね。
 独身の女性で、中年になって、男とか結婚とか諦めて、
 エコだわ、ロハスだわなんていうんで、
 鎌倉の古民家に、引っ越してくるのが。ヘヘヘ。
 それで、人生変わるんじゃないかって思ってんですかね。
 何を考えてんだか。
 そんなに、甘いもんじゃないじゃないですか、人生って。
 所詮、雑誌に、乗せられてるだけで。」
「そういう人ばっかりじゃないと思いますけど。」
「いやいやいや、実際多いんですよ、そういうおばさんのトラブル。」
「ずいぶん偏見があるんですね、中年の女性に。しかも独身の。」
「いや、別にそういうわけじゃ。あ!
 あ、ちょっと!
 今置いちゃいました?ここに。」
「はい。」
「チッ。もう。交ざっちゃったよ、もう。」
「だって集めてるんじゃないんですか?」
「余計なことをしないでください。」
「・・多分これ、この辺。」
「いや、もういいです。」
「・・すいませんでした。
 何か落ちましたよ。はい。」落ちたグラビア誌を拾う千明。
「ああ、どうもすいません。
 あ!これ!これ!ちょっと待ってください!
 引っ張らないで!引っ張るな!
 これ私んじゃないんです!」
「いいですよ。私だって小娘じゃありませんし。おばさんですし!
 気持ち分かりますから。」
「だってこれ私のじゃない!」
「仕事中に・・」
「何で!何で見るんですか!?」
「・・・」
「あれ?どこかでお会いしましたっけ?」
「・・・ハッハハ!会ったことないと思いますけど!」
「いえいえ、違うんです。いやいや今ちょっとあのう、
 安っぽいナンパ男みたいになっちゃいましたけど、
 違うんです!」
「見苦しいですよ!スケベなおっさんの言い訳!」
「・・・スケベなおっさん!?
 チッ。」

千明が立ち去ったあと、グラビア誌を開く和平。
それを娘のえりなに見られてしまった。
軽蔑の眼差しで父を見つめ、立ち去るえりな。
「・・・最悪だ。もう最悪!もうやだ!」

ナガクラ
「おかえり。」と真平。
「ただいま〜。あー寒い!表めっちゃ寒い。」と和平。
「いいのあった?」
「えー。まあまあかね。」
「あ、兄貴。」
「え?」
「今日暇なんだろ?店手伝ってよ。」
「イヤだよ。何で休みの日まで観光客のために、
 働かなきゃいけないんだ。
 嫌だ。絶対に嫌だ。」
文句を言いながら、拾ってきたさくら貝をビンに移し替えす和平。
「はいはい、分かりました。」
「・・・嫌味で言ってんだから素直に聞くなよ、お前は。」
「素直だから。イヒヒヒヒ。」

「ただいま。」とえりな。
「あれ?えりな、どこ行ってたんだ?」
「コンビニ。やらしい本は買ったりしてません。」
「・・・何度言ったら分かるんだって。」
「はい、真兄ちゃん。」
「サンキュー。あ、えりな。やっぱりその服似合うね。」
「ありがと!」
「あれれれ、ホントだ。ホントだ!
 正面向いてよ、ねえ。」と和平。
えりな、無視!
「あーあーあー。思春期。」と真平。
「思春期ね。
 わ!びっくりした!
 おはようぐらい言えよお前!」
「あ、おはようございます。お世話になっております。」と万理子。
「どっち?・・うん!」
真平は万理子を見て、牛乳とオレンジジュースのどちらが良いか察する。
「万里子。お前また仕事辞めたんだってな。吉永さんとこ。」
「うん。辞めてないよ。」
「うん。辞めてない。
 どっちなんだよ!」
「辞めさせられました。」
「・・・何で?」
「店が、陰気になるので。」
「なるほど。」
「その話題、結構古いです。
 もう新しい仕事に移りました。」
「そうなのかよ。今度は大丈夫そうか?」
「そこも昨日辞めたというか。
 まあ、やめてほしそうな空気を察して辞めました。」
「辞めたんじゃねーかよ。」

「おっはよ〜!」と典子(飯島直子)。
「あれ?おはよう。」と真平。
「また来たよ。
 何でそう毎日来んだよ。
 お前大丈夫なのか?家は。」
「いいでしょ、別にいくら帰ってきたって。
 実家なんだから。うるっさいなー。」
「良くないよ、ちっとも!」
「いいの!あ、これお餅。」
「ああ、サンキュー。」と真平。
「あー、真平。お腹空いた〜。」
「はいよ!」
「腹減らして来んな。飯ぐらい自分ちで食ってこい!」と和平。
「いいでしょ。人の作ったものが食べたいのよ。
 えりなは?」
「部屋だよ。」
「思春期だもんね。主に部屋だよね。」
「ふっ。まあな。」

「大きい兄ちゃんがエロ本を読んでるところに遭遇して以来
 ろくに口も利いてもらえないみたい。」と万理子。
「何でそういう時だけ長く喋るんだ?お前は。」

「最低だね、お兄ちゃん。」と典子。
「何がだよ!だから、」
「ま、しょうがないか。男だもんね。
 独身長いしね。うん、分かるよ。」
「分からなくていいよ。」
「鎌倉は健全な街だからね。
 あれだよね。遊ぶとことかないしね。
 そのう、ほら、なんていうの。そういう時、
 どこ行くの?横浜?」
「何の話してんだ!うるさいよ、お前は。」
「何ようるさいうるさいって。
 一番人に文句ばっか言ってうるさいの自分じゃない。ねえ!」
「おいおいおいおい。
 俺はな、好きこのんでこうなったわけじゃないぞ。
 父さんと母さんが死んで、それから、お前達の親代わりに
 ならなきゃいけなかったんだぞ!」
「はいはいはいはい。」と真平と典子。
「お前らがきちっとしてれば、」
「はいはいはいはい。
 感謝してま〜す。」と真平と典子。
「感謝してんのか?お前ら。」

「典姉、写真いい?」と万理子。
「え?いいよ。ね、染めたの分かる?」
「分からない。いくよ〜。
 ・・・いいですやっぱり。」
「え?何それ。どういう意味?」
「無理でした。」
「何よ無理って。どういうこと?
 ちょっと撮ってよ、ちゃんと。ねえ!」

「ごめんください。」
「はーい。」
「すみません。あのう、私、隣に引っ越してまいりました、
 吉野千明と申します。
 つまらないものなんですけどお近づきの印にと思って。」
「すいません。」

「それはご丁寧に。
 私、長倉と、・・・。」と和平。
「・・・」

「どうしたの?知り合い?」と典子。
「・・いや別に。」

「フフフ。よろしくお願いいたします。」
「よろしくお願いします。
 まあまあまあ。せっかくなんで、どうぞどうぞ。」
「ああ、いえいえ。」
「お茶でも飲んでってください。」
「いえ、ホントにご挨拶だけ。」

「あ!千明。え?引っ越してきたの?」と真平。

「何?知り合い?」と典子。
「うん。友達。ね!」
「うん・・そんな感じかな。」と千明。
「はぁ〜。なるほど。」と和平。
「まあまあまあ。座ってください。
 お茶でも飲んでってください。
 どうぞどうぞ。」と典子。

「何ですか?なるほどって。」と千明。
「いや別に。」と和平。
「そうですか。」
「ええ。」

「典姉、また来たの?」とえりな。
「うれしいでしょ?」

千明の写真を撮る万理子。
「もう少し笑って。
 うん。ありがとう。」
「・・いえいえ。」

「で!和平兄ちゃんは奥さんを亡くして以来、独身男。
 えりなは 一人娘。
 私は嫁にいって。
 あっ、これが 結構すごいんだけどさ私、女子校のときに、高校の先生と
 できちゃって。で、バレちゃって学校に!もう大騒ぎ!
 で、近くじゃまずいからって、横須賀のホテルとかでデートしてたんだけど
 見つかっちゃって!」と典子。
「えりなの前でやめろ!おい!」と和平。
「何でよ。えりなだって知ってるわよ。ね!」
「うん。有名だから。
 それに別に全然やらしいと思わない。誰かに比べたら。」
「へえー。」と千明。
「で、この2人は双子。」
「えっ!? 双子!?」
「性格は全然似てないんだけどね。
 あっ、双子だからさ、何かね、テレパシーみたいの通じ合ってるから、
 怖いよ〜。エヘヘ。
 まっ、以上かな。」
「長々とどうもありがとうございました。」
「いえいえ。」
「自分の説明が一番長いんだ。
 俺のはあっという間に終わってんじゃないか。」と和平。
「で?」と典子。
「うん?で?」と千明。
「今度はあんたの話でしょ。」
「ああ、私?」
「うん。」

「へ〜!テレビ局か。ドラマね!すごいね〜!!」
「いえいえ、そんな。」
「いくつですか?」と万理子。
「え?あ、年?
 45です。」
「3つ下げるか。」
「何月生まれ?」と典子。
「3月です。」
「やった!私のほうが若い。学年も1個下だ。」
「四捨五入すると、50ですね。」と和平。
「四捨五入する必要あるんですか!?」
「自分が50だからじゃない?」と典子。
「あ〜アハハハ。あの、一緒にしないでくださいね。心外ですから。」
「一緒ですよ〜。いいですか?
 45と50。確かに5歳違いますよ。違いますね?
 でもあなたが20代の頃に、45歳の人と50歳の人って区別できました?
 もうそこまでいったら一緒だろと思ってませんでしたか?
 思ってたでしょ?でしょ?
 75歳の人と80歳の人も違うんですよ、5歳。
 今あなたがご覧になって、えーと、こちらが75歳、こちらが80って
 言い当てられます?
 無理でしょ?
 もう似たようなもんだと思ってますでしょ?思ってるでしょ?」
「何でそんな勝ち誇った顔してるんですか?」
「してませんよ、別に。」
「してますよ!」
「そうですか?」
「大体ね、全然違いますからね。45と50は。
 私の中では全然違うんです!
 そこには大きな壁があるわけです!
 だって、50なんてあり得ない〜!」
「はぁぁ!?
 自分が50になったらどうするんですか?」
「なりませんから!!」
「おい、聞いたか?みんな。
 なりませんからって言い切ったぜ!おい。
 年取らないってことだろ?」

「ごめんね〜。
 お兄ちゃん悪い人じゃないんだけどさ。
 色々あってこういう性格になっちゃったの。
 ホントごめん。」と典子。
「謝るな!」
「ねえねえ、ドラマってどんなの作ってんの?」
「うん、あ、でも何か言って知らないって言われると凹むんで言いません。」
「1個でいいから教えて。ね!」
「え?じゃあ、最近だと、あの、『モテキパラダイス』とか。」
「・・知らない。」
「でしょ。だから言ったのよね。」

「モテパラ作ったんですか?」とえりな。
「そうだよ。」
「そうなんだ。」
「えりな知ってんの?」と典子。
「うん。全部見た!」
「嬉しい。ありがとう!」
「そんなもんいつ見てたんだ?」と和平。
「そんなもんってご存知なんですか?」と千明。
「いいえ。でもタイトルがあんまりバカっぽかったんで。」
「バカっぽいって。だから50代とかダメなんだよね。」
「何がですか?」
「だって若い者の文化とか全然分かってないでしょ。」
「全然。知る必要ないじゃないですか。」
「すっごい若い子達に支持されたドラマですよ。」
「おばさんが頑張って、」
「千明!」
「え?」
ナイフとフォークでテーブルを叩くえりな。
「・・・」
「あの家で、ドラマのロケとか勘弁してくださいね。」
「そんなつもりありませんから!」
「そうですか。それは安心しました。どうも。」
「そうですね〜。」

「で?
 千明ちゃんは、真平ともう何だかそんな感じの仲なの?」
「はっ?」と千明。
「ううん。まだだよ。」と真平。
「ま・・まだ?」
「そうなんだ。」と典子。

食器の割れる音。
「イテっ!」と真平。
「おい!」
「大丈夫!?」
慌てる和平と典子。
その場で固まる万理子。
「ごめん。皿落としただけ。」
「何だもう、びっくりした。
 ちょっとちゃんと消毒して。
 ほうきほうき。」

家に戻った千明は友人に電話。
「もしもし。裏切り者1号?
 フフフ。 えっ?うんうん。だいたい終わった。
 疲れた〜!
 いやさ、家具がさ、もう全部合わなくなっちゃったからさ、
 全部売っ払っちゃって。ほんで、昭和アンティーク風にしてみましたよ。
 うん。そりゃいい感じですよ。
 えっ? 駄目駄目!当分入れてやんないからね。
 フフン。なんて嘘嘘嘘。うん。おいでよ。ねっ!
 うん、広い広い。うん、大丈夫大丈夫。
 うん!うん、分かった。はい。
 じゃあね。おやすみ〜。」

「もしもし。裏切り者2号?
 フフフ。うん?元気 元気。
 海?そりゃ、近いでしょうよ。
 嘘じゃないって。ちょっと待ってよ。
 ちょっと待ってね。
 いくよ〜。」
波の音。
「聞こえる?・・・波の音だよ。風の音じゃねえよ。
 聞こえないの?
 ああ、じゃあ裏切り者には聞こえないのかもね〜。
 フフフ。で?そっちはどうなの?彼と。
 ああ〜、もういいや。聞きたくないわ。
 あ、やっぱ聞きたいわ。うん。
 ああー。ホント〜。えー。」

千明の声は長倉家に丸聞こえ。
「でっかい声だな。おい、近所迷惑だよ。」と和平。

吉野家
「真平君でしょ?うん。そうそうそう。
 何かね、不思議な子なんだよね〜。
 ワイルドなのに、癒し系みたいな感じかな。
 ジュード・ロウじゃないな〜。
 うーん。どっちかっていうとブラピかな。
 あれ、違うかな?
 ああ!そんな感じそんな感じ。
 何かね〜、ちょっと救われてるんだよね。
 近くにいると思うと。
 ホントに。へへっ。
 そう、でもね、そのお兄さんっていうのがさ、
 もう何か嫌な感じなの。いちいち突っかかってきやがんの。
 もうね、最悪!
 うん?え?分かった分かった分かった。
 うんうん、じゃ、また連絡するから。
 うん、そっちもね。はい。うん、じゃあね。お休み〜。」

長倉家
「・・・別にこっち見てもいいよ。」と和平。
「いや。」
「フッフ。別に平気ですけど。何か?ブラッドピット。」
「ねえ、ブラッドピット。エヘヘ。」

吉野家
「もしもし?ああ、久しぶり。
 うん。そうそう。私さ、引っ越したんだよ。え?」

長倉家
「ねえ。」と真平。
「うん?」と和平。
「結構溜まったね。」
真平の手にはさくら貝の入った瓶。
「うん。」
「千明さんさ。」
「うん。」
「ちょっと、姉さんに似てない?」
「・・・は!?全然違うだろ、顔も性格も。
 なあ、万理?」
「似ていません。」と万理子。
「だよなぁ。冗談じゃないよ、お前。」
「そっかなぁ。なんとなく似てる気がするけどなぁ。」
「なーに。」
「おやすみなさい。」と万理子。
「おやすみ。」「おやすみ。」
「万理、風邪引くな。
 あのほら、俺が買った、」
「腹巻き、します。」
「ああ。」

さくら貝の瓶を見つめる和平。
「何の意味があるんだか。」
「あのさ、姉さんのことはもう、」
「俺のせいじゃない、だろ?」
「・・・うん。おやすみ。」
「おやすみ。お前もあったかくして寝ろ。」
「うん。」

「古民家、寒すぎ!」
コンビニでカイロを買い、家に戻る千明。

玄関を開けると、ネズミの鳴き声。
「・・・え!?きゃ、きゃ〜〜〜!!」

悲鳴を聞き、真平が駆けつける。
「どうしたの!?」
「ネ、ネ、ネ、ネズミが、こっちに・・」
「もう大丈夫!俺がいるから。」
「いやだってネズミだよ!」
「古い家だもん。仕方ないよ。
 慣れるってそのうち。」
「無理だってネズミなんか・・」
「じゃあ、朝まで一緒にいてあげるよ。」
「・・・」
「一緒に寝よっ。ずっと抱いててあげるから。
 そうすれば怖くないでしょ?」
「・・・え?それってさぁ・・それってあれですかね。」
「何?」
「うん?それってだから、すなわちさ・・
 あの・・するっていう・・
 いやいやいや、違うよね。ないない。違う違う!」
「違わないよ。」
「・・・」
「しようよ。千明がしたいなら。
 上がっていい?お邪魔しま〜す。」
「・・・」

キレやすくて厳しく部下に恐れられている千明。
でも子供を見つめる時の表情はとても優しい。

オヤジっぽいところがちょっと社員に煙たがられている和平。
家族にも言いたいことポンポンいうけど、本当は家族思いでとても優しそう。

ネットに自分の顔写真を乗せて、バナナを目印に男を誘い、
陰から何人来ているか数える万理子。不思議ちゃんだ〜。

典子は明るい主婦って感じだけど、自分の家では疎外感を感じていて
ついつい実家に来ちゃうのかなぁ。

「何か俺に出来ることある?
 どうせいつか死ぬならさ、ひとりでも多くの人を
 幸せにしたいなぁと思って。」
真平の使命は、女性を幸せにすること。でも結婚は無理らしい。
食器を割った時、和平達の不安そうな表情・・・。
最初はただの軽い男かと思ったけれど、もしかしたら彼は病気なのかも・・・。
だから周りの人を幸せにしようとしているのか?


岡田恵和さんの作品だから楽しみにしていましたが、期待通り!
主人公の職業柄、ドラマや脚本について描かれているのも楽しみです。

小泉今日子さんが演じる万里子の行動力が羨ましい〜!
単身鎌倉へ引越し、お隣の長倉家とはまるで昔からの知り合いのように
馴染んじゃってる。このシーンからテンポが良くなった!
中井貴一さん、飯島直子さん、内田有紀さん、坂口憲二さんの4人兄弟、
個性豊かで楽しいです。

中井貴一さん演じる和平が桜貝を集めているのも気になる。
Wikiで調べてみたら、桜貝ってお守りとされることもあるんだそうです。


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公式HP

【キャスト】

吉野千明
  小泉今日子
長倉和平
  中井貴一
長倉真平
  坂口憲二
長倉万理子
  内田有紀
AP三井さん
  久保田磨希
田所勉
  松尾諭
大橋知美
  佐津川愛美
武田誠
  坂本真
長倉えりな
  白本彩奈
一条さん
  織本順吉
水野祥子
  渡辺真起子
荒木啓子
  森口博子
水谷広行
  浅野和之
水谷典子
  飯島直子


【スタッフ】

脚本
  岡田惠和
音楽
  平沢敦士
主題歌
  浜崎あゆみ「how beautiful you are」(avex trax)
プロデュース
  若松央樹
  浅野澄美(FCC)
演出
  宮本理江子
  谷村政樹
  並木道子
制作
  フジテレビドラマ制作センター


小泉今日子さんの主な出演作品



中井貴一さんの主な出演作品





この記事へのコメント
ちーずさん お久しぶりです。
今期、このドラマのレビューしてくださって嬉しいです。
大人の淋しさと切なさを何ともうまく表現しているキョンキョンに、はまってしまってます…以前主演していた「恋を何年休んでますか」より、深みある演技で私は好きです。

ちーずさんの鋭くも温かい感想もいつも楽しく拝見しています^^

真平の病気らしい様子…心配ですよね;
Posted by nyao at 2012年01月25日 14:26
こんばんは、初めまして(^-^)
どらま夢小説を書いていてどらまでは追い付けないので参考にします。
よろしくお願いします(^O^)/
助かります
Posted by 桜華 at 2012年01月25日 21:26
nyaoさん、お久しぶりです!

このドラマ、楽しいですね〜!
小泉さん、中井貴一さん、内田有紀ちゃん、坂口憲二さん、飯島直子さん、みんな最高!
真平の病気が心配ですが、ほのぼの系で終わるといいなー。

また遊びにいらしてください!


桜華さん、はじめまして。
どらま夢小説って何ですか?
アドレス教えてくださいませ。
Posted by ちーず at 2012年01月29日 23:51
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最後から二番目の恋 第1話:寂しくない大人なんていない
Excerpt: 豪華な兄弟や〜!(・0・。) ほほーっ 長男が中井貴一で、長女が飯島直子、んで内田有紀と坂口憲二が双子て・・・ そんな兄弟がいる古民家を改装したカフェのお隣に引っ越してきたのがキョンキョン いやぁ..
Weblog: あるがまま・・・
Tracked: 2012-01-14 10:17
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